魅入られた者

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2025年5月21日成人向,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説オカルト,エロ

想い、想われ

 全てのことがすっきりと整理できてまとまることはわかっていた。でもずっとそれを認めたくなくて足掻いてきた。そんなごまかしなんて永遠には続けられない。いつかは認めざるを得ない。けれど俺はずっと抵抗を続けてきた。
 その抵抗が、今この瞬間に溶けて消えていくような気がした。
 人間のはずのカカシが俺にキスをしながら中心に触れてそこに血流が集まっていく。朝言われた言葉が頭の中をぐるぐると回って、その言葉を耳にした時に浮かんだ気持ちがそれについて回って、今こうしていること、こうされていることに何の疑問も抱かなかった。
 今は人間のはずなのにカカシがこうしているのは単なる餌としてしか見ていなかったわけじゃない、本当にカカシは俺のことを。そう思うと何かがぐっと込み上げてくる。
 埃っぽいソファに背中を委ねて指に何かをつけたカカシが覆い被さってまたキスをする。後ろの穴にぬるっと入ってきた指はいつものように、けどいつもよりゆっくりと中を撫でながら押し広げていく。
 声を我慢しながら呼吸ばかりが荒くなっていた。嫌悪感を覚えるどころか俺は早くカカシと一緒になりたかった。ここは、夢の中じゃないのに。
 キスをしながら中の刺激にビクッと震えて増えていく指が中を柔らかくほぐしていく。いつもとは違う、快感をもたらすためじゃない、中にそれを入れるための準備なんだと思うと込み上げてきた感情が溢れ出そうになる。
 カカシは俺のこと考えて、俺のことちゃんと想って、ただの餌じゃなくて本当に俺のことを、好きでいてくれているんだ。
「……ごめんね、今更だけど……してもいい?」
 カカシの優しい声が胸に響く。俺は頷いて、そしてカカシは俺の髪を撫でてまたキスをする。
 指が抜けて代わりにあてがわれたそれの熱さ、何度も何度も夢の中で繰り返してきた。ゆっくりと入ってくる現実のカカシのそれに息を殺しながら奥まで入るのを待って、そして抱きしめられて、塞いでいた気持ちが溢れ出た。
「カカシが、好きだ……好きだ、人間とか淫魔とか、関係ない……好きだ、カカシ。」
「うん、俺も……。」
 ゆっくり、ゆっくりと腰を動かして、カカシはまた慣らしながら少しずつその動きを早めていく。
 想いが溢れて、一緒になれたことが幸せで、気持ちいいことよりも嬉しさの方が大きかった。
 狭い生徒指導室の中、荒い息ばかりが響き渡る。
 カカシが約束を守っていた時、朝その痕跡を感じるたびに嫌な気持ちになったのは、カカシが来ていたのに夢の中だけで、俺がカカシの顔を見ることができなかったから嫌だった。毎晩きているのなら俺だってカカシに会いたかったのに、俺は自分が言い出した約束に不満を感じていた。
 それを認めたくなかった俺は俺がカカシを好きになるわけがないと考えて否定して否定して、けれど今感じている想いは俺がカカシのことを好きだという証左だと認めるしかない。
 カカシから求められていることが嬉しいし、カカシと繋がっていることが嬉しい。この気持ちに嘘も偽りも誤魔化しも何もない。
 カカシが動くのをやめて俺を抱きしめる。
「……俺が、お前を好きだってこと、伝わったのかなって少し不安だった。バケモノの俺が何を言ったところで伝わらないんじゃないかって。」
