赤
暴走
水の流れる音に混じってサスケが息を殺す声が響く。
「っん、は……ぁっ」
先程の情事の跡をカカシの長い指がかき出しているからだ。
だがサスケにとって、それはあがなえない刺激となって脳内を侵していた。
カカシもわざと前立腺の裏を刺激するように指を動かす。
「じっ、自分で……っ、できるっ……!」
浴室の壁に手をついてカカシに尻を向けるサスケは、カカシの顔色を伺うように振り向く。
「ここはまだまだ欲しそうにしてるけど……ね?」
サスケの中心はすっかり勃ち上がっていて、カカシはその皮を指で下ろすと、上下に扱く。
「っあ! や、め……っ、カカっ」
グポ、と音を立ててサスケの中から白濁液が太ももを伝って落ちていく。
「んっ…! あ、はぅ……、っあ、んんっ……! も、やめっ……!」
「正直に言ってみて? どうして欲しい?」
正直に。
正直に言えば、この身体の熱をどうにかして欲しい。
あんなにしたばかりなのに、下半身が疼くような感覚はまだ続いていて、快感をもたらすカカシの指をきゅうきゅうと締め付ける。
「……っ、挿れて、ほし……っぁ!」
お尻にカカシの硬いものが当たっている。
欲しい、今すぐに欲しい。
「どこに何を?」
穴にそれを押し付けられては離れていくじれったさにサスケは思わずカカシのものにお尻を押し付ける。
「おれのっ……穴に、んっ……、カカシのチンコ、あっ、はぁっ……、挿れ……っ欲し……っあ、ああぁっ! あ、あっ、」
サスケが言い終わる前に、カカシはサスケの中にそれを奥まで一気に挿入し、抽送を始めた。
「っはは、……、よく言えました、っ、中とろっとろでキュンキュンしてる」
はぁっ
カカシは息を荒げながら行為にふけるが、サスケのものを扱く手も止めない。
「ぁあっ! あっ、カカ、うぁっ! だっ、だめ、だめ、出るっ……っあ、だ、あ、あああぁっ‼」
「……ん、もう出ちゃった? ……っ、……敏感じゃないの。……イイね。」
サスケのものを解放すると、今度は両手でサスケの腰を掴み、抽送を早くした。
パチュン! パチュン! パチュン!
湿った音とシャワーから流れるお湯の音、そしてサスケの嬌声が浴室に響く。
「あっ! あ、ぅあっ! あぁっ! もっ、と、奥、んぁっ! 奥にっ‼」
ベッドでの感覚が忘れられない。
ググっと押し付けられたその先の感覚。
カカシは挿れる角度を変えてサスケの求めに応じる。
「ほんっと、欲しがり屋さん。っ、いくよ」
カカシの精液でドロドロになったそこはいとも簡単にカカシのものを迎え入れた。
「゛あっ! ああああっ!あ゛あ゛っ‼ あっ、あ゛っ!」
「せーっかくかき出してあげてたのに、また中で出しちゃいそ……」
奥の奥まで挿入すると、カカシはふぅ、と一息つき、一気に引き抜いては結腸の奥に突きつける。
「あ゛っ、きもち、ああ゛っ、あ、カカ、おかしっ、おかしく、あぁっ! な、あ゛、ぅあっ、ああ゛っ! ああああぁっ‼」
サスケのそれからピュッピュッと白濁液が飛び散る。
「ッきつ、は、俺もっ、気持ちいいよ、サスケ……っ!」
徐々に抽送が激しくなり、カカシがハッハッと激しく浅い息をする。
カカシが、俺に、興奮、してるっ……
頭がおかしくなりそうなくらいの快感を得ながら、サスケはカカシのその様子に胸が満たされた。
ああ、幸せだ。俺は今、幸せなんだ。
「サスケっ、奥に出してい? それとも外に出す?」
「あ、あ゛っ、な、なかっ、奥っ……ああ゛っ! あっ、あ゛っ、あ、あ゛ぁっ!」
「奥、ね」
数回の抽送の後、グイッと奥の奥にそれを思い切り突きつけると、ビューッビューッとカカシの精液が迸った。
「あ、はぁっ、ああぁっ! あっ、」
「わかる? 出てるの」
「あっ、わか、る、ぅあ、ピクッピクッて、動いてっ、は、ぁっ」
「……またかき出さなきゃね。」
全て出し切ったカカシが、ゆっくりとそれを引き抜く。
