赤
揺らぎ
誰かに叩き起こされない朝は久しぶりだった。
目を開けると、昨日掃除した天井があった。
布団はお日様の匂いがしてふわふわで、そのまままどろんでもう一度眠りにつきたいくらい心地良い。
今、何時だろ……。
開けっぱなしにしてあった窓から、トーストの焼けるいい香りが漂ってくる。
トースト……昨日食べたトースト、うまかったな……。
「……あ、」
サスケはパチっと目を覚ます。
しまった、寝過ぎた?
慌ててクローゼットの中の服に着替えてコンタクトを着けると、部屋を出て階段を降りていく。
台所にはカカシが立っていて、サスケの足音に気づくと「やっと腹ペコさんが起きた」と笑う。
ダイニングテーブルにはすでにトーストとゆで卵が用意されていて、昨日の出来事が夢じゃなかったことを知る。
「……悪い、寝坊した。」
バツの悪い顔でダイニングテーブルにつくサスケに、カカシが皮を剥いたりんごを差し出す。
「よく眠れた? 成長期だから睡眠は大事だよ。もちろん食べるのもね。……トーストにはバターでいい?」
サスケがこくりと頷くと、カカシは皿に乗ったトーストを手に取りバターを載せる。
「俺は今日はジャムの気分。」
いちごジャムの瓶の蓋を開けると、もうひとつのトーストに塗り広げていく。
「じゃ、いただきます」
「……いただきます」
トーストを一口かじる。おいしい。
カカシはゆで卵を手に取って、塩をふりかけていた。
「俺もそれ欲しい」
カカシの真似をしてゆで卵を取り、塩をかける。薄ピンク色の、粒が荒い塩だ。
まじまじと見ていると、カカシが塩を指差す。
「それね、岩塩。卵によく合うよ。」
ぱく、と一口食べるとなるほど、普通の塩よりも味に深みがあって卵との相性は抜群だった。
「あんた、物知りだよな」
「ま、一応研究者の端くれだからね」
「……なんで吸血鬼の研究しようと思ったんだ?」
カカシがトーストを皿に置く。
「ん~、一番は自分のルーツを知りたかったから、かな。で、気がついたらこんな感じ。」
「ふーん……」
卵を食べ終えたサスケがもう一度トーストに手を伸ばす。
「俺を買ったのも同じ理由か?」
「まぁ……それもあるかな」
……研究対象、ということか?
「俺は何をすればいい?」
「別に。普通に過ごしてくれたらいいよ。あ、でももっと肉付き良くなってね。しっかり食べて寝て、あと今日から筋トレもするから。」
カカシはもう一度トーストを手に取る。
……わからない。普通に過ごすったって……。
「そうそう、いい知らせかどうかわかんないけど、サスケのいた男娼に公安の捜査が入ったみたいだよ。」
サスケを買えたのはギリギリセーフだったね、とにこやかに笑う。
「っナルトは? どうなったんだ?」
「……お友達? あそこにいた子どもたちはみんな公安直下の孤児施設に入ったって聞いてるよ。」
「……兄さんが、次に来たらカカシはどうするつもりなんだ」
「……ま、せっかく買ったし手放したくはないけど、サスケの意見は尊重するつもり。サスケの意志に反してるのに引き渡さなかったら、監禁で俺捕まっちゃうからね。」
俺の、意見。
「おしゃべりしてると冷めちゃうよ。食事はあったかいうちに食べな。」
うながされて、サスケもトーストをかじる。
兄さんと、カカシ。
比べるまでもない。
兄さんのところへ行く方がいいに決まってる。
それなのに、なぜかカカシのもとを去るのも嫌だなと思う。……なんでそう思うんだろう。
心にもやもやを抱えながら、カカシが出してくれた食事を完食した。
カカシは皿を片付けると、冷蔵庫からパック詰めされた人間の血と、ペットボトルに入った兄さんの血を取り出す。
「冷えた血ははじめてでしょ。これはこれで美味いよ。」
投げてよこされた六月二十八日朝とキャップに書かれたペットボトル。
カカシはダイニングテーブルに戻ると、さっそくパックにストローを刺して飲み始める。
