恋人未満

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2025年3月7日成人向,中編,現代パロ,連載中,カカサス小説エロ,やおい,自慰

どっち?

 レジカウンターの中で、ぺたんと膝をついてしゃがみながら、朱に染まった頬で涙目になっている子を見て、何も感じない人は果たしているのだろうか。
 
 ハッテンバに行ってはワンナイトを繰り返して、何だか違うんだよなぁと相性のいい人がいないか探していた折だった。よく行くコンビニでサスケが働き始めたのは。
 最初は大学生かなぁ、初々しいけどしっかりしてて感じのいい子だなぁ、と思いながら、だんだんちょっとした会話を交わすようになって、何となく仲良くなりたいなと思うようになって、サスケのシフトの時間中にコンビニに行くために、ハッテンバに足を向けなくなった。
 だからだろうか、サスケのことをそういう対象として見てしまうようになってしまった。この子を抱いたらどんな反応をするんだろう、どんな顔をするんだろう、というよこしまなことを考えながら、いい人ぶって、毎日弁当を買いに行って。
 ある日サスケがもう上がったと聞いたとき、ちょうど22時で、もしかしたら待っていたら会えるかもしれないと思ったらドンピシャ。その時点では手を出す気はなかったけど、同じ学部の後輩だと聞いて、なりゆきで俺の家に来ることになって、俺の中の邪な考えが噴き出した。
 無理やり言いくるめて泊めることに成功して、でもその時はまだ迷いがあった。せっかく今までいい人として立ち回ってきたのに、手を出したらそれが崩れてしまう。だけど崩れたところで失う物は別にないか、と眠っているサスケの背後から貸した部屋着をそっとずらしてローションをつけた指でそろっと中をほぐしていった。
 ときどき「ん……」と身じろぐたびに起きていないか確認して、でもしっかりと慣らしたところでサスケは目を覚ました。戸惑うその様子にどうしようか少し悩みながら前立腺マッサージをしたら、寝ている間にどうやらそこの感度が上がっていたらしくサスケが声を上げて、その声がいつも聞いている声と全然違う吐息混じりの高い声で、俺はその瞬間にサスケを食うことに決めた。
 結論から言えばサスケとの相性は最高だった。相性というか、こんなにも敏感に感じてくれる子はなかなかいない。しつこいくらい愛撫した中は俺のをきゅうきゅうと締め付けて離さず、俺はサスケがセックスの良さに目覚めるように大切に抱いた。
 だけどまあ、当然ながら嫌われてしまった。
 嫌われたとは言え、俺はサスケにそれなりの……結構な経験をさせたつもりだ。自慰よりも、女を抱くよりも、遥かに気持ちいいでしょ、と身体にわからせてやったと自負していた。
 翌日もサスケはいつものようにコンビニにいたのを見て少し安心して、もう一度俺の手に落ちないだろうかと思いながら再び「いい人」を気取ってその時が来るのを待った。
 あの子はわかりやすいなぁと思う。わかりやすいだけに他の奴に取られないか少し心配になった。
 その日明らかにサスケの様子がいつもと違っていて、何かあった、もしくは何かしたんだろうとあたりをつけた。トイレのペーパーホルダーからペーパーを外して芯を代わりにつけて、いつものように品出しする背中をつついてレジを済ませてからトイレに誘導した。
 あまりにも簡単に思い通りに動いてくれるものだから、やっぱり他の奴に目をつけられたら危なっかしいなぁと感じて、俺だけにしか意識が向かないように調教しておかないと、と思った。この独占欲にも似た感情は何だろう。獲物を渡すまいとする本能だろうか。ただ言えることは、サスケに対して好感は持っているけど、恋愛感情はないということだけだ。けれど単なる性的対象という訳でもなく、こんな感覚を抱くのははじめてだったから自分でも少し戸惑いはあった。
 またサスケを弄ぶことが出来ると思うと興奮したのは事実。でも加虐的、というよりは、サスケとそういうことをする仲になって、その上でサスケを独り占めしたい気持ちが強かった。あくまで、一方的ではなくサスケからも求めてくれるような関係になれるのが理想だった。
 そのためにまた身体に刻み込んでやろう、俺とそういうことをすることがサスケにとって悪いことではない、ということを。
