スペシャルニーズ

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成人向,中編,現代パロ,完結済み,カカサス小説エロ,やおい,甘々

反応

「……へぇ、来たんだ。」
 インターホンの向こう側から聞こえてきたのは驚きを含む声。
 ガチャリと鍵が開く音がする。
「……契約ですから。」
 ゆっくりと歩を進めて玄関に入るとそこにはカカシが立っている。
「お邪魔します。」
「ベッドにおいで。」
 カカシはサスケを一瞥してから寝室に向けて歩いて行った。
 サスケは玄関に脱いだ靴を揃えて、スリッパに履き替えてからゆっくりとその後を追う。
 寝室にはカカシがすでにベッドに座っていた。サイドテーブルにはコンドームが三つとローション。……三回、か。
「どうするか、わかるね?」
「……全部ですか。」
「下だけでいいよ。」
 営業スマイルを見せないまま、サスケは黙ってウエストバッグを外してキュロットと下着を脱いでいく。
 ベッドの横にそれを畳んで置いて、カカシの目の前に立った。
 何をされても受け入れる。……そのために感情を殺す。二時間の我慢だ。三回我慢すればいい。
「……気に入らないな、その顔。」
「では気に入る顔になるように、ご自由にどうぞ。」
「じゃあベッドに仰向けになって、膝を抱えな。」
 言われた通りに、ベッドに上がって仰向けに寝転がり、膝を手で抱える。カカシはズボンを下ろしてゴムを着け、ローションを手に垂らしてそれに擦り付ける。
 ふう……
 サスケは深く息を吐いた。緊張したら苦しいのは自分だ。
 後ろの穴にぬるりと指が入ってくる。中を確かめるようにぐるりと掻きまわした後、すっと抜けていった。
「……?」
 代わりにカカシのそれがあてがわれ、一気に奥まで貫かれる。
「いっ! ……っ! ぅあ、くっ……あ゛っ!」
 慣らされずに挿れられたそれはお構いなしに抽送を始める。
「はっ、ぐ、っ……! あ、うあっ!」
 痛みと圧迫感でサスケの顔が歪む。それを見てカカシは目を細めた。
「はぁっ、はぁっ、あっく、っうぁ、……っ!!」
 苦痛、ただひたすらそれだけが続く。
 サスケは少しでも苦痛から意識を逸らそうと、頭の中でひたすら円周率を数える。
(6、7、3、3っ、6、2、……4っ、4、0……)
 何度も何度も突かれる内に、カカシの大きさに中が馴染んできたのか、だんだん痛みは鈍くなっていった。そして同時に、サスケの反応も鈍くなっていく。
「はぁっ、っぁ、……っ! ……はぁっ」
 カカシは腰を動かすのをやめて、ため息をついた。
「今日のお前とことんつまんないね。いや、俺も学習したよ。苦痛は慣れる訳か。」
 角度を変えて、サスケの腰を掴む。
「なら今度は思いっきり喘ぎな?」
 抽送が再開された。
 そこをなぞりながら突かれる度に駆け上がる暴力的な快感に、サスケは身体をのけぞらせて震える。
「あっ! んんっ、っあ! ぅあっ! あっ、ぁあっ!」
(6っ、5、……6……、6っ、4……っ)
 円周率を数える頭が快感に寝食されていく。
 どこまで数えた? ああもういい、もう一度最初からだ。
「ぁあっ! あ、あっ! はぁっ、っあ! んぁっ!!」
「なーんかさぁ、さっきから別のこと考えてるよね? 何? こっちに集中しろよ。ほらっ」
 激しく深くなる腰の動きに、サスケの思考は完全にストップした。
「あ゛っ! あぁっ! あ、あっ! や゛ぁっ! ああっ!」
 中を出入りするそれに意識が集まる。それがもたらすあがなえない快感に思考が奪われる。思わずカカシの顔に目線を移すと、カカシはその口角を上げた。
「やーっと俺を見た。」
 その嬉しそうな顔を認めた瞬間、胸がギュっと締め付けられる。
「っえ? あっ! は、あ、あっ! ぅあ゛っ! あ、ぁあっ!!」
 なんだ今の。
「ああっ! あっ、んぁっ! あ、あぅっ!」
 なんで。
「あ゛っ! ああっ! ぅあ、あっ、あ゛ぁっ!!」
 サスケの頭の中は真っ白になって、もう中から駆け上がる快感しか認知できない。声も、思考も、身体中の感覚も、すべてがカカシの腰の動きに翻弄されていて、完全にコントロールを失っていた。バクバクと脈打つ心臓が全身に熱い血を送り出し、またあのときのように全身が熱くなっていく。
「カカッ、あ゛っ!! で、ああっ! でるっ、あっ、んぁっ!! あ、あっ……!」
「ははっ、今のお前の顔いいよ。思いっきりイキなっ!」
 ガンガン腰を振られてサスケの身体がビクンと跳ねる。カカシはサスケの奥の奥までググっと深く貫いた。
「っあ! うあ、あ、……あああ゛っ!!」
 サスケのそれから勢いよく飛ぶ精液。キュウウ、と締まるサスケの奥の奥でもまた、カカシのものがドク、ドク、と精を放っていた。
「はぁっ、はぁっ、あ、あ……、あ、」
 膝を掴んでいた手がぱた、とベッドに落ちる。身体はまだビク、ビク、と痙攣していて、サスケは中イキの余韻に浸っていた。奥にはまだカカシのものが入っている。その中を埋めている感覚が愛おしい。このままずっと離れたくない。馬鹿みたいに脈打つ心臓の鼓動がうるさく感じた。そんなものよりももっとこの愛おしい感覚を全身で感じ続けたい。
 はぁっと荒い息を吐きながらカカシが腰から手を放して上半身を上げる。サスケは無意識にその手を掴んでいた。
「……何?」
「抜か、ないで……」
「っふは! すっかりハマってんじゃん。」
 カカシの顔がサスケに迫ってくる。サスケの心臓の鼓動が跳ね上がった。何だ、と思ったらカカシが耳元で囁く。
「大丈夫、次はもっと気持ちよくさせてあげるから。」
 低いトーンのその声に中がキュンとする。また心臓がギュッと締め付けられる。
 カカシは上半身を上げてそれを抜き、精液の溜まったゴムを結んで捨てて、新しいゴムを着けてその上からローションを塗り広げていった。そしてまだヒクヒクしているサスケのそこにあてがい、ゆっくりと奥まで挿れる。
「あ……あっ」
 カカシのそれが奥まで埋まって、サスケはうっとりとした。
 もう他のことは何も考えられない。中に入っているそれにとろんとした目で愛おしさを感じながら、次はどんなに気持ちよくなれるのか、期待でサスケのそれも芯を持ち始める。
 カカシはそんなサスケを見下ろしながら満足気に笑った。その笑顔に、サスケはまた心臓がギュッと締め付けられるのを感じる。
 ……さっきから、なんなんだこれ……。
 奥まで入っていたそれが、更に奥にぬるんと入った。
「っあ゛……!!」
「他所事考えるのやめてくれる? ……お前は俺だけを感じてれば良いんだよ。」
 その眼が語っているのは怒り? 不満? 呆れ? いや、違う……嫉妬。また、心臓がギュッとなる。
 再び、激しい抽送が始まった。
 