「っんん! っは、あ、あ……」
サスケはズルズルと床に膝をつき、手をつき、はぁっ、はぁっ、と荒い息を繰り返した。
もっとも、カカシもセックスの余韻でまだ息が荒いままだ。
「サスケ、こっち向いて……」
背後からかかる優しい音色にサスケが顔だけ振り向くと、カカシは膝を折ってサスケの後頭部を支え、ちゅ、とキスをする。
「っな、え、」
戸惑うサスケに、もう一度キス。
「カカシっ……、何を……」
「ん……、もしかしてキスしたことない? ……好きだよって証」
「……っ!」
好き、好き、好き……
頭の中で何度もその言葉を繰り返す。
胸がいっぱいになる。
その気持ちが溢れ出そうで。
サスケは胸を押さえた。
ドキドキしてる。好き、俺も、好きだ。カカシが好きだ。繋がっているときは幸せ、だった。キスをすると心臓が跳ね上がった。今も多幸感で満たされていて。
サスケは身体をカカシの方に向け、その唇と唇を合わせる。
「……俺も、好きだ…」
「知ってる」
ああ、こんなに幸せを感じたことなんて、今まであっただろうか。
自然に口角が上がりそうになるのをこらえる。
「じゃ、かき出そうか?」
「……自分で、出来る」
「俺の方が指長いよ?」
「カカシにやらせたらまた………」
「今度は悪戯しないって」
「……俺、もう腰立たねぇ……」
「今日はもうしないから。ほら。」
「……いい、自分でやる。」
「腰立たないのにどうやるの?」
「トイレ、借りる」
「ここはもうお前の家だから、借りるなんて言わなくていいんだよ。」
「……ん」
カカシがまたサスケにキスをする。
「なら汗洗い流したら、上がろうか」
言いながら、にこ、と優しい笑顔をサスケに向け、カカシはシャワーの水圧を上げた。
昼食を食べ終えると、カカシが洗い物をしながらサスケに声をかける。
「午後は一緒に出かけようか」
サスケはダイニングテーブルを拭きながら、「わかった」とだけ答えた。どこに行くかはわからないが、家の中に一人残されるよりはよほどましだ。
洗い物を終えたカカシはいつもの和装姿で「じゃ、行こう」とサスケを呼ぶ。
サスケも玄関に向かい、いつの間にか用意されていた子ども用のサンダルを履いて一緒に外に出た。
見覚えのある道だった。
確か男娼から身請けされた時に通った道を、真逆に進んでいる。
カカシの顔を見上げるが、長い前髪で表情は窺えない。
その場所に近づくにつれ、動悸が高まっていく。
大丈夫だ。
あそこは公安が捜査に入ったと、カカシは言っていた。
返品されることはない。
それにカカシは俺を好きだと言ってくれた。
大丈夫、大丈夫だ。
知らず知らずのうちにカカシの袖の先をぎゅっと握りしめていた。
カカシが足を止めたそこは、やっぱりサスケのいた男娼だった。しかし、出入り口は白い布で覆われていて、制服姿の男女が何人か荷物を手に出入りしている。
「ね、ここはもう営業停止してるから、もう大丈夫だよ。」
少し離れたところからしばらく様子を伺って、カカシはまた歩き出した。
「……ナルト……君だっけ。調べたら、今は公安の孤児施設にいるみたい。会いたいでしょ。」
サスケは小走りでカカシに追いつき、「会えるのか!?」とカカシの袖を引っ張る。
「アポは取ってある。ついておいで。」
カカシはそれだけ言うと、袖を引っ張るサスケの手を握ってゆっくりと目的地である孤児施設に向かった。
そこは一見監獄のような建物だった。
館内に入るとヒヤリとした空気が肌にまとわりつく。
「面会希望で予約したはたけです。」
受付の初老の男性が、ペラ、とノートのページをめくり、「では、ここに面会者の名前と今の時間を。」とカカシに渡す。
キョロキョロとあたりを伺っていると、ノートに書き終えたカカシを先導する形で受付の男性が歩き始めた。
「面会室は4番です。三十分以内でお願いします。」
……ここが、孤児施設?
