傘を差し出したばっかりに

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成人向,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説エロ,やおい

耐えられない

 サスケは学校に着いてから何度目かのため息をついた。
 あの得体の知れない男はいつの間にかマンションの管理組合に新規入居者届を出していたらしく、ご近所さんに挨拶までして我が家の住民として堂々と居座っている。
 カカシはしきりに「気持ちいいことしよう」だとか最中に「気持ちいい?」と聞いてくる。……正直に言えば、最中は気持ちよくてどうにかなりそうだ。
 でもひとたび終わると猛烈な後悔と悔しさが込み上げてくる。嫌なはずのに、気持ちよくなっていいようにされて、……感情が追いつかない。
 いっそのこと全て受け入れてしまった方が楽なのではないかと思ってしまう。そうすれば、家事もしてくれるし、素直に気持ちいいことも受け入れられるし……。
 サスケはハッとして頬をパチンと叩いた。
 認めない、俺は認めない。
 あんなことをされるのを受け入れるだなんて認めない。
 認めてたまるか。
 そこに、授業の始まりを告げる鐘が鳴った。
 
 昼休みの時間、教室の隅で男子が何人か集まってスマホ画面を見ていた。耳を澄ますと女の喘ぎ声が漏れ聞こえてくる。ああ、エロビデオでも見てんのか。
 興味ないな、とカカシが作った弁当を食べようと弁当箱を開けようとすると、メモがついていることに気がつく。
 ……なんだ?
 四つ折りに畳まれたメモを開くと、『サスケのかわいい動画、シェアするから見といてね』と書かれている。
 そこに、ピロンとラインの通知音が鳴った。
 画面を開くと、いつの間に撮ったのか今朝キッチンでやった時の動画の一部と思われるものが現れる。
(……何考えてんだあいつ……‼ )
 サスケはその動画を消そうとしたが、それよりも先に自動再生が始まった。
『気持ちいいでしょ? 気持ちいいから喘いでるんでしょ? 気持ちいいんだよね?』
 ストップストップストップ……‼
 ギリギリサスケの声が再生される前に停止ボタンを押す。しかし既に再生されたその音量は決して小さくはなく……近くにいた生徒から驚きを含む視線を浴びる。
 そして教室の隅にいた男子グループの一人もサスケの元にやってきた。
「なぁ、今のってエロビデオ? だろ? ちょっと見せてくれよ」
 サスケはスマホの画面を伏せて机に置き、「間違えて広告クリックしたらあんなんだっただけだ」と努めて冷静に話す。
 伏せられたスマホを見て「ふ――ん……なんだ、つまんねえな」とまた教室の隅に戻っていった。
 他のクラスメイトもその説明で納得したらしく、昼食と歓談に戻っていく。
(……っあいつ! どういうつもりだ絶対に許せねぇ……‼ )
 サスケはラインのトーク画面から動画を削除した。
 ………ちょっと待て、俺あいつとライン交換なんかしてねえぞ……。しかし、いつの間にか時計の針を三十分進めているような男だ、ラインの友達登録なんて容易だろう。
 また、ため息が出る。
 ……どんどんサスケの生活が乱されていく。いつもの自分ではいられなくなる。おまけに公開羞恥プレイまでさせられそうになった。家に帰ればきっとまた「気持ちいいことしよう」だとか言いながら襲ってくるんだろう。サスケの中にどんどん土足で入ってくるカカシという存在に改めて身の危険を感じる。
 いや、感じるだけでなく実際に身の危険に遭っている。
 なのに追い出す方法が思いつかない。
(あの時目が合ったばっかりに……! )
 今更後悔するが遅すぎた。
 目を合わさなければ。傘を渡さなければこんな事にはならなかったはずだ。
 カカシのメモをぐしゃぐしゃに丸めてカバンに放り込んだ後、恐る恐る弁当の蓋を開けるが、中身はごく普通の弁当だった。ほっとして箸を手に取り、食べ始める。
 ……メモと動画は最悪だったが、弁当の味は、うまい。昨日渡した千円でカカシは朝食と弁当を作ったらしい。やりくり上手というのは嘘ではなかったようだ。
 いつもコンビニで買うおにぎりも好きだが、手作り弁当の方がやはり上手だ。
 これからは毎日きちんとした食事と弁当が食べられるのか、と思うとコスパはいいように感じる。
 ……襲ってきさえしなければ。
 その後も何度かラインの通知音が鳴ったが、何が送られてきてるのかわかったもんじゃない。サスケは未読無視することにした。
 
