耐薬訓練

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成人向,短編,原作軸,連載中,カカサス小説エロ,お付き合いしてるふたり,自慰

妄想

 翌る日その部屋に入ると、昨日はなかったものが部屋の真ん中に置いてあった。女性の裸を模した人形に、よくわからない筒状のもの、丸い玉が連なったような形状のもの、そして男性器を模したものと、ローション。
「今日はこれがある状態で訓練に入ってもらう。手を出して。」
 サスケがそれらを見ながらカカシに左手を差し出すと、2錠の錠剤が手のひらに落ちる。
「これは……自慰をしろとでも言いたげなものばかりだな。」
「そう。これの誘惑に負けないように頑張るんだ。はい水。」
 差し出されたコップを手に、錠剤を口に放り込むと、ぐいっと水を飲む。コップを返すと、カカシは昨日と同じように出て行って扉には鍵がかけられた。
 薬の量は昨日の、2倍。作用時間も恐らく長くなるだろう。それに……。
 サスケは部屋の中央を見る。
 あれらの誘惑もどうにかしなければならない。
 取り敢えず、目に入りにくいようにそれらを部屋の隅に追いやる。
 昨日の経験から、もう最初からズボンと下着は脱いでおくことにした。
 果たして、サスケの身体に異変が現れ始める。昨日と同じだが、異変は昨日よりも早く、そして激しい。
 あまりの拍動の激しさに早々に床に手をつき、浅い呼吸を繰り返した。そこはガチガチに勃起していて、既に先走りが溢れている。少しでも触れようものなら達してしまいそうなくらい、吐く息さえも刺激として感じてしまう。だがいくら自慰に耽ってもこの薬が効いているうちは満足することはないのは実証済みだ。サスケはそこを刺激しないよう仰向けに寝転びハァハァと息を吐いた。すると、意図していなかったところに快感が走る。シャツを捲って確かめるとそこは乳首だった。こんなところさえも快感となるのか。サスケはシャツも脱ぎ捨てて裸になった。目を閉じて外界からの刺激は極力遮断し、両手は頭の上に上げて左手首を右手で掴んでこのまま動かないぞ、とこころに決める。
しかし薬は思考にまでその効果を及ぼす。サスケの頭はじわじわと快楽を得ることに支配され始めた。
 ……どうする? また腕に噛み付くか?
 かろうじて残っている自我が逡巡する。完全に薬に頭を「持っていかれ」てしまうと恐らく戻れない。なにしろ昨日の倍の量だ。意識を繋ぎ止め続けるにはどうしたらいい。まともに思考できるのは恐らくあとほんの少しの時間しかない。安直だが、サスケはまた腕を噛むことにした。昨日噛んだ赤い痕が残る腕を見て、反対の腕に噛み付く。脳が痛みを感知した。よし、この調子で痛みに意識を集中させろ。
「フーッ、フーッ、フーッ、」
 それは薬を飲んでから20分も経たない内の出来事だった。一体何時間こうして噛んでいればいいんだ。薬の効果のピークはもっと後だろう。この噛む痛みだけでやり過ごせるのだろうか。脂汗が滲む。じわじわと脳を侵食する快楽への誘いは今はまだかろうじて痛みによって退けることが出来ているが、一瞬でも油断したらすぐに正気を失いそうだった。物理的に身体を動かせないように出来たらいいがこの何もない部屋でそれをするのは困難だ。カカシのように忍犬でも口寄せできればいいがサスケはまだ何も口寄せ契約をしていない。目を閉じて腕をぎりりと噛み続けるが、暗い瞼の裏に幻覚が見え始めてはっと目を開く。幻覚は目を開いても鮮明にサスケの目に映った。それは裸のカカシの姿。その幻覚はサスケの傍に跪いて手を伸ばし勃起したそれに触れる。するとサスケは呆気なく射精した。触れてもいないのにカカシがそれに触れる幻覚を見ただけで達してしまった。
 射精の開放感と快感に頭が持っていかれそうになるが、一層強く噛みついてなんとか意識を保つ。その幻覚はサスケの後ろの穴に手を伸ばした。触れられていないはずなのに後ろが疼く。それは幻覚にとどまらず妄想へと変わり始めていた。サスケは無意識に足を開いて腰を浮かすと、妄想のカカシがそこにぬるりと指を差し込む。
「あっ、ぅあっ!」
 思わず腕から口が離れる。まずい。もう一度噛みつこうとするが妄想は更に奥に指を推し進めサスケのそこを撫で始める。
「あっ、ぁあっ! っく、っひあ、あっ、あっ! あぅっ!」
 口の端から唾液が溢れる。妄想の指を受け入れてその刺激をより深く得ようと浮いた腰が淫猥に動いていた。
「あっ、あ、カカ、あっ! っんぁ、はぁっ、あっ!」
 もう完全に意識を持っていかれていた。
 サスケは妄想の中でカカシのものを受け入れ腰を動かしながら自身のそれを扱き始める。すぐに射精するがそれは更なる刺激を求めた。ひたすら扱いては射精してを繰り返しながら、妄想の中ではカカシが激しく腰を振っていた。
「あっ! あっ、ッカシ、あっ、ぁあっ! あっ、あっ、あっ! ぅああっ! もっと、っんん! あっ、あ、あっ、んっ!」
 射精するたびにビク、ビク、と震える身体。
『サスケ』
 妄想の声にうっとりとカカシの愛を感じながらサスケは腰を振り続ける。
「ッカシ、カカシッ! んぁっ! あっ、あっん! 中にっ、あっ、んっ! 出して、中にっ、あっ、あ、あ、あああっ、だめ、いく、いくっ! あっ! あああっ!!」
 サスケの身体がビクンッビクンッと痙攣する。中イキまでしていた。それほどリアルな妄想の中にサスケはいた。妄想のカカシに触れようと手を伸ばす。カカシを抱き寄せようと背中に腕を回す。しかし、触れている感触は確かに感じるのにそのぬくもりを感じない。
「カカ……シ……?」
『サスケ、好きだよ』
 カカシもまたいつものように繋がったままサスケを抱きしめる。抱きしめる腕の感触はこんなにも強く感じるのに、いつもの熱い体温を感じない。何かおかしい。これは……
「っは、……はぁっ、はぁっ、は……」
 サスケは正気を取り戻していた。妄想はふっと消えて残ったのは散々射精して汚れた腹の上の精液。扱き続ける手を掴んで引き剥がす。
「……夢? ……白昼夢……いや、幻覚……」
 あのたった2錠の薬があんなにもリアルな幻覚を見せるものなのか。こんなに強烈に作用するなんて……恐ろしい薬だと思うが、そんな薬はきっと他にも腐るほどあるのだろう。万が一敵に捕縛されたらそういう薬を盛られる可能性があるということを先日の事件で痛感したばかりだ。

