傘を差し出したばっかりに

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成人向,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説エロ,やおい

三十分

 カカシに舐められたところをもう一度シャワーで洗い流そうと、サスケは洗面所に向かった。
 脱衣所で部屋着を脱ぎ、少し考えてからそれを洗濯機に入れると、浴室に入ってシャワーを出す。
 
 ……もう、キスはしない。絶対にだ。
 あのキスをされると、頭がぼーっとして抵抗できなくなる。絶対に、しない。
 
 それと潤滑油になりそうなものは一切置かない。
 ローションは家にないからいいけど、乾燥肌だから寝室に置いていたワセリンももう捨てる。
 
 ……そして、助けを呼ぶ。
 警察への電話は二回失敗している。頼れるのは――単身赴任中の、兄さん。
 兄さんに電話して、警察を呼んでもらう。
 スマホを奪われても、音声入力で電話ができるはずだ。
 知らない男が部屋に押し入ってきたと言えば、きっと兄さんは警察を呼んでくれる。
 
 カカシ対策を練って、浴室から出る。バスタオルで身体を包むと、新しい部屋着を取り出した。
 ーそういえば。
 カカシもシャワーを浴びているはずだ。
 服はどうしてるんだ? まさかまた同じ服を着ているのか? ……それとも、裸でうろついている?
 想像して吐きそうになった。どっちのパターンも最悪だ。
 部屋着を着込んでリビングに出ると、カカシはソファでくつろぎながらテレビを見ていた。……‥全裸で。
 野郎の裸なんか見たくもない。背に腹は変えられない。
 サスケは寝室のクローゼットを開けると、兄イタチの部屋着と下着を取り出してソファでくつろぐ全裸男に投げつける。
「裸で、うろちょろするな。」
 服を受け取ったカカシは、「どうしようかと思ってた。助かる~」と言いながらその服を着込んでいく。
 ……兄さんの服を着ているカカシは妙に苛ついた。 
「勘違いするな。てめえのための服じゃねえぞ。」
「……じゃあ、明日俺のために服買ってくれる?」 
 にこ、と笑いながら言うカカシ。どこまで図々しい奴なんだ。
 とはいえ、兄さんの服をこいつに着せ続けるのも嫌だ。
 ………背に腹は変えられない。
「買いに行ったらその服はすぐ脱げよ、二度と袖を通すな。」
 カカシはすん、と服の匂いを嗅ぎながら、「わかったわかった。これは別の誰かの服ってわけね」と理解したようだった。
「あと、二度と寝室に入ってくるな。リビングの床で寝ろ!」
「え……それはちょっとひどくない? せめて布団ないの?」
「……布団を出せば寝室には入らないな?」
「うん……入りたいけど……ま、我慢するよ」
 サスケは黙って寝室のクローゼットから布団一式を出すと、リビングの床を指差す。
「出してやったから二度と寝室に入るな、わかったか。」
「サスケはソファでする方が好きなんだねぇ……了解了解。寝室には入らないよ」
 ……とんでもない勘違いをされたようだが……まあいい、これで寝室は安全になった。
「……俺は寝るが、くれぐれも勝手な事はするなよ。」
「わかってるって」
「…………」
 サスケは黙って寝室に入り、扉を閉めた。と、同時に、深いため息が出る。
 本当に何なんだ、あいつは。
 ベッドに上がると、端に寄せられた掛布団をかぶる。
 ああ、もう、疲れた……。
 サスケはそのまま深い眠りに入っていった。
 
