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成人向,長編,吸血鬼パロ,完結済み,カカサス小説エロ,シリアス,甘々

無自覚の力

 今日は腹筋まで何とかやり切る事ができたけれど、腕立て伏せはどうしてもすぐにベシャッと地面に突っ伏してしまい腕だけで体重を支えるということができなかった。
 こんな情けない姿を見てカカシは失望しないだろうか、心配になってカカシを見るが、カカシは「腕立て伏せはやめて別のメニューにしたほうがよさそうだな」と優しく笑っていてサスケはほっとする。
「昨日よりも頑張れたね」頭にぽんと手を置かれる。それが嬉しくてたまらない。まるで兄さんの手みたいで。……兄さんの、手……。
 昨日のことを思い出す。公安の病院に連れて行こうとした兄さん。きっと決して悪気があったわけじゃないのに、俺は冷たく「帰って」なんて言ってしまった。
 でもナルトの境遇を見た後で公安の病院にと言われてもやっぱり嫌だとしか言えなかった。ナルトも……バケモノの子だとは言え……ちゃんと血の通った人間なのに、ちゃんと人間扱いされていないみたいで。そんな扱いをした公安という組織の元に行くのは嫌だった。吸血鬼専門の病院なら、そんなに心配をする必要はないかもしれない。でも今も現に監視がついている状態で、公安に対する不信感はサスケの中に強く残っていた。
 カカシは「ご褒美、今日も欲しい?」と優しく話しかける。そんなの欲しいに決まってる。でも今は監視がいる……。何をするのか、しているのか、どこまで見られているのかわからないだけに素直に欲しいという言葉が出てこない。
 カカシもそれをわかっているようで、サスケに小声で「声を出さなきゃ、大丈夫だよ」と耳打ちする。
 ……声を出さないなんて、そんなことできるんだろうか。自信がなかった。黙り込んだサスケを前に、カカシは「んー」と少し考えてから、「じゃあ、今日は書斎でしよう」とひそひそ声で話しかけた。
「……書斎?」サスケはカカシの提案の意図がよくわからなかった。「俺の書斎、執筆に集中できるように特別な防音を施してるから、声出してもよっぽど外には漏れないよ」
 いつもベッドでしていたから、あの本や段ボールが高く積まれた書斎で一体どうやって? とサスケはやっぱりピンとこない。
「まあ、とりあえずおいで」
 カカシは寝室でローションを手に取ると、サスケの手を引いて階段を登って行った。
 書斎に入ったものの、そこにはやっぱり机と椅子と散らかった床しかなくて、どうしたらいいのかわからない。
 床を片付けて床でするんだろうか? それとも椅子に腰掛けて俺がその上に跨る? よくわからないまま中に入ると、カカシは窓のカーテンを閉め、椅子に腰掛けてラッシュガードを脱いだ。
「ほら、おいで」
 やっぱり椅子の上で俺が跨るんだろうか?
 露出した首筋につられるようにサスケはふらっと歩み寄り、カカシの膝に乗ってその肌に牙を立てる。
 ……ああ、甘い。何度飲んでもこの感覚はたまらない。直接牙を刺して溢れる血を飲むこの感覚。
 飲んでいるうちに身体が熱くなってくる。下半身が疼く。頭もぼーっとしてきた。早く、……早く、挿れてほしい……。
 お腹いっぱいに飲んだサスケがカカシの肌から牙を引き抜くと、じわりと滲む血も綺麗に舐めとる。
「サスケ、降りて。」
 カカシは膝の上に乗るサスケをゆっくり床に下ろすと、机の引き出しから枕を取り出して卓上に置いた。