 途中で他の客が来て、サスケを解放してやった。直前まで指で喘いでいた子が平然を装ってレジをする様子は眼福だった。頬がまだ赤いまま、手つきがぎこちなく、その声は少し震えていて、きっとお尻の穴はヒクヒクと更なる刺激を待っていてむずむずして堪らないんだろうと想像しながらその客が去るのを待って、レジの中にしゃがみ込んだサスケを覗いてみたら……助けを求めるように俺を見上げる涙目とかちあった。
「っ、来るな! どっか行け……っ!」
 これ以上変なことをされたら戻って来れない気がして、それが怖くて、カウンターの中に入ってきて歩み寄るカカシから逃れるように尻を引きずりながら後ずさる。
「でもさぁ、すごく困ってるように見えるんだけど。」
 さもいい人が、手助けをするかのように心配そうな顔でカカシは俺の目の前まで来てしゃがむ。
「来るなって、言ってんだろっ……!」
『この身体の疼きをどうにかしてくれ』
 相反する気持ちが頭で揺れる。だめだ、だめだ。これ以上この男のいいようにされたら俺はきっとどうにかなってしまう。
 こわい、けど、あの夜の快感をまた感じられるのなら……いや、だめだ、そんなの、そんな事、認めない。俺は普通の、ただの普通の男で、だから男からそんな事をされるなんて、嫌に決まってる、そのはずだ。そうだろ、そうだ、だからもうこれ以上は……!
 しゃがんで俺の様子をじぃっと見つめるカカシは、本当にただ心配そうに俺を見ていて、変態な事なんてしない普通のいい人のように見繕っている。でも俺はこいつがとんでもない変態だって身をもって知ったからわかる、この顔がただの「いい人」の仮面だということを。俺をこんな風にした張本人のくせに、いけしゃあしゃあとこうして近寄ってきているのが良い証拠だ。
「……そんなに嫌がったり怖がったりしないでよ、俺はただサスケの助けになりたいだけだよ? 中が疼いて仕方がないんでしょ、だってあんなに喘いでたもんね?」
「っひ、」
 俺に向かって伸びる手が、頭の後ろにまわって後頭部に優しく触れる。カカシの顔が近づいてくるのを俺はただ見ていることしかできなかった。重なった唇に舌が差し込まれてくちゅ、ちゅ、とついばみながら俺の舌に絡まる。
 なんで、男なのに、カカシも男なのに、キスがこんなにも気持ちいいなんて、おかしい。おかしいのに、拒めない。もっとしたい、頭の中で、抵抗しなければという思いが蕩けていく。ズボンの上からそれを撫でられて、俺はまた下半身がどんどん疼き始めて、自分でもどうしたいのかよくわからなくなってきた。
 唇が離れていって、立てない俺をカカシが抱き上げてバックヤードに連れて行かれる。休憩用の長椅子の上に下ろされて、二人がけのその長椅子に押し倒された。ジーンズと下着をずり下ろされるのを抵抗もせず、いやに大きく聞こえるバクバクと鼓動する心臓の音はカカシがしようとしているその先を期待しているようで、拒まなければいけないという気持ちがいつのまにかどこかへ行ってしまっていた。
 とろりと指にローションを垂らすのをただ見つめて、その指の行く末を想像して中がキュンとする。
「本当に、本当に心の底から嫌だったら、また変態って言いな? 本当に嫌がってるなら、俺も嫌がられることはしたくないからさ。」
 お尻にその指が添わされて、ごくりと唾を飲む。
「……でもサスケは嫌じゃないよね、欲しいんだよね? わかってるよ、ちゃーんと。」
 ぐちゅ、と中に指が入ってくる。2本の指が中を押し広げて入ってくる。感触を確かめるように中で動いて、〝俺の望み通りに〟そこへの刺激が始まった。
「っぅ、んっ、はぁっ、っん、……っ!」
 ゆっくりと動く指がじれったい、もっと強い刺激が、快感が欲しいのに……? ……え? 快感がほし、い……?
「あっ! あ、っぁ、っん! っあ、あ、あっ!」
 少しずつ指の動きが早くなっていく、そこを突くように動きが変わる、気持ちいい、これが欲しかった、欲しかった……? そうだ、身体がずっと求めていたのはこれだった。
「っは、あ、あっ、あっ! カカっ、っあ、あ、あっ、あ、あああっ!」
「ん……なに? どうしたの?」
 ぐちゅぐちゅと指を抜き差ししながら、カカシが俺の視線に合わせて身体を寄せる。俺はそのカカシの肩にしがみついていた。