「十分前、うん、ちょうどいいね。」
 ウエストバッグに入っていたタイマーを見て、カカシは服を整え始める。
 サスケも荒い息のまま、脱いだ服に手を伸ばした。
 最後だけイかせて貰えず、サスケのそこはガチガチに勃ったままだったが、下着の中に無理やり押し込む。
 カカシと目が合う度に心臓がギュッと痛んで、それがなぜなのかわからなかった。ほぼ二時間ずっと快感に翻弄されていた頭はなかなか冷静には戻れない。
「ねえサスケ、オプション分っていくら貰ってんの?」
 ……これは話してもいいのだろうか? いや、確か、スタッフが自分の待遇をお客様に伝えるのは……駄目だったはず。
「……機密事項です。」
「あ、そ。なら提案だけどさ、お前俺と直接契約しない? 今俺がお前の会社に払ってるオプション代は一日五万円だ。どうせ中抜きされて半分も貰えてないんでしょ。直接契約に変えたらその五万円をまるっとお前にやるよ。」
「……一ヶ月は中途解約できません。なのでその提案はお受けできません。」
「普通出来るでしょ、それとも中途解約したら何かペナルティでもあるの?」
「機密事項です。」
「ってことは何かあるわけだ。それで今日は仕方なくしぶしぶ来たってことね。……でも、来て好かったでしょ?」
「…………」
 答えられえなかった。けれどセックスは頭がどうにかなりそうなくらい気持ち良かった。まだ中は疼いているし、前も勃ったままで敏感に刺激を拾おうとしている。
 ……また。……もう一回。……もう一度。
 もうすぐ時間だからできない、それを言い訳にして、けれど本当はもっとかき回されたかった。ぐずぐずに思考を溶かしてカカシだけを感じたかった。でもそれもあと九回。……九回もこんなことを続けて、十日後俺は正気でいられるのだろうか。
 ウエストバッグからウェットティッシュを出して自分の腹に着いている精液を拭き取り、制服を着込んで、ぐしゃぐしゃになったベッドのシーツをピンと張り直す。
 呼吸はようやく落ち着いてきた。でも心臓の鼓動はまだ早いままだ。カカシの顔をまともに見れない。また目が合ったとき、ギュッと胸が締め付けられるのが怖かった。落ち着いてきた今、その意味が少しだけわかる。けれどそんなことはあってはならない。十日後俺は違約金を支払って新しい部屋を探して、カカシとはもう会うことはなくなる。こうしてセックスをすることも。
 ピピピ、とタイマーが鳴った。時間だ。
「本日はこれで、失礼しま――」
 顎を掴まれて顔を上げさせられる。目の前にカカシの顔。瞳孔がその眼にキュッとピントを合わせる。
「なに、その顔。」
 ……俺は今どんな顔をしてる? どんな目でカカシを見ている? ……口をぎゅっと結んだ。
「……気に入る顔には、なりませんでしたか。」
「いんや、満足してるよ。でも今のこの顔は想定外。」
「時間です。失礼しますっ」
 手を振り払って足早に玄関に向かう。スリッパを脱いで揃えて、靴を履いた。玄関の扉を開けると、後を追ってきたカカシが一瞬だけ見えたが、サスケはそのまま外に出る。
 
