あの頃のぼくら
理性とは(猫耳編)
「悪夢を見ない薬とかないですかね」
カカシが薬屋のおっちゃんに話しかけると、おっちゃんは怪訝な目で眼鏡を直した。
「あぶないクスリはうちはやってねえよ」
「あ、いや、そっちじゃなくて。」
カカシは自分に処方された薬の入った紙袋を受け取ると、小脇に挟む。
「まあ、とにかく悪夢を見ないようにすることって、出来ないかなぁと。」
おっちゃんは難しい顔をして、店の中に入っていき、漢方薬の入った箱を持ってきた。
「悪夢に効くかはわかんねえが、気持ちを穏やかにするタイプのもんならあるぜ。」
なるほど、穏やかな気持ちで寝れば悪夢も見にくくなる……というわけか。
「試しに、一週間分ちょうだい」
おっちゃんは箱の中から瓶を取り出し、サジを使って小瓶に分けていく。
「小さじ一が大人の一日分だ。子どもなら半分。」
カカシは電卓で提示された金額を渡すと、小脇に抱えていた紙袋の中にその小瓶を詰め込んだ。
家に帰ると、サスケはいなかった。午前中に任務は終わってしまったため、午後のこの時間をどう潰すかといえば、きっと修行だろう。
見に行ってやろうかな、と思いつつもイチャパラの続きが気になったのと、今日の任務の報告書がまだだったのを思い出し、とりあえずは苦手なデスクワークを片付けることにした。
キッチンに薬の袋を置き、ちょっと考えていつもの自分の薬だけ取り出して引き出しにしまう。
そしてローテーブルに向かって座ると、報告書の様式に筆を滑らせた。
一方のサスケはチャクラについて巻物を片手に修練場であれこれ試していた。以前木登りの訓練ではチャクラを使って木に吸着させたが、他にもっと使い方があると思ったのだ。
巻物によると、性質や練るチャクラの量のコントロールが重要とされている。無駄のないチャクラコントロールができれば、その分チャクラを余らせることもできるわけだ。
性質の変化に関してはよくわからなかったが、コントロール術なら今のサスケでも訓練できそうだ。具体的な訓練方法は巻物にはないが、サスケは変化の術を使ってコントロールを学ぶことにした。
まずは猫に変化するの必要最低限のチャクラを探る。少ない量から始めると、変化も中途半端だ。猫耳と尻尾が現れただけになった。もう少し、量を増やす。次はヒゲが生えた。まだ足りない。気持ち多めにチャクラを練る。すると猫には変化できたが、困ったことが起きた。
(……猫の手だと、印が結べない……)
それらしい形を作って変化を解こうとしても、うまくいかなかった。動物に変化したことがなかったサスケは、普段変化をどう解いているか考える。
ひとつめは、変化に必要なチャクラがなくなった時だ。
ふたつめは、印を組んで「解」と声に出すか、頭の中で思う。
みっつめは、誰かに強制的に解かされる時。
試しに「解」と口にしようとするも、口から出るのは「ミィ……」という猫の鳴き声だ。
頭の中でやろうにも、あれ、人間の言葉ってなんだった? 猫語しかわからない。
これはちょっとやばいかもしれない。変化に使うチャクラが多すぎたのだろうか。
「ミィ、ミィ!」
だめだ、言葉が出てこない。
こうなったらカカシになんとかしてもらうしかない、が、俺のこの姿で俺だとわかってもらえるだろうか?
ともかく助けを求めて、サスケは家に向かった。
カリカリ
玄関から聞こえてくるその音に、カカシは気づいていた。が、カカシには忍犬がいるので扉の前にいるおそらく子猫の面倒までは見切れない。
「ミィ! ミィ!」
同情を誘う必死な鳴き声はかれこれ三十分続いている。
流石にちょっとかわいそうなので、冷蔵庫を物色して、ウィンナーをひとつ手に取り、玄関を開けることにした。
「ミィ! ミィ!!」
扉を開けると、そこにいたのは黒い子猫だ。
「はいはい、お腹空いてるのね、ちょっと待ってろよ。」
カカシは屈んでウィンナーを食べやすい大きさにちぎり、子猫の前に置く。か、しかし子猫は食べない。しきりに鳴くばかりだ。
「腹減ってんじゃないの? うちでは君は飼えないよ?」
「ミィ! ……ミィ! ミィ!」
カカシは少し考えて、子猫を抱き上げる。
(ウチは五階……捨て猫が階段登ってくるとは思えない)
カカシの腕にすっぽりとハマった子猫は、まだミィミィと鳴き続けている。
(こんな悪戯をする奴も見当がつかない)
カカシは試しに子猫の背中に二本指を立て、術を解く「解」をしてみると、ボン、と煙が上がって、子猫はサスケに姿を変えた。
「なーにやって……!」
説教のひとつでも、と思っていたが、目の前のサスケの姿に言葉をなくしてしまった。
ぴこぴこ動く猫耳。