「やっ、あっ! きもちい、気持ちいいっ、っあ、あ、カカシっ、カカ、っんぁ!」
「素直でいい子だね、サスケ。またイカせてあげるからね。」
 指の動きがまた激しくなって、俺は間断なく声を上げ続けた。だめ、いっ、いく、だ、だめ、いく、いくいっ……!!
「っあああ! っあ、……っ!!」
 ビクッと身体が緊張する。俺はまたイっていた。びゅ、びゅ、とそこから勢いよくほとばしるたびにびく、と身体が震える。
 はあっ、はぁっ、と息をしながら、俺はしがみついているカカシの肩を強く引き寄せた。
 射精の余韻とじんじんとする中の感覚、脳内に放出された麻薬物質が頭を真っ白にする。
 トイレのときのように、まだ続けるのかと思ったら、カカシは指を抜いて俺の首元にキスをした後、服を整え始めた。
 ……え、……終わり……?
 腕を緩めるとカカシは上体を起こして、指をハンカチで拭きながらにこ、と笑った。
「少しはスッキリした? 仕事の邪魔しちゃ悪いし、ここまでにしようね。」
 エプロンについた白濁液をおしぼりで拭いて、ジーンズのボタンがとめられる。
 俺は呆然としながらそれを見つめて、頭は混乱していた。
 カカシは変態で、だから俺を狙って、なのに自分は何ともないように、俺だけを気持ち良くさせて、え? それってカカシの得にはならないんじゃ、本当に俺のことを気遣って? まさか、いやでも。
 弁当の入ったレジ袋と鞄を持って、「起きられる?」と背中を支えられて、俺は何とか起き上がると、混乱しながら立ち去るカカシの背を見送った。
 困っている、俺を、助け……? 本当に……? 変な下心なく……?
 不意に鏡に写った自分が見えて、顔が真っ赤なことに気がついて、気持ちをなだめようと深呼吸する。
 まだ、胸がドキドキしている。どういう感情を持ったらいいのかわからない。カカシは変態、だ、寝てる俺に、指入れてたんだ、その上セックス、まで、そうだ、変態だ、あいつは、そうだったはずだ。……なのに何で今日はしなかった……バイト中だから? でも俺を指でイカせだだけで、カカシはなにもいいことはなかった、はずなのに、なんで俺だけを?
 もしかしたら、変態だけど、いい人でもあるのかもしれない。……変態だけどいい人って、どんなんだよ。
 待ち望んでいた刺激を得られたからか、イッたからなのか、身体の疼きはすっかり気にならなくなった。ただあそこのじんじんとする感覚が余韻として残っているだけで。
 カカシが悪い奴なのか良い奴なのかわからないまま、ぼぅっとレジに立っているうちに夜勤が来て、退勤時間になっていたことを知った。エプロン、汚れたので洗います、とレジ袋に入れて鞄に詰め込んで、コンビニから出る。そこにカカシの姿はなくて、本当にあいつは俺の助けになりたかっただけ? でもこんな身体にした原因はカカシだし、でも今日は、俺だけ気持ち良くしてくれて立ち去って。
 髪の毛をくしゃくしゃと掻く。
 結論、わからない。カカシがどういうつもりで何をしたくてどうしたいのか、俺の想像の範疇を超えていてわからない。
 ……わからないことにいつまでもリソースを割くのは無駄だ、……帰って寝よう。
 
 あの日の夜に感じたカカシへの嫌悪感は、確実に薄れていた。むしろもしかしたらいい人なんじゃ、とまで思ってしまっていた。ずっとのちに、それが〝ハロー効果によるゲイン効果〟と呼ばれるものだと知ることになるが、そのときにはもう、俺がカカシを見る目は、また全く別のものに変わっていた。
 
 翌日、バイトに入るといつもの時間にいつものようにカカシが弁当を買いにくる。昨日のことなんてなかったかのように触れず、レジを終えると「ありがとね」と去っていく。次の日も、その次の日も、カカシは態度を変えることなく、俺はあのときレジの中でしゃがみながらカカシのことを「いい人」の仮面をつけて、と思ったけれど、カカシは本当にいい人で、あの日のあの夜のことは気の迷いか何かだったのではないかと思えてくるようになっていった。
 そしてあの夜の前のように、ちょっとした世間話をしたり、学校の話をしたりしながら、レジカウンター越しにカカシとの距離が縮んでいった。

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