 玄関の扉を開けると、カカシが笑顔で「おかえり」と寄ってくる。
 サスケはカカシを無視して自室に入り通学カバンを机に置いた。
 そしてもうひとつの手に持っていた買い物袋をリビングのソファに投げ捨てる。
「今すぐその服脱げ。下着もだ。で、こっちに着替えろ。」
「裸になれってこと? さっそくしたいの?」
「誰がそんなこと言った。早く着替えろと言ってる。あと変な動画を送るな。二度と送るな。」
 サスケはなるべくカカシに近寄らないようにして部屋の扉を閉め、机に向かう。
 カバンの中にあるくしゃくしゃのメモを真っ先にゴミ箱に捨てると、ノートと参考書を開いて勉強を始めた。
 
 カカシは袋に入った服を取り出し、タグを切ってから着込んでいき、着ていた服は洗濯機に入れた。買い物袋の中には一緒に二千円が入っており、これは食費かな……? とサスケの部屋の扉をノックするがサスケは部屋から出てくる気配がない。
 まぁいいや、買い物行こう。
 カカシは二千円をポケットに入れると、スーパーに向かった。

 サスケはカカシが出ていったのを確認すると、家中の時計を確認してスマホの時間に合わせて針を動かした。
 本当にいつの間にやったんだ……。
 全ての時計を元に戻した後、脱衣所に入って制服を脱ぎつつシャワーからお湯を出す。
 シャツと肌着を脱ぐと、胸元にキスマークが残っているのに気づき、ため息が出た。
 見えない場所なだけマシとは言え…………情事の痕跡を残されたのは不愉快だった。
 浴室に入り熱いシャワーを浴びていると遠くから「ただいま~」と間延びした声が聞こえてくる。
 やばい、早く上がらないと。
 カカシの前で裸のままじゃ襲ってくれと言っているようなものだ。
 手早く体の水分を拭き取ると急いで部屋着に着替えた。
「あれ? もうシャワー浴びたの?」
 カカシが脱衣所から出てくるサスケに声をかける。
「悪りぃかよ。」
 カカシは頭から足先まで舐めるように見ると、悪戯っぽく笑って「俺は別にいいけどね」とキッチンに入っていった。
 夕食ができるまで時間があるだろう。
 サスケはまた自室に入り勉強の続きを始めた。
 
 十九時過ぎにサスケの部屋の扉がノックされた。
「晩ごはん食べよ!」と扉の向こうから聞こえてくる。
 一応、カカシはこの部屋に入るなという言葉を守ってくれているらしい。
 サスケはシャープペンシルを机に置くと、扉を開けてダイニングテーブルに向かった。
 
