金曜の約束
生徒指導
サスケはいつも通り駅前の噴水の前に立ってスマホの画面を見ていた。今から待ち合わせる相手は……三十六歳、一六八センチ八十キロでメガネをかけている、白のTシャツを着た男……。
特徴を頭に叩き込んで、「今着きました」とメッセージを送る。
時間は二十時、帰宅するサラリーマンが行き交う人の多い場所だ。
返信を待っていると、「ちょっと」と声をかけられる。聞き覚えのある声だ。
顔を上げると、生徒指導の……確かはたけ先生だった。思わず心の中で舌打ちをする。最悪なタイミングだ。
「君、ウチの生徒だよね? えっと……名前は、うちは君、だったかな?」
在校生が千人いるマンモス校でサスケの名前がすぐ出てきたのは、サスケが毎回学年一位の成績を取る優等生だからだろう。
「こんな時間に、何してんの? 家に帰りなさい」
どうやらこの先生は夜間巡回して夜遊びしている生徒がいないか見て回っているらしい。
「あんたにはかんけーねぇだろ。」
それだけ言ってまたスマホに目を落とすと、「もうすぐ着くよ!」というメッセージ。
やばい、早くこの先生を追っ払わないと。
「親と待ち合わせてんだよ。あんたこそ帰れよ。」
咄嗟に嘘をつくが、
「じゃあ親御さんが来るまでは一緒にいるよ。」
と言ってそばを離れようとしない。
そうこうしているうちに、白いTシャツを着た小太りの男がやってきた。
「えっと、サスケ君……だよね?」
誰がどう見てもこの男が親じゃないことはわかる。
カカシはサスケの肩に手を置き、
「この子、俺の子だから。じゃあね。」
と告げ、手を引いて歩きだした。
「おいっ! どこ行くんだ!」
カカシは答えない。
キョロキョロと辺りを伺って、商業ビルの二階にファミレスがあるのを見つけ、サスケを引っぱりながらそこに入っていった。
「えっと、ドリンクバー、ふたつ」
座席に置かれたタブレットに注文をして、サスケに向き直る。
「親御さんじゃ、ないよね? あれ誰?」
サスケはそっぽを向いて答えない。
スマホに目を落としながら、ポチポチと何かを入力している。
カカシはそのスマホをひょいと取り上げると、表示されている画面を読み上げる。
「なになに……『今日はごめんなさい、明日埋め合わせします』……これって……出会い系アプリ、だよねぇ」
「っ返せっ‼」
サスケが手を伸ばすが、カカシはサスケの手の届かない頭の上にスマホを持ち上げて内容を読んでいる。
「……何これ、君何人と会ってきたの」
「あんたにはかんけーねえだろ!」
「いーや、あるねぇ、生徒指導だから。ふぅん、デート一時間一万円ねぇ……」
「返せって!」
ざっと状況を確認すると、カカシはサスケにひょいとスマホを渡した。
サスケは大事そうにスマホをカバンにしまう。
「で? あのおっさんとはどこまでするつもりだったの」
カカシが頬杖をつきながら話しかけるが、サスケはやはり答えない。
「オプションがいくつかあったよね、ナデナデと? チュパチュパと? ゴックンと? ……」
「……」
黙秘を貫き通すつもりのサスケに、カカシはため息をつく。
「明日学校で詳しく聞くから、今日はもう家に帰んなさい」
カカシが席を立って、サスケの腕を引っ張る。
「ってーな」
「文句言わない」
そのままファミレスの勘定をして、ぐいとサスケの腕を引っ張って、もう片方の手ではサスケの住所を調べながら歩いていく。
逆らえないと悟ったのか、サスケも黙って着いて行った。
そして辿り着いたのは、築四十年くらい経ってそうなボロアパートだ。
「二〇二号室、ね。カギ出して。」
ほら、と手を出すが、「カギなんかかけてねーよ」と言われ面食らう。
「不用心すぎない?」
「盗られるものなんか何もねーし」
そんなもんか? 二〇二号室の取手を回すと、サスケの言う通りカギはかかっていなかった。
