溺れた魚
逃げられない
アダルトビデオを見たことがない興味関心からだろうか、何にしても12歳にはまだ早い。
「聞いてる? これは大人しか見ちゃ駄目なやつだからお前は先に寝てろ。」
「俺とセックスしたくせに今更?」
イラっとくるのを堪える。
「あんなのセックスとは呼ばないよ、ただのオナホール代わり。わかったら早くどっか行け。」
「……俺にそういうこと言ってもいいのか、あんた。」
何でもかんでも思い通りにさせようとしてるのか、こいつ。タチが悪い……家まで押し掛けてきた時点で、それはわかっていたことだけど。
仕方なくテレビの電源を切ろうとリモコンに手を伸ばしたら、その手を握られた。
「最後まで見たいから、消さないでくれ。」
「……はいはい……仰せの通りに。」
もうサスケに対して何かを言うのはやめることにした。意にそぐわなければすぐに脅しにかかるのだから、抵抗のしようがない。
サスケは1時間半のアダルトビデオを全部見終わると、立ち上がって俺の腕を引っ張った。
「次は何?」
「覚えたから、あんたとセックスしたい。」
また挿れたら傷の治りが遅くなるだろうが、却下だ。
「中傷ついてんのに、また挿れたらもっと酷くなるじゃない。それは駄目だ。」
「俺は構わない。ベッド行くぞ。」
そりゃあ、お前にとっては好都合だろうよ。でも俺にとってはすごく都合が悪いって、……わかってて言ってるんだろうな。くそ。
仕方なく立ち上がって、腕を引かれるまま寝室に来た。サスケは俺の口布を下ろして、少し背伸びをしてキスをし始める。アダルトビデオで学んだんだろう、音を立てながらちゅ、くちゅ、と貪るようにキスをしながら、俺の股間を弄っている。
……まあ、嫌々付き合うよりは、どうせなら楽しむか。身をかがめてサスケのキスに応えてみせる。ズボンの隙間から手を入れてサスケのそれを扱いてやった。すぐに硬く勃って、サスケも俺のズボンの中に手を入れて直接触り始める。少しだけ芯を持ったそれを出すと、キスをやめて跪き、舐め始めた。つい先日の飴でも舐めてるようなそれではなく、ちゃんとしたフェラチオ。これもビデオで学んだんだろう。その的確な刺激に俺のそれもどんどん硬く芯を持っていった。……そういえば、サスケは優秀なんだった。一度見本を見せれば見せた以上のことを学ぶ、そういう奴だ。
「……もういい、下脱いでベッドに横になってろ。」
ベッドサイドのテーブルの中からローションを取り出して手に垂らした。
ベッドに座っているサスケを押し倒してキスをしながら後ろの穴にゆっくり指を挿入する。なるべく傷を酷くしないようにじっくりと押し広げながら慣らした。慣らしていると、時折サスケがぴく、と何かに反応する。
……何だ? 反応するところを探し当ててくに、と押してみると女みたいな声で「っあ」と声を出した。
……男にもGスポットみたいなのがあるんだろうか。
そこを集中的に嬲ってみたら、やはり女みたいに喘ぐ。指を二本に増やしてゆっくり中を押し広げながら時々そこをぐりっと刺激してやると中がどんどん緩んでいく。
「……けつの穴に指入れられてよがってんの?」
「でも声っ我慢できな……っん!」
涙目で半開きの口、優等生のサスケ君のこんな顔見たら女子は潮が引くようにどこかに行くだろう。サスケの反応に気を良くして指の代わりにそれをあてがうと、そこばかり集中的に突いてやった。
「あ、あっ、やっ、いく、いくっ、あ、あっ! あ、ぅ……っ!!」
中がきゅう、きゅう、と締まるのをゆっくりとした抽送で楽しむ。自分の精液で腹を汚したサスケは射精の余韻に浸っていたけど休ませる気はない。まだビクビクと締め付ている中またそこばかり突いてアンアン喘ぐのを聞きながら、悪い気分ではなかった。
「あっ! そこっ、っあ! も、だめぇっ! はぅっ、あっ、あ、あっ!」
サスケがビクビクと震えながら懇願するが顔はもっとしてと言わんばっかりだ。ただ「駄目」と一応言われたからには従っておくか。
奥まで当たる長いストロークに変えると、今度は奥を突く度にまた喘ぎ始めた。奥の方をぐりぐりと刺激してやるとまた震えながら声を出す。
「あ、あっ、……っあ、きもち、いっ、っあ、あ、」
「……は、女みたい。」
奥をガンガン突くピストンに変えると背を逸せてまた大きく喘ぐ。耳に入ってくるその声に知らず興奮を覚えていた。もう傷のことなんてすっかり頭から抜けていた。このまま奥ばかり突き続けたらまた射精するのだろうか。さっきの締め付けの感覚を思い出してそれも悪くないと思いスピードを上げると一層声が高くなる。
