秘密の関係
夢だった
サスケは戸惑っていた。
周囲の声に応えて自らカカシのものを挿れたこと。
そのセックスがいつになく気持ち良くて、突かれる度にイッていたこと。
そして今、サスケを褒めるいくつもの声に、もう一度応えてみたらもっと喜んでくれるのだろうかと考えてしまう自分に。
中はまだローションと精液でぬるついていて、カカシが勃っていれば今すぐにでも2回目だってできる。上半身を起こしたサスケは手探りでカカシの股間を確かめると、わずかに硬さが残っている。
「……アキラ?」
股間をまさぐる手に、カカシの大きな手が載せられた。
「もしかして……物足りなかったとか?」
「あ、いや、そういう、わけじゃ……。」
急に恥ずかしくなってきて顔が熱くなる。
もう一回! とコールが始まった中、サスケは立ち上がって「ト、イレ……行って……」としどろもどろに話した。カカシが周囲を探るサスケの手を取ってエスコートする。
「こっちだよ、アキラ。」
目が覆われたサスケはゆっくりと歩を進め、カカシもそれに合わせてゆっくりと歩いた。
部屋の隅の廊下の奥にあるひとつしかないトイレに着くと、扉の取手の位置を確かめて「もう、大丈夫」とカカシに言う。
「ここで待ってるから、安心してね。」
誰の声も聞こえないトイレの中はBGMがいやに大きく聞こえた。扉の中に身を潜らせると長い息を吐きながらそのままずるる、と床にしゃがみ込む。
もよおしたわけじゃなく、少しひとりになりたかった。あのままあそこにいたら、カカシのを舐めたらまた硬さを取り戻すだろうか、それを見て周りの人はまた喜ぶのだろうか、もう一度セックスをしたら、また盛り上がるのだろうか、そんなことを考えてしまいそうな自分がいてこわかった。
ふう、と息を吐くと不意に腕をグッと引き上げられて、サスケはよろ、と立ち上がる。
「え」
カカシ、は扉の向こう。じゃあ、この手は誰?
そのまま腕を壁につかされて、便器をまたぐように足を開いてお尻が浮く。
え、これ、やば……
考える間もなくまだぬるついた後ろの穴にずんっと太くて熱いものが入ってきて、腰が掴まれた。
「っ……! カカ……んん!!」
口の中に突っ込まれた布、低い静かな声が耳元で聞こえる。
「俺とも楽しもうぜ、だから黙ってろよ、アキラ君。」
BGMでかき消されて、その声は、音はカカシに届いていない。激しい腰の動きに、くぐもった声と涙が出る。
たすけて、カカシ、カカシ、こんなの、
嫌なのに、あそこを刺激されると、奥まで突かれると情けなく声が出てしまう。気持ちいい、なんで、カカシじゃないのに、凄く気持ちいい。こんなのカカシに……カカシに知られちゃダメだ……!
いつのまにか自分で声をこらえていた。カカシに聞かれないように。その一方で、もっとと言わんばかりにお尻を突き出して、腰を振って快楽を貪っていた。
調子を良くしたのか、誰かわからない男もサスケのいいところばかり責めてきて、前にも手を伸ばした。ガチガチに勃ったそこは数回の往復で精を放ってピクンと身体が跳ね、ナカがきゅううと締まる。
「ああ……気持ちいい、アキラはどうだ?」
耳元で再び囁かれる低い声に、サスケはこくこくと首を振っていた。それを見た男はサスケの口から布の塊を取り出す。
「声は出すなよ」
ハッハッハッと浅く早い息をしながら、サスケは頷いた。カカシがすぐ外にいると思うとどうしようもなく感じてしまう。また腰を掴まれて激しい動きが始まった。
出そうになる声、手で口を塞いで、ガンガン揺さぶられながら自分も腰を振った。
だめなのに、だめなのに気持ちいい、我慢できない、もっと、もっと激し、く……!!
その気持ちに応えるように男の腰の動きが早くなる。ぐちゅぐちゅと音を立てる結合部、奥まで突かれるたびに真っ白になる頭、だめ、だめ気持ちよくて、変になる……!
