初夏の香り

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創設期,ケモノパロ,成人向,短編,原作軸獣人化,エロ描写有,ほのぼの

 何だろう、何かいい匂いがする。柱間が集落から離れ一人修練をしようと藪をかきわけていまときに感じた匂い。その匂いにつられてやってきた河原の向こう岸にいたのは、クロネコの、同じ歳の頃のオスだった。
 見れば川に向けて石を投げては悔しそうに顔を歪めている。石切りをしているらしい。
 柱間は回り道をしてその川の向こう側に行くと、そいつの隣に立って石を投げてみせた。その石はポチャ、ポチャ、と水面を跳ねていき、向こう岸にコン、と落ちる。
「コツとしては気持ち上に……」
 隣に立ってやはりこいつの匂いだと確信する。千手の一族はイヌだ、ネコの匂いなど知らなかった。だから柱間はネコという種族はこんなにもいい匂いがするものなのだな、とひとりごちていた。
 しかし、突然現れて話しかけられたクロネコの方は、柱間に対して警戒し、耳を伏せて尻尾を大きく振った。
「誰だよ、お前。」
 匂いのことで頭がいっぱいだった柱間はそのときようやく自分が怪しまれるような行動をしてしまっている事に気がつき、慌ててその隣から一歩離れた。
「あ、いや悪い! オレの名は柱間、……姓は訳あって言えん。お前は?」
「……マダラだ。俺も姓は言えん。……忍か?」
「ああ、お前も忍なのだろう? 手裏剣術によく似た投げ方だった。」
 晴れ渡る空のように明るく話す柱間に、マダラは少しずつその警戒を解いていった。
 互いに似た思いを感じていることに共感し、色々なことを話し合った。
 生きていたらまたここで会おう。
 そうして相見えるうちに二人の仲は次第に深まっていき、共に夢を語るまでになった。
「手と手を取り合えば……戦は終わる。子どもが死なずに済む……。」
「だがそれをするには強くならねえと。強くなければ誰も俺たちの言葉に耳を貸そうとはしない。」
 語り合いながらマダラから感じる匂いに気を取られそうになる。その匂いを嗅ぐにつれ柱間は走り出したくなるような、叫びたくなるような、よくわからない衝動が込み上げてくる。
 その衝動の正体がわからないまま、イヌとネコの束の間の夢の時間は終わりを告げた。
 それは木々の葉が色づく季節のことだった。
「俺の名は、うちはマダラだ。」
 その眼が赤くなったマダラは、もうその河原に現れることは無くなった。
 忍でクロネコ……もしかしたら、という予感はしていた。だからこそ柱間はマダラに夢を語った。お前とならきっと実現できると信じて。
 然し、その後再び出会ったのは戦場で、マダラはうちは一族の血継限界である写輪眼を駆使して柱間の前に立ち塞がった。
 濃い血の匂い、焼け焦げた肉の匂い、そして死の匂い。マダラのあの匂いを感じる事はもうなかった。
 河原でマダラが唯一残った弟は絶対に死なせないと語っていた、その弟らしきうちはの者を柱間の弟である扉間が矢で貫いたその瞬間、柱間はもう、うちはと千手が手を組むなんてことは無理なのではないか、と感じた。感じたが、あの夏の日に河原で語った夢は嘘じゃない、必ず実現するんだと鼓舞して戦っては書簡を送り、マダラと刃を合わせれば和睦を呼びかけ続けた。
 
 愛の千手一族、そう呼ばれている通り、千手は誰に対しても寛容だった。だからイヌの中でも異なる血統とも積極的に繁殖をして一族の者たちは様々な血が混じっていた。いわゆる雑種の集まりだ。
 うちはの写輪眼に対して千手の血継限界は木遁だったが、色々な血統との交配によってその特性は弱くなり、多くの遺伝子を取り入れる事で強靭な肉体や病への強さと引き換えに、木遁を扱える者はごく僅かとなっていった。
 千手柱間は、多くの血統の混血による体格や基礎体力の強靭さに加え、先祖返りと呼ばれるほど強力な血継限界を併せ持つ奇異な存在として、千手という群れの中でその地位を上げていき、やがて一族を率いるまでとなった。
 マダラもどうやら同様に一族を率いるまでになったらしい。今のオレたちならば、手を結べばあの日語った夢が叶う。互いに一族を背負う立場になってからも戦は続いたが、柱間は今までにも増してマダラに呼びかけ続けるのを辞めなかった。