その部屋は、薄っぺらい布団が敷いてあるだけの質素すぎる部屋だった。
「……お前学年一位だろ? どこで勉強してるの」
サスケはまた黙秘を貫く。
「もしかしてお前、お金に困ってるの?」
「あんたのせいで、せっかくの金蔓が台無しだ!」
吐き捨てるように言うと、サスケは靴を脱いで布団しかない部屋へ入って行った。
カカシもそれに次いで、部屋の中に入っていく。
「何で上がってくるんだよ!」
「学校で話すにしても内容が、ね。今聞かせてもらうよ。今日はあのおっさんとどこまでするつもりだったの。今までどんなことしてきたの。それでいくらもらってたの。」
「言うわけねーだろ。個人情報だ。」
「あのねぇ……、ま、そういうつもりなら……」
カカシがサスケの肩を掴む。
「身体に聞くしかないよなぁ」
ギラついた目で頭から足下まで舐めるように見られて、サスケははじめて動揺した。
薄っぺらい布団の上、両手を頭上に縫い付けられたサスケは、下半身を丸出しにしてその中心をカカシに弄ばれている。
「……こんなこともするんでしょ?」
その気になっていなくても、若い身体は扱かれると嫌でも反応してしまう。
「やめろっ! どういうつもりだ⁉」
「シー、こんなボロアパートじゃ、おっきな声出すと外にダダ漏れだよ……? それとも聞かれたいタイプ?」
言われて、サスケの顔がカーッと赤くなる。
「ナデナデって、こういうことでしょ?」
サスケのものを上下に扱きながらサスケに問うが、答えは返ってこない。ただ、時折息を殺す気配だけが返ってくる。
カカシはその手の動きを早めて、カリ首をグリッと刺激すると、それはいとも簡単に精液を吐き出した。
「っは、っ、」
無理矢理絶頂させられたそれを、カカシはなおも扱き続ける。
「若いんだから、もっといけるよね? で、チュパチュパは何?」
サスケはやはり答えない。
「んー、あ、そうか、うちは……いや、サスケ君が、サービスする側か。合ってる?」
顔を背けたのを肯定と捉えて、カカシはジッパーを下ろし、自らのそれを取り出した。
「ハイ、チュパチュパ。いつも通りにやってみてよ。」
口元にぐいと押しつけるが、サスケは口を開かない。
「強情な子だね。じゃ、俺の好きにさせてもらうよ」
さっき吐精した精液を指につけて、後ろの穴にあてがう。
ぬぷ
「っちょ……!」
ぬぷぷ…
ゆっくり入ってくる中指にサスケは身体をこわばらせた。
「そんなこと、してない……!」
カカシはサスケの顔をチラと見ると、「じゃあ俺がはじめてだ」と笑った。
学校で見るのと同じ笑顔に、サスケははじめて抵抗らしい抵抗を試みる。
「こーら、足バタバタさせない」
それもカカシの足でいとも簡単に封じられてしまう。その間も、カカシの指はサスケの中に埋まっていく。
「っやめ……!」
「声」
「………‼」
奥まで入ると、ゆっくりとした出し入れが始まった。内壁を抉るようにつつつ、となぞられると、「っあ!」と声が出る。
サスケは自分が出したその声に信じられないという顔をする。
「言うっ! 全部言うからっ! それやめっ、っぅあ!」
「声」
「んっ……! ふっ、ん、んっ」
「じゃあ、チュパチュパしてくれる?」
コクコクと頷くのを見て、指を引き抜く。
「っひ」
サスケの両腕を解放したカカシは、その口元に自分のものを押し付ける。
サスケはそれを手で添えて、口を開き、咥え込んだ。そして唾液を絡ませながら頭を動かす。
それはみるみるうちに硬さを増して、サスケの口内を圧迫する。
「何人くらいチュパチュパしてきたの?」
サスケは首を振る。
「数えきれないくらい?」
今度は無言。
「手も使ってよ」
黙って手でも扱き始める。
「ゴックンもしてくれるよね?」
頷く。
裏筋、カリ首をぐるっと舐め、尿道を舌で刺激する。風俗嬢には敵わないが、慣れた手つきだ。
