魅入られた者

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2025年4月12日成人向,短編,現代パロ,連載中,カカサス小説オカルト,エロ

受け入れて

「俺が何を求めてるかって?」
 夜、いつもより少し遅い時間にやってきたカカシに、俺は床で座って待ちながら想定問答を考えていた。なるべく話を引き伸ばしたい、カカシが何を思ってどう行動しているのか、その行動原理を知らなければいけない。
「……昨日は話し合いを拒否して悪かったと思ってる。時間が時間だったから、また神隠しみたいになるかもしれないと思って焦ってた。」
 カカシは目を細めて「ふぅん」と俺の向かいで胡座を描いた。
「で今日は話がしたいって? 痛い目見たから? 随分都合のいいことで。」
「都合がいいのは重々承知の上だ。あんたを目の敵にしたところで繋がりはどうにもならないし、人間じゃないあんたにはどう足掻いても負けるのは俺だ。……だからこんな暗示がなくても、もうあんたの事は受け入れるつもりでいる。」
「……へぇ、やっと自分の立場わかったんだねぇ。えらいえらい。」
 カカシはつまらなさそうに手を叩く。
 話に引き込みたいと思ったが、高校生のガキが大人を丸め込もうというのがそもそも無理な話だった。
「あんたが何を求めているのかわかれば、それに応じようかと思った……けど、それすら教えてくれないくらい、今俺とあんたは関係が悪い、で合ってるか?」
「んー……当たらずとも遠からず。ま、そのくらいは教えてあげてもいいけど、サスケがそれに応じるのは難しいと思うよ。」
「……教えてくれ。難しいとしても聞くだけは聞いておきたい。」
 難しい、というのはどういう面で、なんだろう。俺の年齢や性別とかの変えようのない部分だろうか。それとも心理的なものなんだろうか。
「前にも話したけど、俺の母親は淫魔、父親は人間、で二人は繋がった。そうして二人の時間を重ねていくうちに愛し合うようになった。その2人の子どもだ、両親の在り方は理想的だと思う。つまるところ、真に愛し合う関係。それが究極的に、俺が求めるもの。けどそんなのはレアケースだとも思ってはいる。理想は理想だ。でも少なくとも、お互いに好き同士で居られるのが一番だとは思うよ。でも得体の知れない淫魔の俺をサスケが好きになる事はないでしょ?」
「そこだ、得体が知れない。だから俺は怖れる。あんたのことをもっと知って理解したい。こうして俺の話に付き合ってるあんたが、ただの悪い化け物だとは思わな
 い。」
「……俺を知って理解?」
 カカシが眉をひそめる。何かが気に障ったのだろうか。それでも座ったままではいるから、話し合いの余地はまだある。
「相互理解がないまま好きも愛もないだろ。淫魔であるあんたのことを、俺はよくわかってないままだ。だから、知りたい。」
 じっと目を見つめられる。今また暗示をかけられているんだろうか。それとも俺の言葉の真贋を確かめているんだろうか。
 少しして、カカシはふぅ、と息を吐いた。
「暗示をかけられたくないあまりの出まかせでは、なさそうだね。で、何が知りたいの。夢魔の中の淫魔と説明した通り、夢で人間とセックスをすることで精力を食って生きている。俺の体液にはそういう作用があるし、人間を操る目を持っている。暗示をする条件は目と目を合わせ続けること。……今のサスケと俺はずっと視線を合わせたままだけど、俺は今この瞬間また別の暗示をサスケにかけてるかもしれないよ?」
「……どんな暗示をかけられても、あんたがする事を受け入れると決めてる。」
「なら……身体に聞こうかな。いい加減食べたい。」
 ベッドの上。発情もしてない、何かの暗示が効いている感じもないままカカシが覆い被さる。
「夢の中で……これだけは頼む。」
「邪魔に入られても嫌だしそうするよ。」
 目を閉じて待った。額に温かいものが触れて一瞬意識が途絶える。
 額同士をくっつけるのが夢に入るための儀式らしい。
 目を開けてみたら、夢特有のゆらりとした空間にいて、でも目の前のカカシは本物で実在する。
 パジャマをたくし上げながらキスをされて、胸の突起に触れられるたびにビクビクと震えた。胸から感じる気持ちよさなんて意識したことがなかった。唇が離れてそのを舐められるとまた身体が震えて声が出そうになる。
「っはぁ、……っ、」
「……声我慢しないで。」
 舐めながら見上げるその目とかちあって、俺は頭を横に向けた。
「っぅ、ぁ、あっ、う、んっ、」
 胸を弄られて声が出てしまうことが恥ずかしい。恥ずかしい、なんて感情をカカシとしている時に感じるのははじめてだった。