サスケもキャップを外してゴク、ゴク、と飲むと、濃厚なのに喉越しがよく、生の血とはまた違った味わいだった。
一気に飲み下すと、脳が満足感でいっぱいになる。
やっぱり兄さんの血は、おいしい。
……でもやっぱり、カカシの血も………。
ハッとして自分の思考を打ち消す。
俺は帰るんだ、兄さんの元に。
それに、もう返品されることもない。
全てがいい方向に向かってるじゃないか。
何の不満があるっていうんだ。
空のペットボトルを手に神妙な顔をしているサスケを、カカシは頬杖をつきながら見ていた。
(迷ってるねぇ……)
昔吸血鬼はそれこそ人を魅了して襲いその血を飲んで生きてきた種族だ。生き血を啜る感覚は遺伝子にインプットされていて強烈な感覚をもたらすだろう。
それを一日に二回もしたのだから依存性がなくとも脳は原点回帰してもっと生き血を、となるはずだ。
「……なぁサスケ、お前は本当はちゃんと自分の頭で考えられる奴だろ?」
サスケの黒い瞳がカカシに向けられる。
「まだまだ時間はある。答えを出すのは今日じゃなくていい。じっくり考えな。」
そう言って、血が入っていたパックとサスケの空のペットボトルをひょいと持って台所のゴミ箱に入れる。
「さて、トレーニングするか。」
カカシが和装以外の服を着ているのは新鮮だった。
黒い長袖のラッシュガードの上に大きめのTシャツをはおり、下も同じくラッシュガードの上からハーフパンツを履いている。
和装では見えない、カカシの筋肉質な身体がよく映えるスタイルだ。
「ん、じゃまずラジオ体操ね。そのあとスクワット百回、ランニング十キロ、腕立て五十回、腹筋百回。ちょーっときついかもしれないけど、きついくらいがちょうどいいからね。出来そうだったら少しずつ回数上げてくよ。」
にこ、と有無を言わさない笑顔を向けながら、今までろくな食べ物も食べさせてもらえず痩せ細ったサスケに言う。
そんなメニューできるわけ……と思いつつも、頑張れば出来るかもしれないと考え直してラジオ体操に挑む。が、ラジオ体操だけでも息が上がってしまう。
それをまるっと見ないふりをしてカカシがスクワットの説明に入る。
「スクワットは脚の大きい筋肉を鍛える一番基礎的で重要な運動だ。お尻は後ろに出さずにまっすぐ膝を曲げること。慣れてきたら足の幅を開いてワイドスクワット。はい、はじめー。」
そうして目の前でスクワットを始めるカカシを真似て膝を折る。案外いけるかもしれない……と思ったのは二十回を超えたあたりまでだった。足の筋肉がパンパンで痛い!
「うん、筋がいい。動きは正しく出来てるからあとは回数だ。限界まで頑張れー。」
やはり有無を言わさない笑顔で軽々とこなすカカシ。
なんとかついていこうとするがやはり圧倒的に筋力が足りない。
結局五十回で足が震えて曲げられなくなってしまった。
カカシの期待に応えられず膝に手をついて落ち込むサスケの首に、カカシがフェイスタオルをかける。
「前も言ったけど、俺肉付きが良い方が好みだからもうちょっと頑張って欲しいんだけど。」
突き放されるような言い方に心がズキンと痛む。自分の細い手足を見る。俺だってこのままのガリガリは嫌だし、カカシの期待に応えたい。見放されたくない。
フェイスタオルで顔の汗を拭い、サスケはもう一度スクワットの体制に入る。
「ん、いいね。そのやる気は誉めてあげる。時間かかっても良いからとにかくやり通しな。」
ごじゅういち、……っごじゅう、にっ、ごじゅうっ、っさんっ……! っは、はぁっ、はぁっ、……ごじゅ、う、っし!
とにかく一回一回を積み上げていくことに集中する。
カカシはさっさと自分のペースで百回やりきり、少しだけお茶を飲んでから脚を広げて柔軟を始める。
「はぁっ、くそっ、上等だっ……‼」
ごじゅうっ、ご、はぁっ、ごじゅう……っ、ろくっ!