ゆらゆら動く尻尾。
半人半猫のサスケが、そこにはいたのだ。
(えっ、かわっ、ええっ、マジで!? )
「……とりあえず、家の中入ろうか」
にやけてしまう口元を隠すように手で押さえ、カカシは玄関にサスケを招き入れた。
鏡で自分の姿を見たサスケは絶句していた。普通の猫と同じように、その耳と尻尾はサスケの気持ちを雄弁に語っている。
「こ、こんな惨めな姿、他の奴に見せられねえ……」
「練り込むチャクラが多すぎた……のかな? 困ったねぇ。」
困った、と言いつつカカシは笑顔になってしまうのを止められない。
「くそッおい笑うな!」
「まあまあ、家にいればそのうちチャクラが切れて元に戻るって。」
そう言いながらカカシはサスケをヒョイとお姫様抱っこする。
「何すんだ! おいっ」
尻尾がブンブンと揺れて耳はパタンと伏せている。
「じゃあ、サスケ君に質問です。」
「な……なんだよ」
「俺は理性を保つのが上手でしょうか、下手でしょうか。」
言いながら寝室の扉を開ける。
「ちょっと待てなんだその質問は」
「正解は~~」
ベッドにサスケをドサ、と下ろす。
「サスケの前では、下手です。」
手袋を外しサスケの肩に手を当てると、そのままベッドに押し倒す。
「おいまさか、ちょっと待……んん!」
サスケの言葉を遮り、口内を蹂躙する。ふむ、キバも生えている。歯茎につつつ、と舌を這わせ、シャツの中に手を差し込み、胸の突起をいじる。
「んっ、カカッ、や、め、あぅっ」
サスケはカカシのキスに弱い。舌を絡めとり、上顎を舐めると、サスケの抵抗が小さくなっていく。
カカシはキスをしたまま、ズボンに手をスルリと入れると、立ちかけているサスケのものをさすった。
「んにゃっ!!」
「……んにゃ?」
思いがけない反応に、唇を離すと、サスケは顔を真っ赤にして口元を押さえている。
「声まで、猫なんだ……」
「っちがっ……!」
伏せている耳を舐めると、ピクンとその小さな身体が跳ねる。尻尾をすぅっとなでると、ビクビク、と電流が走ったかのように反応し、くったりと尻尾が落ちる。
「しっぽ……いいの?」
「やめっ!」
根元をギュッと握ると、ビクンと体が硬直する。
「や、やめ、ろ、……!」
「もっとサスケの声聴きたいな……」
「あ、ぅ、にゃう……っ」
尻尾を掴まれると、動けなくなるらしい。
胸の突起をぬらりと舐め、舌で転がしながら、尻尾をにぎにぎとゆるく握ると、サスケの顔が蕩けてゆく。
「……はっ、あ、にゃ……やめ……っ」
カカシはサスケのズボンを脱がすと、すっかり立ち上がったサスケのものを上下に扱いた。
「やめっ……にゃ、あっ、は、んんっ」
カカシは右手で扱きながら、後ろの穴を舐め、舌を差し込んでいく。
「や……め、きたにゃっ、あ、うぅ」
「汚くないよ」
そして中指を入れ、中をほぐしていく。
「や、や、あ、だめ、やめ、」
猫耳を伏せて真っ赤な顔をカカシに見られないように手で隠そうとする。
クス、と笑いながらカカシは指の本数を増やしていく。
「にゃ、あ、あっ、あぅっ!」
指を引き抜くと、サスケはぐったりと身体を弛緩させた。
カカシはズボンとジャケットを脱ぎ、しっかりと勃ったそれをサスケの後ろの穴にあてがう。
「や、やめろ、カカシ、だめ、だ……ぁっあ、んにゃっ……」
少しずつずぷずぷと腰を進めると、サスケは背を弓形にしてその刺激に耐える。
「にゃあ、ぁ、あ、っ!」
グイッとカカシが腰に力を入れると、サスケにとって大きいそれはすっぽりと中に収まった。
「てめ……動くな、よ……」
サスケが上半身を上げて、涙目を堪えながら睨みつけてくる。ナカはキューっと締まって、残念ながら止めることはできそうにない。
おでこにキスを落として、目尻を舐める。
「また尻尾掴んで欲しいの?」
カカシがそろっと尻尾に手を伸ばすが、興奮状態なのか、ブンブンと横に大きくふれている。でも、根元なら捕まえやすい。
「ふっ……うぁ……」
軽々と尻尾の根元を掴むと、サスケにニコッと笑いかけた。
「どうされると気持ちいい?」
「聞くなよ! 知らね……あぅっ!あ、あっ、んんっ!」
にぎにぎとリズミカルに握ると、腰を動かしてもいないのにサスケは喘ぐ。
「こんなのはどう?」
カカシは扱くような手つきで尻尾をマッサージする。
「ふぁ、あ、っ! やめ、あっ」
やはり同じように喘ぐ。
カカシはニヤリと笑った。
「にゃ、あ、やめ、あ、あぅっ、あん」
尻尾から伝わってくる刺激で、サスケは頭が真っ白になりそうだった。カカシは尻尾を執拗に触ってくる代わりに、前の方は触らないし、腰も奥に入れたっきり動かないのだ。
