いつか

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成人向,長編,原作軸,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,モブサス描写有

俺たちの関係は(side S)

 波の国。任務の間寝泊まりする部屋はあまり広くなく、布団も3組しかなかった。サクラはひとつの布団で寝るとして、あとの2組をどうするか、と話し合ったが、ナルトが俺は寝相悪いからなーと言い出した。カカシはそれを聞いて怪訝な顔をしたため、結果として俺とカカシが一緒の布団で寝ることになった。
 その日の深夜、カカシに背を向けて寝ていた俺をカカシが後ろから抱き寄せたのに気がつき目が覚める。カカシは抱きしめながら俺のうなじにキスをし始めた。小声でおい、と呼びかけるが返答はない。シャツをたくし上げられて胸の突起を弄ばれるとくすぐったくて手を払いのける。その払いのけた手は今度は口元にきて、口内に指が差し込まれた。もう一方の手はズボンを下ろし始めている。
「おい、カカシ!」
 気持ち強めに呼びかけるが、やはり返答はない。後ろから抱きしめられているせいでカカシの様子も伺えない。
 口の中から出ていった指が後ろの穴に添わされてぞくっとする。それはそのまま中にゆっくりと侵入して抽送が始まった。異物感と抵抗感で顔を歪めるが、ある一点を撫でられると背筋を快感が駆け上がりピクっと身体が震える。
 待て、待て待て待て、何だこの感覚。また撫でられる。身体がピクンと跳ねる。増やされる指。荒くなっていく息。
「っカカシいい加減に……!」
 聞こえていないのかあえて無視しているのか。集中的にそこをなぞられて駆け上がる快感に、カカシが指を後ろの穴に入れている現実に、戸惑いを隠せなかった。
 指が抜けてほっとしたのも束の間、尻に硬い物が押し付けられる。
「おいカカシまさか、」
 後ろを振り向こうとすると、カカシが耳元で囁く。
「しー、二人とも寝てるから、静かに」
 頭にカッと血がのぼるのを感じた。
「静かにしてられるか……っぁ、あ、」
 カカシのその先端が入ってくる。大きい。指とは桁が違う。
 ゆっくりゆっくりと押し進んで、それが奥まで納まると、抽送が始まった。
「っはぁ、……っ、……んっ、……っぁ、……っ!」
 そこをなぞられては奥に突かれる度に声が漏れそうになるのを必死で堪える。
 どうしてこうなった? なんでこんなことに? カカシはなにを考えてる? 今何が起きている?
 混乱と疑問でいっぱいの頭の中に快感が波のように寄せては引いていく。
 ゆっくりとした抽送にひたすら声を殺しながら耐えていると、カカシは少しだけ動きを早めて最奥にその精を放った。
 抱きしめる腕が緩みその中から脱出して布団の外に出る。太ももの内側を温かい物がつつ、と垂れてきた。
「っカカシ、どういう……!!」
「しー……、起きちゃうよ、二人とも。」
 部屋に敷いてある二つの布団に目をやる。二人ともぐっすり眠っている。
「っくそ!」
 俺はトイレに行って、尻の穴から垂れてくる物が出てこなくなるまで便座に座った。
 部屋に戻ると、カカシはもう寝ていて、でも同じ布団で寝る気にはとてもならず、窓の下に腰を下ろして座ったまま眠った。
 なのに目が覚めたときは布団の中にいた。隣にカカシはいない。眠っている俺を見つけて布団に運んだのだろうか。
 橋を作る職人が慌ただしく動き回る中、それを眺めていたカカシを見つけてその手首を掴んで人気のないところまで引っ張っていく。
「一体何考えてんだ、何であんなことしたんだ!」
 カカシはいつもと変わらない調子で俺を見下ろす。
「セックスするならサスケかなーと思って。」
 その変わらない口調に怒りが強くなる。
「あんた自分が何言ってんのかわかってんのか? やって良いことと悪いこともわかんねえのかよ!」
「……でも気持ち良かったでしょ?」
 言葉に詰まった。確かに、気持ちよくはあった。……だけどそれとこれとは話が別だ。男のガキに、それも教え子に手を出すなんて頭がどうかしてる。
「ま、深く考えずに楽しもうよ。大丈夫、満足させてやるから。」
 カカシはいつもと同じ笑顔で俺の頭に手を載せる。俺はそれを振り払って、ナルトが待つ修行場に向かった。
 