 まだカカシのものが入っているような気がして、中がキュンと疼く。……挿れたい。指を……いや、指じゃ足りない……もっと、太くて長い……。
 部屋の隅に追いやった男性器を模したあれが脳裏に浮かぶ。
 サスケはまた腕に噛みついた。
 痛みを感じろ。痛みだけ感じろ。他のことは考えるな。
 仰向けに横になりながら、腕を噛みながら、荒い息を漏らす。
 今どのくらい時間が経ったんだ。あとどのくらい耐えればいい。ピークは過ぎたのか? それともこれからまだあるのか?
 また幻覚が見え始めたらどうする。いや、この部屋には俺しかいない。誰かが現れたとしたら、それが誰であっても敵だ。これはそういう訓練だ。ここは敵地だと思え。何か他のものが見えたとしたら、そいつは敵だ。
 その後もカカシの幻覚や幻聴は現れたが、現れる度に火遁を浴びせて事なきを得た。残り脳内にこびりついているのは部屋の隅に追いやった物だ。挿れたい。挿れてぐちゃぐちゃに動かしたい。挿れるのが駄目なら口に咥えて舐めたい。……だめだ、それもだめだ、たかが外れる。
腕を噛みながら右手で掴んでいる左手が局部を触ろうと動くのを必死に押さえ込む。熱にうなされたかのようにぼーっとしては噛む力を強めて意識を現実に戻す。
 カカシが扉を開けて入って来た時も迷わず業火球を浴びせた。それはやはりカカシの幻覚だった。まだこれだけ効果が持続しているのにカカシが現れるはずがない。幻覚はまるで本物のように振る舞う。脳が見せている幻だと言い聞かせ続けると、徐々に幻覚が現れなくなって来た。ピークは超えたのか? それならばあとはこの身体の疼きを堪えるだけだ。
 浅い息のせいで脳に十分な酸素が送り込まれずぼーっとする。相変わらず心臓もバクバクと煩く拍動している。意識のほとんどは局部に集中している。腕を噛む痛みでそれを誤魔化し続けた。
 何時間そうして過ごしただろうか。拍動が落ち着き始めてサスケはようやく腕から口を離した。真っ赤な跡がついて血も滲んでいる。両腕とも同じだ。こんな状態では明日からはもう腕を噛んでやり過ごすことが出来ない。
 まだ落ち着かない身体を深呼吸で落ち着かせようとするがあまり効果はなかった。相変わらず局部に伸ばそうとする左腕を右手で床に押さえつける。気合いだとか根性だとかでどうにかできるものじゃない。何か新しい対策を考えなければ……。

