きみが好き

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成人向,中編,原作軸,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,ほのぼの,モブサス描写有,平和IF,甘々

火影の判断

「はぁっ、サスケ、……サスケっ……」
 カカシ一人の荒い息だけが部屋に響いていた。
 サスケの顔の横に手を置いて、その顔を見ながら、時折キスをしてはゆっくりゆっくりと愛おしみながら腰を動かす。
 サスケの口元が動く。カカシはそれをじっと見つめて、何を言おうとしているのかを読み取る。
『もっと、あんたを、感じたい』
「……もう少し激しくするね」
 ずくん、とそこをえぐるようにして奥まで一気に貫く。
「……、……ぁ……」
 僅かに見せた反応に、カカシは何度も何度も激しく奥まで貫いた。
「はぁっ、サスケ、っは、感じる? っサスケ……」
「……ヵ、……」
 サスケは焦点の合っていない目で、視線を動かしてカカシを探す。
「ここに、目の前に、いるよ。サスケ。」
 サスケの頬を両手で包んで、キスをする。でもサスケは、そのキスの感覚もよく分かっていないようだった。
 ……悔しさがこみ上げてくる。やるせなさがこみ上げてくる。
 こんなセックスが最後になるかもしれないなんて。
 カカシの荒い呼吸はサスケの僅かな声を打ち消してしまう。こんなにも激しく揺さぶっているのに、サスケは虚ろな目のままほとんど反応しない。
 ぐぐっと奥までそれをおさめて腰の動きを止め、弛緩しきったサスケの身体を抱きしめた。
「はぁっ、出ちゃいそう……駄目だもっと、……繋がったままでいたい……。」
『俺も、このまま繋がったままでいたい』
 そう伝えたいのに、口がうまく動かせない。身体中の筋肉という筋肉が、神経という神経がそのはたらきを止めていて、声を出すのはおろか、目もぼやっとしていてうまく見えない。
 ただ奥に入っているカカシだけは、かろうじて感じることができた。……嬉しい。カカシと繋がっていることが嬉しい。このままずっと……ずっと一緒に繋がっていたい。ああ、俺はカカシが好きだ。好きなのに、何も伝えることが出来ないのがもどかしい。
 何か考えようとしても、ぼんやりとした頭はうまく回らない。だから中に感じるカカシだけに全ての意識を向けて、その愛しい感覚を拾おうとする。
 油断すると遠くなりそうな意識を手放すまいと、俺を抱き締めるカカシの腕の感覚を、身体に刻みつける。
 
