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成人向,長編,吸血鬼パロ,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,甘々

欲求

 サスケはペットボトルを一本持ってカカシが突っ伏しているダイニングテーブルに戻り、少し冷めたオムレツの残りをたいらげた。
 そしてペットボトルを目の前に置き、それをじっと見る。
(兄さんは一週間後また来てくれるって言った)
 蓋を開けると濃厚な血の香りが漂う。
(返品されたとしてもきっと助けに来てくれる)
 ペットボトルに口をつけ、ひと口こくりと飲み下す。
(おいしい……)
 カカシの血も美味しかったけれど、純粋な吸血鬼の血は濃密で香り高く、何より懐かしい味がした。
 ゴク、ゴク、ゴク、
 あっという間に半分なくなる。
 アタッシュケースの方を見ると、ペットボトルの山がある。
 サスケは席を立ちケースの中のペットボトルを数えた。
 よく見ると、キャップに「六月二十八日朝」「七月三日昼」などのメモ書きが残されている。几帳面な兄さんらしい。
 数はちょうど七日分、朝昼晩と一日三本分が入っていた。
(一日三回も血が飲める)
 今日は何だか怖かったけれど、やっぱり兄さんは記憶の中と同じ優しい兄さんだ。
 ダイニングテーブルに戻り、残りの血も残さず飲むと、サスケは台所で食器を洗ってから、まだまだ起きそうにないカカシを残して掃除の続きを再開することにした。
 
 ベランダの掛け布団を部屋に入れて、次はマットレスをベランダに運び出し、ポンと叩くとやはりブワっと埃が舞ったので、窓を閉めてから隅から隅までマットレスを叩く。
 ケホ、ケホ、
 掛け布団と比べ物にならない埃の量に、咳き込みながら埃が出なくなるまで叩き出した。
 
 満足いくまで叩き終わると、ベランダにマットレスを置いたまま室内に入る。
 あとは床の掃除だけだ。
 これから……少なくとも、一週間は暮らす自分の部屋を掃除しているのは、不思議な気分だった。
 
 夕食はビーフシチューだった。
 カカシは着物を着ているくせに食べるものは洋風なものが好きらしい。
 添えられたガーリックライスと一緒に食べるビーフシチューは絶品だった。
「美味しい?」
 不意に声が降ってくる。
 サスケは口の中にあるものを飲み込んで、「うまい」と一言だけ返す。
 固いパンと何も入っていないスープの毎日だったから、きっと何を食べても美味しく感じただろう。
 
 夜の帳が下り、自分の部屋のノブを回しかけて、サスケは立ち止まる。
 兄さんの血は美味しかった。
 けど、………、直接飲む生の血の味も忘れられない。
 またあの血が飲みたい。
 思い出し始めると、あの血が飲みたくてそわそわして落ち着かない。
 そっとカカシの部屋のある一階に降りて、その姿を探すが、いない。もう寝室にいるようだ。
 飲みたい。あの血を、もう一度。
 