「面会室4」と書かれた扉には、小さなガラス窓に鉄格子がはまっている。
金属製の分厚い扉をカカシが開けると、中にはパイプ椅子が二脚置かれていて、部屋を区切るアクリル板の向こうにも同じようにパイプ椅子が並んでいた。
カカシに促されて椅子に座って待っていると、アクリル板の向こうにある扉から三回ノックする音。と同時に、聞き覚えのある懐かしい声も聞こえてきた。ただ、その声色は決して穏やかではない。
扉が開き、サスケは思わず立ち上がる。
部屋に入ってきたのは、両手に手錠をかけられた、まるで犯罪者扱いのようなナルトの姿だった。
「ナルト‼」
「……サスケ? サスケか!?」
アクリル板に駆け寄ろうとするナルトを、手錠に繋がれた鎖が邪魔をする。
「孤児施設って……お前こんな扱い受けてるのか? いつもこうなのか!? せっかくあの地獄から出られたのに……っ!」
サスケがアクリル板に手をつく。
「……俺ってばよ、やっぱバケモノの子だからさ。……普通の奴らとは扱いがちげーみてぇだ。」
ナルトはジャラ、と手錠に繋がれた鎖を持ち上げ、力無く笑う。
「ま、でもうまい飯は食えるし、寝る場所はベッドだし、あそこよりはだいぶマシだってばよ!」
半袖のTシャツから伸びる腕には、いくつかあざがあった。こんなあざ、男娼にいた頃にはなかったはずだ。
サスケはナルトの手錠を指差す。
「それ、いつも付けてんのか? いつも鎖に繋がれてるのか?」
「へへ……まぁな。」
「……っいくらベッドで寝れても、飯がうまくても、それじゃあんまりじゃないか……!」
サスケがガン、とアクリル板を叩くと、それを見た黒いスーツ姿のナルトの監視役が、ずい、とナルトとサスケの間に立つ。
「それ以上暴れると面会は中断する」
サスケより二回り以上背の高いその男をサスケは睨みつける。
「お前か……? お前がナルトをこんな目に遭わせているのか……っ!?」
アクリル板に両手を貼り付けたまま、サスケはその手をワナワナと震えさせる。それを見て、カカシも立ち上がる。
「サスケ、ちょっと落ち着……」
しかし、言い終わる前に異変が起きた。監視役の男の身体がビクンッ! と電流が流れたかのように硬直したかと思うと、ジャケットの内ポケットからぎこちない動きで鍵の束を取り出し、ナルトの手錠に手をかける。
「ッサスケ‼」
カカシは後ろからサスケの両眼を覆った。
フーッ、フーッと興奮したサスケは急に視界が暗くなり、「ッ何しやがる‼」と手を払い除けようとするが、カカシの方が力が強くそれは叶わない。
「カカシ‼」
「駄目だ、サスケ。眼を使うな。」
男はナルトの手錠の鍵穴に鍵を差し込んだところで、ハッと正気に戻り、両眼を塞がれたサスケを睨みつけた。
「……貴様……吸血鬼か‼」
男が扉の横にあるボタンを押すと、すぐにカカシとサスケがいる方の扉が開き、数人の男が二人を拘束した。
「っ離せ! 今すぐナルトを解放しろ‼」
すぐにサスケの眼には布が巻かれ、部屋から連れ出される。
「サスケっ! 俺は平気だからっ!」
ナルトが身を乗り出して叫ぶが、もう重い金属製の扉が閉まった後だった。
「離せ! 全員消えろ‼」
部屋から連れ出された後もサスケは暴れ続けた。
同じく拘束されているカカシが「サスケ」と呼びかける。
「カカシ! どういうことだ‼ なんでナルトはあんなっ……‼ 保護されたんじゃねえのか!?」
興奮するサスケの左腕が押さえつけられ、注射器の針が入れられる。
「……っ! なんだっ! 何をした!?」
「サスケ、落ち着け。大丈夫だ、俺も一緒にいる。」
サスケの腕に打たれたのは鎮静剤だった。
語気が徐々に弱まり、サスケの身体の力が抜けていく。
「ナル、ト……」
男たちがサスケの拘束を解くと、その身体は地面にドサッと倒れ込んだ。
サスケは簡易ベッドに横たえられ、眼を塞ぐ布も取り払われていた。白衣を着た女性がその瞼を持ち上げて懐中電灯で眼を覗き込む。
