赤
忘れない
目が覚めると、カカシの腕の中だった。
温かくて気持ちいい、それに安心する。このまままどろんでいたい……。
再び眠りに落ちようとした時、カカシの目が開いた。
「ん……朝、か……」
腕の中におさまっているサスケを見て、ああそうか、一緒に寝たんだと思い出してその額にキスをする。
「サスケ、起きよう」
「ぅん………」
うっすらと開くその目を見ないようにしてサイドテーブルの上にあるコンタクトケースをサスケに渡す。
「おはよう……ありがと。」
サスケはすぐに起き上がってコンタクトをつけた。
カカシも上半身を起こしてググっと伸びをする。
カカシと一緒に寝て、起きたらまだその腕の中で、おはようっておでこにキスされて、こんなにも満たされた幸せな気持ちが依存の作った嘘だなんて未だに信じられない。
昨日カカシが言ったように、今大好きで幸せだと感じるのならその気持ちが嘘か本当かなんてどうでもいいんじゃないのか?
そう、思ってしまう。
……あと、三日。三日後には全てがわかる。
そのとき俺は、カカシのことをどう思うんだろうか。
サスケは自分の部屋のクローゼットから服を出すと、着替えて洗面所に向かった。
朝食を食べ終わり、サスケはイタチのペットボトルの血を持ってくるが、カカシは人間の血を飲もうとはしていなかった。
今日からは俺に飲ませる必要がないから……?
いつも必ず飲んでいたからその変化が心臓にチクチクと針が刺さるように痛む。カカシは本当に俺に血を飲ませるためだけに人間の血を飲んでたんだ。俺を依存させるために。カカシにとって俺って何だったんだろう。依存させてまでそばに居させようとした理由は何なんだろう。研究対象だから? セックスの相手にするため? そんなの、どっちもカカシが普通に言ってくれていれば、俺は応じたのに。
空になったペットボトルを自分で捨てに行く。それを見届けたカカシが、
「今日もトレーニング、する?」
と尋ねてくる。
サスケは間髪入れずに「する」と答えると、カカシはゆっくりと椅子から立ち上がり着替えに行った。
朝食、トレーニング、シャワー、昼食、そして家庭教師。それらが終わると少しの自由時間。サスケは夕食の時間までカカシの書斎から借りた本を読み、夕食を食べてからお風呂に入るとカカシと一緒のベッドで眠る。一日のルーティン。
カカシの血を飲みたい衝動はあったものの、何とか抑え込みながら過ごした。カカシもそれをわかっているのか、サスケの前で肌を露出させるのは極力控えていたようだった。
だけど寝る時だけは、どうしても目に入る。
カカシの首が、肩が、間近にあって、そこに牙を立てたい衝動が襲ってくる。
それを誤魔化すために、サスケはカカシに密着して、顔をカカシの腕に埋めた。
「……俺、好きだ。カカシが好きだ。」
この気持ちは変わらない。
カカシはサスケをぎゅっと抱き寄せる。
「……偽物の気持ちなんじゃ、なかったの」
「偽物かもしれない。でも、好きなんだ……。この気持ちがなくなって、俺が俺じゃなくなるのが怖い。」
「……血、飲む?」
「……飲ま、ない。約束、だから……」
「……もう、寝ようサスケ。お前が俺を好きって言ってくれたことは、俺が全部覚えておくから。絶対に忘れないから。」
「約束……してくれるか、俺がもしカカシの元を離れたとしても、忘れないって。」
「約束するよ。」
「キス、したい」
「……キスだけじゃ、止まらなくなるかもしれないよ?」
「それでもいい……中でカカシを感じたい。」
「してもいいの、セックス。監視もいるよ?」
「セックスは、約束してない。声も抑える。だから……」
……中に、挿れて。
カカシはタオルで目元を覆ったサスケの頬を手で包み、その唇を合わせる。今まではそこで終わりだった。でも今は。サスケを仰向けに押し倒すと、舌を差し込んでサスケのそれと絡める。
そうしながら、パジャマを脱がしていき、小さなそれの皮を下ろして直接触れた。
「ふ……んん、ん……」
すでに勃ち上がっていたそこは、触れられるだけでピクンと反応し、扱くとあっという間に精液を飛ばす。
「んぁ、は、はぁ…….」
サスケの唇を解放すると、カカシはサイドテーブルの引き出しからローションを取り出してその手にトロッと落とし、指をコーティングすると、サスケの膝を上げて後ろの穴に中指を沈めた。
「っぁ、……は」
きつく締まっている中を、ゆっくりと抽送させながら胸元をはだけて乳首をねっとりと舐めていく。
「……っん、」
はぁっとサスケが息を漏らす。
中をほぐしながら前立腺の裏をぐりっと撫でると、息を殺した。
「……カカシ、早く挿れ……」
「だーめ。血を飲んでないのに挿れても、まだ痛いだけだよ。」
カカシも寝間着を脱いだ。
