出会いのお話
問題児はお互い様
上忍も慣れた頃になると部下をあてがわれる。アカデミーを卒業したばかりの下忍の世話をするのだ。
俺はそんな中でも「問題児係」として上から認識されているようで、うちはの生き残りと九尾の人柱力という誰も相手にしたがらないような組み合わせをマッチングされてしまった。
この二人の何が問題かって、二人とも孤児なのに里の孤児施設ではなく自活を選んだ我の強い奴だという点。
子どもが一人で生活なんて無茶だろうとアカデミーの先生の一人が色々面倒を見ていたうずまきナルトはまだマシかもしれないが、やはり集団生活に適応できず情緒面が幼いらしい。
そしてうちはサスケだが、こっちはもっと論外で大人にも子どもにも心を開かず実生活が完全にわかっていない。指導や援助を受け入れているうずまきナルトは可愛いもんだ。
ただ、うちはの血を持つ彼は里としても重要な人材であるからして、つまりある程度里の管理下に置きたい。
アカデミーでできなかった分個々の関わりが増えるチームの中で、俺が指導しつつ管理をしろと、このチームにあてがわれたということはそういうことになる。
重い荷物を背負わされた気分でファーストコンタクトを取ったわけだが、思いのほかうちはサスケは「普通」の子どもだった。
チームとして動くということはどういうことなのかを理解しているあたりは、アカデミーの教えが良かったからかもしれない。あるいは、うちはの人間だからだろうか。その辺りはうずまきナルトの方がわかっていないようだ。
心に壁を作っているものの、その壁は思ったほど高くはなさそうだった。だから訓練後、安心して声をかけた。
それが失敗だった。
「よう、サスケ。」
はじめて顔を合わせた日の帰りだ。
「ちょっと話さないか」
俺は極力だらしない大人を装いながら彼に近づいたが、サスケは無言を貫いたままその瞬間に姿を消してしまった。
(あー、作戦失敗した? )
上司でもある俺に挨拶もなく無視して消える、これはちょっと困ったちゃんな気配がプンプンする。
里の管理下に……という大義名分もあるものの、俺はこのまま舐められっぱなしではいかんなと思い直し、サスケの痕跡を追跡することにする。
成績が良かったとはいえサスケは下忍、俺は上忍。尾行なんて容易い。
街中の雑踏にその姿はあった。
小料理屋が建ち並ぶ一角の店のひとつにその影が入っていく。
一時は孤児院に入っていたくらいだから外食をするほど裕福な暮らしではないはずだ。ちなみにその孤児院は「何も告げず退所した」というのが最後の記録になっており、その後の消息については「毎日アカデミーに来る」以外のことはわかっていない。
常に一人ついていた見張り兼護衛役の暗部の報告書ではアカデミー後修行したのち、飲食店でアルバイトをしているようだと記載されていた。
適当な住民に変化して、その店に入る。なかなかお高めの店らしい。「はじめてのお客様ですか?」と入り口で舐めるように見られる。
「ええ、偵察任務のため立ち寄りました。ご協力を?」
里の者だと証明すると、無事にカウンター席に案内された。ありがとね、と席に着くと、さっそく厨房の中にサスケの姿を見つける。
割烹着を着て、皿洗いなのか何か作業をしている。アルバイトをしているというのは本当のようだ。
注文を取りに来たお姉さんに、こそっと話しかけた。「ずいぶん小さい子も働いてるんですねえ、跡取りか何かですか?」
あくまで偵察任務のついで、世間話程度にだ。
お姉さんは訝しみながらも、あいまいに答えてくれた。
「あの子にはいつも助けられていますよ、真面目でテキパキ働いてくれますから。で、ご注文はどうします?」
「んー、今日のおすすめを適当に。」
はいよ、とお姉さんは明るくその場を離れていった。
さて、本当の任務の方に集中しようか。
と思ったら、洗い場で作業していたサスケの横を注文をとったお姉さんが通ると、サスケは連れられるように店の奥に入っていき、見えなくなってしまう。
お姉さんの言葉が本当なら、働いているんだろう。昨日今日の話じゃなく、ある程度の期間働いているように推察できる。暗部の報告書通りだ。
改めて店の内装を見てみると、古いがよく手入れの行き届いた様子だ。店自体に何か怪しい臭いがするかというと、むしろ最初の印象通りの良い店だ。
出てきた刺身の盛り合わせに舌鼓を打ちながら厨房をなんとなしに見ていたが、サスケは最後までその姿をあらわすことはなかった。
「ごちそーさま。あ、領収書ちょうだいね。」
「ありがとうございました。またお越しください。」
さてと。
変装を解いて小料理屋の屋根に上がる。表からは見えなかったが、中庭があった。座敷の中からおっさんの笑い声が漏れ聞こえる。耳を澄ませるが、サスケの声は聞こえない。
もう帰ったのか?
