スペシャルニーズ

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成人向,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説エロ,やおい,甘々

オプション

 翌日のサービスは夜になった。
 事務所で着替えて電車に乗り、急いでカカシの家に向かう。
 門のチャイムを押して深呼吸すると、インターホンからカカシの声が聞こえてきた。
「……サスケ?」
「マリーハウスワークサポートのうちはサスケです。遅くなりました。」
「いいよ、入っておいで。」
 カチャ、と鍵が開く音がする。門をくぐって玄関の扉を開ける。
「失礼します。」
 カカシは玄関に入ってすぐのところで壁にもたれかかって待っていた。
「すみません、こんな時間になってしまって。」
「気にしないで。毎日来てって無理言ったのはこっちだし。こっちへおいで。」
 言われるがままについていくと、そこは昨日掃除をした寝室。中に入って行くのを追いかける。
「今日も……寝室、ですか?」
 ベッドサイドに佇むカカシに尋ねる。近寄ると、腕を掴まれ、サスケはベッドの上に引き倒された。
「……え?」
 状況がわからない。何がどうなった。
 クイーンサイズのベッドの真ん中で、サスケは上半身を起こす。
「一体何を……!?」
「さっきメールでオプション追加しといたから。」
「何のオプション……」
 カカシがギシ、とベッドに上がる。
「お前を好きにしていいってオプション。」
「好き……って、えっ……!?」
 そんなオプション聞いてない。契約書にはなかったはずだ。メールだけでオプション追加の契約変更なんてできないはずだ。契約し直さないといけないはずだ。さっき事務所で猿飛さんも何も言っていなかった。
「待ってください、上司に確認をとりますからっ……!」
「嫌だね、待たない。」
 カカシはサイドテーブルの引き出しからローションを取ると右手にとろりと出し、左手でサスケのキュロットと下着を下ろす。
「やめっ、……!!」
 ……お客様の言うことすることを拒否してはいけない。ニーズを汲み取りご満足いただけるよう尽くす。
 毎日声に出して読まされてきたサービスの心構え。
 こんな事態でも?
 ニーズを汲み取る?
 ずり下されたキュロットとパンツ、太腿を押されるとサスケの局部があらわになる。カカシはその後ろの穴に、ぬるりと指を差し込んだ。
「っ……!!」
 異物感にサスケは顔を歪める。
 どうする? 何をするのが正解だ? やめろと突き飛ばして逃げる? でもサービス時間を守らないと契約違反になる。中途解約は違約金が……拒否、できない……のか?
 猿飛さん、いや誰でもいい、頼むからカカシのメールを見たら電話してくれ、オプションには別途契約が必要だからと断ってくれ……!!
 後ろの穴にはカカシの長い指がずっぷり入っていて抜き差しを繰り返している。サスケは何も言えずどうしようもないままひたすら耐えて事務所から電話がかかってくるのを待ったが、電話が鳴る気配は一向にない。
「っぅ、……っ!」
 固く閉じていた目を薄く開けると、サスケの様子をつぶさに観察しているカカシと目が合った。カカシは口角を上げて指の動きを早める。
「っあ、く、……っ! う、……っ!」
 その目はサスケが出す苦しげな声に満足している風だった。
 ニーズ、を、汲み取る……?
「もうっ、やめ、っは、ぅ、……やめて、くださっ……!」
 試しに嘆願してみると、わかりやすく指の動きが早くなった。間違いない、俺が苦しんでるのを愉しんでる。
 そう確信したところで、不意にぬる、と指が完全に抜けた。
 様子を伺おうとすると、指が二本になってまた後ろの穴に入ってくる。異物感もさっきまでの二倍だ。サスケは更に顔を歪めた。
「っぅあ……! や、めっ、っう、……っく、」
 もしかして、この指どんどん増えていくのか? 一本だけでも抵抗感を感じていたのに、何度も抜き差しされて少し慣れてきたと思ったら指がもう一本増えた。
 ……次また慣れてきたら三本に増えるのか?
 ……その後は……?
 カカシの指が激しく動いて思考がストップする。
「っうぁ! はっ、あ、ぐっ、っ……!」
「考え事する余裕があるならまだまだ苛めていいって事だよね。」
「そんっ……! な、あ゛っ、っく、はぁっ、んぅっ!」
 グチュ、グチュとローションの音が響く中、サスケの呻き声が大きくなる。
「そうそう……もっと全身で表現してよ。お前が俺にいいように嬲られてる事実をさ。」
「っこんな、契約っ、……ぅあ゛! 契約にないっ……!!」
「契約に含まれてればいいわけでしょ。何なら今から会社に電話してみな?」
 指の動きが止まる。サスケはウエストバッグの中のPHSを取り出し、震える手で会社に電話をかける。
 呼び出し音が一回、二回、三回……
『はい、事務所です。』
 女性の声が聞こえてきた。
「うちはです! 猿飛さんっ! いますか、緊急で繋いで下さいっ!」
 切羽詰まったサスケの声に、女性は『少しお待ちを』と保留音に変える。十秒ほどでまた繋がった。
『もしもし?』
 猿飛さんの声だ……!
「うちはです! はたけ様のサービスでっ……!」
『……落ち着いて、聞いてください。ついさっき、君が出かけた後に契約変更の申し出があって、たった今電子契約が終わったところです。……はたけ様は破格の金額でオプションを追加された。……はじめての君には申し訳ないですが、何をされても受け入れてください。』
「電子……契約?」
『メールで契約書を交わす契約形式です。ともかく、そういうことですから。……心構えを忘れないように。』
 プツ、と電話は無情にも切られてしまった。
 契約が……オプションが追加された……? 受け入れろ? そんな、……そんな。
「ほら、言ったでしょ。サスケは俺に嬲られる。サスケはそれを受け入れる。正式に交わした契約だよ。」
 再び指が蠢き出す。
「そん……あ゛っ! っく、……っあ、っうぁ!」
 サイドテーブルから出したのはローション、それは間違いない。そして中をほぐしながら増やされる指……カカシの目的は、……。考えたくない。けど間違いない。……セックスだ。
 全身から嫌な汗が噴き出す。何をされても受け入れるしかない。抵抗もできない。こうなったらもう、覚悟を決めるしかない。ピンと張られたシーツをぎゅっと握り、皺ができる。
