溺れた魚

214 View

2025年2月22日成人向G,短編,原作軸,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,暴力的描写有

つきまとい

 いつもの平和な任務、つまんねえと声を上げるナルト、サスケにくっつこうとするサクラ、それをスルーするサスケ、何の変哲もないそんな日の任務が終わったあと、思い詰めたような表情のサスケが声をかけてきた。
「カカシに聞きたいことがある、二人きりで。」
 修行か何かの相談だろうか。それにしては表情が硬い。二つ返事でオーケーして、誰もいない第四演習場の片隅で話を聞く事にした。サスケは周りを気にしてから、俺の方を向いて、少し視線を落とし、話し始める。
「教えて欲しい、上忍で、男のあんたならわかるだろ。……あんたのことを考えるとドキドキするんだ。気がつけばいつもあんたが今どうしてるのか考えてる。あんたがナルトやサクラの頭に手を置いているのを見たときモヤモヤした気持ちになった。あんたと一緒にいたいと思う、出来る限り長く。そう思うのは何故だ、俺にとってあんたはどういう存在なんだ、教えてくれ。」
 あー……話って、そういう……。
 長いこと庇護者がいなかったサスケにとって俺という上司は特別な存在に映ったんだろう。独占欲、もしくは恋愛感情? ……何にしても、このままにしておくのは良くなさそうだ。
「……それは多分依存だ。今まで周りに頼れる人がいなかったから。でも今サスケは下忍で、一人前の忍だ。……依存し続けるのは良くない。そもそもお前が知ってる俺はほんの一部だけだ、俺はそんなに慕われるような良い人間じゃないよ。」
 サスケは顔を上げて俺の目をまっすぐに見る。
「ほんの一部だって言うのなら、全部、知りたい。あんたのこと全て。」
 ……どうも、どっぷり浸かってしまっているらしい。……であれば、俺の悪い面を見せて落胆させるか。こんな人だとは思わなかったと思い直してくれたらこの一時的な気の迷いもどこかに行くだろう。
「知らない方がいい。諦めなさい。」
「どんなあんたでも受け入れる、だから。」
「どんな俺でも、ねえ。」
 ……さて、何をするのが一番効果的だろうか。少し考えて、サスケに歩み寄り、その右脇腹を折れない程度に蹴り飛ばした。サスケの軽い身体は2メートルほど吹っ飛んで受け身も取らずに地面に転がる。
 その地面に転がるサスケにまた歩み寄り、背中を踏みつけた。
「思い上がってんじゃないよクソガキ。お前は俺の部下、それ以上でもそれ以下でもない。そんな奴に俺のことなんか話すわけないでしょ。」
「あ、ぐっ、……、」
「わかったらそのクソみたいな考えはさっさと捨てて俺の部下という役割に徹しな。気分が悪い。」
 踏みつけていた足を戻して、更に一発蹴りを入れてからその場を去った。
 このぐらいしておけば諦めるだろう。
 
 そう思っていたのは甘かったらしい。翌日また同じようにサスケから声をかけられてため息をつく。
「蹴りだけじゃ足りなかった?」
「……いいから来てくれないか。」
 他の二人の手前、あまり邪険にも出来ない。仕方なく昨日と同じ第四演習場でまた二人きりになった。
「俺を蹴ったときあんたは何を考えていたんだ。」
「お前がめんどくさいことを二度と言わなくなりゃいいと思ってたけど、失敗だったな。」
「俺のことを考えてくれてた、っていうことか。」
 何だその思考回路、頭おかしいんじゃないのか。……こんな奴とは極力関わらないのが身のためだ。
「思い上がるなって言ったろクソガキが。用事がないならもう二度と呼び出すな。」
「ある、用事はある。あんたの、そばにいたい、そのためなら何でもする。蹴られても殴られてもいい、だから俺があんたのそばにいさせて貰うために何をしたらいいのか、教えて欲しい。頼むから……。」
 ああ……本当に厄介な奴の標的になってしまった。サスケの言う通り、殴っても蹴っても意味はなさそうだ。であれば、ヤリ捨てるか。
「何でも、ねえ。ならそこの木に手ついて、下の服脱いでケツ突き出せ。」
 手持ちの傷薬の軟膏を取り出して、目の前の尻を見ながら自分で扱いた。十分勃ったところでそのケツの穴にゆっくり挿れていく。全く鳴らしていないその穴はギチギチに締め付けて、どこか切れたのか途中からぬるりとした液体が滑りを良くする。ポタポタと垂れる赤い血を無視して奥まで入ったのを確認すると、ガンガン腰を振ってやった。女とは全然違うキツい締め付けは悪くない。サスケは苦しそうな声を上げながらそれを受け入れて、程なく俺はそれを抜いてサスケの背中に精液を吐き出した。
 サスケは膝から崩れて荒い息を吐いている。その髪の毛を掴んで俺の方へ向かせた。
「ほら、今までお前のケツに入ってたチンコ舐めろ。」
 髪の毛から手を離して観察していると、恐る恐る、サスケはそれに舌を伸ばして舐め始めた。綺麗に舐めて最後に口に咥えて舌で舐め残しがないか確認してから口を離し、俺の顔を見上げようとしたその横っ面をぶん殴る。
「下手くそ。話にならない。もう俺に関わらないでくれる? 迷惑だから。」
 サスケは倒れたまま、拳を握った。
「……俺で、……射精、したなら、……気持ちよかった、んだよ、な。少しは役に……」
 俺はため息をついて、地面に転がっているサスケをまた蹴り飛ばす。
「何度も同じこと言わせないでくれる? ……思い上がんなクソガキ。大人の女の方が良いに決まってんでしょ。オナニーより多少マシな程度の分際で舐めた口聞くな。」
 そのまま、サスケを置いてその場から立ち去った。あとはもう無視だ、構うとつけあがる。
 
