知られてはいけない

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2024年10月7日成人向,中編,原作軸,連載中,カカサス小説無理矢理,異種姦,オメガバース,エロ,自慰

贖罪

 何をされても、どんな扱いを受けても何も考えるな、感じるな、判断するな。こころを、殺せ。
 
「最近サスケくん元気ないけど……何があったの……?」
 目を丸く開いて、眉間に力を込めたサクラがサスケの顔を覗き込む。
 サスケは「別に……」とサクラを相手にもせず、ただ光を失った目を中空に向けて黙り込む。
 
 サスケは変わってしまった。
 俺はサスケとのセックスを重ねて、快楽に染まって、そして俺以外見えなくなってしまえばいいと思っていた。最初は多少強引でも、番である俺とのセックスを経験していけば、俺から離れられなくなるだろうと考えていた。所詮オメガはそういう存在だろうと舐めてかかっていた。でも、現実は真逆だった。
 セックスをしている最中は身体も反応するし、喘ぎ声もたくさん出る、自ら腰を振ることもあるし、もっととせがむことだって。でも、行為が終わると糸の切れた人形のようになってしまう。弛緩しきった身体を動かす気配もなく、見かねて腕を引っ張っても立ちあがろうとしないからそのまま前のめりになって膝をつく。そして俺にこう言う。
 〝用は済んだだろ……帰れよ〟
 
 俺が拒否されている、だけじゃなく、七班で揃っている時もサスケは淡々と指示通りに動き、任務や演習が終われば黙って去っていく。
 これは目に余ると思って一度だけ呼び止めたけど、サスケは振り向きもせずにぼそっと呟いただけだった。
「常に冷静な頭で必要とあらばこころを殺して任務にあたる……忍とはそういうものなんだろ、〝カカシ先生〟。」
 ……確かにアカデミーではそう教える。忍としての心得のひとつだ。間違ったことは何も言っていない。だけどこの言葉で、サスケが俺に対して……だけじゃない、すべてに対してこころを殺しているんだとわかった。
 ……俺の、せいだ。
 
 どうすればサスケは元に戻る? もちろん上司としても、今の状態は看過できない。そして番としても……せっかく番になったのに、サスケは俺を拒否して、全部否定して、その結果が今だ。
 俺は間違いを犯した。もう過去は取り戻せない。……間違えてばかりだな、俺は。
 感情を閉ざしてしまったのなら、……感情をぶつけてみるしかない。セックスの最中だけは、サスケは俺に反応して、俺に縋って、俺にせがんでくる。……例えそれがアルファとオメガのセックスだから、であったとしても。番同士だから、だとしても。この瞬間だけは俺の言葉を聞いて、反応を返してくれるのだから、もうこの瞬間に賭けるしかない。
 
 俺の部屋で、イッたばかりの震える身体を抱きしめた。
「サスケ……サスケごめん、ごめん……。」
「かか……し、早く、動い、……っ!」
「俺の言葉を聞いてくれる? ……後悔してる。本当だ。お前に酷いことしたと思ってる。……ごめん。でも俺はサスケが愛おしくて、好きで……俺はどんなに嫌われていてもいいから、……もとのサスケに戻って……くれないか。」
「……んなこと、いい、からっ、もっと……」
「よくない、……よくないんだ、サスケ……もう二度と俺から手出ししない、嫌がることはしない、無理矢理なんてしないから、お願いだ、俺の言葉を聞いてくれ……。」
 小さな身体を抱きしめる手が震えていた。俺の思いは通じるのか、俺の言葉を聞いてくれるのか。理解してくれるのか、理解してくれたとして……サスケはどう判断する?
 俺の背に回っていたサスケの腕がするっとベッドに落ちる。
「サスケ……?」
「……またお得意の誤魔化しと大嘘か……さっさといつも通り満足するまで腰振って射精してどっか行っちまえ。あんたの言葉なんて……1ミリも信用しねえよ。」
 抑揚のない蚊の鳴くような声でサスケは確かにそう言った。これがサスケの気持ち、俺に対する評価、信用……。信用、出来るわけ、ないよな。そりゃ、そうだ。俺はサスケにそれだけの事をしてしまった。ただ一回言葉を投げかけただけで回復するような信用なら……サスケはこんな風にこころを殺したりなんてしていない。
 ……それなら、何度だって、……何百回だって言い続けるだけだ。
「ごめん、サスケ。でも、愛してるんだ……。」
 
 その日から、俺はサスケを俺の家に住まわせる事にした。セックスはしなくなった。ただ、抱きしめながらひたすら語りかけ続けた。当然ながらサスケからの反応はない。けど構わない。次の発情期まで、いや、何ヶ月でも、何年でも、何十年でも、俺はこうして抱きしめ続ける。
 いつか俺の言葉を、聞いてくれるようになるまで。