その場で偵察を続けようにもこの店はかなり「良い店」のようだから、つまり天井裏に身を潜めてとかいう隙もなさそうだった。人に聞かれたくない話をするにはもってこいの場であって、忍者風情が簡単に盗み聞きできるようでは困るのだ。
今日のところは店の調査は一旦終えて、次は登録されているサスケの住居に向かうことにした。
里の中心部から離れており、先ほどまでの賑わいが嘘のように静かな場所だった。二階建の木造アパートの二〇三号室。そこに彼は住んでいる、という情報だ。
ノックをしてみるが反応もなければ気配もない。留守のようだ。先ほどの小料理屋にまだいるのだろうか? 屋根に上って今後の方針を考えていると、遠くから足音が聞こえてきて慌てて身を潜める。サスケだ。
彼は静かにアパートの外階段を上って、二〇三号室に吸い込まれていった。
鍵はつけていないらしい。
んー、と考えてから、考えてもしょうがないか、と思い直し、サスケの部屋を訪問することにする。
コンコン
中の気配が動く。
鍵がかかっていないことはわかっているが、警戒されないためにもサスケからドアを開けてくれるのを待った。
「さっきは無視してくれてありがとね、開けてくんなーい?」
逡巡した気配のあと、キィ、と扉が少し開く。
「何の用だ」
「ちょっと話さない? ってさっきも言ったけど。ダメ?」
ヒリヒリと警戒しているのがわかる。猫であれば毛を逆立てているだろう。自分の上司となったはたけカカシを、果たして受け入れてくれるのかどうか。
と思っていたら、ドアが開かれた。
「茶菓子の用意はないぞ」
かくして、サスケの部屋に入ることには、成功した。
「入れてくれなかったらどーしようかと思ったよ。」
へらっと笑いながら「お邪魔しまーす」と中に入る。
しかしそこにあるのは辛辣な視線だ。
「言っておくが」
「はい?」
「任務以外であんたと馴れ合うつもりはない。」
気がつけばサスケはクナイを左手に持っている。どう使うつもりかは知らないが、脅しのつもりではないようだ。
そうなればこっちも作戦変更だ。
「あー、悪かった。子ども扱いしすぎたな。優しい顔してりゃそのうち懐くと思ってた俺が早計だったようだ。」
頭をぽりぽりかいて視線を流す。
「俺もお前の上司としてね、部下を管理しなきゃいかんのよ。朝昼晩ちゃんと食ってるかとか、睡眠時間どうかとか、任務の質に関わるからな。で、サクラとかは親御さんがいるからそんなに神経質にはならないんだけど、施設も家出しちゃってるお前については私生活が全く不明。これでなんかあったら俺の管理不行き届き。」
変わらない顔のまま黙って話を聞くサスケ。目が少し細くなる。
「任務で、命令ってわけか。拒否権はない、そうなるな?」
「平たくいえばね。でも俺は喧嘩するつもりはない。穏便にいこう。そのクナイ、しまってくれる?」
何もない部屋だった。布団がポツンと敷いてある。傍に木製のちょっとした台……机なんだろうけど、台としか言えない形状だ。その上に書類がいくつか置いてある。
客人が来ることを想定していないその部屋で、ちゃぶ台も座布団もなかったので適当に座ると、サスケも布団の横に腰を下ろした。
「聞かれたことには答える。」
「わかった。で、今日の夕方華麗に無視してくれたけど、あれはどうして?」
「用事があったから聞こえないふりをしただけだ」
ふむふむ、とメモ帳を開いてさらっと書いていく。丸暗記くらいはできるが、書いておいた方が後で報告書にあげるときに楽なのだ。
「用事って、小料理屋さん? あそこで何してんの?」
