いつか

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成人向,長編,原作軸,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,モブサス描写有

追いかけて(side K)

 いつものようにサスケが来てくれるだろうと思っていたら、この日パックンしか帰ってこなかった。パックンに尋ねると「外出してるみたいだが、追うか」と言われて急いで出かける準備をする。もうすでにサスケの行先まで確認していたパックンは繁華街に向かって行った。
「サスケは何時に出かけた?」
「そんなに時間は経っていない。」
「どこに向かった?」
「路地にある喫茶店みたいな店だった。」
 ……まさか、また出会茶屋なのか? まだ間に合うのか? ともかくパックンについて走る。
 繁華街のメインストリートから道を逸れて3分、入り口に「男性専門」と書かれているそこは確かに見た目は喫茶店のようだった。ただ窓にはブラインドが張られていて中の様子は伺えない。
「本当に、ここ?」
 パックンが頷いたのを確認して口寄せを解き、迷わずその扉を開けると、カランカランと音が鳴って中にいた客の注目を浴びた。その中に、窓辺の席に座っているサスケの姿があった。
「初めてのお客様ですね? こちらにお名前と今の時間を。」
 受付に置いてある台帳にささっと名前と時間を書いて真っ先にサスケの元に向かう。深呼吸をしてこころを落ち着かせてから静かに話しかけた。
「俺への嫌がらせ?」
 わざわざいつもパックンを迎えに行かせる時間にこんなところに来るなんて。何がしたいの。何が言いたいの。そんなに俺が嫌がることをしたがるのはなんで。
「あんたとはやんねえぞ」
 サスケは悪びれる風もなく目も合わさない。
 やっぱり、つまりまた、別の男と。……絶対にそんなことさせない。させないためにはどうしたらいい。なんでそんなことをする理由が知りたい。俺の嫌がることをして俺の気を引きたいのか、それとも本当に俺とのセックスにもう飽きたのか、他の男の方が良かったのか……いやそんなわけない、俺以上にサスケを満足させられる奴なんているわけがない。何にしても、聞き出さないといけない。
「また俺以外とするつもり?」
「そのためにわざわざここまで来たんじゃねえか。」
「なんでそういうことをするの。」
「さぁな。」
 一番聞きたい肝心なところをはぐらかされて苛々する。……ああ、もしかして俺がサスケに対して散々はぐらかしてきたせいか。そのツケが今?
 思わずサスケの手首を掴んでいた。喫茶スペースの奥に部屋がある。あっちでいつもサスケはきっと。しかし掴んだ腕を引っ張ると受付からスタッフが飛んできた。
「お客様、当店ではあくまで合意の方にしか奥を利用させられません。」
 サスケはふん、と鼻をならして俺を見上げる。
「ほら見ろ。あんたとはしないと言っただろ。離せ。」
 俺を見上げて睨みつけているサスケは本当に別の男とするつもりらしい。なんで。どうして。
「でもそのままだとまた知らない奴とやるんでしょ。やめてよって何回も言ったのになんでお前はそうなの。」
「言っただろ、いつどこで何しようが俺の自由だ。」
「……俺だけじゃ満足できないってこと?」
「ああ、そうだな。」
 サスケの言葉が胸に突き刺さる。俺が一番いいって言ったくせに。何がそんなに駄目だった? もっとねっとりと時間をかけてセックスをするべきだった?
