繰り返さない
諦めない
チキンレッグの下味をつけて冷蔵庫の中に入れた。あとはグリルでじっくり焼くだけだ。牛乳が余ってるからベシャメルソースを作ってパンにつけて食べるのもいいな……あ、パン、もうなくなるから買わないと。
騒がしかったさっきまでとは一転して静かな室内。台所を片付けているとシャワーを浴び終えたカカシが洗面所から顔を出す。
「どんな感じ?」
「今終わったから、俺もシャワー浴びる。」
明日がクリスマスイヴ、その次がクリスマス。その次の日は兄さんが帰ってくる予定だ。でも、もしかしたら顔を出すだけでまた干柿鬼鮫と過ごすのかもしれない。
兄さんとも過ごしたいし、カカシとも一緒にいたい。贅沢な悩みだな、と思いながら調理器具を洗い終えた。
兄さんとじっくり話し合う時間があるのなら、記憶について聞きたい。今の世で、父さんと母さんは何を目論んでいて、どうやって止めたのか。本当に犯人の心当たりはないのか。オビト達の動きをどこまで知っているのか。
でも、その前にカカシとのクリスマスだ。
買ってきた小袋は机の上に揃えて置いてある。日付が変わったら開けようね、って、中身わかってるのに変なところでカカシはロマンチストだ。
食器棚にはマグカップをふたつ置けるスペースを作ってある。
記憶の中ではこういうイベント事は無関心だったな、と思いつつ、第七班の中に俺がいた時期はあまりに短かったからそれもそうだよな、とも思う。大蛇丸に師事していた数年間と比べたらほんの一瞬だ。なのに、あの数ヶ月間は俺にとってかけがえのない時間だった。
全てが終わった後、犯罪者として捕らわれ牢屋にいたときに、六代目火影としてカカシが会いにきたことがあった。
『俺と生活を共にする事を条件に、牢から出してやる事が出来そうだ』と。
火影の監視下で、かつての師でもあるカカシと一緒にいるのであれば外に出してもいい。その条件を引き出すにも、多分カカシは苦労したんだろうと思う。
俺は『火影であるあんたに従う』と、自分の考えも思いも何も伝えなかった。それから少しの間カカシの家で過ごして、でもその生活の中でカカシが俺に何か言ったり手を出す、ということはなかった。
あのときカカシが俺に対してまだ想っていると、言ってくれていたら俺はサクラを選ぶことはなかったかもしれない。「今度こそ」と言ったカカシはきっとあのときもまだ、俺のことを……。
髪を乾かして部屋着に着替えて洗面所を出ると、カカシはベッドに座って待っていた。
邪魔な奴らがいなくなったからか清々しい顔で手招き。
「サスケ吸わせてよ。」
その言葉を聞いて、懐かしさが込み上げる。記憶の中でも、カカシは俺を後ろから抱きかかえて匂いを嗅ぐのが好きだった。あの頃はシャワーを浴びる前の土っぽい匂いが好きだと言っていたけど。
「シャンプーと石鹸の匂いしかしねえぞ。」
「いんや、俺にしかわかんないサスケの匂いがする。絶対。」
記憶と同じようで、やっぱり記憶の中のカカシとは少し違う。カカシの目の前に座ってやったら、やっぱり抱きしめられて、そして髪や首に鼻を寄せる。
「はぁ……癒し。」
「そんなに匂いするか? もう一回シャワー……」
「だから、俺だけしかわかんない微細な匂いなの。だからシャワーいらない。」
土っぽい匂い、はまだわかるけど、ピカピカに洗った後の匂いなんて嗅いでわかるものなんだろうか。
匂いを嗅ぐ鼻先だけじゃなく、首筋やうなじにキスをし始めた。くすぐったいけど、嫌じゃない。
「ベッド上がろう?」
カカシは……ついさっきまでマダラがいたというのに切り替えが早いな。……嫌じゃないけど。
ベッドに仰向けになっているカカシに覆い被さるようにのしかかった。首からトクン、トクンと脈動する音が伝わってきて、あったかい。
けど股間は硬くなっていて、本当に切り替え早いよなと思う。上に乗っている俺にそれを擦り付けるように腰を動かされると、俺もそんな気分になってくる。
「サスケ、好き……キス」
「ん……」
れろ、と口の中を舐められて、舌を絡ませ合いながら、カカシは俺の背中を支えて反対向きになった。俺に覆い被さってキスをしながら、部屋着の上から胸を探って突起を見つけて先端を撫で回す。直接触れられていない、服の上からなのに、布越しだからなのか、いつもよりも敏感に感じてしまう。
「カ、んんっ、……は、ぁっ、ん……!」