 ……嘘だ。
 カカシはただの厄介な客だ。
 この身体の反応はでたらめだ。
 セックスが気持ち良すぎて、頭がおかしくなってるだけだ。
 それにカカシは俺のことを、単に都合のいいガキだとしか思っちゃいない。
 こんなの、嘘だ。
 
 報告書を書く手がなかなか進まない。
 思い起こしては茫然として、ハッと気づいてキーボードを叩く。
 30分以上かけて書き上げた報告書は、今日は2枚。
 猿飛さんのデスクの上に置いて、更衣室に向かった。
 ウエストバッグに入っていた、自分の精液がついたウェットティッシュをゴミ箱に入れる。
 着替えながら、まだ頭は混乱していた。身体の反応に気持ちが追い付いていなかった。信じられなかった。嘘だと思いたかった。違うに決まってる。何かの間違いだ。
 帰りの電車に揺られながら、明日の講義の確認をする。午後に集中していて午前は何も入っていない。だとすれば、明日カカシの家に行くのは午前中だ。
 中がキュンと疼くのを感じる。身体がカカシを求めている。
 仮にあの身体の反応が本当だとしたら、俺はどうすればいい。どうするべきだ。予定通りに10日間で辞めるのか、それとも……。
 
 家に帰ってすぐに熱いシャワーを浴びた。
 落ち着け。冷静になれ。客観視しろ。
 俺はどんな目に遭った。どんな苦しい思いをした。苦しむ俺を見て、カカシはどんな顔をした。何をした。そんな奴だぞ?
 蛇口を捻ってシャワーを止める。
 バスタオルで水分を拭き取るとパジャマに着替えた。
 頭に浮かんでくるのはカカシの興奮した顔、荒い息遣い、そして妖艶に笑う顔。
 思い出しただけで中心に熱が集まっていく。
「っくそ、」
 ベッドに座って傍らにティッシュを置き、自分で扱く。思い起こすのはカカシとのセックスばかり。中を奥まで満たされた感覚。激しい抽送が生み出す快感。中イキしたときの多幸感。
 あっという間にそれは精を放った。ティッシュが間に合わず床が汚れる。
 ため息をつきながら床の精液を拭き取った。
 あの激しいセックスが、快感が。頭から離れない。
 サスケはティッシュを丸めてゴミ箱に捨てて、また深くため息をついた。

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