全治3ヶ月

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成人向G,中編,原作軸,カカサス小説エロ描写有,シリアス,性癖強め,暴力的描写有

 その日は久しぶりにバーを新規開拓しようと夜の繁華街を歩いていた。
 キャッチの男がたくさん寄ってくるのをあしらいながら、大通りの隅にある小径に小さなネオン看板が光っているのを見つける。
 こういう所が案外穴場だったりするんだよね。
 その小径に入っていくと、ネオン看板にはカクテルの絵が描かれているだけで店名も何もなく、多少疑問には思ったがその扉を開けることにした。
 木製の扉を開けると、そこは薄暗いカウンターだけの小さなバーだった。客は二人、男と女。すでに酔っ払っている様子で笑いながら喋りあっている。
 入り口近くの席に座ると、細い目のバーテンダーがメニューを差し出した。
「新たな出会いを創造する」とキャッチコピーのように書かれた文字列の下に、見慣れない名前のカクテルが並ぶ。
 値段はまあ、そこらのバーとそんなに変わらない。
「おすすめは何ですか?」
「……どのようなカクテルをお求めですか?」
「ここでしか飲めないのがいいかな」
「では"甘い囁き"はいかがでしょうか……」
 バーテンダーが細い目をさらに細くして微笑んでみせた。
「じゃあ、それちょうだい」
 カカシもにこ、と笑顔で応える。
 店の隅にいる男女の客は知り合いなのか、親しげに話しているかと思ったら急にキスをし始めた。
 えっ?
 一瞬目を疑ったが、まあ男女だし薄暗い店だ、そういうこともあるだろう。
 そこに、カクテルグラスが差し出される。
「……どうぞ」
 そのグラスは赤い色の液体で満たされている。
 味は舌が痺れるくらいの強炭酸で正直よくわからないが、名前の通り少し甘みを感じる。
 カクテルで強炭酸というのは確かに珍しいなと思いながら、徐々に濃厚なキスに移っていくあの男女が気になってしまい、他のものを注文する気にはなれず、一杯だけで店を出ることにした。
「おっ……と」
 外に出ると眩い色とりどりの看板が目に入ってきて、薄暗い店内にいた俺は思わず目が眩む。
 こんなに眩しいもんだったっけ?
 と思いつつ、また新たな店を探して繁華街をうろついたが、めぼしい店は見つからず、結局そのまま家に帰ることにした。
 
 頭がクラクラする。
 まさかこの俺があの一杯だけで酔ったのか?
 はは、そんなわけないない。
 玄関の扉を開けて中に入ると、そこはもうネオン街でもないのに目の前がチカチカする。
「……?」
 何かおかしい。
 まさかあのカクテル、何か仕込まれていた?
 大抵の毒には耐性があるし、毒の種類がわかれば家にいくつか中和剤もある。
 ダイニングチェアに腰掛けて視界のチカチカが回復するのを待っていると、次は心臓がバクバクと拍動しはじめた。
 経験したことのない状況に困惑する。今から木の葉病院に行くか、あのバーに戻って何を入れたのか聞き出すか……そう思ったものの、呼吸に影響が出るほどの激しい動悸に、机に突っ伏した。
 ……まずいな、動けない。
 はぁっ、はぁっ、
 自分の呼吸音が耳から入ってくるが、その音もぐにゃりと曲がって脳に届く。
 とりあえず、水だ。少しでも薄めないと……。
 バクバクする胸を押さえながら、壁伝いにキッチンへ向かう。が、途中で立っていられないほど、拍動が激しくなる。
 その心臓が送り出す血が、身体の一点に集中し始めたのを感じて、飲まされたものが何なのかを理解した。
 ――催淫剤、もしくは媚薬と呼ばれるジャンルの薬物。
 その中和剤は、カカシの家にはない。
 カクテルを飲んでから二時間ほど。どの程度効果が続くのかはわからない。しかしやはり濃度を少しでも薄めるために水は飲んだ方がいい。
 はぁっ、はぁっ、はぁっ、
