あの頃のぼくら
理性とは
任務で遅くなったカカシは、明かりの消えた我が家の前で落ち込んでいた。
一応、こういうときのために二十一時までに帰らなかったらサスケは先にご飯を食べて寝る、という約束をしてあったものの、うっすらと起きて待っててくれないかな、と期待をしていたのだ。
まあ、約束はきっちり守る子だから、期待したカカシの方が間違っているわけだが、暗い我が家に帰るのは久しぶりなので、ちょっとだけ気持ちが重い。
できるだけ静かに玄関に入ると、LDKも寝室も暗かった。ローテーブルに目をやるが、何もない。荷物を下ろして台所の明かりをつけると、書き置きがあった。
『冷蔵庫の中に食事がある。一皿ずつレンジで自動温めモードで温めてくれ。味噌汁は鍋の中だから火にかけて温める、ただし沸騰はさせるなよ。遅くまでお疲れ様。』
サスケらしい細かい指示に、思わず笑ってしまう。
さて、せっかく作ってくれたんだから、食べなきゃね。
指示通りに一皿ずつ温めて、お味噌汁も沸騰寸前で火を止めた。箸と料理の載ったお皿をローテーブルに並べていく。
いつもより品数が多い気がするけど、居酒屋みたいでそれもよかった。
最後に、酎ハイを冷蔵庫から出して、テーブルにつく。
「いただきます、と」
まずは一口、味噌汁を口に含む。
ああ、美味しい。
任務だから仕方がないけど、久しぶりの一人飯はやっぱり寂しい。
豚の生姜焼きは最高に美味しいし、酎ハイともよく合って最高、だったと一人暮らしの頃なら思っただろうけど、サスケがいないだけでこんなにも寂しい食事になるとは思わなかった。
(サスケもそんな気持ちだったのかな……)
サスケが漬けた白菜の浅漬けもまたおいしい。酎ハイがどんどん進む。冷蔵庫から二缶目を取り出すと、プシュ、と開けてぐいっと飲む。美味い。何だかよくわからない菜物の白和も最高、酎ハイにピッタリだ。
(……俺ってこんなに飲む奴だっけ? )
料理がうまいのだから、酒が進むのは仕方がない。ついには冷蔵庫から三缶目を取り出し、それもまたグビグビと飲んだ。
気がつくとお皿はきれいに食べ終わっており、ちょうど三缶目も飲み終わっていた。
食器をシンクに置いて、はたと考える。ここは洗っておいたほうがいいよな……?
しかし、以前サスケから「わからないなら手を出すな」ときつく叱られてしまったので、勝手なことをしたらまた怒られるかもしれない。
見栄えは悪いが、シンクに置いた食器は水につけるだけにしておいて、シャワーを浴びることにした。
ああ、久々にこんなに飲んだかもしれない。鏡で確認すると、顔が赤くなる程度には飲んでいるようだった。こうなると気分も良くなってきて、鼻歌を歌いながらシャワーで汚れを落とす。
そう言えば、最近湯船に浸かっていない。明日サスケを誘って、一緒にお風呂に入ろう。うん、そうしよう。
蛇口をきゅっと捻ってシャワーを止めると、バスタオルで髪を包み込み、ガシガシと水分を取る。鏡に映った自分は、熱いシャワーを浴びたせいか、全身が赤みを帯びていた。でも気分が良いのでそれは気にしない。
鼻歌まじりにドライヤーで髪を乾かし、体の滴を拭き取ると、寝間着に着替えて歯磨きをする。鏡に映る顔はやはり赤い。三本でこんなに赤くなってたっけ、俺。
うがいをして顔を拭き、リビングとキッチンの明かりを消し、カカシは寝室に向かった。
サスケはスヤスヤと無防備な顔で眠っていた。普通の子どもの顔だ。何だかとても愛おしく感じて、おでこにキスを落とす。
(あ、やば)
キスをひとつしただけで、元気になりつつある息子。今日はさすがに、サスケもう寝てるし、ダメでしょ。
しかしそれでも元気になりかけた息子はドクドクと血流を集めていく。
……参ったな。
ベッドサイドに座ってティッシュを用意する。
今日はとことん一人だなぁ。
サスケのかわいい寝顔を見ながら扱き始めると、無性に悪戯がしたくなってくる。
(ちょ、ちょっとだけ……)
布団の中を探り、サスケの下半身に到達すると、ズボンの上からサスケのそれを優しく撫でる。
「ん………」
サスケが身じろぐが、起きることはなかった。セーフ。
