愛とは何たるか
後日談:立場
はしらまは 接吻 を おぼえた!
からというもの、そこら中で柱間はそれをしようとする。街中でも変わらず。根底はまるっきり変わっていねえ、と頭を抱えるマダラの頬に唇を寄せる。やめろと言ってもやめない。それもそうだろう、こいつには一般常識が通用しない。しかし常識がないのが柱間なのだ。柱間から非常識を取っ払ったらもうそれは別人と言ってもいい。
だからマダラは人混みでは避けつつふたりきりになったときにはしたいようにやらせている。状態だが接吻ばかりしていると柱間は次第に欲情し始める。これが厄介だった。
以前のように所構わずということは減ったが完全になくなったわけではない。
誰が通るかわからない木立の陰であったり建物と建物の隙間であったり、そんなに我慢ならないならどちらかの屋敷に腕を引っ張っていけばいいものを接吻をしながら下半身を弄り始めてマダラの尻に己のそれを擦り付けてくる内にマダラもまた変な気分になってきてしまう。
以前はそれが単なる性欲処理と執着だったが柱間は今愛という大義名分を手に入れてマダラに愛していると囁きながら接吻をするのでマダラもあまり無碍にすることができない。
結果としてまぐわうことになること多々、ただ以前までとは違って柱間はよく喋るようになった。どれだけマダラを求めているのか、早くマダラとひとつになりたいだとか、嫌なら断ってくれなどと今までは絶対に口にしなかったとを囁く。そこが決定的な違いで、ただし嫌なら断ってくれと言いつつその目は抱きたいとしか語らないのだからマダラは結局一度も断ったことはなかった。
しかしそこかしこでお盛んになっていては声もろくに出せない。
マダラが不満を持っていたのはそこだった。柱間は好きだ愛していると囁きながら腰を動かすがマダラの方は声を抑えるばかりで何も言い返せない。まあ仮にきちんと屋敷の寝所でまぐわったとて喘ぐばかりで言葉など返せない。だとしても一方的に言われ続ける毎日、少しずつ溜まったフラストレーションはついに爆発した。
いつものように家々の隙間でマダラを抱きしめながら腰を押し付け愛していると囁く柱間にマダラの堪忍袋の尾が切れた。
「変わったと思ったがやはりお前は変わっていねえ!!」
ドンと柱間の胸を押しジロリと睨みつけてマダラは大股歩きでその場を立ち去った。残されたのは股間に傘を作った状態でショックに打ちひしがれる柱間だった。
結局あいつは自分のしたいことだけして満足するばかりだ、言葉だけは俺を気遣うようなそぶりを見せるがそれも言葉だけだ! あんな奴に今まで付き合ってやっていたオレがどうかしていた、柱間には人を慮るという概念がない!
鼻息荒く自宅に戻り、それから一週間マダラは屋敷から出てくることはなかった。
オロオロしながらその周辺を柱間が行ったり来たりしているのが目撃され里の人々は何かあったのかと心配をした。何せ里の創設者である柱間がマダラの屋敷の前で取り乱しているように見えるのだからすわ同盟関係が崩れるのではと噂になり、噂は風のように広まり、周辺に潜む木の葉をよく思わない連中の耳にも届いた。
「千手とうちはが同盟を撤回するかもしれない……だと?」
巡り巡ってそんな形になった噂は「今が木の葉を落とす好機」と潜んでいた反木の葉勢が結した。
突如として里を襲う軍勢が現れ人々は里の中枢へ向けて逃げ込んだ。一方で扉間は俊敏にその動きを察知して対抗軍を臨時結成し向かわせる。いつでも動けるように準備させていた千手とうちはの精鋭だ。柱間の出る幕もなく片がつくだろう。そう考えていたのは扉間だけだった。戦の臭いに誰よりも敏感な二人が黙って見守るはずもない。
敵軍は突如として現れたマダラの須佐能乎に踏みつけられ跳ね飛ばされ腑を飛び散らせた。
「ただでさえイラついてるときにうるせえんだよ!!」
一方の柱間も大剣で数人まとめてぶった斬りながら大将首を狙い定めると大きく跳躍してその身を真っ二つにする。
「投稿する者は早く手を上げろ大事なときに邪魔立てする者は許さんぞ!!」
扉間のよこした精鋭はそのふたつの災害が早く敵を殲滅して早く落ち着いてくれと願う他なかった。
一通り暴れ回って立っている者はマダラと柱間だけになった。マダラはその柱間の姿に気がつき露骨に顔を背け死者の山を踏んづけながら戻って行こうとする。
柱間は思わず手を伸ばしマダラの腕を掴んでいた。
「待ってくれマダラ、俺に悪いところがあったなら教えてくれ!」
「言ったはずだお前は何にも変わっちゃいねえと」
「だが俺はお前を愛していると何度も、お前だって答えてくれていたではないか!」
この者達、戦の場で互いに一族を率いていた立場である。即ち声がデカい。木の葉の民はそのやりとりを固唾を飲んで耳だけをそちらにむけていた。
なんだこのやりとりは。
まるで痴情のもつれのようではないか?
