惰性
もう戻れない
自分で出て行けと言っておいて俺は一体何をしてる。
サスケは背後から伸びる俺の手をじっと見つめたまま動かない。俺の望む通りに行動してきたサスケにとっても言葉と行動がチグハグな俺に戸惑っているんだろうか。
すぐに手を引けばいいものを、俺はそれをしたら後悔するような気がして手を動かすことができなかった。
まだこころの中に苛立ちがある。一体何に対する苛立ちなんだ。サスケの手の上に載せた手がサスケの小さな手を握る。
「行かないで」
置いてかないで。
「戻ってきて」
ひとりにしないで。
「一緒にいたい」
ずっと隣にいて。
「ごめん」
俺が間違ってた。
「好きだからそばにいて」
もう大切な人を失いたくない。
「お願い」
俺の言葉を聞いて。
恐る恐る、バックパックを背負ったサスケが振り返る。俺の顔を見て目を見開いて、俺は今どんな顔をしている?
サスケの痕跡がたくさん残る部屋に独りで住むなんて耐えられない。大切なものを作らない、そう思い続けてきたけれどサスケと過ごしたこの一年間こそが俺にとって大切なものになっていた。その中心にサスケ本人がいない、そんなのは……嫌だ。
子どもじみたことを考えていると自分でも思う。サスケが出て行くことで俺は見捨てられた子どものようになってしまう、そうだこれが後悔の中身だ。おかえりもただいまも聞こえない家に帰ってくるなんて考えられない。サスケが俺への気持ちを秘めていたように俺自身も……サスケに対する気持ちに目を向けないようにして誤魔化して取り繕って嘘で固めてきたけど本当は俺は。
「なんで出て行くの」
サスケの目が困惑で揺れる。出て行けと言われてその通りにしたのになんでと言われればそうもなるだろう。
「俺のこと好きって言ったのに、一緒にいられるだけでいいって言ったのになんで出て行くの」
めちゃくちゃなこと言ってるのはわかっている。サスケが困るであろうこともわかっている。
だけどそうやってサスケを試すようなことをして言って俺はサスケからの愛を確かめようとした。バカなことしてる。何もいいことなんかない。それでもサスケの答えを聞きたい。ただ俺を好きだと言って欲しい。
「あ、んたの、望むように、しよう、と……」
「なら俺が死ねって言ったら死ぬの? 俺の言うことならなんでも聞くの? 俺の望みは何でも叶えるの?」
小さな喉仏が動く。
ああだめだもうこれ以上、耐えられない。
握った手を引き寄せる、その勢いで俺の胸にぽす、と寄せられた顔、その小さい肩を抱きしめる。
「俺が好きならもっと主張してよ、もっと表現してよ、俺のことを安心させてよ、好きなら離れないでよ、俺の言う通りにするんじゃなくて、サスケ。」
「……それは、だって、今、まで」
肩を抱いていた手をその両頬に添えて顔を上げさせる。朱に染まった顔はやっぱりまだ困惑している。その唇を喰むように塞いで舌で口の中を撫でてサスケの舌に絡めるとサスケも戸惑いながらその舌を絡める。
背中から差し込んだ手でその温かい身体を直に抱きしめた。腰を抱きながらもう片方の手を胸に伸ばして突起を転がすとぴくんと肩が揺れる。
「っん……」
唇を離したくない。俺は我儘だろうか。この小さな身体の全身を愛したい。そしてまたあの声を聞きたい。俺を好きだと言ったあの声を。
「んっ……カ、……っ、」
聞かせてよ。
「はぁ、っぅ、……っ、ん」
邪魔なバックパックをどさっと床に落とす。震える身体を抱き上げて寝室のベッドに倒した。
アームウォーマーを取っ払い、窮屈そうな足のバンテージも緩めて、そのついでに足の指に舌を這わせる。
「だっ、き、たない……」
愛しい存在に汚いところなんて存在しない。それにサスケが身綺麗にしていることは知っている。その証拠に埃ひとつついていない皮膚の薄い柔らかな指。
いつもなら、サスケは自分で服を脱ぐ。いつもとは違う、と思っているのか脱ぎ始める様子はない。
足から顔を上げてその赤い顔の横に手を付くと、その困惑した目は俺の右手に黒目を向けた。
「……意味わかる? わからない?」
黒目が再び俺の顔に向けられる。
「何……のことを……」
「俺が言ったこと理解できる?」
眉間に寄せられる眉、涙で揺れる瞳、ねえ、それってどういう意味?
