魅入られた者

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2025年4月12日成人向,短編,現代パロ,連載中,カカサス小説オカルト,エロ

どうしたらいい

「ひ、あっ! あ、っあ! カカシっ、っぁ、カカシがほし、っひ、あ、あっ! カカ、っ!」
 自分の声なのに耳を塞ぎたい。暗示のせいだ、暗示のせいで、こうなってるだけで俺はこんなこと望んでなんかいない。
 なのにほてった身体はカカシを求めてカカシがもたらす快感を待ち望んでいて、指の代わりに入ってきたそれに歓喜で震える。
「い、あ゛っ! あっ、く、あっ! カカシッ、っあ、カカ、シ気持ちいっ、い、っぅあ! は、あっ、ああっ!」
 ……あんたの思い通りになってさぞ満足だろうな。あんたを嫌がる俺があんたを求める様は滑稽だろう。だけどこころまであんたには明け渡さない、思い通りにばかりさせない。
「……はは、何その目。そんな目で俺を見たって何もいいことないと思うけどね。」
 妖艶に笑うその顔は淫魔としての本性なんだろう。
 俺はこんな奴を尊敬して、慕って、ふたりで過ごす時間が心地よかった。もうあの穏やかな時間は二度と来ない。発情した身体をカカシに慰めてもらうのをただ耐え続けるしかない。身体が満たされていく反面気持ちは沈んでいく。……もう十分だろ、俺を弄んで満足しただろ。
「っいや、だ、っ、あ゛っ! やめっ、あっ、っく、もう、やめっ……!」
「嫌じゃないでしょ? ぎゅうぎゅうに俺のを咥え込んで離さないくせに素直に感じなよ。邪念なんて捨てちゃいな。そしたらたくさん愛してあげるから。」
 邪念なんかじゃない俺の純粋な思いなのを知ってるくせに、そう仕組んだ張本人のくせに。
「もうやっ、め、っ! だめいく、っあ、いっ、っぁああ!」
 何度目かの射精、腹の上にどろっと垂れる白濁液。カカシが動きを止めて、俺の顎に指を添えてキスをする。このキスだけは、正気だった頭を狂わせる。ぼうっとしてその気持ちよさに夢中になってしまう。これも、淫魔の力なんだろうか。
「気持ちいいよね? サスケ。もっとしたいでしょ?」
 ごちゃごちゃ考えていた頭に靄がかかったように思考するということができない。……気持ちいい、もっと気持ちよく……。
「……あっ、あ!」
 再開された律動に、ただ感じて、受け入れて、耳につく音に気がついたときにはもう朝だった。
 鳴り続けるアラームを止めて顔を手で覆う。
 ……逆らえない、あがなえない、そんな自分に腹が立つ。この身体はきっとカカシを求め続けるんだろう……県外まで出かけて寺に頼ったところであの様子じゃカカシをどうにかすることはできない。希望が絶たれて身体はこんな風にされてもう俺に残された道はカカシにいいようにされるだけになってしまった。
 抵抗もできないのならいっそのこと受け入れてしまった方が楽なんじゃないか。繋がっただけでなく暗示までかけられて、俺ができることはもう何もない。
 
