蛇足の蛇足集
河川敷にて
あれ、サスケ何してんの
ちょっとな。
……俺も隣に座っていい?
好きにしろ。
……なんかさ、色々あったよね。
あんたがか?
お前がだよ。
イタチのことは……聞いた。
お前はそのイタチの想いを背負って、色んなことを知って考えて……お前なりの正義を貫こうとしたんだろ。
知ったような口を聞くな。
はは、ごめんね。
……もう、恋人でもなんでもないのにね。
でも俺はお前と過ごした数ヶ月を今でも覚えてるよ。
相変わらず女々しいんだな。
返す言葉もない。
さっさと切り替えてあんたもいい嫁見つけろよ。
奥さんか……なんか、現実味がなくて興味ないや。
俺の恋愛はお前で最後でいいよ。
本当に女々しい奴だな。
どうとでも言って。それだけあの頃の俺は幸せだったし、大切な人はやっぱり突然いなくなるんだなって深く実感した。いつかは行ってしまうのだと思ってはいたけど、思ってたより早くてさ、それも大蛇丸のところに行くだなんて思わなくて。
……あんたに何も言わずに去ったのは、悪かったよ。
それが今のあんたの臆病さに繋がってるんだとしたら、あんたが伴侶を持とうとしないのは俺の責任だ。
なに?責任とってくれるの?
馬鹿か、俺にはもう愛すべき大切な存在がいる。
……知ってる。サクラが想い続けてきたのはずっと見てたから。ああ、俺はこの子には敵わないなって勝手に思ってたよ。
あんたは俺を追いかけては来なかったからな。
お前を止める権利は俺にはないと思ってたからね。ただもう少し……もっと一緒にいたかったな。
ふっ
なに?
いや、思い出したんだ。あんた寝てる俺に挿れたことあったろ。
……恥ずかしいからそれ以上はやめて?
考えてみたら盛った猿みたいにやってばかりだったな。
好きな人と繋がっていたいのは男の本能だよ。
だからって寝てる時にするか?
だからその話はやめてってば。
……俺も、あの頃は幸せだったよ。人を愛する幸福を教えてくれたのはあんただ。
それは……光栄だね。
色々あったよ、本当に、色々……。
お前がナルトを殺してたらさ、どんな世界にするつもりだったの。
イタチと同じだ。俺だけが全ての罪を背負って、影から見守るつもりだった。
そんな寂しいこと……考えてたんだね。
孤独には慣れている。でもナルトは……そうはさせたくなかったみたいだな。
ナルトだけじゃない、俺もサクラも同じだよ。
……俺を孤独にさせまいとしたお前らは本当に鬱陶しかったしうざかったよ。でも……今となっては嬉しいと思う。
片腕は失ったが、それ以上に俺は多くのものを得た。これからはナルトとサクラのために……いや、木の葉のためなら、なんだってする。
俺はもう隠居だな……何しろ、もう写輪眼はない、ただのはたけカカシだ。
それでもあんたの父親は、名を馳せた忍だったんだろ?コピーした技は忘れたわけじゃないんだろ。
まあ、そうだけど。
……写輪眼がなくても、あんたはあんただよ。変わらねえ。
思えば随分、護るべきものが増えたな。
ナルトも、サクラも、里も、忍界も……あんたもだ、カカシ。
俺も入ってるの?……ちょっと嬉しいな。でも、ちょっと抱えすぎじゃない?
あんたはまだ俺にとって大切な存在だよ。多分一生あの頃のことは忘れない。それに、この世界も。
俺は……サスケの大切なものになれたんだね。
……もう少ししたら、また一人増える。
もう一人?
俺の言った野望、忘れたわけじゃないだろ。
復讐と……復興?もしかして、
……そういうことだ。
……はは、そっか、赤ちゃん、産まれるんだ。……ちょっと早いけど、おめでとう。お前が幸せなら、俺はそれで十分だよ。
隠居した老人みたいなこと言いやがって
実際似たようなもんだよ。俺の時代はもう終わった。今はお前らの時代だ。……そういえば、ナルトのとこも産まれるらしいよ。
同期……になるのか。それもまた、縁だな。
サスケが立ち上がった。
俺はそろそろ帰る。あんたはどうする?
俺はもう少し……ここで感慨に耽ってるよ。サスケは愛する家族のもとに帰りな。
そうする。あんまり油売ってると、心配されるからな。
俺の前で惚気ないでよ、妬いちゃうじゃない。
俺が幸せなら十分、じゃなかったのか。
いや、やっぱりそういうの聞かされると、ちょっとは胸に来るよ。俺はまだ、お前のこと……
それ以上は聞いてやらねえ。じゃあな。
……はは、ほんと女々しいな、俺って。