「やめっ! やめてくださ、っく、あ、」
「もう分かったでしょ? お前は俺の言うことに従うしかないの。お前が掃除した部屋で、お前が張ったシーツの上で、お前は俺にやられるんだよ。」
「あ゛っ……!!」
 また指が増やされた。押し広げるように入ってくる指の圧迫感に耐えながら、カカシのニーズを拾おうと薄目を開けて観察する。サスケが呻く度に早くなる指の動き。やめてくれと懇願すると上がる口角。ずり、とベッドの上で後ずさると奥まで指を突っ込まれる。
「やっ、あ……! っ、うっぐ……!」
 目じりに涙が浮かぶ。それを見てカカシは一層指を激しく動かす。
「や、あ゛っ! はっ、あっ、ぐ、……っうあ!」
 指を動かしながらカカシはサスケのキュロットと下着を足から抜いてベッドの上に捨てた。
「最初に言ったルールは覚えてるね?」
 ルール……敬語……呼び捨て……言った通りにする……
「っあ、っはぁ……!」
 三本の指が抜ける。カカシはサスケに近づいて、笑いながら言った。
「俺のズボンのチャック下ろして、ちんこ出してよ。で、ゴムつけて。」
 今から挿れられるそれを、俺自身に出させろと……。
 はぁっ、はぁっと荒い息を吐きながら、唾を飲み込んでカカシのズボンに手を伸ばす。膨らんでる……勃起、している。苦々しい気持ちでボタンを外してチャックを下ろし、パンツをずらすとそれがあらわになった。……大きい。こんなものを、今から挿れるって言うのか?
 サイドテーブルの上に置いてあったコンドームの袋を破り、カカシのそれに着けていく。その様子を満足気に見下ろすカカシ。
 ……屈辱。その単語が頭に浮かんだところで、サスケは肩を押されて上半身がベッドに沈む。
「……っ!!」
 涙で視界が歪む。瞬きする度に頬を伝って落ちる。嫌だ。嫌だ。嫌だ。そう思っても、カカシを止めることはできない。覚悟を決めたつもりだったのに、いざ直面すると悔しさ、恐怖、屈辱感が頭を覆って手が震える。
 さっきまで指が入っていたそこに、カカシのものがあてがわれた。
「……っは、良い眺め。」
 それはぬぷ、とゆっくりとサスケの中に入ってくる。
「く……う……、は、……っ」
 散々指を挿れられたからかローションのおかげなのか、引き攣れることもなくそれはぬるりとどんどん奥に入っていく。
 声を殺しながら耐えていたサスケは、それが一番奥に当たったのを感じて、これから始まるであろうことに緊張と戦慄で身体に力が入った。
「きつ……もうちょっと力抜いて。」
 そう言いながら、カカシは律動を始める。
「あっ、いやっ……やっあ゛! うぁ、あっく、うっ、っ……!!」
 カカシから顔を背けてぎゅっと目を閉じるが、顎を掴まれて再びカカシの方を向かされる。
「ちゃんと顔見せてよ。俺の許可なく余計なことしないでくれる?」
「そんっ、あ゛っ! や、あ、はぁっ、んぁっ!」
 ポロポロと涙が溢れてくる。こんなの嫌だ。受け入れるなんて無理だ。でも誰も助けてくれない。サービス時間が終わるまで、俺はこの家を出られない。……カカシの相手をするしかない。こんなに辛くて苦しい思いを、あとどれだけ我慢すればいいんだ。
「ぅあ゛っ! やっ、め、いやっ、っあ!」
 そこは徐々にカカシの大きさに慣れ始めていた。それでも異物感や圧迫感はなくならない。両手でシーツを握りしめて、溢れる涙も我慢できずに泣きながら揺すぶられる。顔を背けることも許されない中、徐々にカカシの息が荒くなっていくのがわかった。情欲に染まりギラつく瞳、興奮した表情を浮かべながら律動しサスケの泣き顔を見つめている。目が合うと下唇を舐めて、更に動きが早くなった。
「もうやっあ、あ゛っ! っあ、んぅっ! ぅあっ、あ」
 ぐちゅっぐちゅっと音を立てる結合部、あのでかいのが出たり入ったりしている。奥に突かれる度に出る声。次第にその色が変わっていく。身体のこわばりが少しずつ解けていき、苦しさが何か別のものに変わろうとしていた。それに気がつきサスケは戸惑う。
 そもそも男でも女でもアナルセックスを好む人がいるのはなぜなのか。そこに普通のセックスにはない魅力があるからだ。今まさにサスケはアナルを開発されようとしていた。苦しいだけだったはずなのに。こんなことをされて嫌なだけのはずなのに。
「っあ! んっ、はあっ、あっ、んぁっ! っあ、」
 くぐもっていた苦しげな声が明らかに変わっている。
「っはは、前立腺も刺激してないのに、もしかして感じてる?」
 ぜんりつせん? 何だそれ。
 わけがわからないまま突かれる度に声が高くなっていく。奥にグッと入れられたものが抜けていくとき、サスケははじめての感覚を味わい戸惑った。
 え? 俺いま、気持ち……
「ぅあっ! あっ、あ、んんっ! はぁっ、っあ、あっ!」
 サスケの口から上がる喘ぎ声がそれを雄弁に伝えている。……気持ち、いい? まさか、そんな。そんなこと。
「……ああ、苦しんでるところが見たかったけど、お前才能あるよ。もっと気持ちよくしてあげようか?」
「は、あっ、え? っん! ぅあっ、あ、あっ!」
「ほら、ここら辺でしょ?」
 突く角度が変わる。「そこ」をなぞられるとサスケはビクンと身体が揺れると共に強烈な快感を覚えていた。
「ああっ! やっ、ぁあっ! は、んっ! あっ、んぁっ!」
 何だこれ、何なんだ、何だこの感覚、知らない、こんなの知らない、こんなのおかしい。
「んああっ! あ、ぅあっ! やっ、ああっ!」
 カカシはそこを集中的になぞりながら奥まで突く。
 もう異物感も圧迫感も何もない。ただ気持ちいい。なんで。こんなことされてるのになんで。恥ずかしさと気持ちよさで顔に熱が集まる。
「っは、そろそろ出すね?」
 出す? 何を?
 そんなことも考えられない。中が疼いて、その疼きをカカシのものが刺激して、それが気持ちよくて、もう全てがどうでもいい。
 律動が早くなる。その動きに揺さぶられながらサスケが喘ぐ。カカシの興奮した浅い息遣いを感じて、サスケもまた興奮しているのにサスケは気づいていなかった。
「っは、……っ!」
 一層奥にグっと突かれたと思うとそのまま動きが止まり、中のそれがビク、ビク、と動くのを感じる。
「っ……あ、あっ、」
 サスケは荒い息を吐きながら、その中で感じる鼓動にすら気持ちよさを感じていた。それが抜かれるまで、何かを考える余裕はもうなかった。
 