 床を這ってシンクまでたどり着くと、何とか立ち上がり、コップに水を注いで三杯一気に飲み下す。
 もっと水を……蛇口に手を伸ばすが、強烈な下半身の疼きに耐えられず、膝が折れる。
 そこはズボンを履いていてもわかるくらい、ガチガチに勃ち上がっていた。
「っくそ、」
 ジッパーを下ろしそれを取り出して握ると、数回の往復でいとも簡単に精を放つ。が、硬さは保たれたままだ。もう一度扱く、同じように、数回擦っただけでまた射精する。下半身の疼きがおさまる気配はない。
 ……このままキッチンを汚し続けるわけにはいかない。
 カカシは浴室に向かって這っていった。
「ああ、はぁっ、くそっ、あの、バーテンダー……‼」
 恨み言を言ったところで状況は変わらない。
 浴室で何度か射精するが、疼きは軽くなるどころか、更に思考まで侵し始めた。血中濃度はまだ上がりきっていないらしい。
 やりたい、誰でもいい、思い切り中に突っ込んで、ぐちゃぐちゃに掻き回して、何度でも何度でも中に出したい。
 ハッとして頭をブンブン振るが、呼吸は浅くなるばかりで酸素が脳まで行き届かない。ただ股間にだけ血流と意識が集中する。
 いくら射精しても状況が変わらないのを悟り、ひとり浴室でぐちゃぐちゃな思考を抱えながら、血中濃度が下がるのを待つしかなかった。
 やりたい、犯したい、誰でもいい、やりたい、
 ……っだめだ、耐えろ、俺っ……‼
 
 何時間経っただろう。
 それともたったの数分かもしれない。
 時間の流れがわからない中で、玄関からピンポン、とチャイムが鳴る音が聞こえてきた。
 まずい、今誰か来たら……
 ガチャ、扉の開く音がする。
 鍵、かけてなかった……! ああ、俺の馬鹿‼
「おいカカシ、いないのか?」
 その声の主はサスケだった。
 よりにもよって、教え子かよっ……!
 上忍の誰かなら状況を伝えて中和剤を手配してもらうこともできたのに……‼
 そうしている間にも脳は犯せ、犯せ、犯せとカカシの思考を奪っていく。
 だめだ、絶対にだめだ。
 荒い呼吸を繰り返しながら、すうっと息を吸うと、できる限り叫んだ。
「サスケッ帰れっ‼」
 室内に入ってきた気配が、ピタと止まる。
「カカシ? どこだ? 何かあったのか?」
 あああ、もう、素直に帰れよっ……‼
 もう一度叫ぶ力は残っていなかった。
 ドクン、ドクン、ドクン、
 拍動が激しくなる。
 まるでこの衝動をぶつける相手を見つけて喜んでいるかのように。
「おい、返事しろカカシ!」
 サスケの声と気配が近づいてくる。
 だめだ、だめだ、来るな、やめろ!
 やってしまえ、犯してしまえ、何度も何度も何度も何度も中に出してぐちゃぐちゃにしてしまえ。
 侵されていく思考に僅かながら抵抗する。
 もう一度、息を吸うんだ、俺を拘束できる上忍を呼べと、伝えないと……!
 はあっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、
 だめだっ、息が、うまく、吸えない……っ‼
「はぁっ、はぁっ、くる、な……‼」
 ようやく声が出る、が、弱々しく、これでは逆に心配させるだけだ。
「な、大丈夫か!? カカシ!?」
 案の定、サスケの声に心配の色が滲む。
 その足音が近付いてきた。だめだ、来るな……!
 気合いで立ち上がり、浴室の扉を閉めて中から鍵をかけると、そこでズルズル、とまたしゃがみ込む。
 その音を聞いて、サスケが駆け寄ってきた。
「ここか!?」
 サスケが目にしたのは、浴室の扉の内側にもたれかかるカカシの姿。荒い息が扉越しにも聞こえる。
「おいっ! カカシ! 何があった‼」
 サスケが扉をドンドンと叩く。内開きの扉はカカシがもたれかかっているため開かない。
「はぁっ、じょ……、にんっ、はぁっ、呼べ……っ!」
 弱々しい声が聞こえてくる。
 上忍? ……ったって、どこにいるんだ? 火影の執務室?
 ……ここからじゃ、遠すぎる!