 それすらも、考えが甘かった。
 授業で教室に入ってきたカカシが目の端に映った途端、俺は胸がドキドキし始めて身体が熱くなり息が乱れていく。50分ある授業、カカシを見ないように意識しないようにしても耳から入ってくる声に下半身が反応する。……こんなの、どうしろって言うんだ。どう対処したらいいんだ。
 俺の様子に気がついた隣の女子が手を挙げる。
「うちは君具合が悪そうです」
 カカシが近づいてくる。やめろ、来るな、近くに来られたら余計に……!
「顔が真っ赤だね。保健委員さん、保健室に連れて行ってあげて。」
 カカシの顔を見なくてもよくなる安堵、でも反応したままの身体、保健委員の男子が俺の鞄を持って腕を引く。クラスの注目を集めながら静かに後ろの扉から廊下に出て、1階の保健室に向かった。
「なんか、急になったな。2限目まで何ともなかったのに。大丈夫か?」
 この保健委員とはあまり言葉を交わしたことはないが、気にかけてくれることは嬉しい。ただ、カカシの授業で毎回こうなっては流石に変だと思われる。……この熱を……どうにかする方法を探さないといけない。
 保健室の前まで来て、保健委員に礼を言ってそこからは一人で中に入った。養護教諭が立ち上がって駆け寄り俺の肩を支える。
「あらあら……熱がありそうね、風邪かしら。ベッドまで頑張って。近い方が良さそうね。」
 2つあるベッドのうちのひとつ、廊下側のベッドのカーテンを開けて、俺はその上に座ると上履きを脱いですぐに布団にくるまった。
 ……どうにか、する方法……。もしもどうにか、出来るようになれば、……カカシの思うままにならずに済む。……出なくなるまで扱き続ける? ……それとも、一回寝て起きたらおさまっている? もしくは、尻に自分で指を入れる……いや、カカシ相手でも指だけではおさまらなかった。そもそも、普通に尻に指が入るとも思えない。……カカシの姿、声に反応しているということは、身体が求めているのはカカシだ。擬似的に、例えばカカシの手がしていると思いながら自分で扱いてみたら少しは効果があるだろうか。カカシにされていると思いながら……静かにズボンのチャックを開けてガチガチのそれを握る。先端にハンカチをかけて目を閉じ、後ろからカカシが抱きながらそこを握って手を動かすのを想像すると背筋がゾクゾクした。すぐに飛び出す1回目。『まだ足りないでしょ?』あの声が浮かんでくる。
「……っ、は……、っ……、」
 息がどんどん荒くなっていく。2回目の迸り。
 カカシ、足りない、お願いだからもっと……。
『わがままだねぇ、いいよ可愛くおねだりできたから』
「っぁ、……、っ!」
 違う前だけじゃなくて、カカシが欲しいんだ、挿れてくれ、カカシ……
『じゃあ、その前にキス』
 ああ、カカシとの……気持ちいいキス……。
 妄想に浸りながら、いつの間にかうとうとしていた。半分夢のような妄想、そんなこと望んでないのに、こんな妄想で何とかしようと思ってるなんて、皮肉だな……。
「面白い夢見てるじゃないの。」
 急に聞こえた声に現実に引き戻される。
 寝てしまっていた。けれど身体が何とかなっている様子はない。ベトついたハンカチがあるだけで。
 カカシがなんでここに。
 なんで夢のことがバレた。
 布団にくるまったまま、聞こえなかったふりをしてそのまま寝たふりを続けようとした。
「俺に狸寝入りが通用すると思ってるの?」
 また、声。その声に心拍が上がっていく。カカシの声。
「夢の通りにしてあげようか?」
 そうならないために妄想までしていたのに。羞恥心と期待する胸でどんどん息が乱れていく。
「少しは悪いと思ってるんだよ、まさかこんなに効くなんて思ってなかったからさ。」
 早くどっかに行ってくれ、という気持ちと、この身体をなんとかしてくれ、という気持ちとで揺れながら、今の有様を見られたくなくて布団を握りしめる。
「……ちなみに今は4限目、養護教諭は今はいないよ。」
 布団をはがそうとする力が加わる。離すものかと布団を握りしめる手に力を入れる。
「……ねぇ、そういうのなんて言うか知ってる?」
 足元の布団がはだけられて、自慰をしていた下半身が空気に触れた。
「頭隠して尻隠さず。夢に見るくらいして欲しかったんでしょ? とりあえずそれ何とかしてあげるから。あー……でも声は一応、抑えてね。」
 ズボンがずるっと下ろされる。ぬち、と後ろの穴に入ってきた指にビクンと身体が震えた。
 ゆっくりと入ってくる指、いつもと何かが違う。でも中で感じるのはいつもと同じ。
「っ、ふっ、……っう、っく、んっ……!」
 俺は泣きそうになっていた。切望していた刺激に、そしてやっぱりカカシじゃないとどうにもならないこの身体に。
「今は人間だからちょっと丁寧にほぐすけど、ちゃんと挿れてあげるから待ってて。」
 その声色が、俺の好きだったカカシと同じ優しい声で目をギュッと閉じながら涙が滲む。
「う……っ、は、っ、っぁ、……カシ、っぅ」
「うん、もう大丈夫だよ。」
 その優しい声をやめてくれ。俺が好きだったカカシのふりをしないでくれ。あんたの正体はそんなんじゃないんだろ。
「……ゆっくりするから、声は我慢してね。」
 横向きに丸くなってた身体を仰向けにさせられて、顔を覆っていた布団も剥がされた。涙で滲む視界にカカシの姿が映って、見たくないと目を閉じる。