 コン、コン
 カカシの部屋の扉をノックする。
 少しの沈黙の後、中から「どうしたー?」と声がかかる。
 サスケが扉を開いて中を伺うと、ベッドでくつろぎながら本を読んでいるカカシがいた。
「何か用事?」
 本に目を落としながら話す様子を見て、やっぱりやめようか、邪魔しちゃ悪い、………でも、飲みたい……サスケの頭の中がぐるぐると思考する。
 いつまでも喋らないサスケに、様子がおかしいなとカカシが顔を上げると、サスケは部屋の入り口で俯いていた。
「サスケ?」
 本を置いて、ベッドの端に座る。
「……その、………えと……」
「ん? よく聞こえない。おいで。」
 ベッドの隣をポンポンと優しく叩き、座るよう促す。
 サスケはカカシの隣に座ると、それだけで胸が破裂しそうなくらいドキドキしていた。
「……で、何の用?」
 カカシがサスケの頭を撫でる。心地いい大きな手。
(言え、言うんだ、俺。)
「………しい」
「ん?」
「……あんたが欲しい」
「へ?」
「っっいや‼ 言い間違えた! 欲しいのはあんたの血でっ……!」
「それ、ほとんど同じ意味」
 クスクス笑うカカシに、サスケの顔が赤くなる。
「あれだけお兄ちゃんの血を飲んだのに、まだ欲しいんだ? ……悪い子だね、サスケ」
 笑いながら、手を広げてサスケを迎え入れる。
 着物の左肩を露出し、「ほら」と誘うカカシは妖艶で、サスケは誘い込まれるようにカカシの上に跨り、肩に口を近づけ、口を開く。
 牙が肌にぷつりと刺さる。じわりと溢れ出る血。カカシの血は、甘い。
 夢中になって吸い、飲み下していると、カカシが「はい、そこまで」とサスケを引き剥がす。
「……ぁ、」
 目の前で肩に滲む血に、もったいないと舌を伸ばそうとしたら、その口に指を入れられる。
「欲しがり屋さんだねぇ。サスケってそんな子だったんだ。」
「っひが……‼」
「違うの?」
「………わなひ……」
 目を伏せてカカシの指を舐める。
 ああ、また身体が熱くなってきた。
 のぼせたみたいに、頭がぼーっとする。
 口の中にあるカカシの指だけが、輪郭がはっきりしていて、存在感があって、もうそれだけしかこの世に存在しないみたいに感じる。
 指を舐めながら時折熱い吐息を吐くサスケを見て、寝るつもりだったカカシもその気になってきた。
「……今度は前も触ってみようか」
 サスケの口から指がゆっくり離れていき、はだけた着物の奥にあるサスケの中心を撫でる。
 すでにそこは勃ち上がっていて、触れられるとピクンと跳ねた。
「……っ」
 パンツの上からゆっくり指をそわせると、サスケがカカシの腕を掴む。
「どうしたの?」
 カカシの優しい声色が耳の奥に響いてこだまする。
「……もっ、と……」
「……はは、こんなサスケをお兄ちゃんが見たらどう思うかなぁ?」
 望み通りにパンツの中に手を入れて、上下にシチュシチュと扱きながら、カカシは愉しそうに笑う。
「んっ……ぁ、……言わ、ないで……っ」
「もちろん。俺たちだけの秘密。」
「ひみ、つ……」
「そ、秘密」
 亀頭に被っている皮を優しく下ろし、先をクルクルと撫でる。
「はぁっ、あ、……っ、は……」
「このまま剥いちゃおうか」
「……んっ……ぇ…?」
 サスケの唾液で濡れた指を撫でつけ、皮を少しずつ、少しずつ下ろしていく。
「っ……! やめ、……!」
「今は痛いのも善いでしょ?」
 カカシにそう言われると、そんな気がしてくる。
 皮はカリ首のところで止まっていて、それ以上進めるときっと本当に痛いだろう。
「……痛くても、そのあとうんとよくなるから」
 ニコ、と笑いながらぐいと引っ張ると、少しの抵抗の後、ずる、と皮が剥けた。
「っひあ! ……っぁ」
 中心に走る裂けるような痛みは脊髄を通って脳に到達する頃には快感に変わっていた。
「……っう……、」
 サスケはカカシの腕にしがみつく。
「ほら、見てサスケ」
 カカシの手の中にあるのは、小さいながらも大人と同じ形をした生殖器。
「俺とお揃い」
 剥き出しになったそれサスケに見せると、ウェットティッシュを一枚出して丁寧に拭いていく。
「ホントはお風呂で洗ったほうがいいんだけど、ね。」
「っ……」
 そのウェットティッシュにすら感じてしまうサスケはカカシの腕に顔を埋めて声を堪える。
 今までとは違う直接的な刺激。