「枕に上半身預けて、そう。」
 サスケは枕にしがみつきながらお尻を出す体勢になる。
 カカシはサスケのズボンとパンツを下ろすと、小さいながらもしっかり勃ち上がっているそれを扱き始めた。
「っぁ、……はぁっ……」
 ピクンとサスケの身体が震える。
「ッカシ、……ぁ、早くっ、早く、挿れ……っ」
「……後ろの方が、好き?」
「っん、一緒に……っ、一緒に、なりたいっ……!」
 はぁっ、はぁっ、と荒い呼吸を繰り返しながらサスケが懇願する。
 カカシはローションを手に垂らすと、後ろの穴に指を這わせた。
 ぬぷぷ、と大した抵抗もなく入っていく指に、サスケが敏感に反応する。
「はっ、あ、あっ、指、じゃなくて、んぁっ! カカシが、欲しい……っ!」
「……ちゃんと慣らさないと痛いかもしれないよ?」
「ぁ、あっ、いいっ……! 痛くても、いいっ、から……!」
「そんなに俺のが欲しいの?」
「早く……っ、んっ、欲しっ、ぁんっ!」
 カカシは下のラッシュガードも脱いで裸になる。
 ローションで濡れた手で少し上下に扱いたあと、後ろの穴にピタ、とそれを押し付けた。
「……ほんとに挿れちゃうよ……?」
「はぁっ、挿れてっ、……カシッ」
 カカシはぬぷ、と先端を挿れる。
「……っあ、」
 サスケがピクンと体を震わせ、それを飲み込もうとお尻を押し付けてくる。
 カカシはゆっくりと中に沈めていき、奥まで入ったところでサスケの身体を抱きしめる。
「……一緒に、なったよ」
「はっぁ、はぁっ、ッカシ、大好きだ、好きだ……っ」
 サスケが顔をカカシに向ける。その瞳がカカシの右眼を捉えた途端、カカシは腰を動かしていた。
「あっ! あ、っあ! カカっ、あ、はぁっ、カカシっ! あぁっ!」
 いつになく早い腰の動きにサスケは震えながら喘ぎ続ける。
(やばいっ、『かかった』……‼ )
「あっ、あ、あっ! ぁあっ! もっと、カシッ、もっと……!」
「っはぁ、サスケっ……!』
 パンパンパンパンパン!
「あ! あっあ、ぅあ! ぁあっ、はっ、あっ、あぁっ!」
「っサスケ、もうっ、出る……!」
「出しっ、あ、あっ! 出してっ! ぁあっ! ナカ、ナカにっ!」
 グググっと奥に押し込む。ビューッビューッとサスケのナカに精液が迸る。
 ぶる、と震えながらサスケはそれを受け入れていた。
 しかし、出し切った後もその硬さは衰えない。
「っく、」
 再びカカシが腰を動かす。
(くそ、『解か』ないとっ、終わらない……‼ )
「ぅあっ、カカシッ、ッカシ! あっ、はぁっ! あっ!」
「はあっ、サスケ、っは、少し、落ち着け……っ!」
「っそん、あっ! あ、むりっ、あっ、ぅあっ!」
 カカシ自身が動かしている腰の動きに翻弄されているのだから落ち着けるはずなんかない。
「一緒に、居たいってだけでいいっ! それだけ考えろっ!」
「あっ! ぅあっ、いっ、しょ、あっ、はっ、ぁあっ!」
「こっち向けっ、サスケ!」
「あっ、はぁっ、っあ、はぁっ、」
 サスケが振り返る。カカシはその頭を掴んで、サスケの眼を覗き込む。
「いいか、っ、一緒に、居たい、それだけでいい、っ!」
「あっ、はっ、ぁあっ、んぁっ、いっ、しょ、……っ!」
 カカシの腰の動きがゆっくりになっていき、そして奥で止まる。カカシはサスケを後ろから抱き締める。
「っはぁ、はぁっ、カカシ、ずっと、……っずっとこうしていたい……っ」
『上書き』される前にカカシはサスケから目を逸らした。
「カカシ……?」
 目を、そらされた……拒絶、された……?