 マダラが折れたのは、うちはが千手によって決定的な敗北を期した時だった。扉間を殺すか自身が死ぬか、それが出来るならば千手を信用する。その言葉に柱間は迷わず自身に刃を向けた。
 オレの死によって平和が訪れるのであれば、これほど幸福な死はない。そう思いながら力を込めた前腕を掴んでいたのは、伏していた筈のマダラ。
「お前の腸は……見えた。」
 和睦が叶ったのは冬の終わりのことだった。
 練り続けてきた里づくりの構想、家々が建ち始めて人々が里に居を移していった。
 その様子を高台から見下ろしながら、ふとマダラからあの匂いがしない事に気がついた。
 クンクンと鼻をきかせながらマダラを見るが、そうされたマダラは片耳を伏せて怪訝そうな顔をしている。
 成長にしたがって匂いが変わるのだろうか? 然しそれならば子どもの時ほど匂いはしないに限る、が、マダラの場合は逆だ。
「なぁ、マダラよ。うちはがどんな一族なのか教えてはくれ。オレはお前のことをもっと知りたい。」
 高台に腰を下ろして、マダラにも座るよう促した。
 ふさふさと揺れる尻尾に、マダラもふっと笑いながら腰を下ろす。
「千手とは真逆だ。俺たちは純血を守る事でほとんど全員が写輪眼を開眼し血継限界を繋いできた。強い者同士が交配する事でより強い力を持てるように……俺の血は誰よりも濃い。それだけだ。」
 話しながら、マダラの表情が暗くなる。
 血が濃い、ということはうちは一族にとっては良いことなのではないのか。
 千手とは真逆だからか、柱間には何故マダラの表情が曇ったのか、その時はわからなかった。
 
 梅雨が明け始めて里にささやかな校舎が出来上がり、子どもたちが学ぶという経験に喜ぶ様を見て、少しずつ夢が実現していく事に柱間は心が躍るような気分だった。
 だがその反面、マダラは外出を控えるようになり、初夏になるといよいよ屋敷から外に出なくなってしまった。
 うちは一族の者に話を聞いてみたところ、マダラは暑い季節になるとこうして籠りがちになるのだという。
 もう1ヶ月以上顔を見ていない。マダラは何をしているのだろうか。
 ある夜、柱間は酒を片手にマダラの屋敷を訪ねる事にした。だが、戸を叩いても誰の返事もなく静まり返っている。
 庭の方へ足を向けた時、懐かしいあの匂いを感じて立ち止まった。
 大人になった柱間にはその匂いが何なのかがわかった。然し何故あの日のマダラから、そして今マダラの屋敷の中でその匂いがするのか皆目見当もつかなかった。
 考えてみれば、ネコの繁殖期は夏場だ。もしかしたらマダラはうちはのメスと交尾を……? それにしても、あの若き日にマダラ自身からこの匂いを感じたのはおかしい。
「マダラ、入るぞ。」
 ガラガラ、と戸を開けて屋敷に上がりまた戸を閉める。広い屋敷の中、匂いを頼りに廊下を歩いていると部屋のひとつから明かりが漏れているのを見つけた。
 メスと交尾をしている……様子はない。
 その部屋の襖を開けると、頭まで布団をかぶっているマダラを見つけた。部屋中にあの匂いが充満している。一体どういう事なんだ。
「マダラ、大丈夫か!」
 布団をまくると、自身の身体をぎゅうと抱きしめながら震えているマダラがそこにいた。その表情は何かを必死に耐えているように目を細め眉を寄せている。
「……帰れ、」
「帰れん、どういう事なんだ、何故オスのお前から、メスの発情期のフェロモンが出ているのだ!?」
 マダラは布団を被り直す。
 あの若き日、匂いを感じていたときも夏だった。まさかマダラはメス……なのか? いや、まさかそんな。
「……濃い血を残すため……一族間で交配を繰り返してきた。……濃い血は強い血継限界と引き換えに……身体や頭に異常のある者もまた産まれていた……。」
 扉間からそれは聞いたことがあった。うちはもまた愛情深い一族だが千住のそれとは全く異なる。愛情の発露先はあくまでも同胞が相手だと。
 マダラは自身で自分が一番血が濃いと話した、つまりそれは、マダラの身体にもどこか異常があるという事だったのか?