「他に俺に何かやれる事はないのか!?」
 ドン、またサスケが扉を叩く。
 きたぞ、きたぞ、やれ、犯せ、突っ込め、掻き回せ、
 どす黒いものが、頭の芯まで、カカシの思考を奪っていく。
 だめだ、だめ、だ……
 ……カチ
 おもむろにカカシの腕が上がり、浴室の扉の鍵を開けた。
 ごそ、と動き始めたカカシに、サスケは安堵する。
「カカシ、おい、何が――ー」
 扉が動いたかと思うと、中から現れたカカシは荒い息のままサスケの腕を掴み、寝室に引っ張っていく。
「ちょっ、おい! カカシ!?」
 突然のことに対応しきれないサスケは、そのまま引っ張られてベッドの上にドサ、と落とされた。
 そこに、カカシの大きな身体が覆い被さる。
「に、げろ……」
 サスケはカカシが搾り出した声を聞いて、ベッドから降りようとする、が、その両腕はカカシによってベッドに縫い付けられ、ズボンとパンツがずり下ろされる。
「っ……‼」
 目が正気じゃない。
 その両足を上げられ、露わになった肛門に、カカシのズボンの隙間から覗く剛直が一気に入ってきた。
「いっ……!? た、痛っ! やめっ! あああっ、痛、っ、痛いっ、カカシ! おいっ‼」
 慣らされてもおらず、潤滑油もないまま入れられたそこは引きつれて、経験したことのない痛みがサスケを襲う。数回往復したかと思うと、中でビクンと動き、また動きが再開される。
「やめっ……‼ 痛い、痛っ! うあっ、やっめ、いっ! あああっ!」
 次第にぬるりとした液体が漏れ出てくる。カカシの精液と、サスケの血が混じった液体。
 滑りが良くなったのをいいことに、カカシの腰の動きが早まる。
「痛っ……! カカ、あああっ! 痛い、痛い痛い‼ やめっ、や、め、うぁっ、痛っ……‼」
 数回往復するごとに、カカシの身体がビクビクと震える。その度に、中の滑りが良くなっていく。
 射精……してる……のか!? 俺の中に?
「いっ…! カカシっ! うっ……、痛っ、目を、覚ませっ……‼」
 ハッ、ハッ、ハッ、
 カカシはまるで獣のように腰を動かし続ける。
 何だよこれ、いつになったら終わるんだよ……‼
 十数回にわたって射精された白濁液が、ごぽ、と泡立ちながらサスケの尻を伝って落ちていく。
 痛みは少しマシになってきたが、事態は好転しそうにない。
「あうっ、くそっ! ぐっ……! おい……! カカシ、カカシ‼」
 幻術、か、薬、だ……!
 でもあのカカシが、幻術にかかるとは、思えない。
 ……薬かっ……‼
「おいっ! うぐっ……! カカシ! っく、目ぇっ、覚ませっ‼」
 両腕は掴まれてる、動かせない。印も組めない。
 足はカカシの身体に押されてる、少しなら動く、が、それじゃ、どうにもならない。
 考えろ、考えろ。
 カカシは上忍を呼べと言った。どこにいる? 一番近くにいる上忍は誰だ!? いたとしてこの状況じゃ呼べねえ。くそ、お手上げだ!
 こうなったら呼びかけ続けるしかない。
「あっぐ、はぁっ、カカシっ! っあ、カカシっ‼」
 そのとき、顔にポタ、と水滴が落ちた。
 見上げると、カカシの目から溢れた涙だった。
「ッカカシ!」
「ご、め、」
「っつ、う、カカシ! っく、正気、か!? 俺の手ぇっ、離せるかっ!」
「はっ、う、はっ、はぁっ、……っく!」
 カカシの身体がまた震える。そしてすぐに再開される腰の動き。
「カカシ! っぐ、俺の、ことがっ! っつ、わかる、かっ!?」
「ッスケ、はぁっ、ごめっ、腰っ、っ! 止まらなっ!」
「っうぁ、はぁっ、いっ……! っ手! 手離せっ!」
 サスケの両腕を拘束するカカシの手が、少し緩む。
 する、と腕が抜けた。掴まれたところには痛々しい赤い跡が残っているが、今はそれどころじゃない。
 涙をポタポタ流しながら腰を動かすのを止められないでいるカカシ。
 ……上忍としてのあんたを信じるからな……!
 サスケは印を結び、すうっと息を吸った。
 火遁、業火球の術‼
 間近で炎を浴びたかと思うと、カカシは瞬身して部屋の隅に移動していた。
 サスケの股から、それも抜けている。
 サスケはポーチから手裏剣を四つ取り出すと、部屋の隅にいるカカシ目掛けて投げつける。当然のように避けられるが、それでいい。手裏剣の軌道はカカシの後ろに回ったところで再びサスケの元に向かう。
 パシッ!