サスケの眉がピクッと動く。
「怪しいおっさんがいるというのはあんただったのか」
「あ、やっぱりお姉さんから聞いたんだ? 怪しいはひどいなぁ。」
サスケはあの店で大切にされているらしい。
「あの店は……うちはがよく世話になってた。事件が……あった後、孤児になった俺に何かと手助けをしてくれた。今も皿洗いをすればまかないを食わせてもらったりしている。それだけだ。」
「なーるほど……」
自炊をしているようには見えないガランとした台所。夜はあの料理屋ならしっかりとした食事を取らせてもらえそうだ。メモ帳に書いていく。
「で、帰ったらこの時間ね。結構遅いじゃん。」
「あんたのおかげで今日は奥の部屋でかくまわれてたんだ。いつもはもっと早い。」
なるほど、過保護なくらい大事にしてもらってるわけね。
「それで? 何時間くらい寝てるの? 朝起きるのは?」
「そんなに細かく聞くのか?」
「任務ですから」
「………」
はぁ、と深いため息をつかれる。
早く帰ってもらいたいがそういうわけにもいかなさそうだという諦めのため息だろうか。
こちとら何日も時間をかけてらんないから短期決戦。今日中に口頭で確認できることはしておきたい。
「寝るのは今くらいの時間。起きるのは五時くらい。稽古して朝支度して家を出るのが八時くらい。朝飯は食べない。」
「えー、朝は食べないとだめだよ。それに睡眠時間ちょっと短いなぁ。」
「…………」
「言ったでしょ? 君の管理が俺の任務。規則正しい生活が確実な任務遂行に結びつく。朝ごはんは食べなきゃダメ。朝稽古するならなおさら。おにぎりの一つくらいは食べなさい。」
「……うざ……」
「なんか言った?」
「別に」
ふいっと横を向いて嫌悪感を表明するサスケに、俺はん~~と唸った。
「俺、しばらくサスケんちに泊まるわ。そんでもって規則正しい生活してもらうから。」
「はぁ!?」
「命令です。」
小さく舌打ち、そのココロは「めんどくせぇ」、かな。
「俺は布団いらないから、いつも通りに寝ていいよ。」
「おいちょっと待て」
実際薄っぺらい布団でも床でもそう変わらない。
「明日もあのお店行くんなら、まかないついでにおにぎり握ってもらいなさい。で、それを朝ごはんにね。」
「待てって言ってる」
「あーでもあれか、突然強引に泊まらせてもらうわけだから、そうだなぁ。特別にサスケの朝の鍛錬に上忍の俺がつきあったげる」
「……!」
とぎれることのなかったサスケの警戒がようやく一瞬緩んだ。うちはの生き残りとはいえまだ子どもらしい子どもだ。
上司と部下という関係性の中で言えば、そのちょっとした隙は好ましい変化と言えるだろう。
急に押しかけた俺と、上忍による鍛錬の指導を秤にかけているのか、サスケは目を泳がせた。
「一応言っとくけど、サスケには拒否権ないからね」
納得がいかない様子のサスケの頭に手を置こうとしたら、サスケは瞬身して俺の手が空を切っただけに終わる。しまった、子ども扱いはNGだった。
「えーと、寝る時間だっけ? さっそく寝るか。」
居心地の悪い気分なのはお互い様だ。
猫のような警戒を解かぬまま、サスケはそろっと布団の中に入る。
「おやすみ!」
「………」
「………無視しない!」
「……おやすみ」
「よろしい」
俺は殺風景な部屋に転がりながら、サスケが寝るのを待った。
明日はこれといった任務がないので、今日のようにちょっとした訓練をする予定だ。
俺もセンセイと呼ばれる立場になっちゃったかぁ、と今更ながらに思いながら、日誌に筆をすべらせる。