 ぬる、と中からカカシのものが出ていく。満たされた感覚がなくなって、徐々に意識がはっきりしてきた。それと共に駆け上がる羞恥心。無理矢理されて苦しいばかりだったはずなのに、あられもない声を出してよがっていた自分。
 思わず腕で顔を覆うが、その腕をカカシに掴まれた。
「隠さないでよ。見せてって言ったでしょ?」
 カーッと熱が顔に集まる。どんな顔をしたらいいのかわからない。何を言ったらいいのかわからない。ニーズ……カカシのニーズは何だ。
「……満足、しましたか。」
「うん? ああ、金出した分は回収させてもらったよ。」
 コンドームを外して結び、ゴミ箱に放り投げる。
 サスケも気だるい身体を起こして、ベッドの上に落ちている下着とキュロットを履き始めた。
 ……屈辱、だったはずなのに、満ち足りた感覚を覚えている自分がいる。
「よかったらシャワー貸すけど?」
「……お客様の浴室を借りるわけにはいきません。」
「じゃあ、俺はシャワー浴びてくるから、サスケはぐちゃぐちゃにしたシーツ直しといてね。」
 何でもなかったかのように立ち上がり歩いていくカカシを見送って、ベッドから降りる。
 シーツをピシッと張ると、枕を整えて掛け布団を広げた。
 
 サスケの感情はぐちゃぐちゃだった。シーツのようにきれいに整えることはできない。いつものように営業スマイルを作るのも難しい。サービス時間はまだ一時間以上残っているのに。
「サスケ、こっちおいで。」
 浴室から声をかけられ、サスケがカカシの元に向かうと、カカシはまだ裸のまま身体の水分を拭き取っていた。
「あと何分?」
「……一時間と、十五分です。」
「ならもう一回できるね。」
 ドクンと胸が鳴った。
「何を……ですか。」
「セックス。ほら脱いで。」
 サスケはまた下着とキュロットを下げられ、壁に手をつかされる。
 その後ろの穴に、再びカカシのそれがあてがわれた。

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