「なら今から満足させる。だから行くよ。」
「セックスしか頭にないあんたには出来ねえよ。」
「どういうこと?」
 サスケは何を求めてる? わからない。どうしたら俺だけで満足してくれる。それとももう手遅れなのか? サスケはもう俺に飽きたからこんなことを続けるのか? ……なんとかしてやめさせられないのか。絶対に嫌だ。他の男となんてやらせない。
「教えてやる義理はない。手首離せ。」
 俺は黙って掴んでいた手首の力を緩めた。強硬手段に出てもいいことはないということは分かった。今は話を聞かなきゃいけない。なんで俺だけじゃ満足できないのか、俺に足りないものは何かサスケにちゃんと聞かなきゃいけない。
「教えてよ、どうしたらお前を満足させられるの。」
 テーブルをはさんでサスケの向かいに腰を下ろす。思えば今までサスケの声を全く聞いてこなかった。サスケの気持ちも何もかも。でもセックスには自信があった。サスケを一番気持ちよくさせられるのは俺だ。でもそれだけじゃもうサスケを繋ぎ止めることができない。サスケはどうして欲しい、どんなセックスがしたい。真剣にサスケに向かう俺に、サスケは一刻の時を置いて話し始めた。
「セックスは本来何のためにするものだと思う。」
 俺は慎重に考えて言葉を選ぶ。そこにサスケが求めているものがあるんだろう。
「子どもを作るため……それにコミュニケーション、……愛情の発露、確認。あとは性欲処理。」
「それであんたのするセックスはどれだ。」
「……性欲処理。」
「そうだよな、俺たちのセックスはただの性欲処理だな。」
 そう、性欲処理を言い訳にして今までサスケとこの関係を続けてきた。だからあえてセックス以外のことはしなかったし会話もできるだけしないようにしてきた。そうでないとどこで俺の想いが漏れ出てしまうかわからない。それでも俺とのセックスを求めてお前は俺の家に通っていたはずだ。俺とのセックスに満足していたはずだ。もう、そうじゃなくなってしまったの?
「サスケが求めてるのは違うってこと?」
「平たく言えばそうだ。なあ、ここで俺がどんなセックスしてるか聞かせてやろうか。」
 ここで他の男とやることで、サスケのセックスに対する何かが変わってしまったのか。……ここではサスケの求めるセックスができるということなのか。ワンナイトの関係なのに、俺とするよりも良いと、そう言うのか? でもそんなの聞きたくない。聞いたらきっと頭がどうにかなってしまう。
「……聞きたくない。けど単なる性欲処理だけじゃない何かがあるってことね。」
「そういうことだ、わかっただろ。性欲処理しか頭にないあんたはもう帰れ。」
 子どもは作れないとして、俺が言った中で残るのはコミュニケーション、愛情の発露と確認。サスケが求めているのは……きっとこのふたつのどちらか。愛情の発露と確認をワンナイトの相手がするわけがない。ということは、コミュニケーション。
「……嫌だね。お前が他の奴とやるなんで考えたくもない。……話はわかった。ちゃんとサスケを満足させる。今日駄目だったら愛想つかされても構わない。だから俺にチャンスをくれ。満足できたら、もう他の男とやらないで。」
 必死の懇願だった。絶対に満足させる。サスケが求めているのは身体だけじゃないこころのコミュニケーション。コミュニケーションとしてのセックス。でもそれをしたら俺は堪えられるのだろうか、好きだという気持ちが溢れてしまわないだろうか。ただ今はそんな心配をする余裕もなかった。サスケの求めるセックスをしなければ、サスケとの今の関係すら終わりかねない。それだけは嫌だった。
 立ち上がってサスケに手のひらを向けると、サスケはその手を取った。俺は奥の部屋に先導して個室に入り扉を閉める。サスケをプレイマットの隣まで連れてきて握っていた手を離した。
「自分で脱ぐ? 脱がせてもいい?」