 サスケはカカシの顔を見ようとするが、そのカカシはサスケの首に頭を埋めて呼吸を整えている。
「……はぁっ、サスケお前、このコンタクトだけじゃもう……」
 瞳力を、制御できない。
 サスケは自分の目に触れる。
「もしかして、俺、カカシに何か……」
 ふう、と息を吐いて、前髪をかきあげ、右眼を閉じる代わりに左の赤い眼を開く。
 そしてサスケに向き直り、不安そうなその顔をじっと見つめる。
 コンタクトはちゃんと入っている。強い瞳力も感じない。
「……俺も油断してた、一時的な暴走だと決め込んでたのが悪かった。多分お前の眼は、感情的になると力が強まる。」
「俺の、力が?」
 カカシはサスケを抱きしめながら続ける。
「……今も、かかったまんまだよ……。一緒にいたい。サスケとずっとこうしていたい。」
 サスケの中のものがピクンと動いた。
「っぁ、」
「解き方、わかるか? サスケ。それとも、こうしてお前が望んだ通りになる、魅了されたままの俺がいいか?」
 俺が、望んだ通りになる……。
 それはとても魅力的な話のように思えた。
 こうして中に入ったまま抱きしめられると、幸せな気持ちが溢れてくる。
 でも、俺は俺の思い通りになるカカシが好きなんじゃない。カカシがカカシだから、好きなんだ。
「……解き方、どうしたらいい?」
「ん、……いい子だ。とりあえず今は、戻れと、強く願うだけでいい。……できるな?」
 カカシが右眼を開く。
 サスケはその黒い瞳を見ながら強く願った。どうか、元のカカシに戻ってくれ……。
 抱き締める腕が緩む。
「……うまくできたね」
 そしてもう一度、強く抱き締める。
「さて、困ったね……。すぐにでも力の制御を学ばないといけないんだけど……。」
 それが出来そうな人物を家に呼ぼうものなら、次は何をどう荒らされるかわからない。
「俺が制御できないままだと、……カカシとすることは、出来ない、か……?」
「うん、前にも言ったけど、サスケがもっとしてほしいってその眼に力を込めれば、俺は腰振り続けるだけのセックスマシーンになる。……そんな俺は、嫌だろ?」
「じゃあ、どうしたらいいんだ? どうしたら制御できる? あんたなら、わかるだろ?」
「わかるよ、って言いたいところだけど……俺は所詮半端者だ。うちは一族の強い瞳力を制御する方法は……正直わからない。」
「じゃあ、」
「……ま、ちょっと外にいる公安さんに相談、だな。……抜いてもいい? サスケ」
「っん」
 繋がったままの身体が離れていく。
 カカシのものが抜けるのと同時に、生温かい液体が太ももを伝う。
「とりあえず、シャワー浴びようか。」
 トレーニングでかいた汗に、セックスの汗とカカシの出した白濁液。
「…わかった。」
 サスケが枕から体を起こすと、カカシはその唇に優しくキスをする。
「ほら、おいで」
 差し出された手を取り、書斎を出て一階の浴室に向かった。
 
 シャワーを浴びて中の物もかき出した後、カカシは玄関の扉を開けて「おーい公安さーん」と声をかける。
 どこに身を潜めていたのか、間も無くスーツ姿の……サングラスをかけた……若い男性が現れた。対吸血鬼の見張りだから、そんなに強い瞳力は感じないが、この人も吸血鬼なんだろう。
「取り急ぎ相談したいことがあるんですけど、うちは一族の中でベテランさんを誰か呼んでくんない?」
「何かあったんですか?」
「ちょっとね。出来たらイタチさん以外の人でお願いしたいんですけど……」
「承知しました、すぐ手配します。」
 見張り役の男はピィーと口笛を吹くと、カラスが一羽舞い降りてきてその肩に止まる。
 そしてメモ帳を一枚破って何か書くと、カラスの足にくくりつけた。
 飛んでいくカラス。
 アナログなやり方だなぁと思うが、恐らくは機密保持のためなんだろう。
「どうも」
 とカカシは頭を下げると、家の中に入る。
(さて、呼んだところでどう説明しようかな)
 感情が昂った原因から聞かれることになるだろう。が、セックスしてましたとはとても言えない。その場でサスケは連れて行かれるだろう。
(ナルト君のことを思い出して、ということにするか。)
 考えながら、カカシは温めた牛乳にココアの粉を入れて混ぜる。もうひとつのコップには麦茶を入れて、ダイニングテーブルまで持ってきた。
「サスケ、飲みな」