「も、やめっ! あっ、あぅ、っぁ」
カカシの手から逃れようとしているのか、サスケが腰をよじるように動かすが、そうすると中で快感が走る。
「っあ、あ」
動けば快感が手に入る、と学習した身体は欲望に忠実だった。自然と腰を動かし、快感を貪るサスケに、カカシが笑う。
「そんなに気持ちよくなりたいの?」
「っは、ちが、んにゃっ」
真っ赤な顔で首をブンブンと振るが、腰の動きは止まらない。
「っふ、く、うぅ、んんっ」
サスケの目から涙がポロリと頬を伝っていく。いじめすぎてしまった。
「サスケ、動くよ?」
事前通告は遅すぎた。
「あ、やぁっ! あんっ、やめっ……!」
急にガンガン突かれ、サスケはまたブンブンと首を振る。
「イヤ? 違うでしょ、『もっと』でしょ?」
サスケの感じるところを狙って激しく突いていく。パン、パンと乾いた音が響く。
「あっ、あぅっ! はぁっ、あ、あ!」
声の高さで感じていることが丸わかりだ。
しっぽをギュッと握って思いきり奥に突く。
「っあ、あっ、にゃあぁっ!!」
キュウキュウと中が締まる。くたりと力をなくしたサスケの身体だが、サスケのそれはまだ硬く保ったままだ。
「あれ、今イッた、よね……? もしかして中だけで……?」
うろたえるカカシに、サスケが涙目になりながらふいと横を向く。
「っは、悪りぃかよ! 何なんだよ! しっぽばっか触りやがって!」
そしてちらりとカカシを見て言うのだ。
「あんたも、まだなんだろ。」
カカシはゾクゾクしたものを感じながら、腰の律動を再開した。サスケはまた高い声を上げる。
「気持ちよかったってことだよね?」
本で読んだことがある。男でも射精を伴わず女のように絶頂を迎えることがあると。ただそれは半分ファンタジーな話だと思っていた。目の前で起こるまでは。
「っ変なコト、あっ、言うっ、にゃ、あ、あぁっ!」
顔をそむけたまま、サスケはカカシに揺すぶられている。もっと可愛い顔が見たいのに。
「サスケ、顔見せてよ」
半開きの口に指を差し入れると、、いつもはないキバが覗かせる。
「ふあ、っぁ、っんん」
「舐めて」
目を伏せて、チラとカカシを見上げて、また伏せる。
震える舌がざり、とカカシの指を舐める。
気をよくしたカカシは、また律動を始めた。
「にゃ、あっ、あぅ、はっぁ、ん」
ぶる、とサスケの身体が震え、キュウキュウとカカシのものを締め付ける。
腰の動きを早めると、サスケは弓形に背をのけぞらせた。
「――っにゃ、あ、あ、あ」
サスケの口に差し込んでいた指を引き抜くと、そのまま下腹部に手を伸ばす。
「あ、や、だ、め、あっ、それ、ダメ、んっ!」
「いっしょにいこ。」
カカシがさらに動きを早くする。パンパンパンと乾いた音が響き、サスケはギュッと目を瞑った。
「っあ――! あっ、うぁ、んんんっ!」
一際奥に突くと、カカシはドクンドクンと精液を吐き出し、サスケもまた、快楽の証を飛ばした。
ぐったりとベッドに横たわるサスケを見ると、猫耳が消えていた。
念のためにお尻を見ると、しっぽもない。どうやら術が完全に解けたらしい。
賢者モードになって理性を取り戻したカカシは、やっちまったと思いつつ、濡れたタオルで精液の処理をする。
「サスケ……猫耳なくなったよ。よ、よかったね……?」
「うるせぇウスラトンカチ!」
顔をふいっと背けられる。やばい、やりすぎた。
「ご、ごめんってサスケ、調子に乗って悪かった。だからこっち向いてよ」
しかしサスケは動かない。
どうしよう、困った。と思っていたら、サスケがチラリとカカシをうかがう。
「……俺の前、だけだろうな。」
ボソッと呟かれた声はカカシにはよく聞こえなかった。
「なに? 今なんて……」
「アンタが理性をなくすのは、俺の前だけだろうな、って言ったんだよ!」
「えっあっ、もちろん! もちろんそうに決まってるでしょ!?」
「でもアンタ、イチャ……‥ナントカいう本、よく読んでるじゃねーか。」
「読んでるけどっ現実の女なんて眼中にないし! サスケだけだよ、俺は!」
なんだかとんでもない誤解をされてる気がして、カカシは必死に弁解する。
「どーだか。好みの女が猫耳としっぽついてたら、ホイホイ着いてくんじゃねぇの。」
「っサスケ!」
カカシはサスケの肩を掴んで無理矢理顔を合わせる。
「サスケだけだ。本当に。サスケが猫耳だったから、その、我慢できなくなっただけで、サスケじゃなかったら本当にどうでもいいんだ。」
カカシの必死の訴えに、サスケは若干引き気味だったが、少し考えて、視線を右下にそらした。
「……なら、いい。手離せよ。」
肩が自由になると、再びふいと顔を背けた。