 夕食を食べ終えてソファでテレビを見ながら、サスケは違和感を抱えていた。
 昨日や今朝のことを考えると、いつ襲ってくるかわからないと警戒していたが、カカシは普通に料理を作って食べて後片付けをした後もサスケに手を出してくる様子がない。
 それはそれで大歓迎ではあるものの、正直拍子抜けしていた。
 このままただの家事をしてくれる同居人になるのならサスケとしては大歓迎だ。変な動画を送りつけてこなければ。
 ラインのカカシとのトーク画面には未読の通知が三件ある。昼に送られてきたものだ、恐らくまたやってるときの動画だろう。あろうことか学校にいるときに送りつけてくるんだから趣味が悪いにも程がある。
 と思いつつテレビに目を向けていると、時計の針が夜の八時を差した時、カカシが「お、いい時間」と呟いた。
 ……何が「いい」んだ……?
 ニコニコと笑顔を浮かべながらカカシがサスケの元にやってくる。サスケは警戒して後退り、ソファから降りた。
「ん? どうしたサスケ。俺のことは気にせずにソファでくつろいでなよ。」
「……あんたがいて、くつろげるかよ」
「ええ? なにそれ。俺サスケに何かしたっけ?」
 思いっきりしたじゃねえか‼
 叫びたくなるのを堪えて、カカシを睨む。
「俺何も変なことしないよ? ただ気持ちいいことするだけだって。」
「おま……っ、それが変なことなんだよ! 頭ぶっ壊れてんのか!?」
 じわじわと迫ってくるカカシ、サスケは後退りするが背中には壁の感触。
「なに、今日は立ったままがいいの? 俺はソファの方がいいなぁ。できたらベッドがいいけど……」
 カカシがサスケの顔の左側の壁に手をつく。
 そのまま顔が迫ってきてキスをする寸前でサスケの手が間に入った。
「やめろ、手をどけろ、離れろ、俺に触れるな」
「やだね。手どけないし離れない。サスケのかわいい声また聞きたいし、気持ちよくしてあげるのが俺の役目だもん。」
「俺は気持ちよくしてくれなんて一言も言ってない。早くどけ!」
「なんで? 昨日も今日も気持ちよかったでしょ? 気持ちいいって言ってたじゃない。大丈夫また気持ちよくしてあげるからそんなに怖がらないでよ。」
 カカシがもう一方の手でサスケの手を握り口元から遠ざける。
 サスケは横を向いて抵抗しようとするが、壁についていた方の手がサスケの顎に手を添えてカカシの方へ顔を向けさせる。
 慌ててもう一方の手で口を押さえようとするが、それもカカシの手に阻まれた。
 そして、唇が触れ合う。
(……っまずい、逃げられない……! )
 キスが深くなる前にサスケは叫んだ。
「ヘイSiri! スピーカーにして兄さんに電話かけて‼」
 すぐにスマホが呼び出し音を鳴らしはじめた。2コール目で電話が繋がる。
『サスケ? どうした?』
「兄さんっ! たす……っんん!」
 しかし、サスケの唇は完全に塞がれた。
 チュ、クチュ、と音を漏らしながら口内が蹂躙される。カカシの舌で弄ばれると、やはりサスケの抵抗は薄くなっていく。
『サスケ? サスケ何があった!?』
 スマホのスピーカーから兄さんの声が響く。
 カカシは少しだけ唇を離すと、「兄さんに聞かせてあげる……?」と耳打ちして、また深いキスを始める。
「……っん、……」
『サスケ? サスケ!?』
 顔が熱を帯びていくのを感じる。
 ……聞かせる? 兄さんに……!? こんな俺の声なんて、絶対に聞かれたくない……‼
 カカシはキスをしながらサスケのズボンの後ろポケットに入っていたスマホを取り出し、サスケの目の前でわざと音を出しながら口にしゃぶりつき、そして通話終了ボタンを押した。
 唇が離れる。
 サスケは真っ赤な顔で涙目になりながらハァッと息を吐いた。
 スマホが着信音を鳴らす。兄さんだ。
 カカシはサスケの目の前にスマホをぶら下げて、「どうする?」と意地悪い顔で尋ねる。
 サスケは震える手で終了ボタンを押した。
 カカシはその様子を見てニヤ、と笑いながら身体の力が抜けているサスケをひょいと抱え上げる。
「寝室、入っていい?」
「……だ、めだ」
 またキスをする。
「……ほんとはいいでしょ?」
「………………」
「……入るね?」
「…………」
 返事がないのを肯定と勝手に解釈して、カカシはサスケを抱き抱えながら寝室の扉を開けると、ベッドの上にそっとサスケを横たわらせた。
 サスケのズボンはもう傘を作りはじめている。
「……俺、サスケとキスするの、好きだよ。」
 チュ、チュ、と首筋にキスを降らせながら、右手はサスケのズボンを下ろし、それを扱き始める。
「……ぁ、……っや、」
 唇を塞ぐ。
「んっ……んん……っ」
 そこはカカシに扱かれながらどんどん血流を集め硬く立ち上がっていく。
「一回いきたい……? それとも、もう挿れたい……?」
 耳にキスをしながらカカシが囁く。