「……コンタクトを着けている……それにまだ幼い……。にも関わらず、大の大人を操ったというのか……。」
カカシはサスケの傍らに座って、その様子を眺めていた。
……白衣の女が言うように、先程見せたサスケの瞳力は強すぎる。
最初にサスケを買った時には、瞳すら赤くなかったのに。
それなのに、今はコンタクトを着けていてもなお人を操る力があるなんて。
……うちは一族は強い瞳力を持つことで知られているが、それが何故なのかは諸説あった。
もしかしたら、……可能性のひとつだが、血縁者であるうちはイタチの血を飲むことで瞳力が強まったのかもしれない。
……いや、それでもこの短期間の間にここまで強い力を持つだろうか。
大切な存在を前に、怒りで暴走して一時的に瞳力が強まった、のかもしれない。
全て可能性の話だ。
しかし、この強い瞳力のままでは、カカシと一緒に暮らすのは困難になる。カカシも吸血鬼の眼を持つとはいえ、先程のサスケに対抗するのは難しいだろう。
となると、コンタクトももっと強力なものが必要だ。
腕を組み考え込む女もまた、公安の人間だろう。そうなると、ナルトの次にターゲットにされるのはサスケだ。
公安には直下に吸血鬼だけが配属される特殊部隊がある。
何しろ、強い瞳力を持つ吸血鬼が普通の人間に「自害しろ」と眼で命じるだけで、なす術もなくその相手は自害することしか出来なくなる。
それだけ吸血鬼は危険で、しかし上からの任務を確実に遂行する組織である公安にとっては都合の良い存在だ。
うちはイタチは一緒に暮らそうとサスケに呼びかけたが、それはイコール公安の監視の中で生きることと変わりない。吸血鬼、しかもうちは一族であるイタチは、公安にとって貴重な戦力であり、また危険な存在でもある。必ず監視がついているはずだ。
そんな環境でこの力を持つサスケも、ある程度の歳を重ねれば、確実に公安はサスケの力を我が物にしようとするだろう。
…サスケをイタチに渡すわけにはいかない理由が、ひとつ増えた。
「はたけカカシさん、でしたね。あなたはこの子の保護者ですか。」
女がカカシに目を向ける。
「ええ、保護者ですよ。」
ピリ、とした緊張が漂う。
「今までにこういうことは?」
「ありません。何せ子どもです。このコンタクトをつければ完全に抑制できていました。今回は一時的なものではないかと……。」
「……ふむ。」
白衣の女とカカシ、そして横たわるサスケしかいないその部屋の中で、女はどう対応すべきか思案している様子だった。
「一時的なものでないとしたら、このままでは危険すぎる力です。力を弱めるために、身体の中の吸血鬼としての血の濃度を下げる必要があります。」
「ヒトの血を輸血しろ、ということですか。」
「……ともかく、起きるまで待つしかありませんね。今の状態では判断しかねます。ただ、目を覚ましたときまた暴れるようなら……危険なので拘束して保護するしかありません。」
「それは……この子を俺から引き剥がすと、そういう事ですか。」
「そう解釈していただいて構いません。」
……状況は最悪だ。
こんな事になるのならナルトに会わせるべきじゃなかった。
カカシはサスケの手を握り、祈るような気持ちでその顔を見る。
すると、サスケの肩がピク、と動いた。
「サスケ?」
カカシが呼びかけると、うっすらとその黒い瞳を開ける。
「こ……こは……」
「覚えてるか。……お前は怒りで力を暴走させたんだ。」
「ちか……ら…?」
まだ意識がぼんやりとしているようだった。
暴れることは……今すぐには、ないだろう。
「そう、ヒト相手には使っちゃいけない力だ。」
「使っちゃ……いけ……ない……」
徐々にその瞳が開いていく。
その様子を、白衣の女は緊張した面持ちで見守っている。
「約束できるか、サスケ。普通のヒトを相手に瞳力は使っちゃ駄目だ。どんなときでも、だ。その力を使った瞬間から、お前はヒトの敵になってしまう。そうなると、俺はお前のそばに居られなくなる。」
カカシの、そばに……いられなくなる?