数を数える語調も強くなる。
カカシはそんなサスケの様子を股割りをしながら眺めていた。
そもそも一週間後にイタチの元に行くのならそんなに必死に取り組む必要はないのに。
そんなことも考えられないくらい、今のサスケはカカシに見放されたくないと思っている。
もっと溺れると良い。もっと縋ると良い。俺だけしか見えないくらいに心酔してしまえばい良い。
サスケが何とか百回のスクワットを終わらせると、カカシはサスケに水を差し出して「少し休んだら、ランニング十キロね」と笑顔で言う。
脚がガクガクになっている状態でランニング? 出来るのか?
「それとも、今日はもうやめる?」
そう言われると、反骨心で思わず「やる」と言ってしまう。
いつの間にか用意されていたサスケ用のランニングシューズの紐を結び、つま先を蹴ってアキレス腱をと伸ばした。
帰ってきた頃にはもう立てないくらいになっていた。カカシ曰くゆっくり走ってる、と言うがついていくだけで精一杯だ。十キロの道のりが果てしなく遠く感じながら休憩もなく一歩一歩とにかく前に進むしかなかった。
へたり込んでゼェゼェ息をするサスケを見ていながら、カカシが「あとは腕立てと腹筋だな!」と鬼畜なことを言う。
「……カシ、も、無理……っ!」
ダメ元でそう訴えてみたら、案外すんなりその要求は通った。
「ん~、ま、はじめてだし今日はここまでにしとくか。」
にこ、と笑うカカシにほっとする。落胆されるんじゃないかとか、見捨てられるんじゃないかとか、そんなことを考えていたのが馬鹿馬鹿しいくらいに。
「じゃ、ちょっと休憩したらご褒美ね。」
サスケにフェイスタオルを投げて寄越すカカシ。ご褒美? 何だろう。首を傾げていると、カカシがトレーニングウェアを脱ぎ始め、均整の整った筋肉質な身体があらわになる。
その首元を、カカシはトン、トン、と指で叩いた。昨日血を飲んだ跡だった。
「セックスもいい運動になるんだよ。知ってた?」
先ほどとは違って妖艶に笑うカカシは下の服も脱ぎ去り、脱いだ服を洗面所に持って行く。
サスケもガクガクする脚になんとか力を入れて立ち上がり、カカシの後を追った。
しっとりと汗ばんだ身体がベッドに沈む。
ベッドに仰向けになったサスケは、カカシが血をくれるのをまだかまだかと待ち望んでいた。
口は半開きで牙が覗いており、口の中に溜まった唾液をごくりと飲み下す。
「……いいねぇ、その顔。欲しくて欲しくてたまんない?」
カカシがサスケの首ににチュ、とキスをすると、サスケはそのままカカシの首を抱いて、その肩に牙を立てた。
溢れ出る芳香な甘い血、ああ、飲みたかった。ずっとずっとこの血が飲みたかった。
ごくり、ごくりと喉を鳴らす。
カカシは止めるでもなく、サスケが血でお腹を満たして行くのをただ見ている。
はぁっと息を吐いて肩からその牙を引き抜くと、つぅっと垂れた血をチュ、チュ、と音を出しながら舐めとった。
ああ、また身体中が熱い。頭がくらくらする。カカシしか見えない。早く、早く、触って欲しい。挿れて欲しい。
とろんとした目で熱い息を吐くサスケを眼下に、カカシがサスケの胸をすすっと撫でる。そんな刺激にすらピクンと身体を揺らしてしまうことが今日は恥ずかしいとも思わない。ただただ欲しい。カカシが欲しい。
思わず手を伸ばすと、そこにはすでに大きく隆起しているカカシのそれがある。
先端に触れるとぬるりとしたカウパーが指に着いて、サスケはそれを口に入れて丁寧に舐めしゃぶった。
「……すぐにでもガンガン突いて結腸の奥に挿れたいけど、今日はちょっと趣向を変えようか。」
ニヤ、と笑ってサスケの耳を舐め、その穴に舌を差し込む。
「んっ、あ、……はぁっ……」
そのまま舌が首の側面をなぞり、チュッ、チュッ、とキスを降らしながら胸の突起に辿り着く。
「んんっ! あっ、カカ、シ、んんっ、そこじゃ、ない……っ、もっと下……っ!」