 夜布団に入る度に、カカシは俺を抱き寄せてセックスをした。ダメ元で一緒に寝ても良いかとナルトに聞いてみたが、あからさまに嫌そうな顔をされる。ならナルトがカカシと寝ろよ、と言ってみたが、今度はカカシが「寝相悪い奴と一緒は嫌だな」と言い出して、俺はカカシと一緒の布団に入らざるを得なかった。後ろから抱きしめる腕、口に入れられる指、刺激される穴の中、深く入ってくるカカシのそれ。毎晩繰り返される内に神経が麻痺してきたのか、諦めたのか、俺はカカシの行為を黙って受け入れるようになっていった。
 
 そんな夜を繰り返していた波の国の任務がようやく終わった。
 報告書を出しに行ったカカシを三人で見送り、俺はアパートに帰る。久々の我が家の匂いはやっぱりほっとする。
 バックパックから荷物を取り出して洗濯物を洗っていると、ドアがノックされた。玄関に向かうとそこにはカカシの姿。
「お邪魔するよ」
 カカシは用件も言わずに俺の小さな部屋に上がり込む。
「何の用だよ」
 カカシを見上げて睨みつけるが、意にも返さない。
「細かいことは良いから、サスケ」
 カカシの大きな手が俺の尻に回る。
「セックスしようよ。」
 睨みつけながら、手を払いのける。
「……花街にでも行けよ」
「俺はお前が気に入ったの。ほら。」
 布団までカカシに背中を押されて仰向けに倒された。
「おいっ! やめろ!」
 早々にズボンと下着が取り払われる。カカシは手に持っていた小さい袋から何かを取り出すと、とろっとした液体を手に垂らした。膝を曲げられてそこをさらけ出されて羞恥心で顔が熱くなる。いつものように挿れられる指、だけど今日は大した抵抗も感じずぬるっと中に入ってくる。あの変な液体のせいか。
「っあ、んっ、く、ぁあっ! はぁっ、あっ」
 指は相変わらずねちっこくあの一点を刺激し続ける。気持ちいい。そんなこと言ってやらないけど。でもカカシとのセックスは確かに気持ちいい。
 どんどん指が増やされて3本、柔らかくなった内壁を確認するようにぐるりとなぞった後、指が抜けて、カカシのそれがあてがわれた。波の国ではいつも後ろからだったから、はじめて目にしたそれは思っていたよりも大きい。こんなものが入るのか。いや、でも今までも入っていたんだから、入るんだろう。緊張しながらそれが入りきるのを待つと、奥まで届いたかと思ったらすぐに抽送が始まった。
 波の国ではナルトとサクラがいたから激しく動かなかっただけだったのか、と思い知らされた。抽送は徐々に早くなっていき、いつしか肌と肌がぶつかる乾いた音が響き始める。
 あそこをなぞられる度に、奥まで突かれる度に出てしまう声を堪えようと口の上に両手を重ねた。
「んっ、う、っん! ふ、んっ、ん、んっ!」
 激しい抽送に声も高くなっていく。
 気持ちいい、もっと、激しく……激しく……されると、声を堪える余裕もなくなってしまっていた。
「あっ! あ、あっ! んぁっ、ぁあっ! あ、あああっ! や、だ、めっ、出るっ、あっ、だめっ、っあぁっ!」
 ビクンっと身体が跳ねて精液が腹を汚す。カカシは一層抽送を早くして、俺の中に精を吐き出した。
「はぁっ、あ、……っ、」
 ぶるっと身体が震える。今までしたことがない激しいセックスは波の国でのそれより何倍も気持ち良かった。
「ほら、気持ちよかったでしょ。」
 まるで俺の思考を読んだかのように言うカカシの言葉には、癪だから返事をしてやらない。
 呼吸を落ち着かせようと深呼吸をしていると、不意にカカシのそれが抜けていった。カカシはゴムを外してそれをティッシュで拭くと、さっさと服を着込んで玄関に向かって行く。
「また来るから。」
「……勝手にしろ。」
 
