カカシ誕生日おめでとう!2023

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全年齢,超短編,原作軸,カカサス小説ほのぼの,平和IF

 その日は一日中演習だった。
 汗だくになった三人を前に
「はい、今日はここまで!」
 と宣言すると、三人ともほっとした顔つきになる。
「よっしゃ! 俺一楽行ってくるからまた明日な!」
 ナルトが駆け出していく。
 サクラも「また明日ね!」と言って家路に着く。
 それを見送り残ったサスケはカカシの服の裾をついっと掴んだ。
「……わりぃ、カカシ」
 謝られる事なんかあったっけ?
 カカシは裾を控えめに引っ張るサスケに
「何のこと?」
 と尋ねる。
「あんた今日、誕生日なんだろ。何も思いつかなくて、何も用意できてねぇ。」
 なんだ、そんなことか。カカシはフッと笑ってサスケの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「その気持ちだけでも嬉しいよ、サスケ。」
「でもあんたは俺の誕生日祝ってくれたじゃねえか」
「っても、俺欲しいものなんてそんなないしなぁ」
「他の上忍に聞いた。女が好きだって。でも俺男だし……」
「……それ誰から聞いたの?」
「三代目と、アスマ、あと……」
 アスマはともかく三代目まで……俺はどんな奴だと思われてるんだ。
「他の連中が言ってたことなんて気にするな。俺はサスケがおめでとうって言ってくれるだけで充分嬉しいから。」
 カカシがサスケの目線に合わせてしゃがむ。裾を掴んでいた手が離れる。
「……誕生日、おめでとう、カカシ。」
「ん、ありがとね。」
「大したもん出せねえけど、うちで飯食ってくか?」
「サスケの家で?」
「そうだ、俺の家で。」
「いいの? じゃあお言葉に甘えちゃおうかな。」
 カカシが立ち上がって、サスケに手を差し出す。サスケはその手を取って、家に向かった。
 
 扉を開けると、背後からパン! と破裂音、そして飛び出す色とりどりのテープ。
 カカシが振り返ると、クラッカーをカカシに向けるサスケの姿。
「え……と?」
「ほら、入れよ」
 背中を押されてサスケの部屋に上がる。ちゃぶ台の上にはラップがかかったグリルチキン、ピザに、レモン酎ハイ。
「……用意して、くれてたの?」
「嬉しくねえのか?」
 サスケが背後から靴を脱いで上がってくる。
「いや、嬉しいよ、うん。すごく嬉しい。」
 こんなの、何年ぶりだろう。父さんが生きてた頃、だから二十年ぶりくらい? いつも気がついたら日を跨いでいた。たまに同期と飲むことはあったけど、こんな風に祝われるのは本当に……二十年ぶりだ。
「ちょっと待ってろ、温めるから。」
 サスケがオーブンレンジにグリルチキンを入れる。
 ちゃぶ台の前に腰を落ち着かせると、冷蔵庫から出された控えめなケーキの上には「カカシ 誕生日おめでとう」と書かれたチョコレートのプレートが載っている。
「ナルトとサクラは?」
「誘おうとは思ったけど、あんた素顔見られるの嫌だろ?」
 なるほど、サスケが配慮してくれたらしい。
 温まったグリルチキンがカカシの目の前に置かれる。サスケは続いてピザをオーブンレンジに入れた。
 そして冷蔵庫からキンキンに冷えた酎ハイを出す。
「サスケがこんな風に祝ってくれるなんて、思ってなかったなぁ。」
「お返しだよ。あんたも祝ってくれただろ。」
 そう、七月二十四日、カカシは自宅にサスケを招いてナルトとサクラも一緒に誕生日を祝った。
 けれどまさか自分が祝われる側になるとは。
「……はは、嬉しいもんだな。」
 缶酎ハイをプシュッと開けてグリルチキンにナイフを入れる。柔らかくしっとりとしていて美味しそうだ。
 取り皿にチキンを載せると、手を合わせて「頂きます」と言った後、フォークで口に運ぶ。
「うん、うまい。」
 温まったピザもちゃぶ台の上に置かれた。サスケはカカシの向かい側に腰を落ち着かせて手を合わせる。
「頂きます」
 サスケがピザを手に取るとチーズがとろりと糸を引いた。
「これサスケが作ったの?」
「ああ、だから味は保証しないぞ。」
「いや、美味しいよ、すごく。」
 台所に洋食レシピブックが置かれたままなのを見て、また頬が緩む。
「……参ったな。」
「何がだ?」
「いや、嬉しくてさ。」
 ピザを口に入れながら、気持ち嬉しそうにしているサスケと目が合う。
「……口に合ったみたいで、良かったよ。」
 それからは、穏やかに時間が流れていった。ときどきくだらない話で笑いながら。
 ケーキはサスケが食べられないし、カカシも小さいとは言えホールケーキまるごと食べるのはちょっと……というわけでカカシが余った分を持って帰ることにした。
「本当に欲しいもの何もないのか?」
「うん、ごちそうになっただけで充分だよ、ありがとね。」
「なら……これ。」
 サスケがカカシに封筒を差し出す。
「……手紙?」
「家に帰ってから、開けてくれ」
「ん、わかった。今日はありがとう、サスケ。」
 封筒とケーキを持ち、玄関の外にでる。
 軽く手を上げて「また明日」と言うと、カカシは扉を閉めた。
 
 家に帰るとケーキを冷蔵庫に入れてさっそく封筒を開ける。
 中には紫陽花の押し花が入ったしおりと、「おめでとう」とだけ書かれた手紙が入っていた。……なんだ、ちゃんと用意してくれてるじゃない。
 これは、あの時一緒にみた紫陽花だろうか。
 カカシはイチャパラにしおりを挟んで、寝る支度をはじめた。

 

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