 アラームの音で目が覚めると、ベッドから降りてそっとリビングを覗く。布団は丁寧に畳まれていて、キッチンからはご飯の炊ける匂いがしてくる。
 ……夢じゃ、なかった。
 重い気持ちでキッチンを見ると、鼻歌を歌いながら調理をしているカカシがいる。
 カカシはサスケに気がつくと、ニコッと笑って「おはよう」と声をかける。
 サスケはカカシを無視してもう一度寝室に戻り、制服に着替えてから洗面所に向かった。
 冷たい水で顔を洗うと、さっぱりして今日も一日頑張るか、という気持ち……にはなれなかった。なぜなら、あいつがいるからだ。
「サスケ? もうすぐ朝ごはんできるよー」
 間延びした声が響く。
 サスケは黙ったままダイニングテーブルにつくと、カカシはニコニコしながら冷奴、白和え、青椒肉絲、コンソメスープを並べ、最後に山盛りのご飯を持ってくる。
「おい、こんなに食べれねえぞ。ご飯減らせ。」
「食べきれなかった分は俺が食べるから。だからほら、食べて食べて!」
 向かいの席に座りながらニコニコとサスケを見つめる。
(……食いにくい)
 しかし出されたからには、食べるのが礼儀だろう。
 箸を手に取ると、スープを一口飲んでから冷奴に醤油をかける。
「へぇ、サスケは醤油派かぁ。」
(……いちいちうるせえな)
 冷奴を箸で割って口に入れ、食べながら青椒肉絲に箸を伸ばした。
「もっとゆっくり味わって食べなよー。」
「るせぇな、食事くらい好きにさせろ。」
 山盛りのご飯の上に青椒肉絲を乗せると、その下のご飯ごと箸で口に運ぶ。
「ねえ、おいしい? 好き? どう?」
 咀嚼しているときに話しかけられてサスケはイラッとする。味は確かにうまいが、それを素直に言うのも何だかムカつくので黙って無視して食べ続ける。
 ご飯の山が小さくなったところで、箸を置いた。
「ん? もういいの?」
「……ごちそうさま。残り食べろよ。」
 サスケはスッと立ち上がると、寝室の隣にある自室に入った。
 通学鞄に筆記用具やノートを入れていると、不意に尻をさわっと撫でられる。
「っ!」
 振り返ると、そこにはやはりカカシ。
「触んな! つかこの部屋にも入るな!」
 カカシはお構いなしにサスケの前も触る。
「朝勃ちはもうおさまっちゃったか、残念。」
「聞いてんのかてめぇ……!」
「この部屋じゃイヤ? ならキッチン行こうよ」
 そう言いながら、サスケの腕を掴んで引っ張っていく。
(くっそ、力強え……っ! )
 ピカピカに磨かれたキッチンまで連れてこられ、前のめりに手を置かされると、カカシは後ろからカチャカチャとサスケのベルトを取り去ってズボンのボタンを外していく。
「っおいやめ……!」
 ズボンがストン、と床に落ちた。
「……朝の運動、しよっか」
 耳元で囁かれる。
 サスケは裏拳でカカシを殴ろうとしたが、避けられるどころかカカシに当たる前に腕を取られ背中に縫い止められた。
「っ……!」
 嫌な汗が流れる。
 スマホは自室に置いたままだ。助けを呼べない。
 カカシはサスケの前をさわさわと撫ではじめていた。悲しいかな、まだ若いそこは触られると相手が誰であれ反応してしまう。
 空いているもう一本の手でカカシの腕を掴み、離そうとするが、やはりカカシの力は強い。サスケの力では太刀打ちできない。
「離せっ! それ以上触るな……‼」
「でもほら、勃ってきたよ」
 そんなことは、自分が一番よくわかってる。
 自由に動かせる足で背後を蹴るが、「おっと」と言いながらカカシはヒョイと避けた。
「なーに? まだ抵抗するの? なんで? 俺に任せときなって。気持ちよくしてあげるからさ。」
「気持ちよくなる必要なんかない……‼」
「ふぅん、昨日二回も気持ちいいことしたのにまだそんなこと言うんだ?」
 カカシはパンツを下ろして固くなってきた前を直接握り、上下に扱き始める。
「やめ……!」
「思い出してよ、昨日ベッドでどれだけ気持ちよかったか……」
 耳元で囁き、ついでに耳に舌をそわせる。
「っ気持ちよくなんか……‼」
「キスしたら思い出す?」
 首筋にチュ、とキスが降りてくる。
「キスなんか、しねえっ!」
「……へぇ」
 溢れてくるカウパーを亀頭の先にくるくると塗り付け、裏筋をなぞる。
「朝だし、早めに終わらせちゃおうか。」
 カカシの手が前を開放し、代わりに後ろの穴に指をそわせた。
 サスケの背筋がゾクゾクする。
 ――でも、潤滑油がないはずだ。何もなしで入るわけ、が、
 ぬぷぷ、カカシの長い中指が中に収まっていく。
 え、なんで、うそだ、うそだ!
「っあ、……っ!」
 クチュ、と音を出しながらカカシの指がサスケの中をマッサージする。
「ワセリンよりも滑りがいいね、サラダ油」
 クチュ、クチュ、
 指の抜き差しが始まる。その都度前立腺の裏をなぞられ、サスケは漏れ出そうになる声を口を塞いで耐える。
「サスケ、我慢しないで。声聞かせてよ。」
 指を二本に増やす。
「いっ、やだ……、っ!」
 クチュックチュックチュッ
 指の動きが早くなる。
「っん、は、っ……!」
 ぐり、ぐり、
「ね、声出して……?」
「い、やだっ……! んっ、ぁっ……!」
「……強情っ張り。素直になりなよ。」
 指が引き抜かれ、代わりに熱いものがあてがわれる。
 それは一気にサスケの奥まで貫いた。
「っ! ああああっ!」
「……やっと声出してくれた」
 パンパンパンパン!
 昨日とは違う、最初から激しいピストンに、サスケはなす術もなく声を上げる。
「あっ、あ、あっ! あぅっ、は、あっ!」
「……うん、やっぱりいい声」
 背後からの挿入は今までと違うところに当たり、それがサスケを困惑させた。
「やっ、あ、あっ、やっ、め、んぁっ! あっ、」
「ね、サスケ、気持ちいいでしょ……? 気持ちいいって言って?」
「っあああ! いやっ、だ、あっ、言わな、あ、あぁっ!」
 カカシはスマホをキッチンに置くと、動画の再生ボタンを押す。
『んんっ、はっ、あっ、んぁっ! っあ、』
 スマホから流れてくるサスケの喘ぎ声に、思わず顔が赤く染まる。
「止め、ろっ! あっ、はあっ、あっ!」
『んっ、っ……! きもち、っい、あぅっ! はぁっ、』
「ほら、昨日はちゃんと言えたじゃない」
「やめっ、あっ、あっん、あ、止めっ、ろ! あっ、ああっ!」
「言ってよ。気持ちいいって。」
「だ、れがっ、言うかっ! っは、んんっ!」
「でも気持ちいいでしょ? 気持ちいいから喘いでるんでしょ? 気持ちいいんだよね?」
 まくしたてられ、つられて思わず言ってしまった。
「んっ、あ、気持ち、いっ……!」
「…ふふ、言えたね。ご褒美。……奥まで入れたげる。」
 カカシはサスケの身体を反転させ、向かい合わせになった。
 サスケの真っ赤に染まった顔を、カカシが見下ろす。
「み、るなっ! やめっ」
「なら、手はこっち」
 カカシがサスケの腕を自身の首の後ろに回す。――身体が、密着すると、カカシのものがサスケの奥深くに突き刺さるように腰を動かす。
「っあ゛! あ、あ、あ゛っ、だっ、あぅっ! だ、めっ! あ゛っ! あっ、あ、出るっ、あ゛ぁっ! で、あ、あっ、あ、ああああっ‼」
 ビクンっ! ビクッ!
 サスケの身体が痙攣する。と同時に白濁液が迸った。
「っあ、きつ。俺もいってい?」
「っは、あっ、いいっ、いい、早くっ、出し、っ!」
「じゃ、出すよ、っ」
 ひときわ早く腰を動かしたかと思うと、カカシはサスケの最奥にそれを打ちつける。
 ドクンっドクンっ……
 中で感じる、カカシのものが精を吐き出す鼓動。
「……っぁ、あ、」
 カカシがサスケをぎゅう、と抱きしめる。応えるように、サスケもカカシの首にしがみついた。
 