「ほら、きれいになった。」
 カカシはウェットティッシュを捨てると、サスケの裏筋をスッと撫でた。
 ビクンッ
 サスケの身体が跳ねる。
「……うん、いい感度」
 腕にしがみつくサスケを引き剥がしてベッドサイドの引き出しからローションを取り出すと、トロッと手に取り、サスケの中心に手を添える。
「それ……何……っひぁ!」
 カカシが手を動かし始めるともうだめだ。中心に走る感覚だけが脳を埋めていく。
「んっ、ぁ、あ、……っあ」
 時折はぁっと熱い吐息を吐きながら、サスケはその手に夢中だった。
「このままいけるね?」
「っうン、あ、あ、はぁっ、あっ、も、出る、出る……!」
 ビクンと身体が震え、サスケの中心からピュッピュッと白濁液が迸る。
 だが、カカシはその手を止めない。
「や、あっ、もう出たっ、っぁ、んんっ!」
 敏感な先端をぬるりとしたローションで優しく撫でると、小さなそれはまた反応し始める。
「……っは、あぁっ、やめっ、カカシッ、もうっ、んぁっ」
「ほら、まだまだ元気」
 むずむずと中心に集まる熱が再びサスケの脳内を埋めていく。
「うぅ、っぁ、やめ、やめ、変、なんか変……!」
 射精感とはまた違う感覚がサスケの中に疼く。それはどんどん大きくなっていき、我慢しようにも我慢できない。
「変で良いし汚しても良いよ。」
「っあ、だめ、またっ、あ、あ、あ、やめ、ぅぁっ!」
 カカシの手の動きが早くなる。
「~~っ! だめ、だめ、出る、っぁ、っっ、あああっ‼」
 サスケの中心がピクン、と動いたかと思うと、勢いよくビューッと透明な液体が勢いよく飛び出した。
 それはなかなか止まらなくて、カカシの着物を濡らしていく。
「あ、あ、止まらな、……!!」
「おー、おー、ほんとに男でも潮って吹くんだ。」
 パニックになっているサスケを尻目に、カカシは冷静だ。
(今度の小説で使お。)
 ようやく収まったところで、カカシは濡れた着物を脱ぎ去り、床に放り投げる。
「……はぁ、はぁ、あ……」
 まだ荒い息のサスケの手を取り、ベッドに誘うと、サスケは素直にベッドに上がって膝立ちになった。
「パンツは脱いじゃおうか。」
 サスケの身体の熱はまだおさまらない。カカシとひとつになりたい。めちゃくちゃにされたい。
 言われるままにパンツを脱ぐと、サスケは布団の上に組み敷かれる。
「後ろ、慣らした方がいい?」
 カカシが後ろの穴の入り口をローションで濡れた手でくにくにと触る。
「っいい……! も、挿れ……」
「じゃ、挿れるよ」
 自分のそれにローションを擦りつけると、カカシはサスケの後ろにあてがい、ぐぐっと押し込んだ。
「っ! っぁ、」
 ゆっくりと入ってくる熱いそれに、サスケは息を殺しながら中に神経を集中させる。
「ん、う、っ、」
 ひきつれて痛みを感じる。その痛みすらカカシのものだと思うと愛おしい。
 サスケの奥の奥にそれが届くと、カカシはふぅ、と一息ついた。
「すっごい締め付け。」
 はぁ、はぁ、と肩で息をするサスケの前髪をサラッと撫でると、ゆっくりとした抽送が始まる。
「んんっ、あ、あっ、は……ぁ、」
「あぁ、……気持ちい」
 前立腺をなぞって奥にそれが届くたびに、カカシにしがみつきたくなるのをこらえて、シーツをぎゅっと握りしめる。
「はぁっ、あ、んんっ! ……っあ、ぁあっ、カカ、シ……っ」
「……うん?」
「………っ!」
 もっと激しく揺さぶって欲しい。
 もっとカカシを感じたい。
 もっと、もっと、もっと……
「言わないとわかんないよ?」
 奥に突き上げる。
「っあ゛!」
 そこでカカシが動くのをやめる。
「……っあ、……は、……、………」
 朝は言えたのに、喉の奥に何かが引っかかっているみたいに言葉が出せない。
 サスケは黙って顔を背ける。
「……血の量が少なすぎたかな。いいよ。わかってるから。」
 そう言うと、カカシは抜けそうなくらい腰を引いて、一気に最奥にそれを突き上げる。
「~~っ‼」
 それを皮切りに、抽送がぐんと激しくなった。
「あ゛っ! あっ、あ、んぁっ! あ゛っ、あぁっ!」
 パンッパンッパンッパンッ
 乾いた音と嬌声が部屋に響く。
 奥に届くたびに、ナカの感覚が脳を侵食していって自分がどうなってしまうのか怖くなる。
 望んでいたはずなのに、身体を重ねる度にこの関係が終わってしまわないか不安になる。