 戻ってきた手裏剣に仕込まれたワイヤーが、カカシをぐるりと包囲して、サスケが手裏剣を引っ張るとワイヤーはカカシの腕ごと胴体を拘束した。
 だがこんな拘束はすぐ解かれてしまうだろう。サスケは写輪眼を出してカカシに幻術をかける。実践経験はないが、うちはの書物に書かれていた記憶を頼りにカカシの眼を見る。幸い、カカシの写輪眼は額当てで覆われたままだ。
「……っあ……」
 カカシの頭がガク、と落ちた。どれだけ持つかはわからないが、ひとまず成功だ。
「っつぅ……!」
 尻から流れ出てくる白濁液と血液をひとまず無視してパンツとズボンを上げる。
「次は上忍っ! どこにいる……っ!」
 寝室のドアを開け、カカシの家から飛び出した。確実なのは火影の執務室だが遠すぎる。ここから近くて、上忍がいそうな場所。……確か十班が頻繁に行く焼肉屋が近いはずだ。
 股間と尻に痛みを抱えながら、焼肉屋に急ぐ。
 頼む、いてくれ……!
 ガララ! と勢いよくその扉を開けると、間抜けな顔で焼肉を食べている十班がいた。当然、引率者のアスマも。
「カカシが緊急事態だ! 助けてくれ!」
 アスマはすぐにガタンと立ち上がると、「どこで何があった」とサスケに駆け寄る。
「多分、かなり強い薬盛られてる。催淫剤みたいなやつだ! 何とかできるか!?」
「そういうことなら……紅の所に寄るぞ!」
 サスケはアスマについて走る。
 住宅街の一角に入ると、その中にある平屋の扉を叩いた。
「紅、いるか! 催淫剤の中和剤が必要だ!」
 切羽詰まった呼びかけに、中から紅が出てくる。
「誰がやられたの?」
 小瓶から注射器に液体を移し、アスマに渡す。
「カカシだ。サスケ、先に行ってるぞ!」
 上忍の足は早い。すぐにその姿は見えなくなった。
 サスケもアスマを追って走り出した。
 サスケがカカシの家にたどり着いた頃には、すでに中和剤が打たれていたらしく、ワイヤーでグルグル巻きにされたまま床に倒れているカカシの姿があった。
 股間を確認するが、勃っていない。
 サスケはほっと一息つく。
 と、同時に緊張が解け、尻に痛みが走った。
「……っ! ああくそっ、手間のかかる間抜けが……‼」
 サスケの尻からはなおも白濁液がだらだらと溢れ出ている。
 一体何回出したんだこのアホっ……‼
 しかしカカシにされたことをアスマに言うわけにもいかず、黙ってトイレに向かう。
 踏ん張って出そうとするが、恐らく中は所々傷付いていようで、激しい痛みが走り、白濁液と共に赤い血がポタポタと垂れてくる。
 それにしても。
 あのカカシに薬を盛れるような奴が、いるのか……? カカシだぞ……? それもあんなに効き目の強い……
「いっ……!」
 尻だけでなく、股間にも痛みが走る。
 くそ、わからないことだらけだ。ケツは痛いし、最悪だ。
 垂れてくる液体が減ってきたところで、尻にペーパーを挟んでパンツを履く。
 トイレから出ると、アスマが心配そうに「サスケは大丈夫か?」と聞いてきた。
 ぜんっぜん大丈夫じゃねえ……!
 とも言えず……「カカシは、どうなったんだ」と逆に尋ねる。
「俺が着いたときには、暴れ始めていた。無理矢理注射を打ったらすぐに気を失ったよ。」
 ……多分、サスケが注射を打とうとしても暴れるカカシを抑える事はできなかっただろう。最初にカカシが上忍を呼べと言ったときに対処していれば……。
 アスマは気を失っているカカシを抱え上げる。
「ともかく、一旦こいつは病院に連れていく。他にどんな薬を盛られたかわからんしな。……サスケも見てもらった方がいい。」
 ……何が起きたのか、どうやらアスマは察しているようだった。
 サスケは深いため息をつく。
「わかった、俺も一緒に行く。」
 サスケはカカシを抱えるアスマに続いて、木の葉病院に向かった。
 
「………う………」
 頭がグラグラする。気分は最悪だった。
 うっすら目を開けると、自分の家の天井じゃない。
 ……が、見覚えがある。この天井は病院だ。
 何で病院にいるんだ……? 何でこんなに気分が悪い……?