 麦茶をサスケの前に置き、カカシの席の前にはココアが置かれる。
「多分もうすぐ、公安からうちは一族の誰かが来ると思う。色々聞かれると思うけど、秘密にしておいてほしいことが三つある。」
 サスケは麦茶を飲みながら頷いた。
「まずひとつめ、俺が闇市で買った人間の血を毎日飲んでること。非合法的だからバレたら俺が捕まる。」
「わかった。言わない。次は?」
「毎日お前が俺の血を飲んでること。……俺はサスケに血を飲ませるために毎日人間の血を飲んでる。じゃないとお前に十分飲ませてやれないから。芋蔓式に俺が人間の血を飲んでることもバレる。」
「嗜好品、じゃ、なかったのか……」
「本当のこと言うとサスケが気にしちゃうと思って嘘ついてたの。ごめんね。」
「……最後は?」
「俺とサスケがセックスしてること。サスケはまだ子どもだからこれもバレたら俺が捕まる。」
「……わかった。」
「今回はナルト君のことを思い出したら感情が昂った、そう説明するんだ。……いいね?」
 サスケが頷く。
 そこに、玄関のチャイムが鳴った。……さっそく来たらしい。
 カカシは立ち上がり玄関の扉を開くと、そこにはやはりサングラスをかけた――それもかなり瞳力が強い、若い男がいた。
「公安のうちはシスイです。イタチは今休暇中なので上司である私がご相談に乗ります。」
 イタチじゃなかったことにほっとしつつ、上司……ということはあのイタチよりも強い権限と力を持っているだろうと思うと緊張が走る。
「とりあえず、上がって座ってください。こちらです。」
 シスイは玄関で革靴を脱ぐとそれをきれいに揃え、カカシが案内するダイニングテーブルにやってくる。
 カカシのいつもの席に座ってもらい、カカシはサスケの隣に座った。
 机の下で、サスケの手をぎゅっと握る。
「それで、何があったんですか?」
「また、力が暴走しました。コンタクトもつけていましたが、それだけでは制御出来ませんでした。なので、サスケに力の制御の仕方を教えてやって欲しいんです。」
「……詳しく、聞かせてもらいましょうか。暴走のきっかけになるような事はありましたか。」
 カカシはまるで本当にあったかのように平然と嘘の説明をする。最後に、「今は落ち着いています」と言ってシスイの反応を伺う。
「……まず、ナルト君の話からしましょう。ナルト君はあの保護施設から出て、郊外に住んでいる養育里親さんの家に移ることが決まっています。拘束具ももう使用しません。その点、サスケくんには安心してもらいたい。」
「ナルトは普通に暮らせるのか?」
「孤児が四人そこで暮らしているので一般的な家……とまでは言えませんが、おおむね普通の家と変わらない環境です。委託する養育里親さんも今までに二十人以上の子どもたちの世話をしてきたベテランなので大丈夫だろうと考えています。」
「……また、会いに行きたいんだ。そこの住所教えてくれないか。」
「もちろん、大丈夫です。無事に引き渡せたら後日住所をお知らせします。」
 サスケはほっとする。カカシが言った通りになった。ナルトは普通の環境で暮らせる。
「次に力の制御ですが……感情の昂りがトリガーになっているのなら、まずはそのコントロールからになります。
 ……しかし見たところ、今の落ち着いた状態でも他の子どもよりかなり強い力を持っていますね。今後の成長も考えると、そのコンタクトだけでは制御しきれないでしょう。今後は病院で処方されたものを使うようにしてください。」
「……病院、って、公安の……?」
「民間の病院でも吸血鬼外来のあるところなら大丈夫です。力の強さによって処方されるものが違ってきます。今着けているのは一度、一番低いものです。最低でも、五度以上のものを着けた方がいい。」
 カカシが口を挟んだ。
「五度、ですか? サスケの力はそんなに強いんですか?」
「強くなると思います。イタチほどではありませんが、サスケくんにも素養がある。」
 カカシがサスケを見る。
「……午後にさっそく行こう。サスケ。」
「わかった。」
「それで、力の制御に関してですが……。」
 シスイが話を続ける。
「まずは先ほど話した通り、感情のコントロールからです。同時に、眼の使い方を学んだ方がいい。公安直下に教育施設がありますが………」
 サスケがカカシの手をぎゅっと握り、顔を伏せる。