 ゆっくりとまた腰を動かしはじめて、何度も名前を呼びかけながら、時折激しく貫いて、奥に入れたまま強く抱き締める。
 そんな時間を何時間も過ごした。
 サスケからはほとんど反応は返ってこない。
 知らず知らずのうちにカカシの目から涙がこぼれ落ちる。
 そうして繋がったまま朝まで過ごして、サスケは少しだけ手を動かし、カカシの身体にその手を添えた。
 カカシは身体を起こしてその手を握りしめる。
「サスケ、……少し、薬抜けたか……?」
「……こし、だけ……」
「サスケ、好きだサスケ。このまま、このままずっとこうしていたい……好きだ。言い表せないくらい、俺はサスケのことが……」
「おれ、も……ずっと……この、まま…………でも……」
 サスケはその先は何も言わなかった。
 カカシはサスケを強く抱きしめる。強く強く抱きしめて、また腰を動かそうとすると、窓辺に鷹が止まった。忌々しい、あの鷹。
「……サスケ、呼ばれ、ちゃった。……最後にサスケの中でいってもいい……?」
「……だし、て……カカ……」
 強く抱きしめたまま、そのまま激しく律動した。
 強く腰を打ちつけて、がむしゃらに抱いて、そしてサスケの奥に精を放つ。
「っは、はぁっ、はぁっ、サスケ、サスケっ……離れたくっ、ないっ……!」
「カカ、シ……」
「……でも、……行かなきゃ……。」
 一晩中繋がっていたそこから、苦渋の思いでそれを抜く。ベッドから足を下ろしてウェットティッシュで拭くと、忍服を着込んだ。
 サスケにも服を着せて、寝室の扉を開ける。
「サスケ、行ってくる」
 サスケに向けて力なく微笑んで、カカシは火影の執務室に向かった。
「失礼します」
 三代目火影は口の前で手を組み、険しい顔をカカシに向ける。
「……用件はわかっておるな、カカシ。」
 紅達はまだ話していないはずだ。ということは、ナルトか……。
「何の、話でしょうね。」
「しらばっくれても良いことはないぞ。……ナルトがわしに直接嘆願しに来た。」
 ああ、やっぱりナルトだ。
 あいつは、俺とサスケのことを……認めてはくれなかったんだな……。
「サスケとの関係をお主の口から聞きたい。」
 カカシは少しの沈黙の後、口を開く。
「……恋人です。そして部下で、教え子です。」
「……師弟間で恋愛に発展するのはままある話じゃ。しかしカカシ、サスケの年はいくつじゃ。サスケにとってお主は本来どんな役割を担うべきだったか答えられるか。」
「サスケは十二歳です。……孤独を癒し、写輪眼の使い方を教え……仲間の大切さを教えるのが俺の役割です。」
「ナルトはどうじゃ。」
「ナルトもまた孤独を癒し……チームワークを学ばせて、力のコントロールを身につけさせることが……」
「それで、お主はサスケに何をした。」
「恋人として一緒に過ごしました。任務や演習には影響させていません。ただ二人で過ごしただけです。」
「ただ一緒に過ごしただけではなく、性的接触をしたであろう。」
「……恋人、ですから。」
「……何でもそれで説明ができると思うな、カカシよ。ナルトは今精神的に不安定な状態じゃ。仲間とは何か、師とは何かと思い悩んでおる。誰のせいかわかるか。」
「俺です。」
 火影はパイプを口に咥えると、ふぅっと紫煙を吐いた。
「お主に二人を託したのは……失敗だったかもしれぬ。じゃが、一度結成した班を組み直すこともまた難しい。……カカシよ。」
 火影の険しい目が、カカシを射抜く。
「サスケとの今の関係を辞めろ。そうすればナルトも納得するであろう。」
「……嫌です。」
「これは命令じゃ。従わぬと言うのか。」
「俺はサスケが好きです。サスケも俺のことが。無理矢理関係を辞めさせられたところでこの気持ちはお互いに消えることはありません。」
「自分が何を言っているのか、わかっておるのか。」
「辞めろと言われてはいわかりましたと辞められるほど俺たちの気持ちは軽くないんです。
 サスケを大切にします。もちろんナルトも、サクラも大切にします。
 今の三人の絆もまた消えることはありません。
 ナルトとはサスケも交えてよく話し合います。だから……」
「……わしがお主とサスケの関係を許すと思っておるのか。」
「倫理的には許されないかもしれない、けれど俺たちは本当に……」
 キイ、と椅子を回転させて火影は背を見せる。
「……もうよい。今日は下がれ。」
「火影様、話を……!」
「もうよいと言っておる。」
「好きなんです。お願いです。俺たちを引き離すようなことは、」
 火影はまた紫煙をふぅっと吐き出す。
「……後日、沙汰を出すつもりであったが、今のお主は見るに耐えぬ。……三日間牢に入ってよく考えよ。」
「火影様っ……!!」
「連れて行け。」
 二人の暗部がカカシの両脇を掴み、火影室から連れ出す。
「サスケが好きなんです! 何日牢に入れられても、この気持ちは無くなりません、火影様っ!!」
 無情にもその扉は閉められ、カカシは地下にある牢に連れて行かれた。抵抗はしなかった。ただサスケが心配だった。ナルトのことも気がかりだった。
 話し合えば、ナルトもわかってくれるはずだ。どれだけ俺たちがお互いを大切に思っているのか。……きっと、きっとわかってくれるはずなのに。
 二畳ほどの牢に押し込められ、ガシャリと重い鍵がかけられる。その鉄格子をカカシが掴む。
「なあ、……火影様に、伝えてくれ。俺の家にいるサスケを、病院に連れて行ってやってくれと。」
 猿の面が答えた。
「……鷹が飛んだ時点で既に全てが動き始めている。案ずることは何もない。」
「……はは、……そっか……。」
 それからカカシは、力なく床に座り込み、頭を垂れたまま動かなくなった。
 それを確認すると、二人の暗部は火影の執務室へ戻って行く。
 陽の光も届かない地下の牢で、考えろと言われても、カカシはサスケのことしか考えられなかった。
 
