伸ばした手

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2025年1月27日成人向G,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説無理矢理,エロ,シリアス,モブサス,変態,性癖強め,暴力的描写有,甘々

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 抱きしめ合いながら、ひとつわがままが思い浮かんだ。駄目だ、そんなわがまま、カカシに言ったら……きっとかなえてくれるとは思うけど、これだけ俺のために色々してくれてるんだから、黙っておこう。
「ごはん、作ってあるから食べようか。今日からプロテインも飲んでね。」
 抱きしめる腕がゆるむ。その顔を見上げて、わかったと言おうとしたら、笑いながら頭をなでられた。
「頑張ったご褒美でも欲しいの?」
 そうだ、カカシは俺よりも長く営業をやってきた人間だった。人の表情からどんなことを考えているのか察するのに機敏だ。俺はどんな顔でカカシを見上げてしまったんだろう。
「……客相手じゃ、全然物足りなくて、もっと強烈な、……快感が、ほし、い。」
 カカシがこんな俺を軽蔑するような人じゃない、ともうわかってるから、正直に打ち明けた。気持ちよくて金も貰えて、なんて夢物語だった。欲望のままに俺を玩具にするような客はいなかった。客の方も人肌を求めて来ている、人が多いのだと知った。肉体的にもそうだけど、心理的に満たされたいというニーズの方が高かった。カカシが俺に対してするセックスのような温かいものが。
「ごはんの前に、ちょっと運動だな。」
「いいのか?」
「頑張ったからね、ご褒美だよ。」
 背中に置かれた手がベッドへ誘う。俺はドキドキしていた。カカシと今からセックスをする。何十回もやられてきて今日も5人の相手をした。セックスなんて慣れてる。のに、相手がカカシだとどうしてこんなに胸が高鳴るんだろう。
 服を脱いで、お互いに裸になると抱きしめられて、そしてキスをする。練習でも何でもない、ご褒美のキスに夢中になって応える。こころから何かが溢れ出てくる。名前を知らない何か。
 耳、首筋、うなじ、鎖骨、胸の突起とキスが下に降りていく。勃ち上がったお互いのそれをすり合わせながら、
 乳首に舌を押し付けるように強く舐められたとき、肩がわずかに震えた。
「……こう?」
 何度も何度もそうされて、自分でもなんで身体が反応しているのかわからない。だんだん吐く息が熱くなっていく。
「っなんかそれ、変……」
 繰り返されるうちに、甘い痺れのような感覚をわずかに感じ始める。カカシが口を離して、意地悪っぽく笑う。
「開発するって言ったろ?」
 この甘い痺れが、いずれ声が漏れるほどの快感に変わるということ?
 脇の下から横腹、腰太ももの内側を舐めながらカカシの顔が下がっていく。いつのまにかつけていたローションでぬるついた指がそろっと後ろの穴に入ってきて、上をなぞりながらゆっくりと抜き差しが始まった。
「……は、あっ、あ、……っあ、はぅ、」
 中で感じる快感に神経を集中させる。指が増えたと思ったら、AVで男がしていたようにその手を素早く動かして俺のそこを集中的に刺激する。急に大きな快感の波が次々に押し寄せて俺は背を逸らしながら大声で喘いでいた。
「あっあ、あっ、ああああっ! あああっ! きも、ちいいっあ、あっ、あ、あああっ!! あっ」
 だめ、いきそう、いく、そんな、手だけで、
「いっ、いくいくいっちゃ、あ、あああっ! 気持ちいいあああいっ……!!」
 精液が飛び出してびく、と腰が震える。中がきゅうう、指を締め付ける。はぁっ、はぁっと息を吐きながら身体が弛緩した。
「サスケ」
 カカシが俺の頭の横に手を置いて、また始まるキス。いつものカカシの優しいセックスじゃない、俺の欲望を満たすためのセックス。キスをしながら3本の指が中を押し拡げる。その刺激に声を漏らしながら、その声ごとむさぼるように口を塞がれる。
 指が抜かれて、カカシも浅く息をしている事に気がついた。興奮してる。カカシが俺に。その事実に俺は興奮する。
 熱い塊が少しずつ入ってきた、待ち望んでいたそれが。漏れ出る声、全部中におさまって、奥にグッと押し込まれる。じんじんとした気持ちよさに身体が震えていた。行きどころのない手がカカシの肩を抱きしめる。
「……動くよ」
 宣言したかと思ったら高速ピストンが始まって俺は我を忘れて喘いだ。気持ちよすぎて何も考えられず喉が震え続ける。さっきいったばかりのそれはもう硬くなっていて先走りが雫になって落ちていた。
 腰の動きが緩やかになってまたキスが落ちてくる。
「これが欲しかった?」
 いつのまにか目にたまっていた涙が、頷くと同時にこぼれた。
「もっと欲しい?」
「……もっとカカシを感じたい……っ」
 上をえぐって奥までぐっと押し付けるゆっくりとした動きに変わった。ゆっくりなのにたまらない快感で俺もその動きに合わせて腰を動かすとより奥にそれが届く。
 はぁっ、はぁっ、と同じタイミングで、同じ早さで息をしているのが心地よかった。こころから溢れ出た何かが胸をいっぱいにして切ない気持ちになる。
「サスケ……」
「っあ、んっ、な、に……あっ!」
「好きだよ」
 その言葉を聞いた瞬間、また涙がこぼれて、俺はこころから溢れるそれが何なのかわかってしまった。
「っ俺も、好き、好きだ、カカシが好きだ……っ!」
 こぼれた涙を舐めて、カカシが何かに耐えているような切ない顔をする。
 何でそんな顔をするんだ、俺なんか変な事言ったのか。
 また腰の動きが早くなって、その思考は打ち消された。
「あああっ! だ、あっ! また、またいっ、あああ! ッカシ、一緒に、っああ! あ、あっ! いく、いく、いっ……ああああっ!!」
 ぎゅっと、抱きしめながら、震えて、頭の中は真っ白で、胸の中はいっぱいで、ついばむようなキスをしてから、俺はもう一度言った。
「……俺、カカシが好きだ……。」
 カカシは困ったように笑って俺の前髪をサラッと撫でる。
「俺も、サスケが好き。」
 ……両想い、なんだよな。嬉しい、ものなんじゃないのか? なんで、そんな顔で笑うんだ。……俺、カカシを困らせてるのか。
「……俺の気持ちは、あんたには、迷惑、なのか。」
「そんなわけないじゃない」
「ならなんで、そんな顔するんだ」
「……好きな人を、好いてくれる人を、……仕事とはいえ、他人を満足させるためにウリに行かせる俺って、……最低だなと思った。それだけ。」
「それならっ……俺の方が最低だ、最低な俺についてきたあんたにまで、そんな風に思わせてる俺の方が!」
 カカシは、額の汗を手で拭って、優しく笑った。
「……俺たち、お互いに最低同士のお似合いカップル、ってことだな。」
 そうだよ、最低な場所にいる俺についてきたあんたがいる場所だって、最低なんだ。そんなところにいてまともでいられるわけ、ないじゃねえか。最低でいいんだよ、俺にとってそんな事、大したことじゃない。だからこれからもちゃんと俺の隣にいてくれ。俺の隣で俺の手を引いてくれよ、カカシ。
 