限界が近づいていた、これ以上長くするとカカシが怪しむ。男もそれをわかっているようだった。低い声が「出すぞ」と囁くと、一層激しく突かれたあと、グッと奥にそれが押し込まれてじわっと温かいものがナカに広がる。
はぁっ、はぁっ、と肺が空気を求めて浅い呼吸を繰り返す。ずるる、と抜けていく感覚に身体がぶるっと震えた。腰を支えていた手が離れ、サスケは便座を抱くように崩れ落ちる。余韻で頭がぼうっとしながら息を整えなければと深く息を吸う。
カカシじゃないのに、誰かもわからない奴と、俺セックスを、自分から腰まで振って、めちゃくちゃに気持ちよくて、そんな、こんなの、うそだ……。
「アキラ?」
カカシの声にハッとなる。平静を装わなければ、何もなかったように。
「今、出るから」
じんじんとナカの余韻にきゅんとする。お尻がヒクヒクと何かを求めているのがわかる。
水を流して、扉の鍵を開けると、カカシの大きな手がサスケの左手を包み込む。
「いいもの見せてくれてありがとね。」
思わず顔を上げた。それどういう意味……
「他の男にヤられてるのを見るのも悪くないね、興奮した。」
カカシは知ってた? 知ってて止めなかった?
「どういうことか、説明しろ……っ!」
「ハプニングバーって言ったろ? 何が起きてもおかしくない。そゆこと。」
混乱して呆然とするサスケの手を引くカカシ、客席に戻ってくるとさっきの男の声がする。その声は自慢げに「いい具合だったぜ」と話している。
ツルツルのソファに腰を下ろすと、人々の声が近づいてくる。
「トイレどうだった?」
「興奮したでしょ」
「先生以外のチンコははじめて?」
「なぁ俺ともやろうぜ、先生、いいだろ?」
カカシの手を握る。
こんなに大勢の前でカカシとしたばかりで、でも凄く興奮して気持ちよくて、トイレでも知らない男相手に腰を振りながら夢中で感じて、またこの大勢の中で、しかも知らない男とするなんて。
「アキラどう? トイレ、気持ちよかったでしょ? トイレでするの好きだもんね。みんなの前でするのも興奮するでしょ? 俺の前で、他の男に挿れられてるところ見せてよ。だめ? ……こわい?」
こわい、よりも好奇心が湧いて出る。カカシに見られながら知らない男に挿れられてよがる自分を想像すると、ドキドキしてお尻がきゅんとする。
「……こわい、けど……少しだけ、なら……」
わっと盛り上がった。さっそくカチャカチャとベルトを外す音がする。
「嫌だったら、いつでも言うんだよ。ちゃんと見てるから。」
優しい声が降ってくる。緊張で身を固くしていると、カカシの手がサスケの手を取り誘導した。テーブルにその手を置かせて声の輪の方にお尻を向けさせる。
「この子バックの方が好きだから。ちゃんと良くさせてやってね。」
ざわつきが大きくなる、その全てが自分に注目している。興奮して心臓がはち切れそうだった。厚みのある手が腰に触れて、太い指がずぷ、と入ってぐるりとナカを確かめた後、指の代わりに熱いものがあてがわれる。
ゆっくりと入ってくる怒号に身体が震えて思わず下を向いた。
「は、あっ、あ、っぁ」
全部収まるとうなじにキスが降ってきて、そしてゆっくりとした抽送が始まった。
ゆっくりなのに、ぐりっとあそこをなぞりながら、奥にぐっと押し込まれるその動きはどうしようもなく気持ちよくて声が出てしまう。カカシが見てる。カカシがこの声を聞いてる。知らない男とセックスしているのをカカシが。
頭がどうにかなりそうだった。
いや、もうどうにかなってしまっているのかもしれない。そうでなければ俺は今、こんなことには。
ゆっくりとねちっこい抽送をしながら「あぁ……最高だ」と背後から声がする。
最高? 俺とのセックスが?
