知られてはいけない

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2024年10月7日成人向,中編,原作軸,連載中,カカサス小説無理矢理,異種姦,オメガバース,エロ,自慰

欲望

 カカシの命令に反目するようにまた変化の術で大人に化けてあの娼館に足を向けていた。片目が隠れる少し長めの前髪にまっすぐな後ろ髪、紺色の浴衣姿であの街並みを歩く。
 ここにいる人たちはみんな発情期で、アルファがフェロモンに誘われて抱きに来るのを待ち望んでいる。……仲間、だ。俺たちはみんな同じ。同じオメガだ。
 生まれてこの方アルファにの集団の中で必死に努力してきた。優れた能力を持つアルファに擬態するのに必死で、アルファの中でも優れたうちは一族の者だと誰もが認める力を身につけなければならないと思って。
 でも所詮俺はオメガだ。発情期になれば他のオメガと同じ。いくら薬を飲んだって、この本能的な欲求を満たすことは出来ない。出来るとしたら、それはアルファだけだ。
「……おい、おかしい。あの店、さっきも通った。」
 蛇が耳元で囁く。
 見渡すと、確かにさっき通った場所だ。幻術……を、今の俺にかけるとしたら、一人しかいない。
「なあ、抑制剤の臭い、わかるか。」
「誰に物言ってる? 当たり前だ。」
「見つけ次第、注射器ごと壊せ、全てだ。この幻術の先は、恐らくカカシの家。注射器型は即効性がある分、効果時間が短い。だから直前まで打たないだろう。……カカシに、抑制剤を打たせるな。」
 今ここで幻術を使う理由は、娼館に行かせないため。代わりに行かせるとしたら、そこはきっとカカシの家、もしくはカカシのテリトリーのどこか。懐に持っていた避妊薬をひとつ出して口に放り込み、歩みを止めないまま昨日の娼館に向け、何度も同じ景色を通り過ぎながら十数分、ようやく辿り着いたその門をくぐるとぐにゃりと周囲がねじ曲がって風景が変わる。それと同時に、浴衣に潜ませていた蛇達が一斉に前方に飛び出した。
 頭を抑えながら眩暈が治まるのを待つと、徐々に視界がはっきりとしてくる。驚いた様子のカカシ、荒らされた室内、いくつもの注射器をその身で締め付けてカシャンと潰す蛇達、床に落ちる液体。
「……あー、そう。そうくる?」
 カカシは目を細めて、手で首を傾げながらコキ、と音を鳴らす。何かの準備運動でも始めたみたいに。
「はっ、あんた達アルファこそ、薬がねえとオメガのフェロモンの前じゃ何にもできねえんだろ。」
 カカシは肩の関節を伸ばしながら、いつものうさんくさい笑顔を見せている。余裕ぶってるつもりなのか。
「まぁ、これもひとつの勉強、だな。」
「……何が言いたい。」
 ぐぐっと上半身を後ろに反らせたら、次は床に座って股割りを始めた。
「ま、とりあえずその変化は解きな。もう意味ないでしょ。」
 カカシの言う通りにするのは癪だった。こいつ何か企んでる。「何か」の準備をしている。柔軟……普通は運動の前、身体を温めるために……。
 脈拍が早くなり始めた。これは薬が切れる兆候。もうすぐこの部屋は俺のフェロモンで満たされる。そうなったら。
「……解かなくても、自然に解けるだろうから別にいいけど。さて、」
 屈伸をしながら立ち上がったかと思ったら、いつの間にか俺はカカシに腰を抱かれていて、顎を掴まれて上を向かされていた。
「オメガのフェロモンの前でアルファがどうなるのか、身をもって経験するといい。」
 呼吸が早くなっていく。心臓の拍動が強くなっていく。かち合ったカカシのその目は、俺の目を深く射止めていた。
 背中の手が腰に滑り身体が浮く。奥の部屋に向かいながらカカシは俺の帯紐を外して浴衣をはだける。ふたつの扉を潜って辿り着いたのはセミダブルベッドの上。どさっと落とされてスプリングが軋む。カカシは自らの服を脱ぎながら、その視線はずっと俺を射止めたまま。まるで捕らえた獲物は息絶えるまで逃さまいとする狼のように。その目から少しずつ理性が消えていくのがわかる。もうカカシは俺を部下として見ていない。ただの、獲物……。
 
「はぁっ、はっぁ、ぁっ、あっ、ぅあっ、はぁっあ、あっ!」
「は……はぁ……サスケ、サス、っは、ん……っ」
 荒い息遣い、グチュグチュと次々に愛液が溢れ出る孔の中をぐりぐりと刺激されながら、ちゅ、くちゅ、と音を立てながら深く口づけたかと思えば、顔の輪郭を舌でなぞって耳を喰み、その穴に舌を入れて舐めながらキスをする。左手が胸の突起をくりくりと撫で回したりグリっと押したりするたびに漏れ出る喘ぎ混じりの熱い吐息。
「――あぁ……ぐっしょぐしょ……ねえ俺のも見て、このぐちゃぐちゃの中に挿れたくてしょうがないの、わかる?」
 見せつけられたそれを見て思わず身を起こして口を開けた。愛しい熱さ。期待で胸が高鳴る硬さ。唾液をたっぷり垂らして夢中でむしゃぶりつきながら自分で孔に指を入れる。次から次へと溢れ出る愛液がそれを迎え入れるのを今か今かと待っている。我慢できなくなって口を離し、代わりに腰を浮かせてそこに押し当てるとにゅる、と簡単に中に入っていった。
「っあ、あ……っ、あっ、……は、」
 ゆっくり奥に沈めていたら肩を掴まれベッドに押し倒されて、グッと一気に奥まで貫かれる。
「……っああ!!」
「そんなんで……俺が満足すると思うわけ?」
「え、あっ! あ、……あっ、ああっ!」
 前触れもなく始まった高速ピストンに揺さぶられながらああ、これが欲しかった、ずっとこれがと身体が歓喜する。気がつけば変化は解けていて、俺は射精していて、でもそんなの関係ないとカカシは荒い息のまま腰の動きを止めない。薄目を開くと暴力的なまでにギラついた目でずっと俺を見ている。俺以外何も見ずにただただ俺を孕ませようとしているカカシ。フェロモンに狂ったアルファの姿。
「ひ、ぁっ! カカ、あっ! ぅあっ、あっ! っぁ!」
「サ……スケっ、はぁっ、はっ、あ……くっ……!」
 ひときわ奥でカカシの動きが止まる。中でじわっと広がる温かさ。感じる鼓動。俺もまた射精していて、薬の効果がどんどん消えていくのを感じていた。完全に消えたら、俺の思考も全て持っていかれる。そしてもっと濃いフェロモンが出て、カカシは俺に狂い、俺はカカシに狂っていく。残るのはセックスに狂うアルファとオメガだけ。中で出しているカカシはむしゃぶりつくように俺の口内を蹂躙して、そしてまた抽送が始まった。
「サスケ……っ、サスケ、俺だけの……っ」
 俺はもう何も聞こえていなかった。カカシの動きに腰をくねらせて、ただただひたすらにお互いの欲望をぶつけ合った。