知られてはいけない

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2024年10月7日成人向,中編,原作軸,連載中,カカサス小説無理矢理,異種姦,オメガバース,エロ,自慰

上司として

 サスケに薬を飲ませたらすぐに効果が現れた。フェロモンは急激にその濃度を下げ、そしてサスケ本人はふらっと倒れてそのまま昏睡状態に入っていった。
 声をかけても、肩を揺すってもぐったりしたまま何の反応もない。
 ……効きすぎ、だ。
 巻物に書いてあった「用法容量を守ること」という文言。飲み過ぎたらどうなるのかまでは書かれていなかった。発情期を鎮静化させる薬なのだから、強い鎮静作用がサスケを昏睡に至らせた、と考えるのが妥当だろう。
「おい蛇、いるか。」
 サスケに服を着せながらどこを向くでもなく語りかける。蛇は天井からしゅるりと降りてきて目を細めた。
「お前さんの言うことは聞かねえぞ。俺の主人をこんな目に遭わせやがって。」
「……やむを得なかったのよ、わかるでしょ。」
「いーや、わかんねえな。なんで抱いてやらなかった。誰かに抱かせてやらなかった。」
「色々事情があるんだよ。サスケを家に送っていくから、主人に話通しといてくれる?」
「お前の言うことは聞かねえ。」
 蛇はしゅるる、と窓の外へ出て行った。
 服を整えたサスケを抱き上げて、俺も窓から外に出る。
 ぐったりとしたままのサスケを家の布団にそっと寝かせて、目が覚めるまで待った。

 朝の9時過ぎ、うっすらと目が開く。
「サスケ?」
 黒い瞳がゆっくりと左右に動いて、俺を捉えた。
「カカシ……か……」
 その黒い瞳はすぐに中央に戻っていく。
「気分はどう?体調は?」
 うっすらと開いていた目がまた閉じた。
「……なにも……」
 口を開くのもおっくうだ、とでも言いたげに口を閉じる。全身は脱力したまま。意識だけはかろうじてある、という状態だろうか。強い鎮静作用はまだ抜けきっていないらしい。……任務や演習どころじゃない。
「……何か、食べたいものとかある?」
 数秒の間をおいて、また口が開く。
「……いらない……」
 俺の判断は、間違っていたのだろうか。でもあのままのサスケを放ってはおけなかった。じゃあ、どうするのが最善だったんだ。……何にしても、俺だけで判断して良い状態ではない。
 影分身をサスケの傍らに残して、火影の執務室に向かう。
 12時間経っても効果が抜けない4倍量の薬。しかし3倍量じゃ抑えきれないサスケの発情期。他に考えうる対処法は……。

「その話からして、薬の濃度は上げてはならぬ。発情期の度に任務から外すのは不自然じゃ。そして、サスケの件はなるべく他の忍に知らせたくはない。」
 執務机に肘を載せて口の前で手を組む火影様は、想定していた中でも悪い方の決断を下した。
「カカシ、お主が相手をせよ。」
「……一応聞きますけど、何の相手ですか。」
「聞くまでもなかろう。サスケの発情期の発露の相手じゃ。」
 頭を抱えたくなるところを、かろうじて保って「わかりました」と一言だけ残して執務室から出る。大きなため息。アルファの上司がオメガの部下の性処理の相手をするなんて聞いた事がない。
 場所は……いちいちあの娼館に行くのも面倒だ。俺の家でやるのが妥当なところだろう。
 しかし心配……というより懸念しているのは、俺がサスケの相手をすることで、サスケが俺に対し特別な感情を抱かないかどうかだ。上司として、部下の管理の一環として、ということはサスケによく言い聞かせえておかなければならない。
 サスケの家に戻ると、どうやらまた眠りについた……のか、また昏睡状態になったのか、サスケは目を閉じたまま身じろぎひとつせず横たわっていた。脈拍を取って布団を直し、傍らで見守ること数時間。再び目を開いたサスケに、どこにいたのか蛇が現れて「薬」と話しかける。
 どうやら4倍量の薬は抜けきったらしい。
 サスケは俺を一瞥すると起き上がって冷蔵庫に向かって行き、コップに液体を注ぎ込んでグイッと飲み干した。
「サス……」
「満足かよ。」
 冷たい目線とかち合う。昨日のことを言っているんだろう。
「……悪かった。」
「何が」
「色々だよ……反省してる。これからは俺が最後までちゃんと面倒見る。」
「面倒?」
「お前の望むことをするってこと。」
「……面倒、か。……そんな義務感で相手されたくなんかねえよ。」
「部下の管理は上司である俺の仕事の一環だ。我慢できなくなったときは薬の効果が弱まる前に俺の家に来なさい。」
「嫌だ……」
「命令だ、これは。」
 軽蔑するような視線。どこかで見たことがある。ああ、そうだ。七班結成の日、サスケがサクラをあしらったとき、あの時と同じ目。相手にする価値がないという目。
「あんたになんか頼らねえ。」
「でも他を頼っても駄目。これも命令。一人で……または蛇を使うか、俺とするか、我慢して過ごすか、この三択しかないよ。」

 管理、面倒、命令、……クソ喰らえだ。
 あんな俺ひとりだけがよがってるのを冷たい目で見られるような、……例えセックスになったところで、どうせ変わらない。
 カカシは抑制剤を飲んで冷静にただ俺の対処をするだけ。アルファとしてのカカシではなく、ただ上司として部下の面倒を見ているだけ。
 そんな虚しい事をこれからずっと続けろと言うのか。蛇の方がまだ俺の気持ちをわかってくれる。
 俺はカカシなんか、頼らない。
「用件を言い終えたなら、帰れよ。今日は予定通り任務に参加する。」
 カカシはため息をついて、そして立ち上がり、玄関から出て行った。