「マダラ、お前の身体は……」
 柱間が布団の隣に座りマダラの布団を再度まくり上げる。
「……俺には奇形がある……メスのサカリを引き起こす卵巣があるらしい。……もしかしたら他にも何か……あるかもしれない……。」
 ……ネコもイヌのサカリと確か似ているはずだ、メスがサカリになると特有の大きな鳴き声を出しオスを呼び寄せ、その腰を上げてオスに向ける。その鳴き声とメスのフェロモンによってオスの発情期が誘発され、交尾に至る……その、メスのサカリの症状をマダラは今までこうして一人で耐えてきたというのか。
 柱間は木遁で部屋の中に小さな部屋を作った。分厚い木の壁の中だ、どんなに声を出しても漏れまい。
「……マダラ、大丈夫だ、オレがいる。声が漏れ出ないようにした。我慢する必要はない、鳴きたいだけ鳴けばいい。ここは安全ぞ。」
 布団から顔を半分出したマダラが、木遁の壁を見つめて、そしてするっと布団から出ると柱間に抱きつき首や身体を擦り付け始めた。その尻尾はピンと立っている。
「っちょ、マダラ!?」
「……柱間……はしらま、……俺を孕ませてくれ……」
「ちょいま、ち……」
「……冗談だ。……だが柱間、お前にしか頼めん……っ、これを終わらせてくれ……。ネコは孕むまでサカリが終わらない……夏の間数ヶ月ずっと姿を見せないわけにはいかない……頼む。」
 戦が絶えなかった頃は敵を倒す事でこの衝動を誤魔化し、血を浴びる事でフェロモンを誤魔化して、戦のない日は集落から離れてひとり過ごすようになって、そんなおりにマダラが出会ったのが柱間だった。
 平和な世になった今、マダラのサカリを誤魔化すことはもうできず、ひたすらサカリが終わるように工夫して、実践して、そして落胆していた。
「マダラお前、サカリが来るだけなのか。それともメスのように子宮もその腹の中にあるのか。……だとしたら、本当に孕んでしまうかもしれんぞ! 誇り高きうちはがイヌと交尾してあいの子を産んだとなればお前の立場は……!」
 柱間に擦り付いていたマダラがその身体を抱きしめる。
「……孕んでも構わない、だから頼む、サカリを終わらせてくれ……お前にしか、こんな事は頼めねえ……。」
 マダラの声は震えていた。叫び出したい衝動を堪えているのだろうか。それともこのような惨めな嘆願をしているのが悔しいのだろうか。それとも本能がオスを求めるのを、これでも精一杯我慢しているのだろうか。
 部屋に充満するフェロモンに、種族が違うはずなのに発情が呼び起こされていくのがわかる。だがその程度のことも忍び耐えられないほど柱間は弱くない。
 ただ、目の前のマダラがそれを求めているとなると脳のどこかが切り替わっていく。
「……言っておくが、イヌとネコでは交尾も全く違うぞ。絶えられるのか。」
「何だっていい、頼む。頭がどうにかなりそうだ……」
 布団にしがみつきながら尻を高く上げるマダラはメスネコのサカリのそれだった。孔に指を入れるとすでに何らかを入れて試したのだろうか、そこは柔らかくほぐれていた。
 柱間は下履きを脱ぎ去り血流を集めるそれを孔に添えた。
「本当に、いいのだな……?」
 マダラは返事をしなかった。はぁ、はぁ、と何かに耐えている、そんな風だった。
 ゆっくりと中にそれを入れていく。
 ひきつれたり抵抗を感じることなくぬるっと中に入り、あるのかどうかもわからない卵巣、もしくは子宮口にその先端を入れようと、少し引いては奥へ、を繰り返していると、マダラが敷布団のシーツをぎゅうと掴む。
「……何を、している……早く」
「言ったであろう、ネコとイヌのそれは違うと。」
 ネコのオスの生殖器はごく小さい。普段は皮をかぶっていて見えない程だ。そしてメスの生殖器に入るとすぐに射精する。