それを良いことに、今度はズボンをずらして直接サスケのものを扱くと、みるみるうちに立ち上がってきた。
「ん……ふっ……んん……」
眠るサスケの息が心なしか上がってきて、眉毛をぴくりと動かす。でもまだ起きていない。セーフ。
そんなサスケの表情の変化を見ていると、カカシは余計にムラムラして、ついには布団を剥がし、サスケのものを口に含んだ。
ねっとりと舐め上げ、口を上下に動かすと、サスケがまた身じろぐ。眉間にしわがよるが、口から出るのは甘い声だ。
「っぁ、は……ぅ……んん……」
気を良くしたカカシは、サスケのズボンを脱がし、自分のものを扱きながらサスケのものも扱いた。
「ぁ、ん、んぁ、は、ぁっあ!」
サスケのものから勢いよく性液がほとばしる。
「は……、はぁ、うんん……」
頬が紅潮して息が荒いまま、しかしまだ寝ているサスケ。トコトン悪戯をしたくなったカカシは、サスケの膝を立てて、後ろの穴に指をそわせる。弛緩したサスケの中は、指の存在を認めると、キュウっとそれを締め付けた。
カカシはペロ、と唇を舐める。
(したい……したいけど……したい! )
指をくにくにと動かし、サスケのいいところを探る。
流石に起きるだろうか? と思ったが、またピクリと眉が動いただけだったので、指を深く差し込む。
「っあ、はぁっ、あ、ぁ、」
サスケの表情が蕩けているのを見て、カカシのそれが硬さを増す。
充分に慣らしてから、カカシはサスケの足の間に入り、自身のそれをずぷ、と挿入した。
「んっ……あ、ぁっ………え?」
半分ぐらい挿れたところで、サスケの目が開いた。しかし、睡眠薬の影響が、目はトロンとしたままだった。起きちゃったら仕方がない、カカシは奥まで腰を進める。
「んぁ、あ、え、カカ、シ? あっ、んんっ……!」
挿れて仕舞えばもう止められない。
「ごめ、サスケ、我慢出来なくて、ええと」
言いながら、パンパン音がするほど腰を叩きつける。
「や、あ、あっ、なに、おれ、なんっ――!」
サスケのいいところをガンガン突くと、サスケはビクンと身体をそらせる。
「ごめんっすぐ、終わるから、……」
サスケの半覚醒状態の蕩けた顔が、またすごく、良い。
パンパンパン……乾いた音とともに、嬌声が上がる。
「あっ、かか、んっ、は……、あぅっ、あ、んん!」
目を閉じて、感じるままに反応するサスケに、カカシのボルテージも上がっていく。
「サスケ、サスケっ、いく、いくよ、」
「あぅ、あ、ぁ、カカ、シ、――っ!!」
最奥に突いて、カカシのそれからドクンドクンとほとばしった。
「はぁっ、はぁ、ぁ……」
サスケは睡眠薬が抜けておらず、まだ呆然としている。カカシがずるりとサスケから抜くと、サスケはまたピクリと動いた。
「………カカシ……」
名前を呼ばれ、カカシに緊張が走る。
(何やっちゃってんだ俺、何やっちゃってんだ俺、やばいやばいやばいさすがに怒られる……よな!? )
だが、次にサスケが口にしたのは、意外な言葉だった。
「すげー気持ちい……なんだこれ………」
そして、すうすうと寝息を立て、また眠りに落ちていった。
翌朝。
カカシより先に目が覚めたサスケは、妙に生々しい、すけべな夢を見てしまったことに自己嫌悪していた。慌てて夢精していないか確認すると、どうやらセーフだったようだ。
それにしても、そんな夢を見てしまうなんて、俺は欲求不満なんだろうか……?
まだ眠っているカカシをチラリと見ると、何だか酒臭い。そういえば、夢の中でも酒臭かったような……?
と思い至ったところで、カカシを揺さぶり起こした。
「おいっ、起きろ、カカシ!」
寝間着の襟を掴んで揺すると、寝起きの悪いカカシが「ん~?」と目をこする。
「サスケ、おはよう~。昨日は気持ち良かったね~……あっ」
「カカシ……あんた……まさかとは思うが……」
「サ、サスケ、あの、その、昨日は、えーと、ほら、ね?」
カカシの態度に、サスケは確信する。
「この、ウスラトンカチが――!!」
顔を真っ赤にして枕で殴りつけるサスケもかわいい……とは口が裂けても言えないカカシだった。