 記憶を辿っていくと、とんでもないことをしてしまったのを思い出す。
「……あんの、クソバーテンダー……っ‼」
 フラフラする身体を両腕で支え、何とか上半身を起こすと、真っ白なベッドの横に、サスケが腕を組んで座っていた。
「サッ……‼」
「……よぉ、気分はどうだ」
 カカシはぐらつく身体をお構いなしに瞬時にベッドの上で土下座した。
「すまない申し訳ない本当にごめんなさい悪かったっ……‼」
「……いや、俺も悪かった……最初から上忍を呼びに行ってれば……。……。」
 サスケが険しい顔をする。苦虫を噛み潰したような。
「サスケ……は、その、大丈夫か、身体……。」
「大丈夫……だと、思うか……?」
 ……大丈夫なわけがない。子どもの身体に、慣らしもせず、ローションも使わず、無理矢理突っ込んだのだから。それも、何十回も。
「……全治三ヶ月。」
 険しい顔のままサスケが呟く。
 カカシはああ、と天を仰ぐ。なんてことだ……。
「許してくれとは言わない……ただただ申し訳ない……本当に……」
「……俺が気になるのは、あんたにあんな薬を盛ったのが誰かということだ。気付けなかった間抜けなあんたにも腹が立つが、盛った奴にはもっと腹が立つ……‼」
 正直に言ってしまえば、単身乗り込みかねない剣幕だった。でも、サスケひとりで行かせるには危険すぎる。他にどんな薬があるのかわからない。最悪薬漬けにされる。
「それに関しては、近々調査チームが組まれると思う。だから落ち着いて。調査結果が出るまで待とう、……な?」
 サスケはひときわ顔を険しくした。
「ッチイ!」
 吐き捨てるように舌打ちすると、立ち上がって部屋の外に出ていく。
 カカシは深く頭を下げたままその様子を見送った。
 ……代わりに入ってきたのは、アスマと紅だ。
「…よぉ、気分はどうだ」
「……それ、流行ってんの?」
「はぁ?」
 カカシは土下座からベッドの端に座る体制に変わる。
「や、何でもない。二人にも迷惑かけたな……。自分が情けないよ、全く。」
「それ、ちゃんとサスケにも言ってやったのか?」
「言って……ないかも。」
 紅がはぁ……とため息をついた
「ホント、だめな男ね、カカシは。」
「本当に申し訳ない……」
 それ以外に言うべき言葉が見つからなかった。
 二人がいなければ、また自我を失って次は誰を襲っていたかわからない。
「それで? 誰に盛られたのよ、あんな強い薬。」
「……やっぱりその話になる?」
「媚薬の他に、自我が消える、残酷になる、乱暴になる……、要は、暴行マシンにするような成分ばかり入ってたのよ。そんな危険なものを口にするなんて……何があったの」
 アスマと紅には正直に顛末を話した。
「……繁華街の隅にあるバー……ねぇ。放置するには危険ね。」
「うん、だから火影様に調査チームの結成を依頼しようかと……」
「ま、それがいいな。これに懲りたんなら、もう怪しい店には入るなよ。」
「本当にサスケには申し訳ないことしちゃって……俺どうしよう」
「んなもん、頭下げ続けるしかないだろ。」
 カカシはがく、と首を垂れた。
「です…よね……ああ……。サスケ怒って出て行っちゃったし……」
「……あの子、あんたのこと、随分心配してたのよ?」
「……え?」
「辛い思いしただろうに、カカシは大丈夫なのかって、一晩中あんたが寝てる隣に座って。」
 サスケが? 俺を心配? あんなことした俺を?
 顔を上げると、呆れたような二人の顔。
「……俺、サスケのとこ行かなきゃ……」
 立ちあがろうとするが、頭がぐらついて思わずベッドの柵を掴む。
 歩け……そうにない。
「ちょっと、大丈夫? そんな状態で会えたとしてもまた心配かけるだけよ。」
「……だな。もうちっと休んどけ。」
 ……情けない……。情けなくて涙が出そうだ。
 大人しくベッドに戻って、深くため息をついた。
「ともかく……二人には感謝してる。ありがとう。悪かった。」
「サスケとも、ちゃんと向き合えよ。」
「うん……」
「あ、そうそう。薬の成分が完全に抜けるまでお前隔離病棟だから、医者の許可が出るまで病室から出られねえからな。せいぜい反省しとけ。じゃあな。」
 最後に重要なことを言ってアスマたちは出て行った。扉が閉まった後、シャッターが降りる音がしたから本当に隔離されているんだろう。
 よくよく見渡すと、本当に何もない部屋で窓にも鉄格子がはまっている。こんな俺の状況じゃ、面会するのも手続きが面倒だろうに、サスケは一晩中着いてくれていたなんて。
 こみあげる感情の名前がわからない。
 ただただ、サスケに会いたかった。
 
 ……それが叶うのは、一週間も先のことだった。

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