 朝起きて、カカシが作った朝食を食べて、着替えてから出勤する。歩合制だから何時間待機部屋にいようが給料が出るわけじゃない。けど長時間いた方が客にありつける機会は増える。
 その待機期間中、俺はカカシから勉強をするように言われた。「上」に行くのであれば多分必要になるからと、上流階級と呼ばれる人達の生活や特有の慣習を知って、そういう人が読む雑誌や新聞を読んでどんな情報、環境の中暮らしているのか想定する。あとは特定のテレビ番組、取材特集みたいなやつだった。それも見ておけと。
 正直、その勉強は興味深くて面白かった。世の中の動きが少しずつ読めてくるようになって、知識欲がくすぐられる。
 そうしている内に、名前を呼ばれる。頭をウリに切り替えて、鏡の前で表情を確認してから、接客部屋に入って客が来るのを待つ。多くの客はごく普通の人だった。もちろんやりに来てるわけだけど、しっかり観察して意を汲んで欲しそうな言葉をかけてやると面白いほど簡単に俺に落ちる。けどそれを笑うことはできなかった。俺だって、同じように欲しい言葉ばかり貰えたら、きっとその人に依存する。
 4日目、俺の顔写真の横から新人のカードが外されて店のホームページに目元にモザイクがかかった写真が載った。可能なプレイは「なんでもOK!」、文字通りどんな要望でも対応する。
 その日からは「レイプ風」とか「玩具」とか、プレイの趣向を選ぶ客が少し増えた。リピートも少しずつ増えた。呼ばれる回数も増えていった。でもやっぱり俺の欲求を満たしてくれる客はいない。
 帰ってからカカシとセックスをするのが日常になっていった。そんな俺をカカシはいつも受け入れてくれた。欲求を満たしてくれた。好きだよと、言い続けてくれた。
 