 蹴られた脇腹が痛い。尻の穴も血が滴って、中に傷ができたみたいだ。その尻の穴も、痛みと不快感が残っている。殴られた頬は、傷にはなっていないようだ。
 カカシが俺で射精したという事実だけでこころが満たされる思いだった。どう思われたって構わない。カカシの思考の片隅に俺の存在があるだけでもいい。それだけで、俺はカカシにとって特別な存在になれる。迷惑なら迷惑でいい、もっと迷惑をかけて、カカシの中の俺の存在を大きくして、もっと特別になりたい。カカシが、俺にああすることで気持ち良くなるのなら、俺はいつでもカカシに尻を向ける。殴られた痛みも、蹴られた痛みも、冷たい言葉も、あんたが俺に与えたものだと思うと愛おしい。もっと俺を見て、もっと俺に……。
 
 次の日から、カカシは俺を避けるようになった。俺に言葉をかけてくれない。頭に手をのせてくれない。俺には笑いかけてくれない。
 俺を避けている、ということが、俺を意識しているからだと思うとなんでだろう、避けられているのに嬉しいと思ってしまう。
 もっとカカシの思考に入りたい。カカシにとって特別になりたい。どう扱われようが、何をされようが構わない。
 任務後に帰ろうとするカカシに声をかけて、二人きりになった森の中でカカシは黙ったまま俺を蹴り飛ばした。
 横腹の鈍い痛み、木に頭をぶつけたじんじんする痛み。横腹を手で抑えながら立ち上がると、カカシは軽蔑の目を俺に向けた。
「気持ち悪いんだよ、クソガキが。」
 そう言って、カカシは立ち去った。
 気持ち悪い。それでもいい。カカシの中に少しでも俺の存在があってくれれば、気持ち悪いと思われたっていい。もっとカカシの頭に俺を刻みたい。
 
 次の日もその次の日も同じことを繰り返した。
 カカシは何も言わずに俺を殴るか蹴るかして、立ち去っていく。
 カカシの腕に、足に、俺の感触が残ると思うとそれだけで嬉しい。
 もっと俺を否定して、俺を痛めつけて、俺を記憶して、俺を意識して。
 俺はオナニーすることを覚えて、カカシがくれた痛みを思いながら、言葉を思い出しながら、思いを募らせていった。
「いい加減にしてくんない?」
 それすらも3日で拒絶された。カカシとのつながりを絶たれた。
 でも、七班の中にいるときにカカシが俺を無視することもなくなった。特別扱いはされなくなった。
 けれど優しい笑顔の裏側を俺だけが知っていると思うと、それだけでカカシを独り占め出来ているような気がした。
 でも殴られたところの、蹴られたところの痛みが引いていくにつれて、寂しさを覚える。
 どうにかしてカカシの気を引きたかった俺は、演習中に木から足を滑らせて受け身も取らずにそのまま落ちた、と思った瞬間、カカシの腕に中にいた。
 すぐに地面に降ろされて「演習だからって気を抜くな」と言われて、ああやっぱりこの人のそばに居たいと思った。
 