 それがゆっくりと入ってきて、声を殺しながら奥まで入るのを待った。こうされるのを待ち望んでいた、妄想なんかじゃない本物のカカシ。
 奥にぐっと押し込まれるとじんじんとした気持ちよさで声が出そうになるのを堪える。カカシはその奥を小突くように小さい動きで刺激する。いつものような強い快感じゃないのは、今のカカシが人間だからだろうか。動きが小さいからだろうか。
「ぁっ、……っく、んっ、う、っん」
 もっと激しく動いて欲しい、けどそれじゃきっと声が出てしまう。いつもと違うゆっくりとした抽送、だけど敏感なところはしっかりと刺激されて、またハンカチを汚す。
「っはぁ、……っぁ、は……っ」
「ゴム持ってないから中で出すけどいい?」
 中で……そういえば、夜カカシは射精というものをしていない。……淫魔だから?
「……はげ、しく……中で、……っ、カカシ、の……っ」
「ん、いい子。……少しなら、まあいいか。」
 どういう意味、と思ったら、カカシが腰の動きを早めてわかった。ギシギシと音を立てるベッドのことを。
「っ! ぅっ、ん、んっ、は、ぁっ、……っ! カカ、いっ、……っ!!」
 ぐぐ、と奥に押し込まれた中にじわっと熱い感覚が広がる。ドク、ドク、と精液を送り出す鼓動、またハンカチを汚して荒い息を吐く俺。
 あんなに熱かった身体が、早かった胸の鼓動が落ち着いていく。カカシと、したから……カカシと、しないとやっぱりこれは何とも出来ないのか。
 カカシはゆっくり引き抜いて、お尻の下にティッシュを重ねて敷いた。
「さてこのままは、……さすがにちょっと可哀想だね。暗示をかけ直すから、今日の夜はそのつもりでいて。」
 やっぱり優しい声、生徒指導室の中と同じ。……一体何なんだ、なんで今俺にそんな風に接するんだ。あんたの本性は、……何なんだ。
「……わかった……」
 尻から何か漏れ出てくる。……ああ、カカシの……中に出すって、そういうことか……。
 再び布団をかけられて、あとは自分で何とかしろと言わんばかりにカカシは保健室から出て行った。
 敷かれたティッシュごと下着を履いて、ズボンを履いて、汚れたハンカチを折りたたんでどうしようか考えながら、ぼんやりと考える。
 丁寧に勉強を教えてくれた、俺の好きだったカカシ。
 妖しいけど普通の生活を約束はしてくれたカカシ。
 約束を守れなかったことをただ謝るだけだったカカシ。
 一変して俺に変な暗示をかけて屈服させようとしたカカシ。
 カカシの本性は、……優しいカカシなのか、酷いカカシなのか、……どっちなんだ。それとも、人間の時とそうでない時ではその性格も変わるのだろうか。
 今日の夜……暗示をかけ直すと言った優しい声のカカシ。その優しい声を信じてもう酷いことはされないと思いたい、けど昨夜は、全然違った。カカシに対してどう向き合うべきなのかわからない。繋がりのせいでこれからずっとカカシとは離れられないのに。
 ……そういえば、いい関係を築けるならそうしたい、みたいな事、言ってたけどあれは本音なんだろうか。
 いい関係……俺から歩み寄るとして何ができる? 夜のカカシを受け入れる事?
 ……そうだよな。ずっと毎晩続くのなら、受け入れてしまったほうがいい。
 でもそうしたところでカカシは歩み寄ってくれるのだろうか。そうしたとして、それはどんなやり方になるんだろう。最初に約束した時と同じように、夢の中だけで終わらせてくれたら一番いい。……だけどそのフェーズは終わったとも言っていた。
 話し合いの余地があるのなら、今夜話し合いをしたい。昨日は俺が拒否した話し合いを、カカシは受け入れてくれるだろうか。
 優しいカカシなら、聞いてくれる。酷いカカシなら、鼻で笑われて終わり。
 でも持ちかけてみるくらいはやってみよう。
 半分人間のカカシを信じたかった。人のこころが残っていることを。
 
 チャイムが鳴って、扉が開く音。カーテンから覗いたのは養護教諭だった。
「あら? もう平気そうね。親御さんに電話しようと思っていたけど、必要ないかしら。」
 頬に手を当てる先生に、ベッドから起き上がって答えた。
「少し寝たら、良くなったみたいです。ありがとうございました。」
「うーん……でもあれだけつらそうにしてたんだから、今日は早退したらどうかしら?」
 ……まあどうせ、午後の授業に出ても自分の勉強するだけだし、たまにはいい、か。
「じゃあ、そうさせて貰います。担任の先生には……」
「私から伝えておくから、そのまま帰って大丈夫。でも帰り道、無理しないでね?」
 心配そうな顔がカーテンの向こうに消えて行った。
 汚れたハンカチを鞄に入れるのは抵抗があったけど、手に持って歩くのも不自然だしと割り切る。家に帰ったらこんなもの捨てよう。
 あとは夜、カカシが新しくかける暗示が何なのか、その前に話し合いができればしておきたい。
 ……話し合い、応じてくれるだろうか。
 昨日の様子からは、応じてもらえそうにない。けど今日のカカシだったら、もしかしたら。
 そんなことばかり考えながら、家路を歩いた。

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