完全にそっちのモードに入っているカカシは、なんだか少し甘い匂いがする。その匂いにいつも頭がふわふわする。俺の匂いもそんな感じなんだろうか……。
「っん、あ、っぅ、ん……っ」
胸の突起を弄られると、どうしても身体が震えてしまう。痺れるような、でも甘い快感。じわじわと身体の芯が熱くなってくるのを感じる。かり、と軽く爪を立てられて、肩がビクッと揺れた。
唇が離れていく。カカシの顔は完全にのぼせていてさっき着替えたばかりのズボンは早々に下ろされた。
あ、今日は、激しいやつ……
ローションのボトルを取り出す長い指、とろりと左の手のひらに落としたそれをその長い指がすくう。
「……いい? ……サスケ」
そんな熱にうなされたような視線を浴びせられたら断るなんて無理だ。断るつもりなんてないけど、ここでわざわざ聞いてくるのはずるいと思う。俺もして欲しいですって、言わせるようなものじゃないか。
黙ったままこくりと頷いたら、すぐにその指が入ってくる。冬休みに入ってから毎日のようにしてるんだからほぐさなくたってきっと入る。なのにいつもいつもこれをするのは、カカシはこの指で俺をぐちゃぐちゃに感じさせるのが多分好きなんだ。散々喘がされてぐったりしたところからがこういうときのカカシの本番で。
「んっ、あ、あっ、まっ、最初か、っぁ、はげしっ、っ、んっ! あ、あっ! や、ぁっ! あ、っあ、」
中をしつこく激しく責められて、更には中心も扱かれて胸に口づけ。身体の芯の熱がどんどん表面に出てくる。
「あっ! あ、あああっ! ま、あっ! だっめ、きもち、いっああ!」
「ダメ? もっと、に聞こえるんだけど……」
「っひ、あ、あっ! だ、いっ、く、ぅあっ! あっ! い、っああぁ!」
ビクッと下半身がこわばって、カカシが握っている中心からびゅ、びゅ、と白い液体が飛び出す。その間も、中をぐ、ぐ、と押されて痙攣しているかのように俺の身体が震える。
「っは、あっ、は、カカ、あっ! まだっ、や、あっ、あ、ああっ!」
まだぎゅううっと締めつけたままくっきりわかる指の形、その指が締めつけなんてお構い無しにまた激しく動く。
やっぱり、指で散々されてぐったりしてからのや つ……俺ばっかり気持ちよくて、カカシはいいのか、なんて聞く余裕はくれない。
敏感になった中はさっきよりもうんと激しく動いていても強烈な快感しか脳に届かない。
またいく、というところまで上り詰めたところですっと指が抜かれた。
「……? カカ……っぅあああ!!」
覗き込もうとした瞬間に指と比べ物にならない太いものが一気に奥まで貫いて、まだ俺は白濁液を吐き出した。
興奮した息遣いのカカシの顔が目の前に来て、ついばむようにキスをしながらずちゅ、ずちゅ、と奥まで突かれてその背中にしがみつく。
「あぅっ! ぁあっ! おくっ、おくきもち、っぁあ!」
「知ってるからしてるのサスケが好きだからサスケのことぐちゃぐちゃになるくらい気持ちよくさせたいの、いいでしょ、ねえ、どうしてほしいの。」
「っい、あっ! カカ、シ、っあ゛! カカシ、と、いっしょ、に、ぃっ!」
「違う、そうじゃなくてサスケはどうされると一番気持ちいい?」
「ってる、くせ、にっ、……っ!」
「聞かせてよ……どこ? どんなふう?」
はぁ、はぁ、と律動のたびに熱い息を吐くカカシのいつもよりも低い声に胸がギュッとなって全身の神経がビリビリする。
「……っおく、はげしっ、く、あ、あっ! あ゛っ、っああ!!」
全部言い終わる前にカカシが動く。ほらやっぱり知ってる、わざわざ言わせなくて、も、
「っああぁ! もっ、おく、ぁあっ!! きも、ちっ、ぃあ!」
「……っ俺も……きもちい、サスケの中すごく……っ」
こうなったらもう、止まらない。お互いにお互いを感じながらどんどん高みに上っていく。こころが充足して、愛しい気持ちで溢れて、カカシからのそれもダイレクトに感じて、脳を多幸感が占めていく。
肉体的な気持ちよさももちろん嫌いじゃない、だけどこの精神的な充足感は、きっとこうされる側でないと味わうことはできない。愛されている、と強く感じる。その歓びは女性相手では感じられない。
記憶の中で俺はサクラと結婚して、もちろんセックスもした。けれど男の立場としてするそれは、パートナーを愛するための行為で、パートナーも身体の反応でそれを返してはくれるけど、こんなにも強い愛情はその行為からは感じられなかった。