「まーだダメ」
「……っあ!」
乳首に口をつけ舌で転がしたり押し潰したりするのを、サスケは背を逸らして耐える。
「我慢しないで」
「そんっな、んぁっ……あ、あぅ」
「もっと声出して」
「あぁっ……あ、あ、きもち、い、んんっ」
カカシの要求に全て応えたくなる。この人の全てが欲しい。声も、仕草も、全て愛おしい。
「カカシっ……、カカシっ!」
指がつつつ、と腰を撫でる。
「あぅっ! ああんっ、あ、そこ……! だめ……っ!」
腸骨の上のくぼみを撫でるとビクンビクンと身体が跳ねる。
カカシがそこをれろぉっと舐めてキスをするとまた身体が跳ねる。
「んんっ! あ、あぁっ……‼」
「ダメじゃないでしょ、『もっと』でしょ」
「……んっ! っと、もっと、舐めて……っ」
「そうそう、素直にね」
そこを舐める度にビクンと身体が揺れる。
カカシの舌がサスケの中心の周りを舐めるが、決してそこには直接触れない。
「カカシっ、そこ触って……! 舐め、て、……んぁっ」
しかしカカシはまた乳首に舌を寄せて舐め始める。
「あぅっ! そこじゃ、あっ、ああっ!」
「じゃあどこ……? 口で言ってごらん」
「……っ! 俺、の……ちん、こ……っぅ」
「よく言えました」
カカシがサスケの先端に触れる。
「っあ!」
昨日剥いたサスケの小さな中心を、カカシの大きな手で握り、シチュシチュと上下に扱き始める。
「あっ、ああっ、気持ち、あ、あ、出るっ、出るっ……!」
焦らされたそこは数回の往復でピュッピュっと精を飛ばした。しかしそこはまだまだ勃ったままだ。
サスケの精液を指につけ、後ろの穴に指を這わすとサスケの腰が浮く。早く挿れてと言わんばっかりに。
それに応えるように中指をナカに入れ、前立腺の裏を刺激すると「ああっ! や、あ、ああっ! そ、こ……! もっ、と……!」とサスケは腰を揺らしておねだりする。
「飲んだ血が多いとほんっと淫乱……」
カカシが指を増やして穴を拡げるように動かすと、サスケは指が前立腺の裏に当たるように腰を動かす。
「はは、そんなにそこが好き?」
三本の指がグチュグチュと音を立てて出し入れされる。
その度にサスケの腰が動き、ナカがきゅう、と締め付けられる。
「サスケ、何が欲しい?」
「あっ、あぁっ、んぁ、カ、カシの、ほし……っ! あぁっ!」
「それじゃわかんないよ」
「カカシのっ……っちん、こ……っ! 早くっ、挿れ……!」
「上手におねだりできるようになったね?」
「あぅっ、はや、く……! 挿れっ、挿れて……っ!」
サスケがカカシの股間に手を伸ばすが、届かない。
「……っは、挿れるよ……っ」
カカシがその中心をサスケの後ろの穴にそわせる。それだけでサスケはぶる、と身震いする。
「はーっ……、我慢できね。一気にいくよ」
ずぷぷぷぷっ
「っあああ! あっ、あ、あ、あ゛っ‼」
奥の奥まで一気に挿れられる。結腸の入り口にあたり、更にその奥に押しつける。
「あっ、カカッ! あぅっ! あっ、気持ち、あぅっ! あああっ‼」
カカシはそのままサスケを揺さぶりながら奥にガンガン突きつける。
サスケはカカシの首に手を回し、揺さぶられるままに喘ぐ。
「あーっ! あっ! ああ゛っ! あっ、あああっ!」
「あー、だめ、気持ちい。出すよ……っ」
「あっ、ああっ、まだ、まだ……っ、もっ、と……‼」
「大丈夫、一回じゃ済まないからっ」
カカシのそれがサスケの最奥にググッと入ると、勢いよくビューッビューッと精液が放たれるが、カカシの言う通りその硬さは損なわれない。
全部出切ると、また抽送が再開される。カカシの精液で滑りの良くなったナカはトロトロになっていて、きゅううとカカシのものを締め付ける。
「あ、あ、あっ、ああっ、っあ……!」
「っはぁ、締め付けすご……気持ちいい」
パチュン! パチュン! パチュン!
