くだらない

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ワンドロワンライ,全年齢,超短編,原作軸,カカサス小説シリアス

 そろそろ陽が傾いてきた。
 ふたり並んで黙ったまま丸太に座っているのも限界だ。
「写輪眼の使い方をさ、教えるつもりだったんだけど、今日はもうやめとくか。」
 サスケに笑顔を向けるが、当のサスケは俯いたまま。
「……せっかく、時間作ってくれたのに……くだらないこと聞いて悪かった。」
 ……くだらない、わけがない。きっとサスケにとってあの問いは、大きな意味があったはずだ。じゃないとこんなにも落ち込んでいるはずがない。
 俺の答えが悪かったから。もっときちんとサスケに向き合っていれば。
「あの答え、さ。もう一回やり直してもいい?」
 サスケの目が少しだけ開く。
「もうちょっと考えてから、答えるべきだったなって。」
 あの熱い視線を送っている間、サスケはきっとこの問いかけをしたくて機を見計らっていたんだ。ずっと。ずっと。そこにあった想いは一体何だ。どんなことが聞きたかったんだ。
 一人の人として。
「……天才肌なのに努力家。俺もそう。だからサスケの気持ちに共感できる。大切な人をたくさん失った……俺もだ。ま、時代が悪かったな。けどまあ、だからサスケの気持ちも少しは分かると思ってる。ずっと孤独だったのに……いや、だからこそなのかな、すごく仲間想いだ。それは正直、尊敬してるというか、まぶしいなって思う。俺とは正反対だったから。」
 俯いていた顔を上げた。
 その視線が俺の方に向けられる。
「つまりは……俺はサスケに対して、好感を持っているし、共感できるところもあるし、尊敬もしてる。」
 サスケは俺の顔を見つめたまま、口を開きかけて、また閉じる。俺の答えはサスケが求めていた答えになっていただろうか。
 顔を正面に向けて落ちていく陽を見つめながら、唾を飲み込んで思い切ったように口を開く。
「もし、俺が、…………いや、やっぱりいい。くだらない質問に答えてくれてありがとう。」
 何を言おうとしたんだろう。
 どんな言葉を飲み込んだんだろう。
「くだらなくなんかないよ?まだ聞きたいことがあるなら遠慮なく言いな?」
 言いかけた問いを話しやすいように声をかけたつもりだった。けれどサスケはすっと立ち上がった。
「今日はもう帰る。写輪眼の件、別日にまた頼む。」
「そっか。じゃ、また。」
 帰っていくサスケの背中を見送ってから、膝で頬杖をつきながらしばらく考えていた。

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