知られてはいけない

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2024年10月7日成人向,中編,原作軸,連載中,カカサス小説無理矢理,異種姦,オメガバース,エロ,自慰

口寄せ

「俺のオメガ性が強い……!?」
 サスケが目を見開く。
 アルファに擬態して、アルファとしての教育を受けてきたサスケは、オメガとしての生き方についてはうちはの巻物以上の知識は持っていないようだった。
 ただただオメガであるということを隠し通せとしか書かれていないあの巻物しか。
「オメガの忍は数が少ない。それは発情期というものが常に冷静さを求められる忍にはあまりに不向きだからだ。ただ、逆に発情期を利用した任務を専門として生きている忍もいる。故意にヒートにする薬が存在するのもそういった任務で使用するために生まれたものだ。発情期を利用するということはつまり、房中術を駆使する任務だ。」
「房中……?」
「セックスをしながら情報を聞き出したり、相手に毒を仕込んだりする技術の総称、それが房中術。」
 驚きを隠しきれないでいるサスケの肩に手を置く。
「でもな、俺も火影様も、うちはであるサスケをそういう任務につかせたくはない。つまりこれからもサスケは今までと同じように……いや、今まで以上にオメガであることを隠し続けなければいけない。普通のオメガ相手なら1本で対処できる抑制剤が、サスケ相手だと4本必要だった。アルファとして教育を受けてきたサスケならこの意味が分かるな?」
「オメガ対策をしているアルファでも、俺の発情期には、あまり効果がない……。」
「そう。そこでうちはの薬だ。どういう薬効かはわからないが、サスケのヒートを完全に抑え込むことが出来ている。今はもうフェロモンも出ていない。薬の材料は今後安定供給できる体制を作る。だから絶対に飲み忘れないことと、発情期の周期が来たら予兆を待つまでもなく3倍量飲み始めること。これを忘れるな。一生だ。」
 一生、という言葉にサスケの表情が曇った。
 それもそうだろう、サスケの野望の内ひとつは、うちは一族の復興だ。つまり子どもをつくらなければいけない。それは里にとっての利益でもある。恐らくは、長期任務だということにして里の管理下の元、秘密裏に火影様が用意したアルファと子どもを作ることになるのだろう。サスケの意志など関係なしに。
「そんなに気を落とすな、今までひとりで隠してきたことを俺とも共有できるようになっただけ、マシになったと思え。俺はサスケの味方だ。」
 肩に手を置いたものの、サスケはうつむいたまま何も口にしなかった。

 薬が切れる時間になって、もう一度サスケを幻術にかける。次に目覚めるのは自室の布団の上だ。念のためパックンをサスケのそばに置いて古びたアパートを後にする。
 しばらくは発情期が続く。うちはの薬の効果時間がどれほどなのかわからない以上、パックンが少しでもフェロモンを嗅ぎ取ったら薬を飲ませるようにしなければならない。
 2日間は敢えて任務も演習も入れず、サスケの観察を続けた。しかしサスケの体調によるものなのか、うちはの薬も万能ではないのか、24時間効果が持続することもあれば12時間で切れてしまうこともあって理想通りに事が運ぶわけではないことがわかった。
 この状況だと、常時パックンをそばに置いておかないと不安だ。あるいはサスケ自身に忍犬との口寄せ契約を結ばせるか。という話をサスケにしてみたところ、「犬じゃなくて……蛇がいい」と返って来た。確かに蛇も嗅覚が鋭い動物だが……何故?
「小さいやつなら……任務や演習中でも、ポーチの中とかに忍ばせられる。大きいやつは、戦力としても使える。だから、蛇がいい。」
 サスケなりに考えた結果のようだった。それなら口出しする必要もない。
 二人で火影の執務室がある建物の中の書庫に入り、蛇との口寄せ契約が出来る巻物を探し出した。巻物を広げて、最後の名前が書いてある横にサスケは自分の名前を書き記し親指をクナイで切ってその血を名前の下に押し付ける。
「口寄せの印はこうだ。」
 ゆっくりと順番に印を結ぶ。それを見ながらサスケも同じ印を結ぶ。そうして現れたのはパックンと中型の蛇。
「……新しい契約者か。……ん?オメガ?珍しいな、オメガの忍とは。」
 チロチロと舌を出しながら蛇は饒舌に語る。
「俺はこいつ、サスケの上司だ。お前たちにはサスケからオメガのフェロモンを感じたらすぐにサスケに知らせる役目を果たしてほしい。」
「……そういうわけだ。これから頼む。」
 蛇がサスケの方に頭を向ける。
「さっそくだが、お前オメガの匂いがするぞ。発情期か?」
 サスケが目を見開いた。それはそうだ。さっき薬を飲んだばかりなのだから。
「今でもそんなに……フェロモンを感じるのか。」
「蛇の嗅覚を舐めるなよ。まあ、匂いがすると言っても犬っころじゃわからない程度の軽微な匂いだ。ましてや人間ごときにはわからんだろう。」
「……頼もしいな。その調子で知らせてくれ。」
 サスケの選択は間違っていなかったらしい。犬よりも敏感なのであればこれ以上頼もしい存在はいない。ほっと胸をなでおろしたのはサスケも同じようだった。
 巻物を元の棚に戻して、サスケは肩に蛇を乗せながら建物を出る。
「ま、これで一安心、かな。サスケ、蛇を片時も離すなよ。」
「わかってる。」
 サスケは肩の蛇を見つめながら、心なしか頬がほころんでいるようだった。強力な味方を手に入れたのだから、嬉しくもなるだろう。俺も久々にゆっくり眠れそうだ。
 途中の路地で別れてそれぞれの家に向かって歩いた。
 サスケが蛇を選んだ本当の理由を、知らないままで。