秘密の関係
恋人
カカシのマンションの隣に車が停まる。
「着いたよ。」
遠慮がちに車の扉を開けて外に出ると夜風が頬を撫でていく。マンションを見上げていたらカカシが俺に手を差し出した。
「こっち。」
その手をとってエントランスに入り、郵便受けを確認してからカカシはエレベーターのボタンを押す。
本当に、カカシの家に泊まるんだ。
少し緊張しながら一緒にエレベーターに入ると、抱きしめられてキスをした。
「こういう密室って、ちょっと興奮するよね。」
情事の際に見せる目で射止められてドキッとした。さっきまでとはまた違う、こころが震えるような心拍の高鳴り。
4階で止まったエレベーターから出て、いくつか並ぶ扉のうちのひとつの前で立ち止まり、ポケットから鍵を取り出して鍵穴に差し込む。
そのひとつひとつの動作をドキドキしたまま見守っていると、扉を開けたカカシが再び俺に手を差し出した。
その手をとって誘われた室内、靴を脱いで「お邪魔します」とカカシに続いて中に入る。
「あー……っと、食事がまだだったか。」
あんな場所であんな出来事があったばかりなのにカカシの家はあちこち生活感を感じて、俺もカカシも腹をすかせていて、さっきまで俺は本当に夢でもみていたのかもしれないと錯覚しそうになる。
冷蔵庫を開けて中を物色するカカシは「ん~ごめんけどペペロンチーノくらいしか作れないな、いい?」と何やら出しながら俺に尋ねる。
「作ってくれる人に対して感謝以外の言葉は出ない、ありがとう。」
ニンニクとベーコンを手に冷蔵庫の扉を閉めて、フライパンを取り出しながら顎でダイニングテーブルを示して「座ってて」と笑いかける。
カカシの普通の生活の中に俺がいる、それがなんだかくすぐったい。俺たち本当に恋人、なんだとじわじわ実感して、どこに視線を向けていたらいいのかわからなくて、カカシの手元をじっと見つめる。
料理に慣れた手つき……毎日自炊、なんだろうか。何が好きなんだろう。甘いものは嫌いなんだっけ。あ、パスタはフライパンで茹でるんだ――。
ひとつひとつの動作を見ていたら、カカシが不意に俺を見て笑った。
「あんまり見られると、失敗しちゃうよ?」
「あ、悪い、そういうつもりじゃ……」
「いいよ、わかってる。」
フライパンで茹でたパスタをザルにあげて、お湯を切ってオリーブ油を回しがけて混ぜた後、もうひとつのフライパンに加えて、手を振るった。
キッチンカウンター越しにお皿を渡されて、テーブルに置くと、フォークを持ってカカシがテーブルにつく。
はい、と渡されたフォークを受け取っていただきますと手を合わせる。
カカシとふたり、平穏に時が流れていくのをやっぱり少しくすぐったく感じながら、俺はこの食事の後何をするのか気になっていた。もう結構遅い時間だし、このまま寝るのだろうか。それとも。
食べ終わった食器を片付けて、シャワーを浴びて、持ってきたパジャマに着替えようとしたらカカシは俺の手を引いて「そのままで、こっち」と寝室に誘導した。
裸、で寝室、ということは、やっぱり。
カカシはタブレットにSDカードを差し込んで画面を確認すると、ベッドの枕の上に立てかけた。
俺はうつ伏せになってそのタブレットを見るように言われて、言われたとおりにしたらカカシが覆い被さるように俺の上に来て、画面のロックを解除すると映し出されたのはあの店の、多分防犯カメラからの映像だった。「見えなかったから、見たかったでしょ?」
トイレに行った後から再生を始める。俺はテーブルに手をついて10人ぐらいの男に囲まれていて、その中の一人がしこりながら俺に近づいて腰を手で支えて中に入れる。同時に俺は頭を上げて喘いだ。
ドキドキしていた。次第に腰の動きが早くなって、俺もその動きに合わせて腰を振っていた。ついさっきまで、俺はこんなことをしていたんだと思うとまた興奮してくる。カカシもそれは同じみたいで、お尻に当たっているカカシのそれがどんどん硬く熱くなっていくのがわかる。
「サスケ、見ながらしない?」
耳元で囁かれた言葉に、俺は肯定する以外の選択肢を持っていなかった。
指が入ってきて中を確かめて、カカシは
「まだゆるいね、このまま挿れるよ?」
そう言ってローションをつけたそれを寝バックのままずちゅんと奥まで挿れた。
「ちょっ、あああっ!!」
「……は、中すごいぐちょぐちょ……ねえ何人に中出しされたか覚えてる?」
っこの姿勢、めちゃくちゃ中えぐられっ……!