 それからしばらくして、扉が開いた。その向こうにいるカカシに業火球を浴びせるが、カカシは瞬身してサスケの背後に移動していた。
「大丈夫、本物だ。」
 肩に置かれる手の温かさにほっとする。
「2錠目も合格。よく頑張ったな。」
 カカシは脱ぎ捨てられた服を拾い集めてサスケに渡した。
「開始から何時間経ってる?」
「3時間。腕見せて。」
 サスケは噛んだ痕をカカシに見せると、カカシは救急箱から傷薬を取り出して塗り、ガーゼで保護した後包帯で腕を巻く。
「……もう、腕は噛まないこと。別の方法を考えな。」
「……わかってる。」
 そう答えたものの、サスケにはまだそれの代替手段が分からないままでいた。
「あんたはどうしてたんだ、カカシ。」
「ひたすら坐禅。」
「それでどうにかなるなら苦労はしない。」
「坐禅しながら身体の変化に意識を向けて、体内のチャクラをコントロールしながら効果を最小限に抑える……ただ、俺が耐薬訓練を受けたのは上 忍になってからだ。サスケが同じことをするのはまだ難しいかもしれない。」
汚れた腹をウェットティッシュで拭いて服を着込みながら、カカシの話を興味深く聞く。出来るかどうかはさておき、挑戦してみる価値はありそうだった。ただ、明日は3錠……また増える。どんな効果が出るのか分からない。また意識が飛ぶかもしれない。やっぱり物理的に自分を拘束するような手段が取れないと意識が飛んだ時の対処ができない。
「なあ、縄とかを持ち込むのはアリか?」
「ナシ。身ひとつで何とかするしかない。」
くそ、だめか。
 サスケは小さく舌打ちする。
 きちんと対策を立ててから挑まないとまた意識を持っていかれる。幻覚への対処は今日と同じでいいだろう。けれど身体や精神状態への対処は腕を噛めなくなった以上何か考えておかなければいけない。
 ……どうする。首でも絞めるか。いや、それは余計に意識が飛びかねない。
坐禅……チャクラのコントロール……やってみるか。
 ふと目の前のカカシを見ると、股間が膨れ上がっている。サスケはフッと笑った。
「あんたその状態で外出るつもりか?」
「だって禁欲……」
「オナニーぐらいしてもいいから抜いてこいよ。」
「ん……じゃあサスケ、キス……」
 カカシが口布を下げて背を丸める。サスケは唇を合わせると舌を差し込んだ。カカシの舌と絡まる。ああ、もっと味わいたい。キスを、カカシを、……今すぐにでも繋がりたい。
 サスケは唇を離してそっとカカシの胸を押した。口元を手で覆いながら俯く。サスケのそこもまた膨れていた。
「ットイレ、行ってくる」
「待ってサスケ」
「なん、だよ」
「その……オナニーするんなら、……一緒にしない……?」
「……それ、オナニーだけで済むのかよ……」
 あれよこれよと結局セックスする図しか思い浮かばない。
「う……自信ないな……」
「そういうわけだから、俺はトイレ行く。」
 サスケは部屋から出ていった。カカシは部屋の隅にあるオナホールに目をやる。
「……しょうがない、よな?」

 すっきりとした顔の二人がその建物から出て来たのは、それから10分後だった。
「カカシ、俺座禅試してみる。」
「……俺んち来る?」
「いや、一人でやる。大丈夫だ。」
 サスケは自分の家に帰ると、部屋の真ん中に座る。目を閉じてチャクラの流れを感じ取り、意図して心臓にチャクラを集めたり、下腹部に集めたり、それをすることで生じる身体の変化を確認して、ふう、と息を吐いた。
 ……なんとか、しよう。しなければ。
 チャクラのコントロールが上手くいけば色んなことに応用できるだろう。これは単に薬の耐性をつけるだけじゃない、自分を律する訓練でもある。いかなる時も冷静に判断できるようになれなければ、中忍も、上忍も、まだまだ遠い。
 明日は3錠……どうなるのか想像もつかないが、やらない選択肢はない。それに、いずれはやらなければいけない訓練だ。……必ずやり通す。
 坐禅をしながらチャクラのコントロールを続けて、その日も早めに布団に入った。

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