 本当なら脱がしたい。脱がしながらサスケの身体にキスをしたい。でもそれじゃだめだ、ちゃんとサスケの話を聞かないと。実質これは最後のチャンスなんだから。サスケが他の男のところへ行かないための最後の。
「自分で脱ぐ。」
 案の定というかサスケはいつものように自ら淡々と脱いでいく。露わになっていく肌に見惚れながら、俺も服を脱いでいった。二人とも全裸になると俺はサスケを抱き上げてその目を見ながらマットに静かに仰向けにする。
「顔見ながらしたいから。」
 ああ、キスしたい。キスしたい。キスしたい。だめだ、我慢しろ。
 唇のかわりに額にキスをして耳元、首筋、鎖骨と唇を落としていく。
「なあ、なんであんたは口にはキスしないんだ。」
 したいよ、したい。我慢するのがどれだけ大変なのかサスケにはきっとわからないだろう。でも俺はサスケのそれだけは守ると決めたんだ。
「……サスケが将来好きになった人のために残してるの。」
 こんな関係ずっと続くわけがないんだから、きっといつかサスケにも好きな人ができて結婚して一族の復興のために子どもを作って、その時のその人のためにせめてこれだけは残しておいてあげたいんだ。
 サスケが何か言おうとするのを遮るように手にローションを垂らしてサスケのそれを扱き始める。少しだけ芯があったそれはみるみるうちに勃ち上がって固くなっていく。
「っん、……っ」
「気持ちいい? ほら勃ってきた。」
「は……きもち、いい……」
 俺はサスケの言葉に満足した。こうやってちゃんとコミュニケーションをとりながらセックスをすればいい。ただ俺の気持ちが言葉に出ないように気をつけるだけでいい。ずっとサスケとしたかった普通のセックスをこんな場所ですることになるなんて皮肉なものだ。俺のスプリングの効いた広いベッドの上で、サスケと見つめ合いながら、サスケと言葉を交わしながら、サスケを抱きしめながら深く深く繋がりたかった。ずっとずっとそう思ってた。
 簡素なプレイマットの上で仰向けになっているサスケの膝を立てる。
「指、挿れるよ。」
 俺はつとめて優しい声色でサスケに言う。控えめに頷いたのを確認してから後ろに指をそわせた。ぬる、と中に指を入れると溶けそうなほど熱いいつものサスケの中。その中を押し進めるといつものそこを優しく指の腹で撫でる。
「っぁ、……っ、んっ……」
 漏れ出る声も可愛い。サスケの全てが可愛い。少しずつ指を早く動かしていく。少しずつそこを強く撫でていく。サスケの声が高くなっていく。十分に慣らしながらサスケの様子を見て指を増やしていくと漏れ出る声もまた大きくなる。
 指じゃなくてちゃんと繋がりたい。サスケと一緒になりたい。3本の指がスムーズに出入りするようになって俺はキスをしたい衝動と闘いながらサスケの目を見つめる。挿れたい。ねえ、サスケは? サスケも挿れて欲しい? 繋がりたい?
「中……だいぶ慣れたけど、挿れていい?」
 ああ、もう限界だ、早く挿れたい。早く返事をして。
「んっ、挿れて、……っあ、カカシの……っ」
 中を刺激していた指をそろっと抜いて俺のものをサスケのそこにあてがう。ゆっくりと奥に進めていくとサスケが熱い息を吐いた。俺は奥まで挿れると一息ついて体勢を変えてサスケの背に腕を回して抱きしめた。
「……カカシ?」
 ――ああ、好きだ。好きだ。好きだ。ずっとこうして繋がったまま抱きしめたかった。サスケの温かい肌を感じながら、蕩けるように熱いサスケの中を感じながら、どんどん好きだという気持ちが溢れ出そうになる。今俺がどんなに幸せなのか、顔を見られたら悟られかねない。だから抱きしめる腕の力は絶対に緩めない。
 そのままゆっくりと腰を動かし始めるとサスケもその腕を俺の背中に回して力を込める。ああ、今俺たちは抱きしめあっている。深く繋がったまま抱きしめあっている。それだけでいってしまいそうなほど幸せで興奮する。そう、今俺は幸せだ。すごく幸せだ。サスケはどう思ってる、どう感じてる。
