きみが好き

1,051 View

成人向,中編,原作軸,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,ほのぼの,モブサス描写有,平和IF,甘々

零れ落ちた秘密

 火影室の窓にコツンと何かが当たった。
 三代目は護衛の暗部に目配せし、それを回収させる。
 書状だった。
 細工がされていないのを確認して中を開くと、目隠しされ横たわるサスケの写真と共に短い文章が添えられている。
『うちはのガキは預かった。四時の方角二キロ先の岩場前に九尾の人柱力を連れて来い。』
 ……寄りにも寄ってサスケとナルト、か。
 三代目は三匹の鷹を窓から放った。
 間もなく、カカシ班の上で鷹が旋回し始める。カカシはそれを見上げて舌打ちし、忍犬をそのままにして三人で火影室に急ぐ。再び集まった九人に火影は写真と書状を見せた。
「……っ!」
 写真に写るサスケの姿に頭が沸騰しそうになる。同時にリンのことも頭によぎり、動揺を隠しきれないカカシの肩に三代目が手を置いた。
「……止むを得ん、ナルトの影分身を連れてお主が行け。……これより作戦を練る。」
 コンコン
 ナルトの部屋の扉をノックすると、カップ麺を片手に怪訝そうな顔をしたナルトが出てきた。
「……何だってばよ。俺ってば昼飯食ってる途中なんだけど。」
「飯食いながらでいい、ちょっと邪魔するよ。ナルトに頼みがある。」
 ナルトは玄関の扉を開けてカカシを迎え入れた。テーブルの上にカップ麺を置くと麺を啜り始める。
「今俺はSランク任務の最中だ。その任務に、ナルトの協力が必要になった。」
 てっきりサスケとのことを話に来たのかと思ったら、全く違う話でナルトは首を傾げる。
「何で俺?」
「今、木の葉に岩隠れの過激派が侵入している。そいつらが、サスケを人質にとって、九尾の人柱力……つまりお前を連れてこいと要求してきた。」
「は……? ……え!? サスケが!? そんで俺を!?」
「そういう訳だから、ナルトの影分身を連れて行きたい。一緒に取引場所に向かいサスケを救出、岩隠れの連中は全員捕縛、出来なければ始末する。」
「そんなの、影分身じゃなくて俺が直接……!!」
「駄目だ。奴らは何をするかわからない危険な相手だ。万が一お前が捕まっても、影分身なら対処できる。これは火影様からの命令だ。」
 ナルトはラーメンのスープを残したまま、納得いかない顔でカカシを見る。
「……わかったってばよ……影分身で、カカシ先生についていけばいいんだな。」
 カカシが頷くと、ナルトは印を組み、影分身を一人作った。
「準備してくっから、ちょっと外で待っててくれ。」
「わかった。」
 カカシが玄関から出たのを見計らって、ナルトは忍具を取りに向かう。
 ……影分身じゃチャクラが分散しちまう。影分身じゃなくて、俺自身が行く。そんで俺がサスケを助ける。……絶対に。
「……待たせたな、カカシ先生。で、どこ行けばいいんだってばよ。」
「着いてこい。急ぐよ。」
 走り出したカカシについて、ナルトも走り出した。
 
 森の中、木の幹から幹へ駆けていきながら、ナルトはカカシに話しかける。
「……カカシ先生、サスケと付き合ってるんだろ。」
「…………」
 何も答えないカカシに苛立つ。否定しないということは、そういう事だ。
「いい大人が、何ガキに手ぇ出してんだよ!」
 声を荒げるナルトに、カカシは振り向きもせず「その話は後でだ」とだけ短く答えた。
 くそ、納得いかねぇっ……!
 ナルトはギリ、と歯を食いしばった。
 