「バケモノ、なんて……自分で言うなよ……。」
「事実なんだから、いいの。いっときは俺がバケモノだから、サスケを怖がらせたし嫌われた。仕方ないと思った。だからバケモノになりきってしまおうとした。嫌われてもいい、けどサスケを手放したくなかった。」
 ……あの日のこと、言ってるのか。暗示をかけられたあの黄昏時のことを。
「……どのみち繋がってしまってる俺はバケモノとしてサスケの元に行かざるを得ない。サスケが少しでも苦しまずに済む方法を考えて、でも結局は苦しめることになって、後悔しながらもしかしたらって自分の都合のいいように考えて、俺が半分バケモノじゃなければ最初からはサスケをこんなに悩ませることも苦しませることもなかったのに。……ごめん。」
「っこんな状況で、そんなことばっか言うなって……!」
「バケモノの俺は人間を夢で魅了してしまう。魅了されていくサスケを見ているのが愉しかった反面つらかった。サスケを大切にしたいのに半分半分の俺は人間として純粋に大切にする事ができない、だから。」
「バケモノとか、そんなの関係ない、俺だってカカシのことが好きなんだ。魅了のせいなんかじゃなくて。そうでないとこんなこと受け入れてない。何弱気になってんだよらしくねぇ、バケモノだろうがあんたはあんただろ。」
「……後悔してるんだ、あのときサスケを閉じ込めてしまったことを。繋がってしまったことを。サスケを一生拘束してしまうことを。あのときバケモノの俺がサスケに手を出さなかったらこんなことには、ならなかったのに。」
 カカシは……何百年か知らないけど、そんなにも長く生きているくせに自分の人間と淫魔の間で気持ちが揺れているのか。ただの得体の知れないバケモノと思っていたときもあった。でも人間のカカシはやっぱり人間だった。……俺に何が出来るんだろう。そんな風に自分を責めるようなことを言って欲しくない。俺だってカカシの存在は大事に思ってる。人間だろうが淫魔だろうが、全部ひっくるめてカカシなんだから、……後悔してるなんて、言わないでくれ。
「萎えるだろ、んな事言われたら……早く動けよ。バケモノとか、どうでもいい。俺はあんたにこうして抱かれて嬉しいんだ、あんたが好きだから。どんなあんたでも受け入れる。……どんなあんたでも、好きだ。」
「……ごめん」
 ゆっくりと再開された律動にカカシの背中を抱きしめる。声を殺しながら代わりに荒い息を吐いて、カカシの息も荒くなっていることに気がついて抱きしめる腕に力を込める。
 カカシのことが、大切なんだ。好きなんだ。魅了されてるせいかもしれない。でも人間のカカシだって好きなんだ。隠も陽もひっくるめてあんただろ。
 だから頼むから、後悔してるなんて言わないでくれ。
「っはぁ、……っ、は、……カカ、シ、いく……っ!」
「一緒に……サスケ」
 動きが激しくなって、殺していた声が漏れ出ていた。
「っぁ、くっ、は、あっ、んっ! っは、あ、カカシっ……!」
 ビクッとこわばる下半身、中の奥で感じる鼓動、はぁっ、はぁっ、と息をしながら首元にうずまる頭をわしゃわしゃと撫でた。
「……後悔なんてさせない、あんたの理想……両親みたいになりたいんだろ。……なってやる。俺の一生をあんたに捧げる。繋がってるからじゃなくて、あんたが好きだから。」
「……それ普通の人生を捨てるって、……言ってるようなものだよ……本当にいいの。」
「何度も言わせんなよ、ウスラトンカチ。」
 もやもやしていた頭はすっかり靄が晴れて、ひとつ大きい覚悟を決めた。