「っあ、……んっ、は、……ぁっ、カカ、んっ……!」
 ああ、サスケが俺の名前を呼んでくれている。俺のことを考えてくれている。それが嬉しくてたまらない。サスケの頭の中を俺でいっぱいにしたい。俺の頭の中は、ずっとサスケのことでいっぱいだ。抱きしめ合いながらじっくり味わうようなスローセックスを続ける。
「……俺は、これが好き。」
 思わず声に出してしまった。でも大丈夫、サスケを好きとは言ってない。この体位がが好きなんだと、そういう意味でとらえてくれるだろう。徐々に腰の動きを早くしていく。
「えっ? あっ、なにっ、んっ! あ、あっ!」
 考える暇なんて与えない。俺とのセックスしか考えられないように。……いや、駄目だ。それじゃいつものセックスと同じだ。必要なのはコミュニケーションだ。こころの交流だ。
「……サスケ、もっと激しくしてもいい?」
「ぅあっ、んっ! もっと、あっ! 激しくっ」
 サスケがそれを求めているのは、見ているだけでわかる。だからいつもわざわざ確認なんてせずにサスケが欲しがっているものを与えてきた。セックスをしているとき俺たちに言葉は必要なかった。でもそう思っていたのは俺だけだった。もっと激しく、というサスケの声を聞いて俺は普段よりも一層興奮したのがわかった。サスケが明確に俺を求めているという事実。それが言葉として耳に入ってきて、ああ、サスケもこれが欲しかったんだとしっかり感じることが出来た。
 深く息を吐いてこころを落ち着かせ、サスケの背中に回していた腕を離して腰に手を添えると、俺は腰の動きをぐんと早くした。いつもは見ないサスケの顔を、目を見ながら、いつものように激しくサスケを揺さぶる。
「はぁっ、気持ちいい……っ、……サスケは?」
「あ、あっ! んっ、ぅあ、あっ! か、っあ! あ、あっ、あっ!!」
 動きが激しすぎてサスケは喘ぎ声以外出てこないようだった。ああ、そんなに感じてくれていることが嬉しい。嬉しいけど、サスケの言葉をもっと聞きたい。完全には動きは止めずにゆっくりとグラインドさせる。奥に届く度に喘ぎ声を漏らすのが愛おしい。
「はぁっ、あっ、は……、ぁっ、はぁっ……」
「聞こえた? サスケも気持ちいい?」
「はぁっ、気持ち、いいっ、んっ、……っあ」
 ああ、たまらない。キスしたい。抱きしめたい。激しく揺さぶりたい。でもまだだ。まだ我慢だ。ちゃんとサスケの声を聞いてから。俺ははやる気持ちを抑えようと荒く息を吐きながらサスケの額にキスを落とす。
「……よかった、また激しくしていい?」
「……好きに、しろ」
 サスケのその言葉が肯定の意味だと俺は知っている。けど今日はそうじゃない、誤魔化しじゃないちゃんとした言葉でサスケの意志を確認したい。
「やだ。ちゃんと、サスケがどうしたいのか聞きたい。知りたい。」
 サスケの声をもっと聞きたい。言葉を聞きたい。俺はこんなにもお前を求めてる。激しく揺さぶってサスケの頭も快感でいっぱいにしてやりたい。その蕩けた顔を見て、声を聞いて、中を感じて、そうしたらきっと、俺の興奮は、サスケを好きな気持ちはどんどん高まっていく。
「……っ、……はげ、しく……の方が……」
「ん、わかった。」
 額にもう一度キスをしてから腰に手を添えて、また激しく腰を打ち付け始めた。いつもと同じようでいて、いつもと違う。感じながら喘ぐサスケの顔を見ながらするセックスがこんなにも気持ちいいなんて。こころが満たされるなんて。ああ、好きだ。サスケが好きだ。もっと感じさせたい。もっと気持ち良くさせたい。もっとその声を聞きたい。もっとその顔を見たい。
「あっ、あああっ! あ、あっ、ああああっ! カカッ……! いく、い、あ、あああっ!!」