 それを見慣れたマダラにとって、イヌの交尾は長すぎる、と言いたいんだろう。
 ぐっ、ぐっ、と少しずつ出入りを繰り返しながら奥に挿れていく。ネコの膣なら簡単だっただろうが、マダラはオスで、挿れているのも肛門なのだから、柱間とてこんなにも出し入れを繰り返すとは思わなかった。
 繰り返しているうちにシーツを握りしめたマダラが時折息を呑む。その伏せられた耳を見て、きっと鳴き叫びたい気持ちを堪えているのだと思いながら、早く終わらせなければと柱間はその腰の動きを早めた。奥に、奥に、恐らくは直腸の奥まで届けばいけるはずだ。
「……っく、ぁ」
 不意にマダラが漏らした声に、柱間が動きを止める。
「……すまん、痛かったか……?」
「……ちが、う……問題、ない……。」
 はぁっと息を吐きながら答えたマダラの言葉に安心しつつも、では何の声だったのか、と思いながらまた抽送を始める。
「……っ、は……、んっ……く、」
 やはりマダラは声を上げるが、苦しげな声とはまた違うようだった。どちらかと言うとサカリのメスが甘える時の声色に似ている。
 抽送を繰り返して、ようやく奥、といえそうな深さまで辿り着いた。あとはこの奥に押し込んで射精したら、陰茎球で蓋をするだけだ。
「あ、っあ」
 奥を何度も突いてその入り口に入れようとするたびにマダラはまた声を上げた。
 待っていろ、あと少しだ。
 一際強くぐっと押し込むと、マダラの身体はピクンと跳ねた。
 どくどくと中に精液を流し込み、根元が膨らんで奥深くに入ったまま蓋をする。
 このまま30分ほど待てばイヌの交尾は終わりだ。
 体勢を変えようとマダラの身体を仰向けにさせると、その顔は真っ赤に染まっていて眉は垂れ、細めた目は潤んでいて口が半開きのまま震えている。
「ッマダラ、大丈夫か……?」
 マダラの頬に手を添えようと近づくと中のものも更に奥に押し込まれ、そしてマダラはまた「っあ」と声を出す。
 この顔、この声色、声が出るタイミング……。もしや奥、を刺激すると……このような反応をするのだろうか。
 試しにぐっ、ぐっ、と奥に押しやるとその度にマダラは声を出す。それを恥じたのか、マダラは顔を横に背けてしまった。
「マダラ、教えてくれ、その声は……どういう……?」
「イヌ、は、長すぎんだよ……! 何回も、~~っ!」
「なぜそんな声が出るのか聞いておる。」
「…………言えるかよ……」
「頼む聞かせてくれ。でないともっとするぞ。」
「やめ……っあ、んっ! や、っあ、言うっ、からやめっ……!」
 柱間はマダラの顔の横に手をついてその顔を覗き込んだ。
「教えてくれ。」
「…………いい」
「なんぞ? 聞こえなかった。もう一度。」
「……気持ち、いい、と言ったんだ馬鹿イヌ!」
 その言葉を聞いて、柱間の頭を思考が駆け巡った。
 交尾は種の存続の本能に従って行うものでオスにとってその体験は非常に重要だが、しかしその行為によって快感が得られるということは見聞きしたことがない。ネコも同様でメスネコはむしろ交尾の後オスを追い払うように暴れ怒ったようにしながらその場を立ち去る、つまりメスにとってもそれは快感とはむしろ逆なのではないかとすら思う。しかしマダラは確かに気持ちいいと言った。もしかしたら抽送の最中にマダラが息を呑んだのもそのためだったのか。
「いつまで挿れてんだよ……早く抜けよ……。」
「いやそれがな、イヌの交尾はこのまま数十分蓋をしてしっかりと精子が着床するようにするからして、つまりこの根本のこぶが縮むまでは動けんのだ。」
 マダラが柱間の顔を見た。
「……は? 数十分……?」
「そうだ、ところでマダラ。無事にお前の卵子は出たらしい。フェロモンが薄くなったぞ。」