 岩隠れのアジトでは昏睡するサスケに二人の男が歩み寄っていた。
「なあ、ちょっとこいつで遊んでいいか。」
 サスケはかろうじて意識を保っていた。ただ頭は朦朧としていて、誰かが近づいてきたことはわかるが、目が塞がれていることもあってそれが誰なのかまではわからない。
「見える場所に傷つけない分には好きにしろ。」
 この一派を取りまとめていると思われる男が答える。
「見えない場所なら良いってよ。」
「んじゃ、楽しませてもらうか。」
 ハーフパンツと下着が下ろされた。サスケの口の中に指が二本入れられる。
「……?」
 唾液腺を刺激されて濡れた指が口から出ていくと、後ろの穴に指を這わされ、それがグッと中に入ってきた。
 その感触を僅かに感じて、サスケはかすれた声を出す。
「カ……カシ……?」
 顔を見合わせる岩隠れの二人。
「おい、カカシって言ったよな。」
「あの写輪眼のカカシか?」
「っはは、こいつ、カカシとヤってやがるぜ!」
「なら遠慮はいらねえなぁ?」
 盛り上がる二人の大声にカカシではないことに気づくと、サスケは抵抗しなければ、と思うが身体は動かせないし、頭もうまくはたらかない。
 男が再び指を挿れようとしたところで、どっしりと座っていた一派の首領が立ち上がる。
「来たぞ。遊びは終わりだ。」
 森を抜け、平原を少し抜けたところが指定された地点。大きな岩場が点在しているだけで、人影はない。
 カカシは写輪眼を出して状況を確認する。この地点をぐるりと囲むように味方のチャクラが十個。八人の上忍と暗部二人。作戦通りに息を潜めている。
 そして岩場から感じる六つのチャクラ。……あそこか。
「九尾の人柱力を連れてきた! サスケはどこだ!」
 カカシが声を張り上げると、岩の中から二人の男が現れる。……二人ともビンゴブックに載っている、S級犯罪者だ。名前は確か……タナダと、オオクワ。
「これはこれは……写輪眼のカカシじゃないか。こんな所で会えるとは光栄だね。」
 タナダがニヤニヤ笑いながら話しかける。
「余計な話はいい。サスケはどこにいる。」
「まずは話を聞け。ひとつめ、その眼を使ったらうちはのガキの命はねえぞ。下手な真似はしねえ事だ。
 ふたつめ、武器を全て捨てて手を上げろ。そっちのガキもだ。」
 カカシとナルトは言われた通りに忍具を全て取り去り、二人に向けて放り投げる。
 それを確認したもうオオクワが、カカシの腕を印が結べないように後ろ手に拘束して、額当てを下げて写輪眼を隠した。
 ナルトも同じように腕を拘束される。
「着いてこい」
 さっき現れた岩の方に向かうと、その中にスルッと入っていく。ただの岩に見えるが、何か細工がしてあるらしい。息を飲みながら岩場に身を潜らせると、四畳ほどの広さの岩穴に六人の忍がいた。そしてその後ろに見える、横たわるサスケの姿。
「サス……」
「サスケェッ!!」
 カカシが言うよりも早くナルトが叫んだ。
「てめぇらサスケに何しやがった……!!」
 ナルトから九尾のチャクラが僅かに漏れ始める。
 カカシは喉の奥から声を絞り出した。
「……落ち着け、ナルト。」
「落ち着いてられっかよ……!!」
 一人がクナイを手にしゃがみ、サスケの首元に切先を当てる。
「なんだ知り合いか? 少しでも変な動きを見せたら、こいつの命はねえぞ、わかるな? 九尾のガキ。」
 そしてニヤ、と下卑た笑いを見せながら、カカシに向けて言う。
「お前こいつとヤってんだろ? ……余興だ、写輪眼のカカシ。今からこいつとヤれ。」
「っ何を……!」
 サスケの首元のクナイが肌に沿わされ、つつ、と赤い血が流れる。
「こいつの命を俺たちが握ってるのを忘れるなよ」
 カカシは背後から背中を蹴られて一歩前に出る。
「ああ、わかるぜカカシ。こんな状況じゃ勃つもんも勃たねえよなぁ? 俺たちが手伝ってやるよ。ほら口開けろ。」
 口布を下げられ、無理矢理開かされた口内に液体が入ってくる。
 ごくりと喉が動くのを確認してから口布を戻され、カカシは背中を押されて下半身がはだけられたサスケの傍に立たされる。
 ナルトの視界からは何が起きているのかよく見えない。
「おい、カカシ先生! 何やってんだよ!!」
 ナルトが叫ぶが、カカシはされるがままに地面に膝をつく。
「サスケ、サスケ聞こえるか?」
 カカシの呼びかけに、サスケは僅かに口を開いた。
「……カ……シ……?」
 幻覚か、何か強力な薬を飲まされている。
 カカシのズボンのチャックが下ろされた。少しずつ芯を持ち始めているそれを出されて、サスケの後ろの穴に誘導される。
「お前ら随分といい仲みたいじゃねえか。ほら、早く挿れろよ」
 また背中を蹴られる。薬が回り始めたらしい、息が荒くなってきた。そこにもどんどん血流が集まっていく。
「カカシ先生っ!!」
 何が起きているのかよくわからないままナルトが叫ぶ。
「おい何やってんだってばよ! こんな奴らにいいようにされるような先生じゃねえだろ!! カカシ先生はもっと強いはずだろ!?」
 タナダがナルトの前に立ちはだかった。
「……うるせえガキだな。……おい。」
 仲間に向けて差し出した手のひらに、薬剤入りの瓶が手渡される。
「っサスケ! カカシ先生っ!! くっそ……、やめろぉッ!!」