「そんっあっ! おぼえっ、てな、ぃああっ!」
「俺とトイレも合わせると12人。ねえ俺とした時突く度にイッてたよね、見られて興奮してた? 目隠しで興奮した?」
「やっ……あっ、あっ! み、みられっ、ぁあっ!」
ブー、ブー、とバイブレーションの音がする。カカシもそれに気がついて、俺のバッグからスマホを取り出した。
「……イタチ……お兄さん? 電話だよ、ほら。」
目の前にスマホを置かれる。何件かのメッセージと兄さんからの着信。今出ろって……?
「むりっ、あっ、腰とめ、あぅっ! っあ、あっ!」
カカシが奥で腰を止めた。息を整えて、振動するスマホを手に取って耳に当てようとしたら、カカシがスピーカーのマークをタップする。
「ッカカシどういうっ!」
『もしもし? サスケ?』
兄さんの声が寝室に響く。このまま喋るしかない。
「ごめ……っん、ゲームっ、してたら、夢中で、返信でき、……っなくて、……っ!」
ぬちゅ、ぬちゅ、と音を立てながらカカシがゆっくりと腰を動かす。中をえぐられる度に声が出そうになるのを堪えながら、何とか兄さんの声に答える。
『……今もゲーム中か……? もう遅いから、あまりはしゃぎすぎずに早く寝るんだぞ。』
「う、んっ! わかった、っ兄さん、っ!」
『じゃあ、おやすみ。友達によろしく言っておいてくれ。』
「おや、すみ、わかっ……た、……っ!」
通話終了マークをタップして、息つく間もなくまたカカシが腰の動きを激しくする。
「電話中のサスケの中きゅうきゅうだったよ、なんで?」
「い、あっあ! はげ、っし……あぁっ! あっ! あ、だめっだめいくいっ……ああっ! あっ、いっ……!」
いく、と思ったところで、今出たら布団が汚れてしまうと気がついて、下腹部に力を込めて出ないように必死に我慢する。
そんな俺の努力なんてお構いなしにカカシは中をえぐり続ける。
「あ゛っ、だめ、だめって、っぅあ! っく、ぁあっ!!」
「なんで我慢してるの? いきたいんじゃないの?」
「って、布団っ、あああっ! っよご、っ……!」
「……ああ、そゆこと……っ」
ぐちゅんっ! と奥まで突かれて一瞬意識が飛びそうになった。中をえぐりながら奥まで突かれて身体がどんどん熱くなっていく。目の前のタブレットで知らないおっさんに突っ込まれながら腰を振る俺の喘ぎ声を聞きながら、出さないように下腹部に力を入れながら、訳がわからないくらいカカシの動きが気持ちよくて、腰を振ってもっと奥に、もっと激しく、でも出しちゃダメだ、と思っている内に身体中が熱くなってきて、あ、これ中イキの、と考えが浮かんだ瞬間にもう俺の体はビクビクと痙攣してぎゅううっとカカシのものを強く締め付けていた。
「はぁっ、はぁっ、……っあ、はぁっ、」
身体中に駆け巡った強い快感の余韻を感じながら痙攣していた身体がくたっと脱力する。中だけはきゅう、きゅう、と収縮を繰り返して締め付けて続けていた。
「……サスケ、こっち」
カカシが俺の身体を動かして正常位になる。そのままキスをして、そうしながらカカシは俺の胸の突起を指で転がし始める。
「っん、ん……っ、んっ……!」
ビク、ビク、とその快感を拾っていると唇が離れてカカシは胸に舌を這わせた。
「あっ、んっ! そこっ、あっ、あっ! だめっ、きもち、いっ! や、あっ! で、でちゃ、乳首でいっちゃ、っあ!!」
散々我慢したせいなのか、その舌の刺激だけで俺のそこは薄い精液を吐き出していた。
はぁっ、はぁっ、と荒い呼吸をしていると、カカシは俺の足を持ち上げて、発情した雄の顔を見せながらまた激しく腰を動かし始めた。
「まっ、あっ! あっ、あ! あ゛っ! ~~っひ、あ、ああっ!!」
「……野生の動物は自分の子孫を残すために他の雄が出したザーメンを掻き出して射精するみたいだけど」
「あ゛っ! なに、あっ! あ、ああっ! カカ、っあ゛!!」
「今その気持ちわかる」
何を言ってるのか理解しようとして、奥を突かれて頭が真っ白になって、カカシは今何言ったか思い出そうとして、また頭が真っ白になって、そして身体が熱くなっていく。
「ちんこがこういう形なのはそういう事かってね」