 それはマダラも感じていた。孕むまでサカリが続く、という事はメスの身体から卵子が出たらサカリは終わる。だんだんと正常になっていく頭、しかしこのまま数十分柱間と繋がったままでいなければならない。中が疼くような焦ったい感覚を抱えたまま。
 しかし反面、柱間はまだマダラのフェロモンによって発情したままだった。状況さえ許すのならば、もう一度交尾をしたい、というよりも、交尾ではなくマダラの顔を見ながらまた抽送を繰り返してマダラがどんな顔で鳴くのかを見たかった。それは子を残すという本能とはかけ離れた欲求だ。しかし柱間はその欲求を無視できなかった。
 マダラの身体に触れたい。マダラの身体を舐めたい。マダラの声を聞きたい。
 とはとても言えないまま、無言のまま30分経って、そこからようやく己のそれを引き抜いた。
 服を整えようとするマダラを見ながら、その欲求を果たすなら今しかない、しかしそのような自分勝手な欲求をただぶつけるのはあまりに不粋だ。
「ありがとよ……助かった。これで外に出られる。」
 ぶっきらぼうにそう言うマダラの肩に手を置く。
「マダラ……お前のサカリを止めるために、……協力したのだからオレの我儘も聞いてくれんか。」
 真剣な顔つきでそう言う柱間に、マダラもやぶさかではないようだった。
「ああ、礼として聞いてやる。何だ。」
「もう一度マダラと交尾をしたい。」
 マダラは耳を疑った。こいつは今何を言った? 交尾がしたいと?
「マダラのフェロモンでオレはまだ発情しておるのだ、オレの発情もマダラが抑えてくれ。」
 そう言われてしまうとマダラも断る事は出来なかった。1回やったんだ、2回も3回も同じだろう。
「……わかったよ……」
 後ろを向いて尻を向けようとするマダラを止めて、仰向けに寝るようにした。普通交尾は後ろからするものだという常識は、もしかしたらネコだけのものなのだろうか、マダラはそう思いながら柱間のしたいようにさせる。
 さっき出した精液が溢れ出始めているそこに、柱間は再び己のものを挿れた。
 ゆっくりと中をなぞりながら抽送を始める。マダラは耳を伏せて目を細め、眉を寄せた。
「……声は外に漏れん、だから我慢せずに声を出してくれ。」
 その目が柱間の目を捉える。そして左に向き、頬を染めながら口元を腕で覆った。
「……ったよ」
「ん? 何と言った?」
「わかったよ、って言ったんだ。察しろ馬鹿イヌ。」
 目を合わせないまま腰を動かす。出入りするたびにマダラの眉はピクと動き、そして徐々にその眉が垂れていく。目は閉じられているが、口からはあの甘えるような高い声が漏れ出る。
「ん、……っぁ、は……あっ」
 聞いたことのないその声に柱間の心臓はドクドクと動きを早めていた。発情とはまたちがう興奮を感じながら、もっとその声を聞きたいと抽送を繰り返す。
 それはもう交尾とは呼べない行為だった。本来子宮口に挿れて射精したら着床させるまでじっと待って終わりだが、柱間の目的はこの性器の出し入れによってマダラの表情が蕩け、甘い声を出させる事に変わっていた。
「あっ、や、早く、する、なっ、っあ!」
 するなと言われるとしたくなる。腰の動きを早めて奥を突くとマダラは一際高い声を上げた。奥を突かれるのが良いらしい。そう覚えるとガンガン腰を振って奥へ、奥へと少しずつ深くしていく。
「やっめ! あっ、あ! や、ぁっ、んっ!」
 マダラの顔がどんどん赤くなっていく。柱間もまたその性器を出し入れするという行為から射精する寸前のようなむずむずとした気持ち良さを感じて身体が熱くなり、拍動と呼吸が早くなっていた。
「ぅあっ! あ、ああっ! や、あっ! おかし、いっ! 身体がっ、へんにっ! あ、あっ、ぁあああ!」