 一ヶ月が経って、またあの男が店に来た。またやるんだろうか。と思ったら半日くらい事務所に入って出て来ず、出てきたと思ったら店長に何か話して帰って行った。
 一体何だったんだろう。店長が手招きしたから俺は立ち上がって受付に座っている店長のもとに行く。
「伝言だ、二ヶ月で上げる、って。」
「でも今日は俺、何もされてない。」
「……あー、サスケの接客部屋にだけ、カメラついてるの。それを見て行った。」
 カメラ……俺の接客の様子を、確認しにきたって事か。時期が早まったということは、合格の判定が下されたんだろう。
 上、に行ったら、行ったとしても、カカシと一緒にいられるんだろうか。躾兼管理者という名目で俺のそばにいるカカシは、上に行ったら「もう必要ない」と言われたりしないだろうか。
 俺の顔が曇ったのを見たんだろう、店長がまた口を開く。
「上に行っても、客層が変わるだけで基本同じようにするだけだ。求められるものは多くなるが、サスケなら大丈夫だよ。君の管理者も相当な評価を得ているから、上でも引き続き君の管理を任されると思う。」
「本当か?」
「リピートも出てきてこれからが稼ぎ時、ってタイミングでいなくなられるのは痛手だけど……まあ、上の判断だし。あと一ヶ月、よろしくね。」
 ほっとした。上に行ってもカカシといられるのは変わらない。仕事内容も変わらない。
 だったらそのときのために、勉強も頑張らないと。
 
 呼び出されたマンションの一室、テーブルの向かいにいるのは三十代半ば程に見えるスーツを着下した男性。
「社交辞令は省きます、お呼び立てのご用件を伺いたい。」
 男性は穏やかな顔で、視線だけは俺を見定めるように鋭くこちらを見ている。
「あなたの管理している子は、来月うちの所属になります。ただ、前例のない若さなので管理者のあなたに少しご相談を。」
「具体的には?」
「売り方の方向性です。うちは基本的に上流階級が客層、なのでそれなりに所作なども叩き込みます。ただ、この若さで所作まで完璧……というのは、わざわざ彼を指名するお客様には面白くないかもしれない。」
「簡単な話です、どちらも対応出来るように仕込めばいい。」
「……簡単……ですか。新規キャストには通常半月ばかり見習い期間を設けて育成しますが。」
「簡単、ですよ。ただ、認識に相違があってはいけないので、その育成に関する資料はご共有頂きたい。」
 男は黙って戸棚から紙の資料と、DVDを一枚取り出し当て机に置いた。
「期待外れでないことを祈ります。」
「私を見くびらないで頂きたい。」
 出された資料をまとめて、鞄に入れた。
「ところで……身請け、というシステムがあるとか?」
「ええ、気に入られた場合にはそれなりの値で売ることもあります。」
「参考までに、今までの実績をお聞かせ願いたい。」
「……値付けはまず基本料金として一本、25歳より下は1歳ごとに更に一本、あとはキャストの実績によって異なります。今のところは、過去に前例はありません。」
「……成程、よく分かりました。」
 表情を崩さずに鞄を持って立ち上がる。サスケを買うために必要な金は少なくとも5千万、実績を少し高めに見積もって1億。
 俺を、舐めるなよ。
「では、一ヶ月後。」
 マンションを後にして、俺はまた別の場所に向けて歩き出した。
 
 玄関の扉が開く。いつものように帰ってきたサスケに「おかえり」と声をかける。
 抱きしめてキスをして、見つめ合ってそして抱いて、シャワーを浴びてから夕食を取りながら、今日あったことを話し合う。一ヶ月後に上に行く。そのためにまた新しく教えることがある、そう告げるとサスケも覚悟を決めたように頷いた。
 資料は一通り見た。何かに似てるな、と思っていたら、サスケの顔を見て思い出した。サスケは幼い頃から剣道を習っていて、高校まで続けていたはずだ。その剣道の所作と、教えるべき所作が似ていたのだ。これならすぐにサスケはマスターするだろう。畳から椅子に変わるだけだ。
「それと、俺も昼少し働く。準備はあらかた終わってるのと、ヤクザとは関係ないから安心して。全部が綺麗に片付いたら、また俺の部下として一緒に働いて欲しい。」
 サスケは要領を得ない顔で尋ねる。
「全部が綺麗に片付いたら?」
「そう、言ったろ。お前を引っ張り上げるって。いつになるかは分からないけど、いつまでもヤクザの子飼いのままにはしないよ。」