あの頃のぼくら

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成人向,長編,原作軸,完結済み,カカサス小説エロ,オリジナル設定有,シリアス,ほのぼの,甘々

水を手ですくうような

「なんであんなことしたの」
 家に帰るなり、カカシは言った。
「何の話だよ」
 怒られるようなことはした覚えがない。ただただ、大変な任務ではあった。
「ナルトを庇ったろ」
 確かに庇った。その結果、俺は一度死んだ。正確には、殺されたものの敵が甘かったために仮死状態にさせられて、一度は死んだものの生き返った。
「なんで、あんなことしたの」
 カカシの声は少し低くて、その表情はどす黒い感情が渦巻いているようだった。
「知らねーよ。身体が勝手に動いただけだ。」
 大変な任務だった。
 結果的には全員無事に帰ることができたものの、誰かが命を落としていてもおかしくない状況だった。実際に、俺はかなり危険な状態に陥った。でも、そう行動したことに後悔はない。
 
 はぁ……、カカシが深いため息をつく。
「そんな簡単に死んじゃっても良いような、生ぬるいもんなの、サスケの復讐への気持ちって」
 嫌味っぽい言葉に、サスケの顔色は変わる。
「あんたには関係ねえだろ。」
 俺のことに関わるな。
 ピリッとした殺気が出る。
 大人だからって、先生だからって、上司だからって、恋人だからって、その先は一歩も踏み込むな。あの日の光景がフラッシュバックする。気分が悪い。
「サスケがどう思ってても、知らないけどさ。俺は……」
 ナルトを庇うな? 違う、仲間と助け合うことを否定したいんじゃない。
 死のうとするな? 違う、任務は死と隣り合わせで、今回は運が良かったけど、それが忍の世界だ。
 復讐のために生きろ? 違う、違う。そんなことが言えるわけがない。むしろそんなことは、本当はして欲しくない。強くなるための動機として持っていればいいとは思う。けど復讐に生きろなんて、残酷すぎる。
 言葉が途切れたカカシに、サスケが痺れを切らす。
「何が言いたいんだよ。」
 真っ直ぐ睨みつけてくるサスケは初めて顔を合わせたときのように、表情を隠し、暗い目をしていた。復讐にこころを燃やす暗い瞳。
「俺は、サスケに死んでほしくない。」
 俺は上忍だ。それなりの経験は積んできた。それなりの別れも経験してきた。お前たちははじめての俺の教え子だ。大切な仲間だ。"もう二度と"仲間を失うなんて嫌だ。
 わがままっていうか、よくわかんないけど、ようは怖いんだ、俺は。お前たちを失うのが。お前を失うのが。そんな簡単に身体が勝手に動いたから死んじゃいましたなんてことは、起きちゃいけなかった。
 怖い、そう、怖いんだ。まだまだ先のことだと思っていた。サスケはいつか俺の元を離れていくだろう。でもそれはもっと先のことだと思っていた。思いたかった。
「……身体が、勝手に動いたからって、死んでもいいのか。」
 サスケは答えない。きっと、答えられない。
 わかってる、わかってるんだ。でも俺よりも、復讐よりも、あの時のお前が、ナルトを選んだってことが俺は……。
 
 だんっ
 カカシはサスケを押し倒した。
「俺も身体が勝手に動くんだ、仕方ないよな。」
 止められないんだ。お前に嫌われたらどうしようとか、そんなことどうでもいいんだ。
 お前だってそうして俺から離れようとしたんだから、俺にも許されるはずだ。
「何言っ……」
 手袋を外してズボンの上からサスケの股間をまさぐる。目当てのものを見つけたその手は、淫猥な動きで血流を集めていく。
「っ……!」
 額当てを乱暴に取り、口布を下げたカカシの顔は、いつもの余裕がなくて、何かに怯えているようで、怒っているようで、していることと表情のギャップが大きすぎる。
「んっ……」
 節操のない口づけ。舌を絡め、口内をなぞり、お互いの口を唾液が行き来する。
 そうしている間にサスケはズボンから隆起したそれを曝露され、わずかに震える。
「サスケ……」
 わかっている。自分のわがままだ。この子にはこの子のするべきことがあって、それは俺の進む道からは離れている。いつか離れていってしまう。この子が復讐を願う限り。
 乳首に触れるとピクンと身体が跳ねた。唇を解放し、サスケの乳首をねっとりと舐め上げる。
「っ……おい、カカシ……」
 サスケの両手がカカシの肩を制し、向かい合う。
「何をそんな怒ってんだよ」
「怒ってない」
 サスケの両手首をくるりと握り、頭上に押し倒した。
 これは怒りとはちがう。
 むなしさ、寂しさ、悲しさ、悔しさ。
 俺はお前を死なせてしまった。今こうして生きているのはあの少年のおかげであって。俺は守れなかった。どうすることもできなかった。
 居心地が悪そうなサスケが、まっすぐにカカシを見上げる。顔を見られたくなくて、サスケの首筋にキスを落とす。チュッと音を立てて薄い首の皮に赤いしるしを残した。
 もう一方の手は、服を脱がしにかかっていた。
 自分の服も、サスケの服も。お互いの素肌が、熱く感じる。
 カカシはそのすらりと長い指を、サスケの口内に差し込んだ。
「舐めて」
 はじめての要求に、戸惑いながらもカカシの指を舐める。ときどきチュッと吸い、指と指の間に舌を差し込み。
 