 マダラがビクンと身体をこわばらせて背中を反る。その中は柱間のものをぎゅうぎゅうに締め付けて痙攣しているかのようだった。
 その締め付けの刺激が強く思わず射精してしまう。
「っく、……マダラ? ……一体何が……」
 話しかけてもマダラははぁー、はぁー、と息をするばかりで、時折ピクンと眉を垂れ、そしてまた柱間のものを締め付ける。
 根本のこぶが膨らみそのままの体勢で中が固定されて、柱間はマダラの首元を舐めた。
「っあ、ん……っ」
 マダラは時々震えながらまだ中の感覚が刺激になっているようだ。
 マダラの身体を舐めながら、柱間はこの新しい発見に胸がうるさいくらいに拍動するのを感じながら、今俺達がしていたこれはいったい何なのかと考えていた。
 交尾でメスがこんな事になるなんて話は聞いたことがない。それにこれは交尾ではない、目的が違う。射精に至るまでの過程こそが重要だった。
 そして同時に、胸に熱い想いが湧き上がっているのも感じていた。今すぐにマダラを抱きしめたい。もっと身体を舐めたい。その口にも舌を入れたい。だが、中が固定されている今の状態では抱きしめるのは難しい。
「また……何十分……この、ままか……?」
 少し落ち着いたのか、マダラが目を開けて柱間に向ける。その瞳は赤く染まっていた。
「……そうだ。……なぁ、マダラ、今したことについてどう思う……?」
「どうって……イヌの交尾は長ぇ」
「違うのだ、今のは交尾ではない。……俺もよくわからんが……出し入れするのが目的のこれは、交尾とは呼べん。」
 マダラはイヌというのはこんな交尾をしているのか、と驚いていたところ、これは交尾でわはないと言われ、では何なんだと疑問符が浮かぶ。
 ただ「それ」の最中に柱間と結合しているそこで感じたのは、認めたくないが間違いなく快感だった。そして同時に柱間に対して何か熱い気持ちが強くなっていくのも感じた。
 交尾でメスが快感を得るなんていう話はネコに限らず聞いたことがない。つまり、柱間の言うように「それ」は交尾ではない別の何かだった。
 あの熱い気持ちは、言葉で表すとするならば……
「愛……の、営み……とか」
 柱間が目を見開く。
「愛の営み、正しくそれぞ!」
「俺と……お前の間に、愛……?」
「感じなかったかマダラ。そうだ、愛、間違いない。俺はマダラ、お前を愛したのだ、今!」
 肩を握られて中のものが奥にグッと押し込まれ、マダラは眉を寄せた。そして嬉しそうに尻尾を振り、あの夏の日に語り合った晴れ渡る空のような明るい笑顔の柱間を見て、マダラも柱間の言葉を素直に受け取ることにした。
「柱間、お前俺を愛しているのか。」
「そうだマダラ、何度でも言うぞ。オレはマダラを愛している。サカリなんかでなくともこれから愛したい。……お前は違うのか?」
 不安げに眉を垂れる柱間、落ち込み癖の前兆だ。全く面倒な奴め。
 マダラは柱間の首に腕を回した。
「俺も柱間、お前を愛している。これからも愛の営みを続けたい。」
 
 その日、木の葉隠れの里で愛の営みという新しい概念が生まれた。しかしそれは、長い間柱間とマダラだけの秘め事だった。
 本能をぶつけ合う戦を繰り返してきた里の者にとっては、交尾という行為は子を残す為のもので、それ以上でもそれ以下でもなかったからだ。
 特に同族同士での交尾しか経験してこなかったうちは一族の者が、それを知る機会はないに等しかった。
 里中にこの事が知れ渡るのは……奇跡的に種族の壁を超えてネコのマダラがイヌの柱間の子を孕み、その腹が目立ち始めた時に火影である柱間が「愛の営み」の概念と、千手柱間とうちはマダラの間で「愛の結晶」たる子を宿したことを公表してからのことだった。