口に出そうとしてまた口を結ぶ。自分の望み通りになるわけがないと自戒するように。でももうそんな
「我慢しないで。……それともやっぱり最中でないと言えないのならこのままする。」
「あ、っ、あっ、あ、っあ! っひ」
日本の指でそこをしつこく突き続ける。背をそらしながら顔を隠す腕、その腕をどかして深くキスをする。
「んんっ、んっ、う、ぁ、あっ……!」
はー、はー、と息を吐いている俺は今興奮しているのか。早く中に入れたいぐちゃぐちゃに掻き回して俺の首にしがみつくサスケを感じたい。
指を抜いてそれをあてがう。ねっとりと愛撫するいつもよりも早いそれにサスケはまた小さな喉仏を上下させる。
ずぷ、ぬる……と入っていくその中は熱くて俺のものを締め付けながら柔らかく迎え入れる。
サスケの好きな一番奥まで入れて小さくノックしながら漏れる声と熱い吐息を聞いて満足する。
「正直に言って俺も正直に言う。」
え、と黒い瞳が俺の顔に向けられる。
「あっ、い、いまっ、……? っ!」
ぐ、ぐ、と奥を刺激しながら自分の声に混じる吐息。
早く動かしたいのを堪えながらサスケの返事を聞くためにその小さな動きを繰り返す。
「俺のことどう思ってる」
「んっ、か、かし、が、っ! すき、すきだ、っ!」
「なら何で出て行こうとしたの」
「っぁ、だ、って、っん! 困らせ、たく……っあ!」
「ちゃんと答えてよ」
「あっ……! あ、あっ、むっ、むりっ! おく、はっ」
「答えて」
「っ、カカシへの、っ、きもち、は、めい、わく、だった、んだと、お、もっ、て……」
消え入りそうな声。サスケの本音を聞いた直後に言った「出て行って」、……サスケはそれすら受け入れた。理由は、俺のことを好きだから。
理屈はわかる。でもなんでと思ってしまう。あんなにも何度も何度も俺を好きだと言ったのに、その自分の気持ちを押し殺してまで俺のことを尊重しようとするサスケが。
「俺が好きなら俺のそばから離れないで。」
腰を大きく動かした。パンッパンッと皮膚がぶつかる音とサスケの声。
「あっ、あ、ひっ、っぁあ゛! あっ! ああ゛!」
「言ってどこにも行かないって」
「ぁああっ! いっ! いか、っぁあ゛! いかなっ、ぅん゛っ!!」
小さく主張する下腹部のそれを握るとサスケはビクッと身体をこわばらせた。ぎゅっと搾り取るように締まる中、奥に腰を進めるとその度にビクッと揺れる。
この締め付けの中を同じ速さで動かしたら俺もすぐにでもいってしまいそうだ。
「やめっ……っい、てるっ、か、らあっ! うご、」
「でも俺いってないから」
「っああ゛!! はぅ、ん、あっ!」
……突く度にいってる? またあれか、ドライ……まあ、いいや。
このままイキっぱなしになったりするのかな。
キツく締め付ける中を行き来しながら、やっぱりキツくなってきて奥にグッと押し込みながら吐き出した。
「あ゛っ!! ~~~っ、は、あ、」
震え続けるその背中に手を回す。胸にキスをして、唇を奪って、震えはなかなか止まらない。
間断なく締め付けられてまた大きくなり始めて、どうしようかとサスケの顔を見た。涙をこぼしながらその瞳は赤く染まっている。
「サスケ」
こんなに真正面からサスケの顔をまじまじと見た事はあっただろうか。すっかり泣き顔でいつものクールさはどこへやら……いや。
……俺も同じじゃないのか。
「……俺のことが好き?」
こくこくと小さく頷く。違う、そうじゃない。
「口で言って」
赤い瞳からまた涙がこぼれる。
「す、きだ……カカシ、が」
「俺も」
中がきゅうっと締まる。……わかりやすいなぁ。
「俺もサスケが好き。だからどこにも行かないで。」
サスケに負けないぐらい、その小さな身体をぎゅうっと抱きしめる。
愛おしい
……そう、愛おしい。この子どもが。男で、少し生意気な、でもずっと俺のことを好きでいてくれたサスケが……愛おしい。
今度こそ、嘘はつかずに、誤魔化さずに、取り繕わずに、この胸に込み上げる気持ちを声に出して伝えなければいけない。
「……愛してる、サスケ、愛してる……」