マダラが屋敷に篭っていたのも、柱間がその屋敷の周りをウロウロとしていたのも、まさかこのふたり、恋仲で単に痴話喧嘩をしていただけと、そういう事情だったのか?
「お前はいつも俺の話など聞こうとせん! 好きだの愛してるだのは五月蝿いがそれだけだ! 犬の遠吠えとどう違う!」
「ではどうしていればよかったのだ、頼むから教えてくれ!」
「自分の頭でしっかり考えて反省しろ!!」
耳をそば立てているうちに里の民もなんとなく事情が読めてきた。千手の者は「確かに族長は……」と痛いところを突かれた気分になり、うちはの者は「族長を蔑ろにしたということか!」と殺気立った。
気の毒なのは千手の者だ。柱間はカリスマがあるが破天荒なのは誰もが知っている。その柱間がうちはの長にやらかしてしまったらしいと至るとうちはの者に合わせる顔がない。
ついにマダラが柱間を振り切ってまた屋敷に篭り、柱間は一人残されて世界の終わりのような顔をしながらトボトボと自分の屋敷に帰っていく。
その様子を見守っていた扉間はうちはと千手の民の間に亀裂が生じかけているのを深刻に捉えこうなってはもう隠し立ても意味がないと民に呼びかけた。
「うちはの者達よ、誠に申し訳ない。兄者は飛び抜けて不器用なばかりでなく愛情だけは底抜けに深い! そのためマダラ殿との間に少し齟齬が生じているが、決してマダラ殿を蔑ろにしているのではなくただ突き抜けて不器用なだけなのだ! だが安心して欲しい、このすれ違いは長くは続かん! その際には当人にはわしが責任を持って迷惑をかけた旨謝罪させる! この度は申し訳ない! しばし我慢して欲しい!」
などと言いながら本心ではいつ仲直りするのか想像もつかず胃痛がする思いだった。
下手に立場のある者達が恋仲になるとはこうも厄介なものなのか。
里の者も扉間もあのふたりを極力そっとしておこうと距離を取った。あまり刺激を与えるようなことをしてはどうなるかわからない。
そうして里の民から放って置かれること更に一週間後、マダラの屋敷から柱間とマダラが揃って出てきて里の様子がどうもおかしいことに気がつく。柱間様と親しみを込めて呼ぶ者はおらず何ぞと思っていたら扉間に火影室までふたりまとめて連行され、事の成り行きを説明されたが柱間は「何が迷惑だったのだ?」と理解せず、逆にマダラは「お前のそういうところだ!」とすわまた仲違いをするのではないかとヒリついたが、どうにか柱間を説き伏せて「どうやら俺はしでかしてしまったらしい」と思わせることができた。
しかし肝心の民への謝罪は
「すまなんだ! もう大丈夫だ! 安心してくれ!」
という不安しか煽らない謝罪でしおらしくしていればまだよかったが柱間はマダラと仲直りできたことで機嫌が良くつい笑顔でこの謝罪を口にしたものだから里の民の中では自然と「やはり火影は扉間様が好適だ!」という声が上がって行ったとか。