サスケはというと、しばらくの間警戒の気配が続いたけれど、疲れたのか、二時間経ってようやく眠りについたようだった。
いつもこうなら、睡眠時間はかなり短いことになる。俺がいるせいなのかどうかは、明日の朝起きたら確認が必要だ。
寝入って少しもたたないときに、サスケの布団が動く。
「ど……して……にいさ…………」
苦しそうな寝言だった。普通寝入ったらすぐ深い眠りについて夢なんか見ないはずだ。眠りが浅いのだろうか。
……この子の中ではあの夜はまだ過去じゃない。地続きの現実であって、こうして悪夢となって現れ続け、憎しみを募らせているわけだ。
汗ビッショリの額に触れる。そのまま髪の毛をかき分けなでると、呼吸が落ち着いてすうっと規則正しい寝息になった。
孤児院すら抜け出した幼いこの子を、里が管理するというのはそもそも無理筋じゃないだろうか。
うちはサスケの先生として受け持ったものの、この子はいつか何も言わずに去ってしまうような気がした。そんな危うさと儚さがあった。
夜中、眠るサスケを観察したけれど、時折うなされるような声を出し、その都度頭を撫でてやるのを繰り返した。
眠れて四時間、その間見る夢は悪夢、寝た気がしないんじゃないだろうか。せめて起きてから記憶に残る夜明けに見る夢は楽しく明るい夢になるように、俺はイチャパラの朗読をすることにした。
年頃の男の子だ、一番の娯楽といえばこれだろう。
「っ!!」
「お?」
薄っぺらい布団からサスケが飛び起きた。
びっくりした表情。目線はイチャパラを開いている俺に飛んでくる。
「なんであんたが……いや、そうか。いや、あんた俺に何をした?」
サスケは何故か後ずさり、距離を取る。
「おはよう、よく眠れた?」
ニコッと笑顔で話しかけるが、また毛を逆立てた猫のような警戒をされてしまう。
「あんたがいて、眠れるかよ」
狭い部屋の中で最大限の距離をとって移動するサスケ。顔を洗いたそうだが、俺に隙を見せるのが嫌なのか、代わりにコップに水を入れてぐいっと飲み干した。
痛々しいくらいの警戒に、流石の俺もちょっと胸をつかれたので、助け舟を出すことにする。
「シャワー、借りていい?」
「好きにしろ!」
「んじゃ、おかまいなく……覗かないでね」
「誰が、あんたのシャワーを覗いて得するんだ」
「ファン?」
「さっさと行け!」
何気ないやりとりで少しずつ緊張を解きたいところだけど、完全にエネミー扱いされている。なんとかしたいところだ。
俺が風呂場に入っていくと、サスケはようやく少し警戒を解いて、身支度を始めたようだった。
そういえば、起きがけに変なことを言ってたな。
「俺に何をした?」
うなされてる時に頭を撫でたり、イチャパラの朗読をしたのは言うべきか、言わざるべきか。
固形石鹸しか置いていないサスケの風呂場で、せっせと石鹸を泡立てて頭を洗う。キシキシになりそうだ。俺のチャームポイントの髪の毛が。でもまあ、清潔に保つのが一番だから文句は言うまい。
ひと通り洗い終わって、蛇口をキュッとしめた。
扉を少し開けて、サスケの様子を伺う。
「あのー、タオル借りてもいいですかっ」
言い終わらないうちに、顔面めがけてバスタオルが飛んできた。
用意していてくれたらしい。そう、悪い子じゃないんだよね。毛を逆立てた猫みたいだけど。
「いつもどんなことしてんの?」
朝ごはんを食べずに臨むサスケの朝の鍛錬。相手してあげると約束したからにはここは真面目にいこう。
サスケも心なしか期待しているようだった。
「忍術の鍛錬が多い、けどあんたが相手をしてくれるのなら、今日は体術を頼みたい。」