「まっ、なにっ、あっ! あ、あっ!! またっ、くる、あ、あっ! くるっ、カカっ、あっあああっ!! い、あっ、っああああ!!」
ビクンッと浮いた背中にカカシの腕が入ってきてギュッと抱きしめられ、中で、奥で、熱いものがほとばしるのを感じる。ドクン、ドクンと脈打つカカシのそれを感じて、俺もカカシを強く抱きしめた。
……ああ、好きだ。カカシが好きだ。このままずっとこうしていたい。
「サスケ……好きだよ。自分で連れて行ったのに、ちょっと嫉妬しちゃった。」
カカシは俺の喘ぎ声を流しているタブレットの電源を切って、もう一度俺を強く抱きしめた。
ああ、この腕の中、安心する。カカシだ……。
もう一度ふたりでシャワーを浴びて、今度は俺の尻の中までしっかり洗って、パジャマに袖を通した。
すでに時間は日付をまたいでいて、そのまま抱きしめ合いながらベッドで眠った。
幸せ……だった。ずっとこの瞬間が続けばいいのに
だけど明日には家に帰って、普通の生活に戻って、また学校が始まる。
この腕の中の感覚を忘れないように、記憶に刻み込むために、俺はカカシを強く抱きしめて、そのまま眠りに落ちていった。
目が覚めたとき、俺はまだカカシの腕の中にいて幸せを噛み締める。もう少し眠ったふりをしようか、と思ったけどカカシは俺が起きたことに気がついたようだった。
「おはよ、サスケ」
見上げたら、優しく笑うカカシがいて……今まで色んなカカシの顔を見てきたけど、こんなに優しい顔を見るのははじめてだった。
「お、はよう……」
思わず見入っていたら、クスッと笑われる。
「俺の顔に何かついてる?」
「あ……いや、あんたそういう顔もするんだなって、
……。」
またクスッと笑われて、額にキスが落ちてくる。
「恋人と一緒に目が覚める朝を嬉しく思わない奴なんかいないよ。」
コイビト、という言葉に、心臓が高鳴る。コイビト、こいびと、恋人……俺とカカシは、恋人……。
こころのどこかで、カカシはエロいことがしたいだけで、俺のことを好きとか、そう言われてもヤるのが好き、って意味じゃないのかと思っていた。他の生徒にも手を出していたわけだし、俺だけを特別に見るなんてことがあるだろうかと。
でも今見ているカカシの顔は、嘘偽りのない本物で、ちゃんと俺のことを恋人だと思ってくれていたのだと思うと、こころの片隅でカカシを疑っていた自分に少し罪悪感を覚える。
本当に俺たち、恋人なんだと、こころの底から感じると、嬉しくて、くすぐったくて、そして少し恥ずかしい。
「毎週末でも泊まりに来たい、くらい……俺もあんたのこと、好きだ。」
「俺もだよ。でも毎週末はさすがに、お兄さんが何て言うかなぁ。」
「そう……だな。」
友達の家に泊まってる、事になっている。そんなに頻繁には来られない。少ししゅんとしていると、カカシが抱きしめる腕をぎゅっと強くする。
「まあ、その分泊まれる日にはたくさん抱きしめ合おう。ね?」
カカシの胸の鼓動が聞こえる。この距離、抱きしめられている腕の強さ、優しい笑顔……次にまた、泊まれる日に。
それまで、この感覚を忘れないようにしよう。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴って、みんなそれぞれ伸びをしたり、カバンに筆記用具をしまったりしている中、俺は窓の外をぼーっと見つめていた。
次に泊まるとしたらいつ頃にするのが自然だろうか、何度も泊まったら兄さんがその友達を紹介してくれと言ってこないだろうか、もしくはいっそ打ち明けてみたらどうなんだろうか。
ガヤガヤと賑わう教室で、俺今日の部活サボるわ、と言う声が聞こえてきて、そうだ部活、と慌ててカバンに教科書とノート、筆記用具を入れて立ち上がり、部室に向かった。
ガラガラ、と木の扉を開けると教壇でプリントを見ているカカシがいて、入ってきた俺に「先生」の顔で笑いかける。
扉を閉めて、いつもの席にカバンを置くと、カカシが歩み寄ってきた。
「……今日はどこでする?」
ここから先は、先生と生徒じゃない、恋人としてのやりとり。
誰にも知られてはいけない、秘密の関係。