 そう、思う程度にはサスケの思考はまだ残っていた。
「や、あ゛っ! あ、あっ、あ゛っ、カカ、っあ、」
「やなわけないでしょ。こんなに締め付けといてっ」
「~~っあ゛! あっ、あっ、ちが、あ゛っ! っああ!」
 その思考も、溶けるようにグズグズになっていき、最後に残るのは快楽だけだ。
「あっ! あ、っ! あ゛っ、だめっ、あ゛っ! だめ、もうっ、ぅあっ、あ゛っ!」
 全身が熱くなっていく。身体はビクン、ビクンと跳ね、ナカがきゅーっとカカシのものを締め付ける。
「……早漏。」
 カカシが口角を上げる。何のことかわからない。笑われてる。でももうこの感覚は我慢できない。
「~~っあああ! あっ、ぅあ、んああ‼」
 サスケの身体が痙攣し、その中心から白濁液が飛び出した。
「……は、あっ、あ゛っ、ぅあっ! っあ、あ゛っ!」
 しかしカカシはその腰の動きを止めないどころか、むしろ激しく打ち付ける。
「……欲しがったのはサスケだから、俺も満足させてよね……っ」
 パンパンパンパンパンッ
 サスケへの配慮も何もない暴力的とも言える動きに揺さぶられ、それでもサスケは快楽を感じてしまう。
「あ゛っ! あ゛っ、っあ! あ゛っ! あ゛ぁっ!」
 カカシの額から汗が落ちた。
「……出すよ」
「あ゛っ、あ、あっ、あ゛っ! っあ! っぅあ! っあああっ‼」
 最奥に突き上げると、カカシのそれがビューッビューッと勢いよくサスケの中に精液を吐き出す。
 ナカで感じるその鼓動に愛おしさを感じながら、サスケは意識を手放した。
「……スケ」
 頬をペチペチと叩かれる。
 まだこの多幸感の中でまどろんでいたい……。
「サスケ」
 優しい音色。でも兄さんじゃない。
「起きな、サスケ」
 口をむにーっと引っ張られて、サスケが目を開ける。
「……?」
 裸の男が覗き込んでいる。
 誰だっけ。
 この顔……この顔………
「っあ、」
「やっと起きた」
「っえ、あ、」
 カカシがそれをずるっと引き抜くと、まだ敏感なそこに、サスケの腰がビクンと揺れる。
「~っ、は、ぁ、」
 見慣れない天井。
 ここは……ここは、カカシの……
 バッと上体を起こすと、奥がジン、と熱いのを感じる。
「ちょっと激しかった? 慣れっこだと思ってたけど。」
 カカシはベッドの端に座って床に放り投げられた着物を拾うと、サスケにはい、と渡す。
「洗って返してね。欲しがり屋さん。」
 その瞬間、自分が何をしてしまったのか思い出し、顔がカーッと熱くなる。
 どうかしてた。
 どうかしてる。
 兄さんの血を飲んだのに、まだカカシを欲しがるなんて。その挙句。
「シャワー、浴びる?」
 差し出された手を取るのを躊躇った。
 恥ずかしくてカカシの顔もろくに見れずうつむく。
「遠慮なんてしなくていいし、恥ずかしがることもないよ。俺も半分吸血鬼だから、サスケのことはわかるから。」
 頭をくしゃくしゃっと大きな手で撫でられる。
 ……カカシは、欲しいときに、欲しいものをくれる。
 なんでそれがわかるのか、わからない。
 同族だから? 研究者だから? ……わからない。
 わからない、けど。
 サスケはうつむいたまま、カカシの手を取る。
 それは決して居心地の悪いものではなかった。
 兄さんへの後ろめたさに胸がズキンと痛む。
 この人と、もっと一緒にいたい。
「ほら、行くよ。」
 手を引っ張るでもなく、カカシはサスケがベッドから降りるのを待つ。
 吸血鬼狩りに遭ってから、ろくでもないことばかりだった。
 でもその結果、カカシに会えたのなら……良かったのかも、しれない。
 サスケが立ち上がると、またカカシが頭をくしゃっと撫でる。
 その大きな手が、心地良い。
 ……兄さんと一緒に暮らした方がいいに決まってる。
 それなのに、俺は。……俺は……。
 揺れる想いを胸に、サスケはカカシの一歩後ろをついて歩く。
 
 その様子を見ながらカカシは、内心ほくそ笑んでいた。
(餌付けは順調、と……)
 血族以外の血を飲むと現れるのは強い催淫効果だけではない。依存性。
(七日後のお兄さんの顔が楽しみだねぇ)
 
 何も知らないサスケを連れて、カカシは浴室へ向かった。

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