いやだ、そんなのいやだ。
カカシから離れたくない。
絶対に離れたくない。
「俺は、どうすればいい……?」
「一緒にうちに帰ろう。なるべくヒトとは接しないように。二人で穏やかに暮らそう。……できるか?」
サスケはこくりと頷いた。
その瞳からは、瞳力は伝わってこない。大丈夫、大丈夫だ。
白衣の女が再びサスケの眼を覗き込む。
「……しばらくは監視をつけさせてもらいますが、この子があなたの言うことにちゃんと従うようなら、その生活は約束しましょう。」
カカシはほっと胸を撫で下ろした。及第点だ。
「……今回の暴走のきっかけは、ナルト君だ。あの子を解放しろとは言わない。しかし、今の処遇は改めてもらいたい。ナルト君に危険な要素があるのは事実ですが、あの子もまだ子どもです。手錠に鎖はやりすぎではないですか。」
ナルトもまた、ひとたび暴走すれば手がつけられない存在だ。しかし穏やかな生活を送ることができれば、暴走のきっかけも減るだろう。
「検討はしましょう。ですが私達としてはリスクは可能な限り排除したい。その点、ご理解願いたい。」
「………わかってないね。今回暴走したのがナルト君の方だったら、どうするつもりでした? 手錠なんか意味がないですよ。あなたたちで対処できだと思います?」
「それは……」
「手錠と鎖は外してあげてください。あんなものは意味がない。できたら郊外の落ち着いた場所で、静かに穏やかに、普通の生活ができるように手配してください。この街中で彼が今の処遇に不満を抱いて暴走したときのリスクを慎重に考えるべきです。」
「……検討します。それ以上のことは、私からは言えません。」
「良い返事を期待してますよ。」
二人のやりとりを、サスケは息を呑んで見守っていた。
カカシはナルトも守ろうとしてくれている。
それが嬉しかったし、何よりナルトのあの状況は、サスケが一番気にしていたことだった。
……もしかして、俺のために? 俺のためにカカシはナルトを?
サスケはナルトの言う「バケモノの子だから」という言葉をよくわかっていなかった。ナルトの中のバケモノがどのくらい危険なのかもよく知らなかった。ただお互いに励ましあったり、心配したり、笑ったり、同じような境遇の仲間で大切な友達だっただけだ。
「……じゃ、そういうことで……。サスケ、帰ろう。」
カカシがサスケに向けてにこ、と優しく微笑む。
カカシに手を握られたまま、サスケはゆっくりと身体を起こした。ああ、目頭が熱くなって視界がぼやける。
「……俺の、せいで……、迷惑かけて……、ごめ……っ…」
「泣かないの……大丈夫だから。ね、俺がついてる。大丈夫。」
サスケの瞳からポロ、とこぼれた涙をカカシの指がすくう。
「大丈夫、これからはちゃんとうまくいくよ。ナルト君もね。大丈夫だから。ね、帰ろ。」
……こんなにも、大切にしてくれてるのに、俺はカカシに何も返せてない。
「俺、ちゃんとカカシの言うこと聞く。言われたことなら何でもやる。だからっ、ずっと一緒に……っ!」
「わかってるよ、サスケのことは何でも。俺だってサスケと一緒にいたい。……一緒にいてくれれば、他は何にもいらないよ。」
ポロポロと涙が溢れる頬に、カカシがキスをする。
「ね、大丈夫。家に帰ろう。」
サスケはカカシの握る手を強く握り返し、簡易ベッドから足を下ろした。