恋人未満

160 View

2025年3月22日成人向,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,自慰

伝えたい

 サスケからのメッセージに気がついたのは、様子が気になったその次の日の朝だった。
 胸が痛む言葉の羅列、忘れてくれと締められたそれを読んで俺はどうしたら良いのかわからなかった。
 別に遊びだけが目的じゃない、サスケとはよき友人として仲良くなりたくて、……もちろん遊ぶのも好きだったけど、身体だけの関係じゃないと俺は思っていた。
 メッセージだけを読むと、遊びはもう出来ない、だからもう会わないと読み取れる。それなら、遊びはもうやめて普通の友人に戻れないだろうか。そう、思ったけどこのメッセージの裏に……サスケは、俺を恋愛対象として好きになってしまった、という思いが見えて、頭を抱えた。
 最初に「本気にならないでね」と言った、それは本当のことだったし、遊ぶ相手に必ず言ってきた言葉だ。
 でも付き合いが長くなるにつれてそんなのどうでもよくなってきたし、「今は恋人はいらない」と言ったのも今はサスケがいるから、という前提があったからで。
 サスケとなら、友人から恋人に関係が発展したって、俺は何も問題ないと思うようになったし、このまま自然とそういう感じになるかもなぁ、くらいに思っていた。
 だから例えサスケが俺に対して本気で好きになってくれたのであったとしても、こんなふうに関係そのものを終わらせる必要なんてない。……ないのに。
 どう返信したらそれが伝わるのか、考えて……いるうちに、サスケはコンビニのバイトを辞めたらしかった。
 そうまでして俺との関わりを断ちたいのかと思ったら、少し……結構、胸にくる。ただサスケが本気なのはわかった。そこまで本気になってくれたのならなおのこと俺は、またサスケと過ごす日々に戻りたい。
 友人として、じゃなくたって構わない。恋人として、をサスケが望むのなら俺だってそうする。そこまで考えて、俺は俺自身がサスケのことをその程度の気持ちでしか見ていないことに気がついた。求められたら応じる、そんな気持ちで、態度でいる俺に対してサスケが積極的になるだろうか……だからあのメッセージに至ったんだ。
 俺のせいだ、こんなふうに関係を断ち切られてしまった原因は俺だ。
 このまま……サスケが望む通りに忘れてやった方がサスケのためになるんだろうか。けれど忘れられる気がしない。俺たちはうまくやってきたと思っていたのに。……こんな終わり方はやっぱり、いやだ。
 
 メッセージを打っては、違う、これじゃ伝わらないと隙を見つけてはスマホの画面と向き合った。
 俺が今後サスケに対してどんなスタンスをとるのかも定まっていないのに、サスケにかける言葉なんて見つかるはずもない。
 終わらせたくない、それだけじゃイヤイヤ期の子どもがグズってるのと変わらない。焦点は俺がサスケの思いをちゃんと受け止めて……いや、違う、俺がサスケを本気で好きになれるのか。……なれる、そうじゃないとこんなに考え込むなんてことはしない。
 それをサスケに伝えるにはどんな言葉を選んだらいい。文字コミュニケーションは10人いれば10人それぞれ解釈が分かれるものだ。それなら、直接会って、対話をしながら俺の気持ちを伝えた方が絶対にいい。
 サスケとの何気ない会話の中の情報で、サスケがどこに住んでいるのか、場所も部屋もすぐにわかった。
 俺から、会いに行く。俺から、伝えに行く。俺の気持ちを、思いを、言葉をサスケに届けに行く。その積極性を態度として出さなければ俺の本気度は伝わらない。
 
 サスケのアパート、2階の真ん中の部屋。手すりにもたれかかりながらサスケが帰ってくるのを待った。
 しばらくして、階段をのぼってくる足音が聞こえて、深呼吸をしてからその姿が現れるのを待った。けど階段をのぼりきる前で、足音が止まった。
 ……何か、あったんだろうか。
 様子を見ようと階段へ向かうと、そこにいた誰かは階段を駆け降りて走り去った。
 思わず追いかけていた。方向的に、走って行った先には公園ぐらいしかない。
 なんで逃げるように走り去ったのか、そんなことよりも追いかけなければということしか頭になかった。
 公園のベンチの前で膝をついているサスケを見つけて、俺はほっとして近づいた。なんでサスケが俺から逃げるようにここまで来たのかなんて考えにも及ばずに俺は今サスケに伝えるべきことを伝えなければと声をかけた。……けれどあのメールの文面のまま、サスケはただただ俺を拒否して話を聞いてくれる気配もなく、そんなふうに拒絶されるなんて思ってなかった俺は、サスケが望む通りに、その場から去る事しか出来なかった、
 そのときにサスケを抱きしめていれば、そうしながら思いを伝えることが出来ていれば、もしかしたら伝わったんじゃないだろうか、なんて今更考えても……まあ、後悔先に立たず、ってやつだ。
 