 それからカカシは度々俺の家を訪れてはセックスして帰っていくようになった。
 いつも口を手で塞いでいるのを見て何か思ったのだろうか。
「声、なんで我慢してんの?」
 正にその最中に言われて、俺はかろうじて「声が外にっ……」とだけ答えた。
 その事後、カカシはいつものようにさっさと服を着込んでから、一言告げる。
「次からは俺の家においで。」
 そして玄関を開けて出て行った。
 次の日から、俺のアパートにカカシの忍犬が来るようになった。
「着いてきな」
 その小さな忍犬の後をついていくと、カカシのマンションに辿り着く。
 家の中に入ると、もう用済みと言わんばかりに忍犬はその姿を消した。
 それからは、毎日のように忍犬が家にやってくるようになった。ドアをカリ、と引っ掻く音がすると、ああ、来たかと思う。カカシの家に行って、寝室でセックスをして、今度は俺がさっさと服を着込んでカカシの家から出て行く。カカシはセックスをしたがるだけで、唇を合わせるキスだけは絶対にしなかった。それがこの関係を物語っているようだった。
「カカシにとって俺はなんなんだよ。なんで俺なんだよ。」
 服を着込みながら視線も合わせずに言う。答えは期待していなかった。けれどカカシは口を開いた。
「俺はサスケとしたいの。サスケに挿れたいの。サスケの声を聞きたいの。」
 ……何だよ、それ。
「だから強引にセックスしました? そんな理屈が通じると思ってんのか。」
「でも今は合意じゃない。サスケも気持ちいいから毎回うちに来るんでしょ?」
 また言葉に詰まる。その通りだ。だけど気持ちいいなんて絶対に言ってやらない。
「……勝手にしろ。」
 玄関で靴を履いてカカシの家から出て行くと、胸がもやっとするのを感じた。
 
 任務でも演習でも、最近カカシと目が合う事が増えた気がする。それをカカシに言ったら、「それだけ俺のことを見てるんだよ、サスケは」と小説のページをめくりながら言う。その理屈だと、カカシも俺のことを見ていることになる。まだ一度もきちんと聞けていない。あんたは俺のことをどう思っているんだ。なんでセックスをするんだ。
「……セフレ、ってやつだよ。」
 俺から望んで行為に及んだことはない。カカシの都合でカカシがしたい時にマンションのチャイムを鳴らしてそのままベッドに連れて行かれる。そんな日々が続いていく。
 胸にもやもやとしたものが生まれていた。何だろう、この感じ。カカシに抱かれながら、喘ぎながら、呆然と考える。カカシとセックスに耽るこの時間は嫌いではなかった。けどそれらが終わったら俺はすぐに服を着てカカシのマンションを後にする。まるでもう用済みと言わんばかりのカカシの態度にまた胸がもやっとする。
 カカシの行為はエスカレートしていき、機会があればセックスをするようになった。演習中に二人きりになった時に森の奥で声を殺しながら受け入れることも増えていき、俺の胸のもやもやも広がっていく。俺はカカシを受け入れることを、こころの底では納得できていないのだろうか。
 木の幹に手をついて尻を後ろに向けると、カカシは指で慣らしてからそれを挿れる。奥まで入ったときの満ち足りた感覚が好きだった。時々カカシは奥深くに挿れたまま俺を抱きしめてうなじにキスをする。何でそんなことをするのか分からないまま、抱きしめるその腕の力の強さを感じながら胸だけがまたもやっとする。喉まで込み上げてくる言葉は言葉にならずに、喉の奥に留まり続けて息が苦しくなる。
 カカシだから? この胸のもやもやは。それとも誰でもこうなるのか?
 確かめるために他の男ともセックスをしてみたけれど、あの感覚はどうやらカカシが相手の時だけらしい。
 カカシに対して俺は特別な感情を持っているということだろうか。毎日のように抱かれ続ければそんな感情も湧くものかもしれない。深く考えないようにしようと思うほど意識してしまう。
 今日もまた目が合った。カカシは何を考えて俺を見ているのだろう。セックスのことしか考えていないんだろうか。なぜそんなに俺に執着するんだろう。そこに特別な何かはあるのだろうか。それともやっぱり単に性欲が強くてやりたいだけなんだろうか。
 