 脇腹をなぞりながら手が下がっていきズボンを下げようとするカカシがやりやすいように腰を少し浮かせる。脱がされて取っ払われた下半身があらわになってこれから始まる事に複雑な思いを抱く。
 受け入れる、とはいえ心理的抵抗がゼロになったわけじゃない。ただカカシを望んでいる自分もいた。これは暗示なんだろうか、それとも本当に俺は望んでいるんだろうか。
 ピンと勃ったそれをカカシは舐めながら口に含んで搾り取るように頭を動かす。カカシのこれは酷く気持ちいい。すぐにいきそうになってカカシの柔らかい髪ごとその頭を掴んだ。
「あ、あ、っあああ! い、っぐぅ、いっ、あ、あっ、っあああ!!」
 はぁっ、はぁっ、と射精の余韻に浸っているとまたキス。……気持ちいい、と思うのはカカシの体液の作用、だった。だからキスをするときだけは、頭がぼんやりして……。
 その間に後ろの穴に伸びていたカカシの指がくち、と中に入ってきて、敏感な場所を刺激しながら出入りを繰り返す。
「っん、んんっ、んぅっ! ぁっ、っん!」
 行き場のない手がシーツを握りしめる、その手をカカシは自分の背に回して、俺はそのままカカシにしがみつきながら中で感じる快感に震えた。
「気持ちい、あっ、そこだ、めっ! 気持ちいい、からぁっ!」
「……もっとダメにしてあげる」
 すぐ耳元で囁く低い声に身体がこわばる。抜かれた指、代わりにあてがわれたのはカカシの……。
「大丈夫だから、力抜いて?」
 何度もしてきたのに、心理的抵抗なんだろうか。……こわい、と思ってしまう。それがもたらす快感を何度も身体に刻まれているのに、だからこそなんだろうか、カカシを受け入れるのがこわかった。
「……っ、ゆっくり、して、くれ、……」
 ぐ、と圧がかかる。
「……はじめてじゃないんだから……まぁ、配慮はしてあげる。」
 ぬる、と抵抗なく入ってくる。カカシの、それが。
 目をギュッとつぶりながらしがみつく腕に力が入る。
 ゆっくりと中を押し入ってくるそれがこわいだなんて今更だけど、本能的に感じる「支配される」という感覚は今日このときはじめて覚えた。
 それが奥まで届いて、カカシが俺の紙を撫でる。
「……なんかいつもと違うけど、大丈夫?」
 淫魔なのに、気遣うなんてことをするんだな。でもその気遣いがこころに染みる。少しだけ身体の力が抜けて、カカシは俺の腕をほどいてからまたキスをした。
 舌を絡めながら頭がぼんやりしていく、たっぷりと時間をかけてカカシはキスして、俺はうまく思考がはたらかなくなっていた。
 いつもよりはゆっくりな律動が始まって今度はその感覚に震えながら声が漏れる。カカシがずっと俺を見ていることだけは認知できて、腰が動くたびに漏れる声が恥ずかしくて顔を逸らせた。
「本当に……はじめてみたいな反応するね、今日は。」
「っ、だって、っぁ、んっ、何もっ、されてない……っ」
「何も……? ああ、暗示のことね。」
「あっ、……っぁ、こわ、いっ……、っぅ、んっ……!」
 何に対してこわいのか、もうよくわからない。でもそんな気持ちも、少しずつ早くなっていく動きに、そして感じる気持ちよさに思考が奪われてただ感じるだけになっていく。
「あっ! あ、っあ! か、かしっ、っあ、あっ! きもちい、いっ! あ、うあ、あっ!!」
「こわくないでしょ、大丈夫ちゃんといかせてあげるから。」
 いつもと同じ、なのに何かがいつもと違う。なんなのかわからない。ただ快感だけを感じながら身体がほてったように熱くなり始めた。中から伝わる快感を全身で感じているような強い衝撃にひたすら喉を震わせる。
「あ゛ぁっ! あっ、あ゛っ! あああっ! い、あ゛っ! いく、いっ、ぅああっ! カシ、いっ、あ、あっ、ああっ、あ゛っ!!」
 ビクッと身体が痙攣して背が布団から浮く、ぎゅうう、と締め付けているのがわかった。それでも止まらないカカシの動きに、ビク、ビク、と身体を震わせながら頭の中が真っ白になって自分がどうなっているのかもわからない。出したら落ち着くはずなのに、射精とはまた全然違う感覚で、でもイッていた。イキ続けていた。
 止まらない、気持ちよすぎて何が何だかわからない。ぎゅうぎゅうに締めつけっぱなしのカカシのそれが中で動くのを鮮明に感じながら、意識が飛びかけた。
 動きがゆっくりになって、その感覚がおさまり、必死に息をしながら突かれるたびにまた喉が震える。
 何が起きていたのか全然わからなかった。気持ちよすぎておかしくなっていた、としか。
「中イキははじめてだったね? 大丈夫?」
 カカシが何か言ってる……けどよく意味がわからない。真っ白だった頭が少しずつ色を取り戻していく。
 大丈夫、って、言った……?