優しく包み込むような愛し方じゃなくて、激しく愛されていると感じるカカシとのセックスを俺はずっと忘れなかった。
六代目火影として俺を牢から出して共に過ごしたあのときに、カカシがひとことでも何か言ってくれていたら、俺は……。
「い、っぁあ! いく、いっ、あっ、あ゛っ! だめい、あ、あっ!! あぁっ! あ、いっ、ぁあああっ!!」
ビクンッと身体が跳ねて全身の筋肉が一瞬こわばる。中がぎゅううっと締まってカカシのを締めつけているのがわかる。快感で上り詰めた頭は真っ白になって、ぐっと奥に押し込まれるたびに電流が走るような感覚に震える。
「……っぁ、だ、め、っい、ってる、からっ、っあ! っ、だめ、っきもち、よすぎ、っ、止まっ、」
「うん……すっごくきつい……こんなに締め付けられたまま動いたら……すぐ出ちゃう」
ちゅ、と舌を軽く絡めて、俺の耳元に唇を寄せる。
「今のサスケの中に出したい……いい?」
その言葉の意味することがよくわからないまま、反射的に口走った。
「出して、中に……」
耳をはみながら舐めたカカシは俺の頭を下から支えてすぐ目の前で俺を見下ろしながら唇を舐めた。
「っあ!? あっ、あ゛ぁ!! あ、あ、ぅあああっ!!」
イキっぱなしで痙攣する身体に容赦なく強い快感を叩きつけられて訳がわからなくなりながら、俺をじっと見つめるカカシの顔が、眉が少し中央に寄る。その切ないような顔が色っぽくて扇情的でまた俺の脳を狂わせる。
「あ゛、――っ!!」
ドクドクと脈動する感覚も、先端から何かが飛び出た感覚も、きつく締まっている今はよくわかる。
全部出し切ったカカシは、っはぁ、と息をしながらまたキスをした。
今度こそ、と言ってくれたカカシなら、俺がどんな状態であろうときっと「愛してる」と言ってくれる。
……そっか俺、カカシが追いかけてきてくれなかったことが、あのとき俺に何も言ってくれなかったことが、すごくショックだったんだ。
あんなに愛してくれたのにって、カカシにとっては大勢いるうちの1人に過ぎなかったんだって、どこかで思っていて。俺に何も言わなかったのは、時間が経ち過ぎていたからもう俺のことは何とも思ってないからなんだって。
もう愛されていないって、知らしめられたことがショックだったんだ。何も言わずに立ち去ったのは俺なのに、身勝手だと思うけど。あれだけ愛してくれたカカシがまるでただの元教え子のように俺に接するのを、俺はカカシはもうそんな想いは持ってないんだと思って、……カカシの立場とか、カカシの気持ちとか、尋ねようともせずにもうカカシとの関係は終わったんだと判断して、俺もそんな気持ちは見せないように淡々とふたりでの生活を過ごしていた。
俺も「今度こそ」そんなことしない、そんな風にはならない。カカシにちゃんと伝える。カカシのことが、まだ好きで忘れられないって。何があってもこの気持ちはきっと消えないだろうから。
「……カカシの今度こそってやつ、今もずっと思ってるのか。」
「もちろん、ずぅっとこころの中に強く残ってるよ。」
「……俺も今度は諦めない、何が起きてもどうなっても。カカシが火影みたいな立場になっても、今度は諦めない。」
「サスケも……俺のこと諦めてたってこと? 結婚する前は、まだ俺への気持ちもあったの? 俺が火影になったから諦めたのなら、俺絶対何があってもそんな立場にはならないし、例えなってしまったとしてもサスケへの気持ちは絶対に変わらない。」
記憶をなぞるような生き方はしない、絶対に同じことは繰り返さない、そう決めた。大戦を防ぐことも重要だけど、俺が一番大事なものは。
「カカシ、約束だ。お互いに、気持ちがある限り、ちゃんと伝え合って、一緒に生きていくって。」
「……俺の覚悟は変わらないよ。何があっても、サスケのこと諦めない。」
何回確かめても、記憶の中のカカシが頭をよぎって不安になる。大丈夫だ、カカシの気持ちは変わってない、きっとこれからもずっと……ずっとそうでいてくれたら、記憶の中の俺も救われる。カカシはずっと俺のことを想ってくれていたんだって。お互いに勘違いしてただけだったんだって。
片腕がなくなろうが、犯罪者になろうが、……そんな予定はないけど、でもカカシの気持ちはきっと、変わらない。
そうなんだよな、誰だか知らないけどこんな運命を俺に着せた誰か。記憶を持たせたのは、繰り返さないためなんだろ。俺ちゃんとその役目果たしてやるよ。だから、このカカシとの繋がりを、……断たないでくれ。