 帰り道、サスケにメッセージを打っていた。もうここにしかサスケとの繋がりはない。
 まずはいきなり訪ねたことを謝る文章だけ送った。
 そして家に帰ってからは、誤解を生まないような文章になるように気を遣いながら、俺がサスケを好きだということをまず書いて、サスケもそう感じてくれていて、だから俺を避けているのであれば、一度きちんと会って話がしたいと書いて。
 これだけじゃだめだ、と、自分で本気にならないでねって言っておいて、俺自身が本気になっていることを詫びた。サスケがいるから恋人なんていらないと思っていたことも、書き始めたら色んな気持ちが溢れ出てきて、……最後に懇願した。お願いだから、最後でもなんでもいい、直接会って話をさせてくれと。
 
 メッセージに既読がつかないまま数日経って、けれどブロックされているわけではなさそうで、更にメッセージを送るべきなのか、様子を見るにとどめるべきなのか悩みながら、サスケのいない日々の虚しさと比例して俺の思いは強くなっていく。
 会いたい、ただ会うだけでいいから、サスケに会いたい。会話も何もいらない、ただ会いたい。
 そうしてまた数日経って、トークルームを開いたら俺のメッセージに既読がついていた。
 前のめりになってスマホの画面を見る。いつ既読がついたのかまではわからない、けど既読がついている。サスケが、俺とのトークルームを開いてくれた。読んでくれたかどうかまではわからない、けどまだサスケと繋がることができていたことに安心して、そして今度は返事が来るのか、それとも来ないのかを待つ日々が始まった。
 
 ごめん、いきなり家まで行って。
 サスケは忘れてと言ったけど、俺は忘れられなかった。
 だからって、突然訪ねていいわけじゃないよね。
 本当にごめん。
 
 俺さ、サスケのメッセージ読んでから、改めてよく考えてみたんだ。
 サスケがいる生活が当たり前になって、ずっとそんな生活が続くと思ってたから、今まで考えたこともなかったけど、俺はサスケのことが好きだ。友人としてじゃなくて、遊びの相手としてじゃなくて、恋愛対象としてサスケのことが好きだ。
 だから、サスケも同じ気持ちでいてくれるのなら俺は嬉しいし、もしそうならもう一度会って、きちんと話がしたいと思ってる。
 俺の勘違いだったらごめん、もう俺のことはブロックしていいから。
 
 最初に「本気にならないでね」って、言ったのは俺なのに、俺自身がサスケに本気になるなんて、サスケにとっては意味がわからないかもしれない。
 でも俺はサスケのことを本気で好きになった。情けない話だけど、これは事実だ。
 このままお別れはすごく寂しい、けどサスケがそれを望むのなら受け入れる。
 もしまた友人として付き合ってくれるのなら嬉しい。
 けどごめん、俺もサスケと同じで、もうサスケと遊ぶことはできない。遊びなんかじゃなくて、きちんと愛し合いたい。だけどサスケがそれを望まないなら、ちゃんとそこも尊重する。
 サスケがいるから、恋人なんていらないと思ってた。その発言も、きっと言葉足らずで誤解を生んでたよね。ごめん。
 一回だけでいいから、お願いだから、話し合う機会が欲しい。身勝手なお願いだとはわかってる。だけどこのままお別れにはしたくない。
 ちゃんとサスケの気持ちを聞いて、ちゃんと俺の気持ちも話す。だから、それが最後になっても構わないから、直接会って話がしたいんだ。頼む。
 サスケが望まないのであれば、潔く諦める。
 是でも非でもいい、返信を待ってる。
 
 気持ちが落ち着いてきて、思い切って開いたトークルームのカカシのメッセージを読んで、最初は信じられない気持ちだった。でもその真摯な文章から感じる気遣いは、間違いなくカカシが書いたものだった。
 俺とカカシは、恋人として関係を発展させる余地があった……。けれどそのメッセージが送信された日から10日以上経っている今、返信したとして、カカシはこのメッセージを送信した時と同じ気持ちでいてくれるのだろうか。
 書いてあることが本当であれば、話をしたい、というよりは、カカシの話を聞きたいと思う。
 であれば、話し合いたいという提案にのるべきだ、カカシの気持ちを知るために。
 