指の数を増やす。ローションのおかげでぬるっと入ったが、中はまだまだきつい。
「はぁっ、う……っん」
クチュ、クチュ、と音を立てながら指が出入りする。時々ビクンと反応しながら、それでもサスケは声を出さなかった。代わりに、早くなっていく呼吸。
はぁ、はぁっ、っ! 、は、はぁっ
指二本に慣れてきたところで、もう一本増やす。
中を押し広げながら前立腺の裏を擦るとビク、と背を反らせた。
っは、はっ、は、はぁっ、はっ、
「ッカシ、もう、もう挿れっ、」
カカシは最後にぐるりと腸壁をなぞって指を抜いた。
ゴムをつけてローションを垂らし、パンパンに腫れたそこを何回か扱いてローションを馴染ませると、サスケのそこにピタと押し付ける。
「挿れるよ……」
ぐぐ、と腰を進める。亀頭がぬるりと中に入った。
「……っぁ、」
ゆっくりと入ってくる、いつもは感じない圧迫感。
はぁっと息を吐く音が聞こえて、見上げるとカカシが荒い息でそれを中に沈めていく。
カカシも――興奮してる。
そう思うと、背中をゾクゾクとしたものが駆け上がった。
「は、ぁ、……っ、」
奥まで入ると、いつもなら抽送が始まるが、カカシは奥まで挿れたままゆっくり体勢を横向きに変えてサスケを抱き締める。
「……カカシ?」
「……今日はこのまま、しばらくこうしてていい?」
「ん……わかった」
額にキスが降ってくる。
サスケが顔を上げると、唇が重なった。
お互いに舌を絡めながら中に入っている熱いものを意識する。時折それがピクンと動いて息を殺した。
ちゅ、ちゅ、とキスをしては中がキュンと締まる。
もう一度、深い口づけ。
どちらのものかわからない唾液をごくりと飲み下す。
「カカシ、好きだ……」
「俺も、好きだよ」
ずっと、ずっとこうしていたい。
繋がったまま、抱き合ったまま、キスをして、好きだと囁いて。
……それも、もしかしたら今日が最後かもしれない。
明日になったら、俺は依存から醒めて変わってしまい、カカシのことなんて何とも思わなくなってるのかもしれない。
……そんなの、嫌だ。こんなにも好きなのに。
今、こんなにも幸せなのに。
それが何とも感じなくなるなんて、……嫌だ。
サスケが求めるように顔を上げると、カカシもそれに応えてキスをする。お互いの舌が絡まり合い、ちゅ、くちゅ、と音を出しながら夢中になって貪り合う。
中に挿れたまま、抱き合ったまま、キスをしているだけで何十分も経っていた。
「……っん」
僅かに、サスケの身体が震える。
「どうしたの?」
ピクン、と身体を震わせながら、小さく喘ぐ。
「えっ? ……っぁ、……っ!」
きゅう、きゅう、と断続的に中が締まる。
はぁっ、と口から漏れる熱い吐息。
「なんかっ、変……っ、……っぁ、カカシっ、」
「どう、変なの?」
「気持ち、いいっ、……はぁっ、……あっ」
震えるサスケの身体をギュッと抱き締める。
「……大丈夫、そのまま感じてごらん。」
「けどっ、……動いてもないのに、っ、こんな……」
「俺の全部を感じて。抱き締める腕も、身体の熱も、中に入ってる形も、大きさも、全部。」
「っぁ、気持ちいい……っ、カカシ、ッカカシ、ぁっ、……っ!」
はぁっ、はぁっ、
サスケの呼吸が荒くなる。
このまま動いたら、どんな声を出すだろう。どれだけ激しくイクだろう。
小さな絶頂を繰り返しながら、サスケの身体が熱を帯びてくる。
「俺も……っ気持ちいい。わかる? サスケがきゅう、きゅうって締めつけてるの。」
「わかんねっ……、んっ! は、ぁ、あっ、」
ビクンとサスケの身体が揺れる。
「ぅあっ、気持ち、いいっ、……っぁ、とまっ、止まらないっ、カカシっ、ずっと気持ちっ、いいのが、止まんな……っ」
カカシもまた、イク時に似た快感を拾っていた。サスケの締め付けも相まって股間から脳に刺激が走る。
「サスケっ、俺も、気持ちいい……っ、キスしよ……」
抱き締める腕を緩めると、サスケが顔を上げる。カカシはその唇にしゃぶりついた。サスケもその舌を絡ませる。
「んっ……ん……んんっ……」
ピクンと震えるたびにサスケは小さく喘ぎ、中を締めつける。
(ああ……蕩けそう)
カカシがゆっくりと腰を動かし始めた。ゆっくり、ゆっくり、前立腺の裏も擦る。
「っん! はっ、あっ! は、はあっ、あ、あっ、」
「サスケ、声……」
「だめ……だめ、大きいのがっ、大きいっ、のが、くるっ……!」
「……たくさん、イキな。もっと俺を感じて……っ」
「あ、あ、あっ、だめ、ッカシ、あっ……‼」
ビクンとサスケの身体が跳ねる。
きゅうう、と中が締まり、痙攣する。しかし、吐精はしていない。
「あっ、まだ、またっ、っあ、あ、あっ、っ‼」
はあっ、はっ、はっ、は、はぁっ
「あっ……‼」
ビクビクッ!