「ん、そろそろ出すよ」
それを聞いて、サスケは手の動きを早める。
「……あー、出そう、いいね?」
こくりと頷く。
カカシはサスケの頭を掴んで動かし、思いっきり喉の奥に押しつけた。
ビューッビューッと濃い精液がサスケの喉に迸る。
「っんん!」
「ほらごっくん」
サスケは苦しそうな顔をしながら、そのドロリと濃い精液を飲み込んだ。
「っは」
カカシが腰を引くと、サスケは口元を手で拭う。
「よくできました」
頭をぽん、ぽんと撫でられるが、その手を振り払う。
「これで満足かよ」
「いんや? ここからが本番でしょ。」
その意味を図りかねていると、カカシは再びサスケの後ろの穴に指を添わす。
「っ約束が違……!」
ぬぷ
「約束なんてしたっけ?」
ぬぷぷ
「……っぁ」
その指は再びサスケの中で暴れ始めた。
「……っ! んっ! んん! っ!」
指が増える。
「ちょっ……! ぁっ、んんっ! っぁ……!」
ぐちゅ、ぐちゅ、と音を立てながら攻められ、サスケは首を振るしかできなかった。
「んんっ! んっ、は、っあ、」
また指が増える。
圧迫感が苦しいのに、ゾクゾクと背筋を快感が昇り詰める。
「やめ、やめろっ、んんっ! っ……!」
イキそうなところで、指はぬるんと引き抜かれた。
代わりにあてがわれたのは、さっきまで口で咥えていたそれだ。
「待っ……! やめろ! やめっ……!」
唾液でたっぷり濡れたそれは、クチュ、と音を出しながらサスケの中にゆっくりと入っていく。
「っ~~~‼」
全て収まると、カカシはふう、と一息つき、そしてサスケの腰を掴んだ。
今から何が始まるのか、嫌な想像で頭が膨らむ。
「や、めろ……!」
苦しそうなサスケの声を合図に、抽送は始まった。
パチュンッパチュンッ
「っあ、はっ、んんっ、んっ……!」
指とは比べ物にならない圧迫感、なのに快感が腰の中で疼く。手で口を抑えるが、漏れ出てしまう声。
次第に早くなっていく動きに、サスケはぶんぶんと首を振る。
「っいや、だ、っぁ、やめっ、んんっ!」
「っは、きつ、力抜いてよ」
「むりっ……っあ! んぁっ、あっ、は、あぅっ!」
「声」
「……んんっ! んっ、ふ、んぅっ、んんっ!」
「いい子」
パンッパンッパンッパンッ
静かな部屋に、乾いた音とくぐもった喘ぎ声が響く。
「はぁっ、気持ちい。このまま出していい?」
快感に翻弄されているサスケにその声は届かない。
「っはは、はじめてとは思えないくらい感じてんじゃない」
「んんっ、んっ、う、ふっ、んっ、んんっ!」
「じゃ、出すね」
パンッパンッパンッパンッ
腰の動きが早くなったかと思うと、サスケの最奥に押し付け、ビューッビューッと勢いよく精を放った。
「……あー、いいね、キュンキュンしてる」
「……っぁ」
カカシはしばらくその余韻を味わった後、ゆっくりとそれを引き抜いた。
「っっ!」
サスケは肩で息をしながら、終わった? …? とカカシを見た。
カカシはティッシュでそこを拭きながら、「ウェットティッシュじゃないとくっつくなぁ……」と独り言を言っている。
開きっぱなしだった股関節が痛いのを堪えながら、サスケは起き上がると、カカシの胸元を掴む。
「ってめぇ……‼」
「何、気持ちよさそうにしてたじゃない」
「そういう問題じゃねえっ……‼」
カカシはしれっと立ち上がると、ズボンの後ろポケットから財布を出し、お札を三枚ヒラヒラっと出した。
「君の使ってるアプリ、俺もインストールしたから、君が誰かと会おうとするたびに、俺、邪魔しにくるからね。」
そしてまたニコッと笑う。学校で見せるのと同じ笑顔で。
カカシはスタスタと歩いて、靴を履き、「じゃ!」と手を上げて玄関の外に出ていった。
「ックソ‼」
サスケはその玄関に枕を投げつけたが、虚しい抵抗だった。