ますます女みたいな声になって枕を握りしめるのを眼下に腰を打ちつけているとサスケは声にならないような声を出し、中がきゅううっと締まった。
……イッた? ……射精はしてない。でもこの中の締め付けはさっきよりもきつくてサスケの身体がピク、と痙攣する度に中もギュッと締まる。奥を突いてみるとビクッと締まってくたっと弛緩する。
多分イッた、んだと思う。射精せずにイくこともあるのか。男なんて相手にしたことがないからよくわからないが、この間断ない締め付けは悪くない。くったりしているサスケをそのままにして再び腰を打ちつけ始めた。女よりも中の具合はいいし女みたいに喘ぐのも面白い。胸はないが……いや、乳首はあるか。試しに摘んでみたらきゅう、と中が締まる。
「……まさか乳首で感じんの?」
腰を打ちつけながら聞いても返ってくるのは喘ぎ声ばかりだ。けど触ると締め付けるのは事実だからその後はずっと乳首を嬲りながら腰を動かした。
「あぅっ! はぁっ! んぁっ! ぁあっ!」
あー……そろそろ出る。アダルトビデオでは顔射してたけど、どうするかな。
「中と外、どっちがいい。」
サスケは質問の意味がよくわかっていないようだった。まあいいか、このまま中に出そ。
奥にぐいと押し込むとサスケがまたのけぞる。そのまま中に流し込んで、全部出したらぬぷ、と引き抜いた。少しして、ひくついている穴から白いドロッとしたものが少しずつ出てくる。
それを見届けて満足した俺は布団でぐったりしているサスケを残してシャワーを浴びに行った。
はぁー、はぁー、といつまでも息が落ち着かない。カカシがすぐそばにいて、キスをして、そしてカカシとセックスまでできて、それも気持ちよくて、これ以上ない幸せな気持ちだった。ああ、もっとカカシと一緒にいたい、キスをしたい、セックスもしたい。身体に残る痣は薄い青色と少し黄色くなってきていた。きっと2日も経てば完全にこの痣は消える。でも絶対にカカシから離れない。写真も撮ってあるし医者から画像と診断書も貰ってある。これがある限り、カカシは俺の言うことを聞くしかない。カカシはもう、俺のものだ。
起き上がると少しだるくて、股関節が痛んだ。お尻から何か漏れているのに気がついて、指で掬ってみたら白くてトロッとした……カカシが俺の中に射精した? 俺の中にカカシがいるみたいで独占欲が満たされる。
そういえば、カカシはどこ行ったんだろう。水の音が聞こえてくる。シャワーだろうか。カカシの後を追うように、俺も浴室に向かった。
「……入ってこないでくれる?」
カカシはまたいつものカカシに戻っていた。でも俺は知ってる。俺のけつの穴で気持ちよくなって射精したことを。
「俺はカカシと一緒にシャワーを浴びたい。」
はっきりとそう言えば、カカシは俺に逆らえない。カカシはため息をついてシャワーを俺に譲って出て行こうとした。その腕を握って止める。
「裸で抱きしめ合いたい。」
カカシはめんどくさそうな顔をしながら、俺の方を向いて手を広げた。まだ少しだけ芯が残るカカシのそれを股に挟んで腰を揺らすと、再び硬さが戻ってくる。
「……ちょっと、やめてくんない?」
「嫌だ……カカシをもっと感じたい……」
自分のもいつのまにか勃っていて、カカシの腹に当たる。抱きしめられながら擦り付けるように腰を動かして、またセックスがしたくなる。はぁ、はぁ、と夢中でその熱くて硬い感触を貪っていたら、抱きしめる腕が緩んで俺の胸に手を置かれ距離を取られた。
「終わり。シャワー浴びてこい。」
「……こんなに勃ってるのに? もう一回……」
「勘違いしてそうだけど、擦られたら勃つのはただの生理現象で、もうお前とやる気なんて全くないからね。」
「……そんな風に俺を拒否していいのか? 俺はもう一度セックスがしたい。」
不愉快そうにカカシの顔が歪んで、俺は後ろを向かされた。最初のときと同じ体制でその熱いものが入ってきて、でも入ってきた途端ゾクゾクっと快感で身体が震える。性急に腰を打ちつけられて濡れた身体はぶつかり合うたびにパンッパンッと音が鳴った。俺は自分で前を扱きながらカカシが俺の中に入っていると言う事実に頭がどうにかなりそうなくらい幸せを感じて呆気なく射精する。カカシもさっきとは違ってすぐに俺の中にその快楽の印を残して引き抜くと、もう一度シャワーでそこを洗い流して、黙って出て行った。
俺は浴室の床にぺたんと座り込んで、中の感覚の余韻に浸る。
カカシの身体だけじゃなくて、こころも欲しい。どうすればカカシは俺を見てくれる。俺に関心を寄せてくれる。