 夜布団に入りながら、いつものように窓から入ってくるカカシを待つ。
 カカシは俺の顔を見て、少しだけ目を見開いた。
 昼とは違う淫魔の顔でにやと笑う。
「サスケさぁ……今から抱かれるのお前だよ? なんで俺を抱くみたいな顔してんのよ。」
「……あんたにとっては短いかもしれねえけど、俺のこれからの何十年、あんたを……愛する、って決めたんだ。」
「ふふ、十何年かしか生きてない癖に生意気言っちゃって可愛いね。……たっぷり愛してあげる。」
 額が合わさる、ふわっとした感覚の中で唇が重なる。夜を重ねるたびに敏感になっていった胸の突起は触れられるだけで声が漏れるようになっていた。
「んっ、……あ、あっ、は……んっ! ……あ、だ、め、舐めたらっ、――っ! や、きもち、いっ、あっ!」
 にぃっと細まった目が俺の顔を見つめている。空いでいる手が下半身に伸びて下着の中に潜り込みやらしく扱き始めて胸とそれだけでもういってしまいそうだった。
「っぅ、あっ、っん! カカ、もうっ、っあ、あ、っ!!」
 ビクッとこわばってカカシの手が汚れた。はぁっと息を吐いていたら、俺を見ていた目が細まる。
「乳首で気持ちよくなれたね、やらし。」
「あんたがっ……いつもする、から……」
「やらしい子大好きだから安心して、もっとやらしくなってよ。」
 カカシはズボンと下着を取り去って太ももに舌をそわせる。ゾクゾクとしてもどかしい。そこじゃなくて、早く……。
 そう思っていたら、ふと疑問が湧いた。
「……淫魔って……射精することは無いのか。」
「ん?」
「……昼のときは、……出してたから……。」
「んー、厳密に言えば、するよ。でないと俺生まれてないし。でもそんなほいほい中出ししてたらみーんな孕んじゃうでしょ? 中にはそれが好きな奴もいるはいるけど、俺は本当に一生愛し続けたい相手でない限り孕ませるような事はしたくない。」
「……そう、か。でも俺は男だから関係ないんじゃないのか。」
 カカシは太ももから顔を離して俺の顔を見る。
「淫魔が子作りのためにセックスしたら性別関係なく孕むから、全然関係あるよ?」
 ……え? 俺が妊娠するってことか? どうやって?
「……まぁ、人間のそれとは違うけどね。受精したらすぐに新たな命が生まれるから、別にお腹が大きくなるとかはない。」
 ……とことん、人間の常識の範疇外なんだな。でもカカシの言葉に少し安心した自分がいて、ちょっと待てと思考にストップをかける。俺がカカシと子どもを作ること前提で今思考が進もうとしていた? いや、好き……ではあるけど子どもを作るなんてありえない。
 つぷ、と指が中に入ってきて「っぁ、」とその刺激に頭が侵食される。
「子ども作るとしても、サスケには早すぎるよ。人間はあっという間に成人する、サスケにとっては長いかもしれないけど、またそのときに話そ。」
「っあ、あ、っん、っは、そん、な、あっ! ことっ、考えてない、いっ!」
「だって中出しして欲しいって顔してたんだもん。それはまだ我慢ね。」
「んな、顔っしてな……っ! あ、っあ、んっ! あっ、そこ気持ちい、いぁっ!」
「じゃあなんでそんな事聞いたの?」
「っ手、とめ、……っあ!」
 カカシが指を中に入れたまま動きを止めた。出し入れが止まっただけで中のそこをぐにぐにと撫でながら。それでも、喋る余裕はできた。
「……っ、昼、人間の時はしたから……、その、射精。……それって、……っあんたも、気持ちよかったって、事だろ。」
 俺の言葉を聞いたカカシは、少しだけ驚いたように呆けた顔をして、そして嬉しそうに笑った。
「夜も俺に気持ちよくなって欲しいってこと? ……そんなこと言われたらもっと愛したくなっちゃうじゃない。」
 また手を動かそうとしたカカシのその腕を掴む。
「そんな風に茶化すな、……俺なりに、あんたのこと考えてるのに。」
「茶化す? サスケから愛されてるって実感したら俺も愛したくなるのは当然じゃない?」
「愛され……って、っあ、あっ! ~っ!」
 また手が激しくそこを突き始めてのけぞる。愛、? 俺がカカシを?
「あ、んっ! あっ、やっ! 激しっ、い、あっぁあ!!」
 ビクッと身体が揺れて2回目の射精。カカシは嬉しそうに服をくつろげる。
「大丈夫だよ、ちゃんと俺も気持ちいいから。ほらサスケのここ、ヒクヒクしててすっごいエロい。すぐ挿れたくなっちゃう。出しはしないけどサスケがいくたびにぎゅうぎゅうに締め付けてくるのも堪らない。サスケとのセックス、すごく気持ちいいし大好きだよ。」
 カカシの大きいそれがあてがわれて唾を飲み込んだ。
「その期待してる顔を見るのも好き。一緒に気持ちよくなるのも好き。もっと一緒に気持ちよくなりたいからたくさん愛したいの。」
 ぐちゅ、とそれが中に入ってくる。満たされていく感覚、求めていたもの、それがカカシのものだということ、どれをとっても今では嬉しさしか感じない。
 ああ、俺カカシのこと、本当に好きなんだと思ってしまう。カカシの言葉を聞いて尚のこと強くそう感じた。
 単なる食事じゃなくて、俺はカカシに愛されてるんだと思うと俺まで堪らない気持ちになってくる。
 これからも毎晩カカシに愛され続ける、繋がりがあるから……だけじゃなくて。人間のカカシは後悔してるって言ったけど、俺はカカシと繋がってしまったことは……むしろよかったと思う。だってこんなに想ってくれているんだから。
「お喋りもいいけど、そろそろこっちに集中しようね。」
「あ、あっ、っあ、ぁあっ! あっ! カカ、シッ! あぅっ、あっ!!」
 ……素直に、もっと早く自分の気持ちに気がついていればよかった。神隠しの正体だとわかって、繋がったという事に動揺して、得体の知れない存在との関わりを断たなければと思って。
 カカシはずっと俺のことを考えてくれていたのに。好きでいてくれていたのに。
 ……ごめん。でもその分これからは俺もカカシのことちゃんと想って、見て、聞いて、感じる。人間とか淫魔とか関係なく、俺もカカシのことが大切だから。
 だから死ぬまでずっと一緒に……カカシの、両親と同じように。死んだあともずっと。
 ずっとカカシと繋がったままでいたい。
「っうああ!!」
 何度目かの中イキをしながら、ぼんやりとそう考えていた。
 カカシに言ったらどんな顔するんだろう。
 ……しばらくは言わないでおこう。
 言わなくても、きっと伝わってる。カカシはわかってる。もっと歳を重ねて大人になってから、改めて伝えよう。
 カカシとの愛の証が欲しいって。
 一緒に育んでいきたいって。

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