 何やら騒がしくなったな、と思ったら、寝室に医療班の服を着た四人組が雪崩れ込んできた。そのうち二人が持つ担架がベッド脇に置かれたかと思うとサスケの両脇と両膝を抱えられる。
「な、に……?」
「安心してください、君を病院に搬送するだけです。」
「……いや、だ、……っ! ……こで、カカシ、を、待つっ、から……!!」
「……治療が最優先です。」
「や、め……!」
 大した抵抗のできない身体は、簡単に持ち上げられて担架の上に載せられる。
「よし、行くぞ。」
 俺がここで待ってないと、カカシが帰ってきた時、きっと心配する。
「ま……て、せめ、て、手紙……」
「大丈夫ですよ。カカシさんにはきちんと連絡が行きますから。」
 それを聞いて、少しだけほっとする。担架が浮き上がってサスケはカカシの家から運び出された。一晩中起きていたサスケはその揺れにまどろんで、ついには今まで何とか保っていた意識を手放した。
 
 目が覚めたら、真っ白な天井が真っ先に目に入った。
「っカカシ!?」
 起き上がり見渡すが、その個室の中には誰もいない。
 身体が……動く。
 手をぐー、パー、と動かして、肩をぐるっと回すと、腕に点滴の針が刺さっていることに気がついた。
 ベッドの傍に転がっているナースコールを押すと、すぐに看護師がやってくる。
「あのっ! カカシは、どこにいるんですか? 俺は何日寝ていたんですか!?」
「落ち着いて、バイタルを取ります。サスケ君は三日間意識がありませんでした。急に動くと危険なのでベッドから降りないでくださいね。」
「カカシは……?」
「わかりません。面会にはナルト君とサクラさん、そして火影様しか来ていません。」
 カカシが……三日間も、俺に会いに来ていない?
「カカシに何かあったんですか?」
「……落ち着いてください。……血圧と脈拍が高いですね。少し横になりましょう。」
 サイドテーブルに止まっていた小さな虫が、静かに窓の外に向かっていくのにサスケは気づかなかった。
 看護師の言う通りに、もう一度横になる。
 頭がすっきりしていて清明だ。身体の感覚もあるし、動かせる。
 カカシが言った言葉を思い出していた。
『俺は……処罰されるかも、しれない。どうなるかわからない。もう、一緒に過ごせないかもしれない。』
 いやだ、嫌だそんなの嫌だ。
 でも三日間会いにこなかったということは……。
 俺は点滴のパックを変えている看護師に話しかける。
「火影様に、会う事はできますか。」
 看護師はにこ、と笑った。
「遠くないうちに、いらっしゃると思いますよ。」
 昼食です、と出された食事を見て、ああ今は昼なのかと知った。おいしくはない病院食を食べ終えてベッドに横になり、額に手を載せる。
 処罰……されたんだろうか。どんな処罰なんだろう。想像もつかない。
 コン、コン、と病室の戸がノックされた。
「……はい」
 上半身を起こして、入ってくる人物が誰なのかと思っていたら、上忍をひとり連れた三代目火影が姿を現す。
「ッ火影様……!!」
「うむ、すっかり回復したようじゃの。気分はどうじゃ、サスケ。」
 後ろで手を組みベッドに向かってくる火影に、食い気味に話しかける。
「カカシは!? カカシはどうなったんですか……!!」
「心配せずともよい、……それよりもサスケ。お主に確認せねばならぬことがある。」
「……何ですか。」
「カカシとお主の関係は何じゃ。」
「恋人です。……先生で、上司でもあります。」
「恋人として、カカシと何をした?」
「何……って、一緒にご飯を食べたり、一緒の布団で寝たり……」
「キスやセックスは?」
「……しましたが、それが何か問題でもあるんですか。」
「……うむ。セックスをしようと言い出したのはカカシからか?」
「俺です。」
「……お主から?」
「俺からです。だからセックスをしたからってカカシをどうこうすると言うのなら、その罪を負うべきは俺です。もう一度聞きます。カカシはどうなったんですか。心配するな、だけじゃわかりません。なんで一度も俺の見舞いに来ていないんですか。カカシに何があったんですかっ……!」
 火影はサスケの勢いに押されて目を見開く。
「お主は……カカシのことをどう思っておる。」
「わかりませんか? 好きです。俺はカカシが好きです。カカシもきっと同じことを答えたんじゃないですか。」
「では、ナルトのことはどう思っておる。」
「大切な仲間で……俺の友で、ライバルです。」
「カカシとお主の関係を知ってから、ナルトが思い悩んでいるのは知っておるか。」
「……知りません、でした。でも俺はナルトだからこそ打ち明けたんです。ナルトに隠し事はしたくなかったから。……でもそのせいで、悩ませてしまったのなら謝らないといけない。あのとき、もっとナルトとしっかり話をするべきだった。」
 サスケは顔を下げて手を握り締める。
 俺のせいで、カカシも、ナルトも……。
「話しあえば分かり合えると、思っておるのか。」
「少なくとも、話しあわないよりはよっぽどマシだ。」
 それを聞いた火影は、入り口に立つ上忍に向けて話しかける。
「サスケはこう言っておるが、どうじゃ、ナルト。」
「え……?」
 その上忍は、しかめっ面をしながら印を結ぶと、ナルトの姿に変わった。
「ナルトっ!」
「サスケお前……カカシ先生とのこと、……本気なんだな。」
 ナルトはゆっくりサスケの元に歩いてくる。
「ああ、……本気だ。俺はカカシが好きだ。」
「カカシ先生は……お前とエッチなこと、するつもりでいたのかよ。」
「カカシは『いずれしたいとは思っていた』と言っていた。それを俺が……」
「いや、なら最初に言い出したのは俺だってばよ。……だったら、俺にも責任はある。」
「でもナルトは俺が話したせいで悩んでたんだろ、ずっと。」
「そうだけどよ、確かに、何にも知らないままなんか変だなって思い続けるよりは、打ち明けられた方がマシだってばよ。ただ、そうだな。俺らもっと話し合うべきだったよな、あのとき。」
 ナルトは頭の後ろで手を組み、にへっと笑う。その顔を見て、サスケも頬が緩んだ。
「退院したら、ちゃんと話し合おうぜ。カカシも一緒に。」
「いや、もう十分わかったから勘弁してくれってば。お前らふたりがイチャついたりノロケ合ったりするとこなんか見たかねえよ。」
「……確かにそれをしない確証は出来ないな……」
 和やかな雰囲気が流れたところで、火影が咳払いをする。
「サスケと和解した、ということでよいのか? ナルトよ。」
「ああ、火影のじーちゃん、ありがとな。」
「残るは、あやつか……」
 