 カカシは任務や演習が終わると、歩くのではなく土煙を残して消えるようになった。もう声をかけることもできない。
 俺はどうしたらいい、どうしたらもっとカカシに近付ける。
 一度だけ行った事のあるカカシのマンションのドアの前に座って待った。カカシはなかなか帰ってこない。何時間か経って、空も暗くなって、俯いていたところに足音が聞こえてくる。
 顔を上げて足音の方を見ると、買い物袋を持ったカカシがいて、怪訝そうな目で俺を見ている。
 立ち上がって声をかけようとしたら「黙って家に入れ」と言われて、その名前を呼びたい気持ちをこらえて玄関の中に入った。
「お前は何をしたいわけ」
「……カカシの意識を、俺に向けたい」
「かまって欲しいってこと? あのね、お前はただの俺の部下の一人、それだけ。それ以上踏み込まれても迷惑なの、わかんない?」
「……迷惑……。」
「そう、わかったなら帰れ。」
「そう思われてもいい、少しでもカカシの中に俺の存在が残るなら。それすらも認めてくれないのなら、ここ数日あんたに何をされたか、上層部に訴えに行く。……良いのか?」
 脅しを逆手に取られた、……しまったな。まだ傷は完全には治っていない、内出血の痕もあるだろう。何より尻の中の傷は言い訳が効かない。この傷が治るまでは、腹を括るしかない。
「……お前の望みは何なの。」
「あんたのそばにいたい。」
「……影分身を一体お前によこしてやるから」
「あんた本人がいい。」
「わかった、任務後2時間お前に時間を使う」
「そんなんじゃ足りない、ずっと一緒にいたいんだ。」
「まさか俺と一緒に住みたいとか言い出さないよね。」
「そうだ、あんたと寝食を共にしたい。」
 迷いのない目でサスケはズケズケと要求を通そうとする。立場が逆転したからって良い気になっているのか、ただ傷が治るまでは事を荒立てない方が良いのは確かだ。一緒に住むといっても傷が治るまで、長くて2週間程度だろう。
「……わかった、傷が治るまでは俺の家に住め。これでいいね?」
 何を考えているのか分からなかった黒い目が細まる。サスケは少し口角を上げて言った。
「ああ、今はそれでいい」
 こういう奴を相手にした任務をしたことがある。ストーカーって奴だ。何をしても諦めず果ては家まで押し掛けてくるようになったストーカーに対して、女性からの依頼でその男を捕まえて以後、その男が女性に近づかないように見張り、時々痛い目を見せてやったらその男はしばらくして女性に近づくことを諦めた。
 しかしサスケの場合は部下だ、完全に関係を断ち切る事もできないし暴力も意味がなかった。
 無視をしても何をしてもこうして家まで押し掛けてきて、揚々と俺の家に上がり込んでいる。
 この家にいる間に諦めさせるにはどうしたらいいだろうか。
 暴力は意味がないし、証拠が残る。駄目だ。無視をするのが一番無難だがそれで諦めるとも思えない。
 ソファに座って考え込んでいると、その隣にサスケが腰を下ろす。調子に乗りやがって、と殴ろうとした手を止めて、静かに「近づいて来るな」と不快感を示す。
 サスケはいつもの涼しい顔で「俺を邪険にしたら、言うぜ?」と俺を脅す。上層部にチクられたらまずい、ということを理解されてしまったらしい。そうなるともう、俺はサスケの言いなりになるしかない。
「……お前の傷が治るまでだからね。」
 それを聞いて、サスケは嬉しそうに顔をほころばせて、俺の左腕に自分のそれを絡みつかせる。
「……ずっとこうしたかった。」
 幸せそうに目を閉じるサスケとは裏腹に、俺はこの先の2週間程度をどう乗り切って、その後サスケに対してどう対処するのか頭を悩ませる。
 とりあえずこの雰囲気をぶち壊しにしてやろうと、テレビをつけてプレイヤーに入れたままのアダルトビデオの再生ボタンを押した。キスシーンから入り興奮した息遣いで身体をまさぐりあう男女の映像を見ながら、サスケの方に目をやると、目を見開いてその画面を見つめている。
「お前にはまだ早いから先に寝てなさい。」
 そう言っても、サスケは俺の腕をギュッと抱きしめたまま、テレビに目を向け続けた。