 ……グチュ、
 サスケの中からカカシのものが抜かれる。
 ゴムの先にはカカシの精液が溜まっていた。
 ……三度目の光景。
 サスケはハッとしてカカシの首に回していた手を外し、サスケを抱き締めるカカシの腕を振りほどこうとする。
 が、やはりカカシの方が力が強く、腕が抜けない。
「っ離せ……!」
「もうちょっとさ、余韻を楽しもうよ」
「あんたと、違って……! 俺には、学校があんだよっ……‼」
 サスケが時計を気にしているのを見て、カカシはニコッと笑った。
「時間なら、大丈夫だよ。あの時計、三十分早くしてあるから。」
「……は?」
「ついでに言うと、寝室のアラームも三十分早くしてあるし。」
「……え? は!? いつのまにそんな……!?」
「だから朝ご飯食べて、朝セックスして、それから準備しても余裕で間に合うから」
 そう言って、サスケを離そうとしない。
「ってめぇ! 勝手なことするなってあれほど……‼」
「だって言われる前にやったんだもん。ノーカンだよ。」
「くっっそ‼ ぜってえ追い出す‼ てめぇ覚えてろよ‼」
「……ハハ、やれるもんならやってみな? 俺一度ここに住むって決めたら絶対出て行かないから。」
 サスケがカカシの腕から解放されたのは、それから十分も後だった。