 ガシャン、と重い鍵が落ちる。ギギギ、と開いた牢の中で、カカシは壁にもたれかかって座りながらその様子を眺めていた。
「なんだ、出たくないのか?」
「……出たところで、サスケともう会うなって言われるぐらいなら、出たくないよ。」
「ひとつだけ、良い知らせを聞かせてやる。サスケの薬はすっかり抜けて意識もしっかり取り戻した。」
 カカシは目を見開いた。
「いつ? ちゃんと病院に連れて行ってくれたのか!?」
「……落ち着け、らしくない。さあ、出てこい。火影様がお呼びだ。」
 入ってきた時のように両脇を抱えられることはなかった。前に一人、後ろに一人着いて螺旋階段を上っていく。
 そうして着いた火影の執務室前。カカシは深呼吸してからノックした。
「カカシです。」
 中から「入れ」と火影の声が聞こえる。
 ゆっくり扉を開けると背を向けてパイプを燻らす火影の姿があった。
「この三日間、どうであった。」
「サスケに会いたいとしか、思いませんでした。」
「……では考えは変わらぬと、そう言いたいのじゃな?」
「変わりません。サスケが好きです。だからどうか今まで通りに……一緒に、居させてください。」
「……全く、ナルトの奴も随分と面倒な話を持ち込んだものじゃ。」
「……と、言うと?」
「お主とサスケの関係については、不問とする。ただし、不問としたことも含めて、周囲に悟られないように慎重に行動せよ。
 このことを知るのはお主とナルトとサスケ、そしてあの任務に関わった上忍八名と暗部二名のみ。わかったな。」
「火影、様、じゃあ俺はサスケのところに行っても……?」
「好きにせい。お主に対する処置は終了する。以上!」

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