「他の人とやったらしいね?」
どこで聞いたのやら、カカシが不機嫌そうにそう言った。
「俺の勝手だろ」
「止める権利はないけど、なんかむかつく。」
 その日、いつもより荒々しいセックスに、まるでカカシは嫉妬しているかのようだった。なんで嫉妬? 俺を独占しているつもりでいたんだろうか。そう思うと、とことん反目してやりたくなった。
 俺は時折出会茶屋に足を向けてはその場限りの誰かと関係を持つようになった。誰も彼もカカシより気持ちよくしてくれるわけじゃない、キスを求められることもあった。でも唇だけは誰にも譲らなかった。カカシが頑なにキスをしないことに、俺も何か特別なものを感じているのかもしれない。
 しばらくして、風の噂で聞いたのか、いつものようにカカシのマンションに行くと俺は詰め寄られた。
「なんで他の人とするわけ?」
 静かな声の中に、苛立ちを感じる。カカシはそれを隠そうともしていない。つまり、俺に伝えたいんだ、『俺は苛立っている』と。……知ったことじゃない。
「あんたには関係ねえだろ。」
 靴を脱ぎながら視線はカカシから外さない。俺だってカカシには苛立ってる。……苛立ってる? 俺が? ……なんで?
 カカシの横を通り過ぎて寝室に向かおうとすると、腕を掴まれた。
「前にむかつくって言ったよね。嫌がらせのつもり?」
「さあな。なんにしろあんたが文句言う権利はねえよ。俺たちは恋人でもなんでもねえだろ。」
 また胸がもやもやし始めた。この得体の知れない何かが不快だった。これだ、俺の苛立ちの原因は。
「……それで俺より上手い奴はいたの。」
「いねえよ。」
「ならなんで。」
「俺の時間をどう使おうと俺の自由だ。」
 カカシの顔が少しだけ悔しそうに歪む。屈服させたみたいで気分がよかった。けれどその後のセックスはねちっこくて、散々焦らされた上に挿れられれば何度もイカされて、それが何時間も続いていたのを知ったのは事後時計の針を見たときだった。
 ベッドから起き上がれないでいる俺を、カカシは座りながら見下ろす。
「もう、やめてよ。他の男とやるの。俺とするのが一番良いでしょ?」
「……珍しいな、やった後に話しかけてくるなんて。」
「返事は?」
「あんたはいつもやったらすぐにさよならだからな。」
「だから、返事は。」
「俺がいつどこで何をしようと、俺の勝手だ。」
「……まだ他の男とするってこと?」
「あんたには関係ない。」
「どうしたらやめてくれるの。」
「さぁな。」
 俺は悲鳴を上げる腰を何とか立たせて、いつものようにさっさと服を着てカカシの寝室から出ようとする。と、右手首を掴まれた。
「サスケ」
 俺はその手を振り払って、玄関に向かった。カカシは追いかけては来なかった。所詮俺たちは、その程度の関係だ。