中の痙攣が止まらない。
「ああ……気持ちいい、サスケの中……気持ちいい」
「おれっ、ずっと、ずっとイって、身体が、っあ‼」
サスケはビクビクと体を震わせながら中イキし続ける。
「はあっ、あっ! んんっ、あ! あっ、んっ……‼」
「はあっ、サスケ、俺も気持ちいっ……!」
ゆっくりとした抽送、なのにいつもより何倍もの快感が脳に走る。震えながらカカシにしがみつくサスケの頭頂部に鼻腔を押し付け、その匂いを嗅ぐ。シャンプーの香りと、サスケの香りが混じったもどかしい匂い。
「ッカシ、カカシっ、好きっ、好きだっ……‼」
カカシもサスケをギュッと抱き締める。痙攣しっぱなしの中を、ゆっくりと奥に押し進めながら。
「……好き。俺も好き。大好きだよ、サスケ。だから忘れないで。今の気持ち、忘れないで。お前が依存から醒めても、俺といた日々は忘れないで。サスケ……」
「やだっ、いやだっ、あっ、ずっと、ずっと、こうしていたいっ……忘れたくないっ、好きなままでいたい……! いやだ、っはぁ、いや、だっ! ……っ!」
終わりが見えないような長い長いセックス。
なのに血を飲んだ時よりも感じて、イキ続けて、抱きしめられて、キスをして……。
はっ、はっ、は、はっ、はっ
「止まらな……、止まらない、カカシ、カカシ、ずっと、気持ちいいのが、止まらないっ、カカシ……!」
「……俺も、イキそうなのが、ずっと続いてる。サスケ、お前だけじゃない。俺も、一緒だ」
相変わらずゆっくりとした腰の動き。いつもならもどかしいのに、今日はそんなゆっくりとした動きでさえ気持ち良すぎてずっと軽くイキ続けている。
……止められない。この気持ちと一緒に、ずっとこうして繋がっていたい。
カチ、と無機質な音が寝室に響く。
時計を見ると、〇時ちょうどだった。
「……朝まで、入れたままがいい? それとも、激しくする?」
「朝まで……っ、繋がって、たい……っ一緒に……」
「激しくしたら……きっともっと気持ちいいよ」
「声っ、おさえ、らんねぇっ……!」
カカシは腰の動きを少しだけ早くする。
「……っあ! んっ……んんっ! んぅっ……‼はぁっ、は……ぁっ‼だめ、だめっ、大きいのがっ、んんっ‼」
ビクッビクッとサスケの身体が跳ねる。
「はぁっ、激しくしたい……っ、サスケ、枕……、口に、そう……」
サスケの顔を枕に埋めて、カカシは思いっきり奥まで突いた。
「~~っ‼! んっ! んんんっ‼」
そのまま抽送を早める。
その度に絶頂するサスケの中がきゅうう、と締まる。カカシもまた、射精感に似た絶頂が繰り返し身体を走り抜けていた。
「はぁっ、サスケっ、はっ、く、サスケっ!」
「うぅんっ! ん、んっ! ふっ、んっ! んんっ‼」
カカシの動きに合わせて、サスケも腰を動かす。二人で絶頂を繰り返しながら求め合った。
「イキそ……っ、サスケっ、いいか、サスケっ!」
サスケはこくこくと頷く。
一層抽送が早くなった。
「んんんっ‼ふ、んんっ! んぅっ……‼!」
ビクンッビクンッとサスケの身体が跳ね、お腹にじわっと温かい液体が触れる。カカシはそのキュウキュウに締まった奥に腰を打ちつけて、精を放った。
「……っは、っく、……‼」
いままでに味わったことのない深く激しい絶頂。
中に挿れたまま、枕をどけてサスケを抱き締める。二人ともまだ息が荒い。時間をかけて、呼吸を落ち着かせる。
「サスケ、キス……」
サスケが顔を上げると、唇がふれあい、どちらからともなく舌を絡め合った。
「一緒に……いたい。このまま……中に挿れたまま」
「ローション、渇いちゃう……抜くよ」
ぬぷぷ……とサスケの中から出すと、ゴムの先に白濁液。そのゴムも取り払い結んでゴミ箱に捨てると、ウェットティッシュでサスケのお尻とお腹を拭いていく。
「パジャマ、着な」
「いやだ」
「なんで?」
「裸のままで、抱き合って眠りたい……だめか?」
「……いいよ。」
カカシは自分の局部も綺麗に拭くと、サスケが横になっている隣に、サスケの方を向いて寝転がった。
小さな身体を抱きしめて、あかりを消す。
「カカシ……おやすみ。……気持ちよかった。また……」
「おやすみ、サスケ。また今度、ね」
次があるかどうかもわからないのに、してしまった約束。忘れない。今の気持ちは絶対に忘れない。
たとえ目が覚めたとき、カカシを好きじゃなくなっていたとしても。