「……でもまだ夜はこれからだよ。」
 これから……終わらない……。
 時間の感覚なんて夢の中だからない。ゆっくりだった律動がまた早くなっていく。
 最後にまたその感覚が続いた後、カカシが腰を引いて、俺は真っ白な頭のままカカシが額を合わせるのを呆然と見ていた。
「…………夢……。」
 眠い目をこすりながらカーテンを開けると、まだ暗かった。時計を見たら朝の4時半。部屋の中に誰かいる気配がして明かりをつけた。
 床に座って俺を見ていたのはカカシ。
「おはよう、サスケ。ちょっと早いけど。」
 起き上がって、ベッドから足を下ろす。暗示がかかってないから夢のことを鮮明に覚えているはずなのに、断片的にしか思い出せない。
「……はよ」
「話し合い、の続きをしようかと思ったんだけど、必要ない?」
 あ、そうだった。カカシのことを知るために話し合いに持ち込んで、身体に聞くと言われてから夢に……けど、鮮明に思い出せるのは途中までだった。
「……頭がまだ、うまく回ってない……。身体に聞くってのはどうだったんだ。」
「……まあ、こっちきて座りな。」
 言われた通りに、ベッドから降りてカカシの向かいに腰を下ろした。
「あのさ、サスケってもしかして俺のこと好きなの?」
 ……は? なんでそうなるんだ。
 確かに人間のカカシしか知らなかったときは好意は持っていたけど。
「なんで半分半分の時にかけた暗示があんなに効いたのか俺も不思議だったんだよね。そこで仮説を立てたんだけど。なんかそれ当たりっぽい気がしてさ。」
 仮説? 当たりっぽい? 話が読めない。
「俺を好いていたから、余計に効いちゃったってこと。」
「は? そんなわけないだろ。」
 あの時点では俺にとってカカシは畏怖の対象でしかなかったはずだ。好きだなんてありえない。
「嫌われてる、かと思えば俺のこと知りたいとか言い出すし、なーんにも暗示かけてない状態で、まあ夢の中だけど、セックスしてさ。ずっとその反応見てたんだけど。」
 ずっと見られていた、と思うと急に恥ずかしくなってくる。あの痴態が、こわいと口にしたことが全部見られていたなんて。
「一応人間として人間とお付き合いもしたことある上で、そう思うんだけど。サスケの反応、好きな人に対するそれとよく似てたんだよねぇ。で、仮説は正しかったのかなと。」
 好き、好き? 今のカカシを、俺が?
「そんな母数が少ない話、とても鵜呑みにはできない。俺がカカシを好きだなんて、何を根拠にそんな事を……」
「んー? 母数、……二桁超えると思うよ。俺たちが人間と同じ時を歩んでると思ってるの? 数えてないけど、俺三桁くらいは歳重ねてるからね?」
 ……そんなのは初耳だ。淫魔、ってそんなに生きるのか。そうなると、カカシの話に信憑性が帯びてくる。とはいえとても信じられない。
「最初は確かに俺を好きになるように暗示をかけてたけどさ、今日はそれなしで、あんな反応で、しかもはじめて中イキまでして、それも何回も。そうとしか思えないんだよねぇ。」
 ……中イキ、って確かに、夢でカカシが言ってたような気がする。よく思い出せないその部分がそうだったんだろうか。でもそれと好きがなんで繋がるんだ。
「……まだ信じられない、って顔だね。確かに俺個人の統計的に、と経験則に過ぎないよ。そこでサスケからも話を聞こうと思ったわけ。」
 話を、と言われても、そういう対象として人を好きになったこともないし、カカシは得体の知れないバケモノとして認識していたのに。
「もし、そうだとしたら暗示をかける必要もないし。元々暗示をかけた状態でするのってあんまり好きじゃないし。で、どうなの?」
「どうって、……人間のあんたしか知らなかったときは……好きだったけどそういう好きじゃないし、淫魔だとカミングアウトされてからは……抵抗しか感じなかった。だから好きになんてなりようがない。」
「……なんで抵抗を感じてたの? 何に対する抵抗? 俺を嫌いだって言ったのは本当に嫌いだったから?」
「そんな、言われてもすぐ答えなんて出てこねえよ。……ちょっと考えさせてくれ。考えたところであんたの仮説の立証にはならないと思うが。」
 それを聞いたカカシは、立ち上がって窓の方へ向かっていった。
「よーく考えてね。サスケの答えが出るまではどうするかは一旦ステイしておく。」
「……待てよ、あんたはどうなんだよ。あんたにとって俺はただの餌なのか、そうじゃないのか。」
「それはサスケの答えを聞いてからかな。じゃ、また授業で。」
 カカシは窓の向こうへスッと消えていった。
 取り残された俺は、何からどう考えたらいいのか悩む羽目になった。

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