シャワーから出たら、ぶかぶかの部屋着が置いてあって、きっとこれを着ろということなんだろう。シャツに顔を寄せて匂いを嗅ぐ。洗剤の香りとほんの僅かなカカシの匂い。これを着て今日生活すると思うだけで嬉しさで胸がいっぱいになる。
リビングを覗いたらカカシはソファにいて、俺はその隣に寄り添うように座った。カカシは不機嫌さを隠そうともせず、でももう俺を振り払おうとはしなかった。
そうだ、カカシ、それでいい。あんたは俺の言うことを聞くしかないんだから、早く諦めて俺を受け入れてくれ。
俺は幸せだった。捉えた獲物は逃がさない。カカシは俺のもの。絶対に離さない。
……とでも思っていそうな顔だ。こんな状態をあと何日続ければいいのやら。
殴ったところの痣は2日もあれば綺麗になくなるだろう。尻の中も大した傷ではなさそうだ。2~3日……3日だ。3日経ったら追い出そう。ただ、それまでに……また何を言い始めるかわからない。どうせなら楽しむか、なんて悠長なことを考えてセックスに付き合ってやったらこれだ……。追い出したとしても、この調子じゃまたつきまとうだろう。……引越しでもするか。
チラとサスケの方を見るとその黒い瞳が俺の目を捉える。何を考えているのかわからないその深い暗闇に吸い込まれそうになってハッとした。
「なんで……そんなに俺に執着するわけ?」
サスケは照れたように顔を綻ばせながら俺の腕を抱きしめる手に力を込める。
「あんたが、俺の頭に手を置いてくれたから。他の子どもと同じようにしてくれたから。」
……は? それだけで?
「いつもいつも特別扱いされて誰も俺に触れようともしなかった。カカシだけだ。母さんみたいに優しくて、父さんみたいに強くて……。」
「俺はお前の家族にはなれないよ。」
「わかってる……だから今が特別で、ずっとあんたのそばにいたいんだ。」
「何度でも言うけどさ、それ迷惑なのよ。傷治ったら付き纏うのやめてくれる?」
「……いやだ。ずっとずっとカカシは俺のそばから離れない。任務が終わったら一緒に手を繋いでこの家に帰ってきて、こうして寄り添って、俺が作るご飯を一緒に食べて、セックスをして、そして一緒のベッドで眠る。これからはずっとそうする。カカシは俺にとって理想のカカシでいてくれれば良いんだ。傷なんて関係なく、これから、ずっと。」
目を閉じて、口元を綻ばせながらサスケが語る。
……何こいつ、……何言ってんの。
「傷さえ治ればお前なんか相手にしないよ。お前の言う”ずっと”なんて実現しない。馬鹿馬鹿しい夢見るのはやめろ。」
サスケの目が薄く開いた。くすくすと笑っている。何がそんなに可笑しいんだ。狂気を感じて背筋が寒くなる。
「殴られた直後の痣の写真も、尻の穴の傷の画像も診断書もある。傷が治ってもあんたは俺に逆らえない。俺はいつだってカカシに何をされたのか昨日のことのように思い出して喋ることができる。この意味、わかるだろ?」
腕を振り払って立ち上がりその顔をぶん殴った。
そうか、そういうこと。ならもう傷の治りがどうとか気にしなくても良いわけだ。
「お前、最低に気持ち悪いよ。殴られたくなかったら近づくな。」
サスケは殴られた頬に手を当てて、ゆっくりと俺を振り返り嬉しそうに笑う。
「どんなに殴られようが蹴られようが、あんたのくれた痛みだと思えば俺は嬉しい。そしてあんたは俺に逆らえない。あんたはまた気持ち悪い俺と隣り合わせでソファに座るんだ。そしてあんたの頭の中で俺の存在が大きくなっていく。カカシ、また俺と一緒にソファに座るんだ。そうするよな?」
いっそ何ヶ所か骨を折って入院させてしまった方が良いのではないか、そう思いつつもはじめてルーキーを受け持って、しかもうちはの生き残りであるサスケへの暴力が表沙汰になっても面倒だ。
この気持ち悪い奴と一緒に暮らすか、自分の名声に傷がついてでも離れさせるか。でも訴えられた後に付き纏われない保証はない。むしろもう殴られないからと調子に乗るのが目に見えている。
……くそ、選択を誤った。しかし最初のあの状況で他に取りうる選択肢はあっただろうか。優しくすればつけあがる、無視をしたら付き纏う。
苛立ちを隠さずにソファに腰を下ろすと、またサスケが隣に寄り添って座る。
「そうだ、あんたはそれでいいんだカカシ。」
サスケの思惑通りに、俺の思考に占めるサスケの割合は増えていた。
どうにかして現状を打破出来ないものか……頭のおかしい奴相手に、常識も何も通用しない。常識的でない手段を考えるしかない。何か……。
考え込む俺とは裏腹に、サスケは俺の左腕を両手で抱きしめながら、嬉しそうに微笑んでいた。