 やめろと拒絶することもできた。
 でもこんな捨てられた犬みたいな顔してるカカシをほっとけねえ。
 あの戦いでカカシが命を落としていたら、自分だって普通じゃいられなかったかもしれない。
 だから、カカシを止めることは、俺にはできない。
 ぬるりとした唾液のついた指をサスケの口から抜き取ると、その手を下に持っていく。くにくにと周囲を回すようにしてから、ずぷりとゆっくり中に挿入していく。
「っい……!」
 いつものローションじゃない分、引きつれて痛みを感じる。身体に力が入るが、カカシはお構いなしに指を進めていく。
「っ……ふっ……う、」
 中指が全部収まったところで、今度は中で指が暴れ出す。サスケの身体を知り尽くしているカカシが、執拗に責めるのは。
「はっ、あぅっ! んっ、あっ……! あ……!」
 突然の快感に、サスケはカカシの腕を握りしめた。
 指の本数が増やされる。サスケの身体がピクンと跳ね、嬌声が上がる。
 じゅうぶんに慣らされたそこから指を引き抜くと、次はサスケの目の前にカカシの張り詰めたものがあてがわれた。
「痛いのが嫌なら、舐めて」
 指と同じように、これを入れるんだ。
 舐め方を知らないサスケは、舌を使ってチロチロと舐める。それがくすぐったくてじれったい。
「……サスケ」
 カカシの手が、サスケの後頭部を掴む。
「口、あけて」
 言われるがまま遠慮がちに口を開けると、カカシはそれをグイッとサスケの口内に差し込んだ。
「んっく……!」
「歯立てるなよ」
 カカシが腰を動かす。サスケは乱暴なその行為も、受け入れた。苦しげな顔をしながらしゃぶりつく。目尻にじわりと涙が浮かんだところで、カカシはそれを引き抜き、サスケの股を広げる。
「………」
 無理矢理しているのに抵抗しないサスケに、腹が立った。何するんだ、やめろ、そういう言葉が飛んでくると思っていた。横暴な自分を受け入れられることに、腹が立った。この先も、どんなことがあっても、この子は何でも受け入れてしまうのではないかと不安になった。
 サスケのそこにあてがい、一気に奥まで挿れる。
「………っ!!」
 目尻に浮かんでいた涙が、つぅっと流れた。
 何も言わないサスケに腹が立つ。
 その感情のままに腰を動かす。
「っ……! あ、うぁ、んん!」
 サスケの額に浮かぶ汗を舐め上げると、目が合った。懸命に我慢するサスケの目は、辛そうに細く歪んでいる。
「っはぁ、はぁ、」
「なんで、何も言わないの、抵抗しないの、嫌だって言わないの。」
 再びカカシは激しく躍動した。胸の中にどす黒い感情が渦巻いて、どうにかなってしまいそうだった。
 そんなカカシを目の前にして、サスケは……カカシの首に、腕を回した。
「っ、カカ、シ……いっ」
 名前を呼ばれてハッとする。サスケはカカシの首にしがみつき、ギュッと抱きしめた。
「わかんねぇ、よく、わかんねぇよ……」
 カカシの肌に触れるのは好きだ。キスをするとドキドキする。つながっているときは、安心する。たとえそれが無理矢理でも。
 カカシの思いを叩きつけられて、その動きに翻弄されて、サスケははじめて怖くなった。
 死ぬということはこういうことも全て、失って、残された人には、空っぽな心だけが残る。
 じゃあ、俺がしたことは間違ってたのか?
 仲間を守るための行動は間違いだったのか?
 違う、そうじゃない。もっとうまくやれてれば、俺が死ぬことはなかった。力が足りないんだ。足りないんだ。足りなかったんだ。
 カカシにこんな顔をさせているのは、俺だ。
「カカシっ、俺が、……っ!」
 なんで言えばいいかわからない。
 だからカカシを強く抱きしめることしかできなかった。
「サスケっ……」
 一段と深く、奥に突いて、ドクンと白濁液がほとばしった。
 
 荒い息のまま、サスケはカカシを離さない。
「サスケ……、」
「言うな」
「サスケ?」
「最後まで、言うな」
「だって……」
 腕を緩めて、カカシの顔を見る。
 情けない顔。俺も、似たような顔してるんだろうか。
「俺は今、ここにいる。それだけじゃ、だめか。カカシ。」
 これからも、ずっといて欲しい。その本音は、この子には言えない。
 今だけじゃ足りない。ずっと俺の隣にいて欲しい、なんて、わがままになったものだ。
 
 カカシは黙って、サスケを抱きしめた。
「ごめん、もう一回、してもいい?」
「……今更かよ」
「ごめん、俺、うまく言えない。」
 言えないんじゃなくて、言わない。俺のわがままでサスケを縛り付けるのは間違ってる。俺が望んでなくても、サスケはいつか。……いつか。
 だから、せめて今このときだけは。
「今度は、やさしくするから。」
「……ふん」
 カカシは再び、ゆっくりと動き始めた。
 せめて、せめて記憶に刻みつけよう。今この瞬間を。
 いつか遠くに行ってしまう日が来ても、この瞬間だけは忘れないように。