火影の特別任務(起源編)

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創設期,全年齢,超短編,原作軸お付き合いしてるふたり,ほのぼの,甘々

「おい、俺への誕生日祝い、という話じゃなかったのか。」
 屋根から屋根へ駆けては、里の子の部屋に侵入して、贈り物の入った箱をその枕元に置く柱間にマダラが尋ねる。
「ああ、そうだとも。さあ次だ急ぐぞ!」
 マダラが背負う大きな布袋には大小様々な箱が詰まっていて、先導する柱間に続いて次の子の家の窓辺に降り立つ。
「ならば何故こんな雑用をやらせるんだ。」
「わからぬか、マダラよ。」
 柱間はマダラの持つ袋の中から箱を選び取って、すやすやと眠る幼子の枕元に置く。その顔は喜びに満ちている。
「この子らにはあらかじめ欲しいものを文に書かせた。今配っておるのは、この子らが望んだ物ぞ。朝目が覚めたときにそれを見つけた時の顔を想像してみよ!」
 また次の家へと駆けながら柱間は嬉しそうに話す。
「まさかその子らの笑顔が誕生日祝い、だとか言い出すんじゃねえだろうな。」
「そのまさかぞ! 我らは今里の子らの笑顔を配っておるのだ、これほどの喜びは他にあるまい!」
 マダラは納得ならない顔のまま柱間の後を追う。
「その思い付き自体はお前らしくて俺は好きだが、それが祝いと言われると話は別だ、付き合いきれん。」
「そう言うな! マダラの力が必要なんぞ!」
 辿り着いたその家の窓の中を覗くが、そこにいたのは子どもではなく、大人の忍だ。
「ガキじゃねえじゃねぇか。」
「こやつは親兄弟を全て失い抜け殻同然の生活を送っておる。マダラ、お前のその眼で親子揃って幸せに歳を重ねる夢を見せてやってくれ。」
「お前そのためだけに俺を連れ回しやがったのか。”この眼”はそんな安いもんじゃねえぞ。」
「今夜ひとときだけでも里の者皆に幸せを感じて欲しいのだ。これはマダラなしでは出来ぬことぞ。頼む。」
 顔の前で手を合わせ、頭を下げられると無碍にも出来ない。それを知っていながらするのだから、こいつは狡い男だと思う。マダラは盛大なため息を吐き、窓から部屋に入って、眠るその男の頭を小突いた。
「なんっ!?」
 突然小突かれ、驚き見開いた男のその眼に、マダラは己の眼を刻み付けるように見つめると、男はまたとろんと瞼を閉じて眠り始める。
 窓の外にいる柱間を振り返った。
「これで満足か、火影様よ。」
「ああ、満足ぞ! ではまた次の者だ、来いマダラ!」
「おい、一体何人やるつもりだ?」
「言うた筈ぞ、里の者皆と!」
「ああ゛!? よく聞こえなかったが!?」
 柱間は里中に響くのではないかという大声でマダラに叫んだ。
「俺は里の者皆に幸せを配りたいんぞ!!」
 
 心底気分の良さそうな柱間と、心底気分の悪そうなマダラが屋敷に帰って来たのは、寅の刻を回った頃だった。
「俺は毎年この日に里中の者に幸せを配りたい。その役割を、うちは一族に託したいと思っておる。そして皆の笑顔を肴にお前と呑みながら朝を迎えたい。どうだ、マダラよ。良いとは思わんか。」
 蔵に立ち寄り、酒をふたつ手に取ってから玄関の戸を開き、二人中に入っていく。
「何故うちはに託すんだ。お前の思い付きだろう、千手がやれ。それに俺のこの疲労をどうしてくれる。全く最低な誕生祝いだ。」
「里の者に幸せを配るのがうちはの役割、となればよりうちは一族の誇りも高くなると思わんか。同時に里への帰属意識も高くなろうぞ。」
「む……。」
 そう言われると、そう悪い話でもないような気がしてくる。皆で協力すれば団結力も強くなるだろう。マダラは顎に手を添える。
「しかしこの眼を使えるのは俺だけだ。毎年俺をこき使うつもりか。……いや、これを機に新術の開発をするのも有り、か……。」
「決まりぞ! さあ座れ、とっておきの酒だ。」
 いつもの軒先に座り、柱間が右手の酒瓶を掲げる。
「勝手に決めるな阿呆。まあ考えておく。だが誰かさんのおかげで今年の誕生日は散々だった!」
 マダラも腰を下ろすと、盃を柱間に向けた。その顔は疲労の色を滲ませており、不機嫌そうだ。
 しかし柱間は気にも留めず上機嫌で話し続ける。
「だがお前のお陰で、俺の夢がまた一つ叶った。俺の夢の隣にはいつもマダラがおる。俺はそれが何よりの喜びだ。」
 とくとくと注がれた酒を煽って、マダラはお、という顔をした。口に合ったらしい。柱間は遠慮なしにどんどん注ぐ。
「……散々こき使っておいて、物は言いようだな。だがそんな言葉はこの疲労に見合う労いにはならんぞ。」
「ではマダラの一番の喜びはなんぞ。俺と共に過ごす時間では足りんか?」
「一日ではとても足りんなぁ。少なく見積もっても三日だ。」
 酒を煽る度に、マダラの機嫌は良くなっていく。酒に酔っている訳ではない。柱間の言うように、この男と過ごす時間がマダラにとっては一番の喜びなのだ。旨い酒が加われば尚良い。
「はっはっは! そう言うと思うてな、五日は休暇をとっておる! どうだ、少しは気分が晴れたか。」
「……五日か、そいつは……悪くねぇな。じゃあその五日間、お前を俺の好きにさせろ。」
「うむ、もちろんぞ! 何せ誕生祝いだ。贅沢に使え!」
「言ったな? 確かに聞いたぞ。……さてどうしてやろうかなァ。」
 マダラの口角が愉しそうに上がる。
 何を考えているかはわからないが、マダラが愉しそうなので柱間もまた愉しい。上機嫌のまま、瓶が空になるまで酒を煽り続けた。
 
 果たして五日後、火影の執務椅子に腰かけた柱間は、心なしか頬がこけていたらしい。
 何があったのかは、当の二人しか知らない。