 ブワッと、急激に邪悪なチャクラが広がった。
「っなんだ!?」
 六人が怯んだ、その一瞬だった。九尾のチャクラを纏ったナルトが腕の拘束を引きちぎって、岩隠れの忍を次々と薙ぎ払いサスケの元に向かう。それを合図にしたかのように身を潜めていた木の葉の忍が雪崩れ込み、場を制圧した。
 ナルトはサスケの前に陣取ると、邪悪なチャクラを纏ったまま敵味方関係なく牙を剥く。
「ッナルト! サスケは無事だ!!」
 カカシの叫び声に、ナルトはハッとしてサスケを振り返った。チャクラが鎮まっていく。
 ほっとしたのもつかの間、ナルトはカカシの方を向くとその顔を全力で殴り倒した。その肩は怒りでふるふると震えている。
「何でだよっ! 何やってんだよっ!! おい、カカシ先生っ!!」
 その大きな目からボロボロと涙がこぼれ落ちる。
「ナルト……」
「カカシ先生ならこんな奴らっ! こんな奴ら一瞬でやれるはずだろ!? なのに何でっ!!」
「……落ち着け、ナルト。」
 紅が印を結ぶ。
「解!」
 ナルトの視界がぐにゃりと歪んで、目の前に倒れていたカカシが消える。周りを見渡すと、岩穴の入り口でカカシが腕を組んでもたれかかっていた。
「……え?」
「奴らが姿を現した瞬間から、紅が幻術をかけていた。お前が見ていた俺は幻術だ。」
「なら何でもっと早く……!」
「サスケが人質になっていたからだ。こいつらが油断するのを見計らっていた。」
「なんで俺まで騙してっ!」
「敵を騙すにはまず味方から……お前も影分身で来いって言ったのに、本体で来ただろ。お相子だ。」
 カカシはナルトの横まで来てしゃがみ、サスケの服を整える。
「……遅くなって、悪かった。サスケ。」
 その頬に手を添えると、サスケは安心したように目を閉じた。
 その様子を見て、サスケを見つめるカカシの表情を見て、ナルトは堪らない気持ちがこみ上げてくる。
 カカシ先生は、本当に、本当にサスケのことが……。
「……ちゃんと、説明、するんだろうな。先生。」
 アスマも口を開く。
「俺たちも聞いとかないといかねえな。カカシ。こりゃどういうことだ。」
「……どうもこうもないよ。俺たちは恋人同士だ。俺はサスケのことが好きだ。」
「好きで恋人同士だからセックスもしてます、ってか? 教え子相手に?」
「それはサスケから……いや、俺がもっと自制心を持つべきだった。それはわかってる。けどそれは俺たち二人の問題だ。俺たちで決めることだ。」
「普通の恋人同士ならそうだがな、さすがに看過できねえよ。」
「……頼むから、俺たちを引き離そうとするのだけは、やめてくれ……。」
 カカシの懇願に、その場にいた誰もが顔を合わせる。
 はぁ、とため息をついて、紅が口を開いた。
「サスケ君が目を覚ましたら、火影様に報告させてもらうわよ。だから早く木の葉病院に……」
「……サスケは、俺の家に連れて帰る。」
「はぁ!? 何言ってんだってばよ! こんだけ色んな人に言われてまだわかんねえのかよ!! おかしいだろそんなの!!」
「……目が覚めたとき、……そばに居てやりたいんだ。」
 カカシはぐったりしているサスケを抱き上げた。
「……頼む。一日経ってまだ目を覚まさなかったときは、ちゃんと病院に連れて行くから……。」
 悲痛な顔をしたカカシがサスケを抱いたまま外に出て行くのを、止められる者はいなかった。
 ナルトはぐっと奥歯を噛み締める。
「……俺はまだ、認めてねえぞ……。」
 その肩に、アスマが手を置いた。
「……火影様が、処遇を決めるだろうさ。どんな結果だろうと、俺たちも、カカシも、サスケも、それに従うしかない。」
 忍犬達と共に、カカシは家の中に入った。靴を脱ぎ捨ててサスケを寝室のベッドに横たえる。
 首筋の傷に薬を塗って、ベッドの横に座った。口寄せを解いてふたりきりになると、サスケの手を握る。サスケはピク、と指先を動かした。
「サスケ?」
 声をかけるとゆっくりと目が開き、その視線が動く。
「隣にいるよ。」
「……カシ、…………りが…………」
「お前を助けたのは、ナルトだ。……ごめんな、皆に、……バレちゃった。」
「……?」
「俺は……処罰されるかも、しれない。どうなるかわからない。もう、一緒に過ごせないかもしれない。」
「…………いや、だ」
「俺だって嫌だよ……。」
「カカ……、……抱き、しめ……」
 サスケの手を握ったまま、カカシはベッドに上がり、サスケの横に寝そべってサスケを抱きしめる。離したくない。離れたくない。せっかくこころが通じ合って、一緒に過ごし始めて、まだ一週間しか経っていないのに。
「離れ……たく、ない……」
「……離したくない。」
「……っと、つなが……たい……」
「薬が、抜けてから……」
「……いま…………カカ、シ」
「今……って、サスケまだ身体が」
「……っと、ずっと……朝……まで、……ながって、たい……んだ」
 カカシは上半身を起こしてサスケの顔を見る。
「サスケ……好きだ、……好きだ。一緒に居られなくなっても、こころはずっと……一緒だ。」
 サスケにキスをする。反応は返ってこない。けれど深く、何度もキスをした。例え引き離されても忘れないように。サスケを脳に刻み込むように。

16