 ビクンと身体が痙攣する。中も断続的に締め付けられて、思わず出しそうになるのを何とか我慢する。奥に入れたまま動きを止めて、サスケの髪をさらっと撫でた。ああ、愛おしい。キスがしたい。こんなサスケの姿は俺以外知らないはずだ。俺以外に見せないはずだ。こんなにサスケを気持ちよくさせられるのは俺だけのはずだ。ワンナイトの男になんか出来るはずがない。サスケを知り尽くしている俺だからサスケをいかせられるんだ。サスケのことが好きだから。ああ、好きだ。好きだ。こころの底から込みあがってくる想いを口に出さないよう、俺はサスケを見つめながらひたすら荒い息を吐く。何十分でも、何時間でも、サスケとこうして肌を合わせていたい。
「……時間制、だったっけ……。」
 ここは一時間いくらだっけ。全然メニューを見ていなかった。しかしサスケが通えるくらいだから法外な金額になることはないだろう。
「まあ、いいか。今日は俺が出すよ。」
 サスケの背を支えてその上半身を起こし、奥まで繋がったまま向かい合ってまた抱きしめる。好きな気持ちが、愛しい気持ちが止まらない。サスケが好きだ。この気持ちは止められない。抱きしめる腕に力がこもる。少しずつまた腰を動かし始めるとサスケも俺の背に手を回した。ああ、幸せだ。口から漏れ出そうになるのをぐっと我慢する。
 サスケも俺のタイミングに合わせて腰を動かし始めた。ああ、愛おしい。ずっとこの時が続けばいいのに。俺たちはまたセックスの深みに入っていく。時折言葉を交わしながら。その顔を見つめながら。俺は俺の想いをサスケに余すことなくぶつけた。
 
「満足、できた?」
 サスケは何も言わず頷いた。俺はほっと胸を撫で下ろすとともにまた好きだという気持ちが込み上がってくる。
「……よかった。どうされるのが一番好き?」
「奥に入ったままぎゅって……」
「……それ俺も好き。」
 嬉しい気持ちを誤魔化すようにサスケから顔を背けてウェットティッシュでセックスの痕跡を拭き取っていく。
「好きなら何で今まで……」
 少しだけ、少しだけ試すようなことを言ってみても良いだろうか。こういうセックスを望んでいるということはサスケももしかしたら……なんて俺は思ってしまった。
「……しちゃうと、本気になるかもしれないから。」
「え?」
 案の定サスケは戸惑ったように俺を見つめる。
「だって困るでしょ、サスケ。俺がお前を好きになっちゃうとさ。」
 構わないと言ってくれたら。俺も本当は……なんて言ってくれたら。普段と違うセックスをして、俺の頭は若干馬鹿になったみたいだ。こんなこと言ったって、困らせるだけだとわかっているのに確かめたくなってしまう。
「俺はさ、身体だけじゃなくて心まで深く繋がれたって思うんだよ。そんな抱き方ばかりしてたら、俺単純だからさ、お前を好きになっちゃうかもしれない。」
 サスケは俺を見つめながら考え込む。何を考えているんだろう。もし俺が本気でサスケが好きだなんて言ったら、サスケは俺を避けるようになってしまうだろうか。それとも俺と同じ想いを抱いてくれるようになるんだろうか。
「カカシが俺を好きになっても俺は困らないけど……あんただろ、困るのは。」
 困らない? 困らないって言った? 今、サスケは。俺が、サスケを好きになっても良いってこと? 俺が身勝手な想いを持っていても、今まで通り会ってくれると、そういう意味だと思っても良いの?
 聞きたい。確かめたい。けれどこれ以上は駄目だ、駄目だ。まだサスケに知られるには早い。ずっとお前のことが好きだったなんて言えない。自然に、好きになっていく分には構わないと、サスケが言ったのはきっと、そういう意味だ。
 胸がドキドキしていた。落ち着け。はやるな。今はサスケがまた他の男としなくなればそれだけでよかったはずだ。それ以上を求めちゃ駄目だ。
 俺は何も言えないまま、サスケにウェットティッシュを渡した。
 サスケもそれ以上、何も言わなかった。