「もっと激しくしろよ!」
「アキラ君喘ぎ声聞かせてくれー!」
「めっちゃエロいよアキラ君!」
相変わらず周囲の声はセックスを囃し立てる。きっと繋がっているそこは丸見えで、みんなそこを見ていて、カカシも俺が他の男と繋がっているのを見ている。
もう何が何だかわからない。ただ、今俺はめちゃくちゃに興奮していて、もっと気持ちよくなりたくて、そしてそれを見られたかった。ここにいる知らない人たちに、そしてカカシに。
「っあ、ぁあっ! もっ、と、んぅっ! 激しっ……!」
まるで俺のおねだりを待っていたかのようにずるる、と抜けそうなくらい引き抜いて、ずくんっ! と一気に奥まで貫かれる。
「ぁぁああっ!!」
それからは激しい抽送に変わった。俺は馬鹿みたいに大声で喘ぎながら、その声に反応する人の声を聞いては興奮して、それをカカシが見ているかと思うと恥ずかしくて、でもさらに興奮が高まって、セックスしている時間がものすごく長く感じた。
「いっぐ、っあああ! いくっ、も、ああああっ!!」
きゅううう、とナカが締まって入っているそれの形がくっきりわかる。
「すげ……出すぞ……!」
きゅうきゅうに締まったナカを怒号が出入りして、奥で止まった。じわっと広がる熱にたまらなくなってまた俺は中イキする。痙攣するナカに挿れたまま、知らない男は「あー……、たまんねぇ……」と呟いた。
それがずるっと抜けていき、続いて温かいものが太ももを伝う。支えられていた手が離されると、俺は膝を折ってその場にしゃがみ込んだ。
「っはぁ、はあっ、あっ、はぁっ、」
ふわっと頭に載せられる手……カカシの手。
「エロかったよ、アキラ。かわいいね。――ところで。」
もう一回! と声が湧いている。もうクタクタなのに、その声を聞いていると期待に応えたいと思ってしまう自分がいる。
「他にもしたい人がいっぱいいるみたいだけど、どうする?」
この空気に飲まれて、俺はおかしくなっていたんだと思う。こくりと頷くと、別の誰かの手が俺の腰を支えて立たせる。入ってきた熱い塊に頭は歓喜に震えていた。もっと、もっと、俺を見て、俺が喘ぐ声を聞いて、チンコが出入りしているのを見て、イクところを見て、そして俺を褒めて、そうしたらもっと――。
その後も入れ替わり立ち替わり、何人だったかも覚えてない。何人もの男とセックスをして、俺を褒める声に気をよくして、たくさんの人に見られていると思うとどうしようもなく興奮して、普段の何倍も感じて喘いでいた。
「盛り上がっているところ恐縮ですが、まもなく閉店のお時間です。」
俺はツルツルのソファに横になって、正常位で誰かのチンコを受け入れていた。バックは途中から腰が立たなくなって、それからはソファでセックスをしていた。
そのソファは誰のものかわからないどろっとした液体にまみれていて、俺の腹も自分自身の精液でぐちゃぐちゃだ。
店員の言葉を聞いて、今挿れている誰かが腰の動きを早めてどちゅ、と俺の奥に精を吐き出す。
俺は奥に出された刺激に大声で喘いでイッたあと、それが抜けていく感覚に震えながら、これで終わりかと思いながら懸命に息をした。
拍手が巻き起こって俺を褒める声に包まれる。
「アキラ君最高だったよ!」
「アキラ君ありがとう!」
「めっちゃエロかったよ!」
きっと帰り支度を始めているんだろう、その声の輪が少しずつ少なくなっていく。
温かいおしぼりが俺の身体を拭いて綺麗にしていた。きっとカカシだ。
「おつかれさま、アキラ。すごくよかったよ。」
頭を撫でる手。よかった……? カカシがそういってくれるのなら、俺も……。
店の人が俺の汚れた服を洗ってくれていて、そのシャツを着込んでズボンを上げる。
他の客が全員出て行ったあと、俺の目に巻かれた布が取り払われた。一番にカカシを見て、優しく微笑むその顔に安心して抱きついた。
「いい子だね、感想は車で聞こうか。歩ける?」
「ん……多分……。」
背中をカカシに支えられて店の外に出るとすっかり夜だった。一体何時間この中で過ごしていたんだろう。
会話もなく車の中に入ると、始まるキス。ああ、カカシとキスしたかった、俺。舌を絡ませて夢中になってキスをした。好きだ、カカシが好きだ。
「サスケ、今日のことは夢でも見たと思いなさい。」
言われなくたって、頭がふわふわして、あの店での出来事は夢だったんじゃないかと思ってる。
「他の男とは決してやっちゃダメだよ。」
カカシがいなければ、声をかけなければ……あんなことしてない。
「……あんたが煽ったんだろ。」
「せっかくのハプニングバーだからね。ちょっと意地悪だった?」
現実に少しずつ引き戻されて、自分がしたことを思い返すと何てことをしてしまったんだと頭を抱える。
「でも、楽しめたでしょ。他では出来ない経験が出来て。」
シュル、トシートベルトを締めて、ギアをドライブに入れると、カカシの車はゆっくりと走り始めた。
今日は泊まりだと兄さんに言ってある。きっとこの車の向かう先はカカシの家……か、ホテルだろう。
あれだけしたのにさっきのキスで下半身はすっかりその気になっている。
少しドキドキしながら、車の行く先を見守った。