額当てをつけると警戒する猫から忍者の顔に変わる。
「んじゃ、体術でお互いの実力をちょっと見ようか」
「お願いします」
「いつでもおいで」
下忍と上忍、部下と上司、生徒と先生。
それをわきまえたサスケは妙に礼儀正しく、優等生だ。
サスケは蹴りを中心に体術を組み立て、気配を消して距離を取っては攻撃を仕掛けてくる。
なるほど下忍になりたてにしてはなかなかの動きだ。でも、相手のいる鍛錬に慣れていないんだろう、どこかワンパターンな感じもする。
試しにサスケの片足を掴んで腕を封じ、組み伏せてみた。
「っくそ……!」
寝技系は全くダメ。逃れようと試行錯誤するが、上忍の俺になすすべはないようだった。
「寝技ってさ、体力奪われるよね。力でどうにかしようとするからそうなのよ。今のその技術だと、敵に捕まったら終わりだな。蹴りは悪くなかったけど、体術はいろいろあるからね。」
「っ……!」
腕を絞り上げるとサスケの腕がミシッとなる。
「一度捕まえたら骨折るのもカンタン。さあ、どうする?」
「あっ……くっ!」
どうにもならない風だったから一旦関節を抑えていた力を抜く。その瞬間に肘鉄が飛んでくるのを避け、もう一度組み敷いた。
「できないからって悲観することはないよ。伸び代がまだまだあるってことだから。」
これが上忍との差。
「今日は、朝飯も食ってないことだし、この辺にしとこう」
組み敷いていた手足を解放すると、肩で息をしながら自分の拳を見ている。
寝技に力はダメだって言ったのに、俺の下にいながら随分と力で抵抗していたらしい。
「……シャワー浴びてくる」
じっとりと汗がにじむ前髪に、「行ってらっしゃい」と手を振った。
「あー……どーすっかなー」
居酒屋に集まった三人はいわゆる「同期」だった。今年初めて下忍の先生になった三人。
「珍しいなあ、おめーがため息とは」
「つきたくもなるわ、なんで俺が~キャラじゃないって~」
ピッチャーからビールを注ぐ熊みたいな男が言う。
「上はおめーに期待してんだろ、うちはにゆかりもあることだし」
「やってる事は孤児施設の怠慢の尻拭いよ? 俺は児童福祉司じゃないっつーの」
「時間が解決する面はあるんじゃないの? チームではちゃんと動けてるわけだし」
そうなのだ。うずまきナルトと仲が悪いながらもチームプレイはきちんとできている。むしろそのあたりはうずまきナルトの方が問題児だ。
「腕掴んだらさーめっちゃ細いの、ちゃんと食べてないからさー。どこまで面倒見ればいいかわかんないし。やってらんないよーだから部下なんて持ちたくなかったのに」
皿に盛られた味噌串カツを乱暴に口の中に入れる。
「かといって暗部にずっといるのも嫌だったわけだろ、ずっとその状況が続くわけじゃないだろうしよ、しばらくは頑張って泊まり込みしたらどうだ。」
「カンタンに言ってくれるけどさー。お互いにきついよ、あれだけ警戒されちゃうとさ。」
ぐいっとビールを飲み干して、次の串カツに手を伸ばす。
「まぁ、今日は飲みな。下忍の世話でしばらくはきつい任務もないだろうし。」
「いーよなー問題児いないヒトは」
「どの班も多少ねじ曲がった奴はいるさ。それをどうチームに育てるか。あたしは面白いと思うけどねぇ」
ボインな女がカクテルを傾ける。
「さあて、そろそろ時間か……」
サスケが小料理屋から家に戻る時間。
残ったビールを飲み干して、机にシワシワのお札を何枚か置いた。
「はたけカカシ、任務に行ってまいります」
右手をビシッと額につけ、ドロンと煙と共に俺は宴の席を立った。