 サスケはハァッ、ハァッ、と息をしながら、カカシのそこを見つめた。
「……挿れたいんだね?」
 とは言え、ワセリンはもう寝室になく、潤滑油になりそうなものは何もない。
 カカシはその長い指を半開きのままのサスケの口に差し込んだ。
「舐めて? できる?」
 サスケが舌を動かし、カカシの指を舐め始める。
 満遍なく唾液で濡れたところでカカシは口から指を引き抜き、サスケの後ろの穴に沿わせた。
「……っぁ」
 ぬる、と中指が入ってくる。同時に、サスケの感じるところをなでつける。
「っ、あ、はぁっ、あっ……!」
 カカシはゆっくりと指を出し入れする。その度に、サスケの感じるところをマッサージする。
「んんっ、あっ、……っぁ、あ、あっ、」
 スムーズに指が入るようになり、指の数を増やした。
 圧迫感と共に感じる気持ちよさ。
「あっ、はぁっ、ああっ、あ、あぁっ、んっ!」
「声、やっぱりかわいい」
「んんっ、あっ、はぁっ、あっ! んぁっ、カカ、カカシ、もうっ、挿れ、んぁっ!」
「おねだりもできるようになった? かわいいね。これも舐められる?」
 カカシがそれをサスケの口元に押し付けると、サスケは口を開いて受け入れる。
 口に入りきらないそれを、サスケは懸命に舐めた。
 その姿は淫猥そのものだ。
「ん……もういいよ」
 カカシが腰を引いて口から出すと、ぬらぬらと唾液に濡れているそれを、そのままサスケの後ろの穴にあてがう。
 ぬぷ……
 亀頭が入った。サスケの顔が苦しそうに歪む。
「大丈夫、すぐ気持ちよくしてあげる」
 ぬぷぷ……
 少しずつ中に入ってくる。
 サスケは腰をくねらせる。まるでもっと、と言っているように。
 カカシはフッと笑うと、ゆっくりと奥まで一気にそれを中に入れた。
「……っ、あっ、」
「どうして欲しい? 言ってみて……」
「……っと……、もっと、動い、あっ、んぁ! あ、あっ、あっ!」
 サスケが全部言う前にカカシは動いた。
 前立腺の裏を擦りながら抽送を早くする。
「あっ! あ、あっ! ああ、はぁっ、あっ! ぁ、あっ、」
「……ね、気持ちいいでしょ? もっとして欲しい?」
「っもち、いっ……! あっ、もっと、っと、あ、ぅあっ!」
「今日は素直だね、かわいい」
 カカシは額にキスをすると、腰の動きを早める。
「っあ! ぅあっ、あっ! きも、んっ、ちい……っ! んぁっ! カカ、あっ! カカッ、シっ、きもちっ……いっ……!」
「ああ……、そんなに言われると出ちゃいそ。まだしたい? もう出していい?」
「んぁっ! まだっ、あっ、まだ……っ! あぁっ! は、ぅあっ、あっ!」
「フフ、なら我慢しよ。」
 カカシの腰の動きが遅くなる。その代わり、大きくグラインドして奥の奥までその先端が届く。
「~~っあ! あ゛っ! はぁっ! あっ、……っ! あっ!」
「気持ちいい?」
「……、っいい! あ゛っ! きも、ちぃっ! あ、ああっ、あ゛っ!」
「っはぁ、今日はすっごい、素直だね? も、我慢できない……っ」
「……ぇ、あ、あっ、あ! あっ! あ゛っ! あぅっ!」
 パンッパンッパンッ!
 カカシの動きが急に早くなった。
 サスケは揺さぶられながら喘ぐことしかできない。
 中がきゅうう、と締まっていく。
「っあ、もーだめ、っいくよ」
 カカシは腰をグググっと奥まで押し込んだ。
「っああ゛‼ あああっ、……っ‼」
 サスケの先端から白濁液が迸る、同時に、サスケの中でもカカシのものがビュルルッと飛び出した。
「っあ、はぁっ、あ、んんんっ、は……」
 繋がったまま、カカシはサスケにキスをする。
「……っん、はぁっ、……」
「サスケ、ごめんね、もっとしたかったよね」
 サスケは真っ赤な顔を横に向けた。
「気持ちよかった? いっぱい気持ちいいって言ってくれたね? もっとっておねだりしてくれたね?」
「………っ!」
 サスケは答えない。
 カカシはベッドサイドに置かれたスマホのビデオボタンをタップする。
「……またいじけたの? でも気持ちよかったでしょ? 俺の名前も呼んでくれたよね。俺嬉しかったよ。もっとって言ってくれて嬉しかったよ。サスケ? ね、今聞かせて。気持ちよかった?」
「………った」
「ん、なに? 聞こえない」
「……よかったって、言ったんだよ……っ! これで満足かよ!」
 カカシはサスケの額にキスをした。
 そしてにこっと笑う。
「……あー、…………やっと言ってくれた。ヒモ冥利に尽きるなぁ……うれし。ねぇ、また勃ってきたんだけどもう一回する?」
「~っしねえよ‼ 抜けよ!」
「……残念。」
「……っ」
 ぬる……っとそれが出てくる。コンドームと一緒に。カカシの言う通り、少し硬い。
 
 中がまだ疼くのを感じながら、サスケはもうどうにでもなれと思いながら、しばらくベッドから動けなかった。