腰を打ち付ける度に湿った音が寝室に響く。それよりも大きなサスケの喘ぎ声が音を打ち消すように響く。
「カカシっ! あああっ! あ、あっ! 好き、好きっ……! もっと! 欲しっ……! あああ゛っ!」
「っ、ほんっと、欲しがり屋さん……っ! そんな俺が好きっ?」
「あああっ! 好き、好きっ、カカシッ……! 好きぃ……‼」
それに応えてカカシも腰の動きを激しくする。
「また出るっ……、出すよ、奥に、いい?」
「あっ! いいっ、いい、おくっ! ああ゛っ!」
カカシがまた結腸の奥にググッと押しつけて精液を放つ。しかしまだまだその硬さは健在だ。
「~~~っ‼ はっ、は、あ、あっ、あ゛、」
ドクン、ドクンと精液を出し切ると、またパチュン! パチュン! と激しい出し入れが再開される。
「あぁあ゛っ! あっ、カカシっ、気持ち、い、っ、あっ、もっ、もっとっ……!」
「はぁっ、ぐちゃぐちゃに、っしてやる」
「あああっ! あっ、あ゛っ、あぁっ、あ゛、いく、いくっ! ~っ‼ あっ~~‼」
キュウ、キュウ、と締め付けが激しくなり、サスケの先端からピュッ、ピュッ、と精液が飛ぶ。それはカカシのお腹にかかり、ぽた、ぽた、とサスケのお腹に落ちてくる。
「はっ、はっ、あっ、あ、あ」
「まだ終わってないよ」
「んんんっ‼ あっ、ああ゛っ! あ、あぁっ!」
結局その日のセックスは、何時間も続いた挙句、またサスケは意識を手放して終わった。
ズル、
サスケのナカからカカシのものを引き抜く。
ドロドロになったそれを見て、まだ挿れたい衝動に駆られるが、サスケが起きていないとつまらない。
催淫作用は飲んだ血が多ければ多いほど強烈にはたらくらしい。
好きなだけ飲ませてやったら恥じらいも何もなく求めてきた。その上「好き」とまで言わせたのだ。
その効果は絶大だ。
こうして少しずつ洗脳していけば、サスケは俺から離れられなくなるだろう。そう、少しずつでいい。毎日たっぷり血を飲ませてやるだけでいい。
それでうちはの子どもを手に入れられるなら安いものだ。
すうすう眠るサスケはの頭を撫で、ほっぺをつねる。
「サスケ、シャワー浴びるよ。」
「んん……」
「サスケ、起きな」
頬をペチペチ叩くと、サスケはうっすらと目を開けた。
「……あ、カカ、シ……」
「覚えてる? さっきのセックス」
「おぼえて、る……」
「俺を好きって言ったの本当?」
サスケの顔がカーッと赤くなる。
「ねえ答えて」
「ほ、んとう……」
「……よかった。俺も好きだよ。」
言われたサスケは顔が赤いまま目を丸くして、そして顔を伏せた。
「……好き、だ。カカシが……、あんたも? ただのセックスの相手じゃなくて?」
「うん、好きだよ。だからサスケを買ったんだし。」
ポロポロ、と涙が溢れる。
「……本当に? カカシは、……本当に俺のこと……」
酷い目に遭ってきた。
ボロ雑巾のように扱われてきた。
それが今、俺はカカシが好きで、カカシからも好きだと言われて。
一週間後に兄さんが迎えにきてくれるとしても、俺はカカシのことが好きだ。
サスケの涙をカカシの指が拭う。
「ほら、シャワー浴びに行くよ。」
サスケは目をこすってこくりと頷く。
脚はまだだるい。
股関節も開きっぱなしだったから痛い。
それを堪えてベッドの端に移動して、立ち上がる。
「さ、一緒に行こ」
笑顔で差し出される手を、サスケは手に取った。大きな手がサスケの手をぎゅっと握る。そんなことですら、嬉しくてたまらない。
兄さんの顔が頭をよぎる。
俺はどうしたらいい。
どうしたらいいんだ。
兄さんについて行くのが当たり前にいいことだと思ってた。
でもこんな風にカカシを好きになるとは思ってもみなかった。
もっとカカシと一緒にいたい。
もっと、もっと……。
胸が苦しい。
俺は、俺は……