 数日時間を置いて、もう一度メッセージを読んで、自分の気持ちが揺らいでいないことを確認してから、迷いながら、スマホの画面をタップする。
 何が俺を迷わせているんだろう。もうこの熱は冷めたと言われるのがこわいからだろうか。それとも俺自身が、カカシのことを過去へ追いやろうとしてきたからだろうか。
 送信ボタンを押す前に、静かにゆっくりと息を吐いた。
 
 今夜、会いに行く。
 
 送信されたメッセージは10秒くらいで既読がついた。
 だからって、何かが確かめられたわけじゃない。
 ただ、今カカシがスマホを持って、俺のメッセージを見ているのかと思うと、少し嬉しいような、そんな気持ちになる。
 ――今夜、バイトが終わったらカカシの家に……。
 俺は冷静でいられるだろうか。みっともなく泣いてしまわないだろうか。カカシの気持ちは薄らいでいないだろうか。そんな不安と、カカシからのメッセージに書いてある言葉をカカシの口から聞きたいという気持ちが交差している中、俺はミュートを解除して、そしてレポート用紙に向き合った。
 
 バイトが終わってカカシの家に向かう。22時半を回っていた。いつも通りといえばいつも通りの時間だ。
 呼び鈴を鳴らすボタンに指を伸ばして、少しためらいながらボタンを押した。
 ドキドキする、カカシの顔を見ただけで泣いてしまわないだろうか。俺はちゃんと話が出来るだろうか。
 カチ、と音がして扉が開いた。ドアノブを掴んで扉を押す腕、その上の顔を見られない。
「……来てくれて、ありがとう。」
 きっといつもの優しい笑顔がそこにあるんだろう。だけど俺は顔を上げられないまま少しだけ頷く。
「入って、くれる?」
 そのカカシの声が、少し震えていることに気がついた。直接会いたいと言ったカカシも、もしかしたら俺と同じように、勇気を振り絞って俺を迎え入れているのかもしれない。
「お邪魔します……。」
 広くはない玄関に入って、靴を脱いで部屋に上がる。カカシは手を差し出そうとして、また引っ込めた。いつもは手を握って室内に入っていたから。でも今日はいつもとは違うから、そうしたんだと思う。
 少し懐かしいカカシの部屋は何も変わっていなかった。いつもの場所にカバンを置いて、いつもの場所に俺は座った。顔を上げることができないまま。
「緊張、してる? ……俺も同じ。」
 カカシもいつもの場所に腰を落ち着かせる。ローテーブルを囲んで、少し斜め右。手を伸ばせばすぐに届く距離。
 どうしたらいいのか、何を話したらいいのかわからない俺は、カカシが話し始めるのを待った。
 少しの沈黙の後、カカシが俺の背中に手を添える。
「サスケからのメッセージさ、俺嬉しかった。だからちゃんと話をしたいと思って。あの日の夜、俺が先走った行動したせいで、サスケを困らせて、本当に悪かったと思ってる。」
「……そのことはもう、別に……。」
「ただサスケと向き合って話がしたかった、それだけだった。俺の気持ちもちゃんと伝えたいって、俺自分のことしか考えてなくて、……ごめん。」
「それはもう、いいって……。」
「……できたら顔を見ながら話をしたかったけど、そのままの方がサスケが楽なら、このまま話を続けるけど、大丈夫?」
 顔を見ながら、……なんて無理だ、見れない。きっと泣いてしまう、それでカカシを困らせてしまう。
 ローテーブルに視線を落としたまま、俺は頷いた。それを確認して、カカシは俺の背中に添えた手をさすった。
「……わかった、まずは俺から話をするね。」
 話し合い、に来たはずなのに何を話したらいいのか、ずっとわからないまま。ただカカシがぽつりぽつりと話すのを聞いていた。
 出会いから別れまでを追いかけるように、カカシは俺に話し続けた。俺が知らなかったカカシの気持ちを、つぶさに。
 聞いているうちに涙腺が緩んで、視界が揺れる。
 思いが膨らんでいく。カカシのことが好きだという思いが。どんどん大きくなっていく。

160 View

2025年3月22日成人向,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,自慰