「……そこは教育施設と言っても、将来的に公安の幹部候補になるための施設なので、サスケくんにその気がないのなら、家庭教師の派遣、という形がいいでしょう。こちらで手配して無償で派遣します。」
「無償……? 随分太っ腹ですね。」
「それだけ放置するには危険だな力だということです。本来なら吸血鬼の、特に子どもは保護対象です。」
「保護して、その教育施設に通わせて、軍隊教育をする……ってわけですか。」
「部外者には詳しく話せませんので、ご想像にお任せします。ともかく、今のサスケくんの暮らしは特別待遇だという事はお忘れなく。」
 話しているだけなのに、シスイの言葉からは威圧感を感じる。イタチのそれよりもずっと大きい。
「家庭教師を派遣するにあたり、サスケくんから今の生活について聞いておきたいことがあります。本人から直接聞きたいので、はたけさんは一旦席を外してもらってもいいですか。」
「なぜ俺がいるといけないんですか?」
「サスケくんの本音を聞きたいからですよ、あなたがいると話せないこともあるかもしれない。」
 カカシはサスケを見る。サスケはこくりと頷いた。
「じゃあ、俺は家の外で待ってるんで話が終わったら呼んでください。」
 カカシは席を立つと、玄関でサンダルを履いて出ていった。それを見届けると、シスイはサスケに向き直る。
「では、聞かせてもらいます。サスケくんは今は毎日イタチの血を飲んでいますね?」
「……はい、毎食後……」
「はたけさんの血も、飲んでいますか。」
 心臓が跳ね上がるのを悟られないように、静かに答える。
「兄さんが来る前の朝だけ、飲みました。その後は飲んでいません。」
「はたけさんの血を飲んだ時、身体に変化は?」
「少し、ほてった感じになっただけです。」
「……そうですか。サスケくんは今の生活に満足していますか?」
「満足しています。カカシがいてくれるだけで……安心するので。」
「今、保護施設には君のご家族もいる。家族のもとに帰りたいとは思いませんか?」
「……公安の、施設に行くくらいならこのままここで暮らす方がいいです。」
「……どうしてそんなに公安を毛嫌いするんですか?」
「ナルトを、酷い目に合わせたからです。俺とカカシが面会に行かなければ、ナルトはずっとあの状態だったんですよね?」
「……サスケくんにとってナルト君は大切な友達なんですね。ナルト君の処遇についてはこちらにも至らない点があった。それは申し訳ないと思っています。」
「……あなたの指示ですか、ナルトをあんな風にしたのは。」
 シスイは背筋がゾク、とするのを感じた。サスケの力が明らかに増大している。……はたけさんの話通り、ナルト君が暴走のトリガーか。
「私は吸血鬼専門部隊の者です。ナルト君は私の管轄外なので私の指示ではありません。……今、君の力が大きくなった自覚はありますか。」
「俺の……? …わかり、ません」
 無自覚の暴走。……やはり放置するには危険だ。しかし、この場で保護したとしても公安への不信感がある以上、強引に施設に連れて行くとそれすらトリガーになりかねない。
 その公安に対する不信感も、イタチの言うような洗脳ではなく、ナルト君の処遇を見たことが原因だろう。
「よくわかりました。もうはたけさんを呼んできても良いですよ。」
 サスケは席を立つと、足早に玄関まで向かっていった。扉を開けて「もういいって」と外にいるカカシに声をかけると、二人でダイニングテーブルに戻ってくる。
「明日からさっそく家庭教師を派遣します。時間は午後になると思いますので、明日の午後は外出されないようにお願いします。では、これで。」
 シスイは立ち上がって玄関に向かって行った。
 カカシとサスケも後を追い、玄関から外に出て行くシスイに「ありがとうございました」と頭を下げる。
 扉が閉まったのを確認すると、カカシは鍵をかけて、ふぅ、と息を吐いた。ただのお偉いさんかと思ったら、あのイタチの上司なだけあって、威圧感が強い。サングラスもかけていたのに、目の前にいるだけでこの俺が緊張した。相当な実力者なんだろう。
 カカシはサスケににこ、と笑いかける。
「とりあえず、昼飯にしようか、サスケ。ちょっと手伝ってくれる?」
「……わかった。」
 二人は手を繋いでキッチンに向かった。

 

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