耐薬訓練
本題
手のひらに錠剤が3つ落ちる。そして更に6錠入ったシートを渡された。
「今日から少しだけ訓練の内容が変わる。サスケは12時間この部屋から出られない。4時間経つごとに薬を3錠追加で飲む。身体を薬に慣れさせるための訓練だから、もう我慢はしなくても良いよ。」
3錠を……更に2回?
「何してもいいって言っても……あんたは見てるんだろ。」
「……ま、皆通る道だ。恥ずかしがらなくていい。飲んだらそんな羞恥心もなくなるだろうし。」
それはそうかもしれないけど、抵抗がないかと言えば嘘になる。カカシが差し出した水を手に少しだけ悩んでから、思い切って口の中に入れた。ごくりと飲み下してコップをカカシに渡すと、また水を注がれて渡される。
「時間になったら合図を送るから、その時に3錠ずつ飲んでね。」
「……わかった。」
すでに心臓の鼓動が早くなり始めている。カカシは扉を閉めてまた鍵をかけた。室内を見ると昨日と同じものが中央に置いてある。
とりあえず服を全部脱いで坐禅を組んだ。せっかくイメトレを重ねたのだから耐えられる限りは耐えてみよう。
身体の中に意識を向ける。2錠の時よりも変化が早い。中心はすぐに勃ち上がり心臓はバクバクと拍動を早めていく。極力ゆっくりと深呼吸を続け丹田にチャクラを集め、そのチャクラに神経を注いだ。しかし呼吸のコントロールは徐々に効かなくなってきて、ふう、ふう、と浅くなっていく。呼吸器を包むようにチャクラを集めると胸がじんわり温かくなり、変化が緩やかになるが、焼け石に水だった。何せ3錠も飲んでいる。昨日よりも重い状態になるのは目に見えていた。冷静を保っていた脳も呼吸の乱れと共に薬にかき乱されていく。
「はぁっ、はぁっ、くそっ……」
我慢する必要はない、と言われても、やっぱり頭に冷静な部分が残っている内はこの衝動から耐えたかった。目を閉じたまま荒い息を吐きながらそこに触れようと動く左手首を右手で掴む。下半身に集中しているチャクラを丹田に集めて少しでも意識を逸らそうとするがそこに集まる血流までは制御できない。どうしてもそれに意識が向いてしまう。
『サスケ』
耳元でカカシの声がしてハッと目を開いた。声のした方を見るとカカシがそこにいる。
……いるわけがない、幻聴と幻覚だ。頭がぼんやりしていく中火遁の印を結ぶがチャクラをうまく練れない。焚き火程度の火力で発現した術は幻覚を消してはくれなかった。
『サスケ』
「うるせえ、黙れ、偽物っ……!」
『本物だよ、ほら』
カカシが手を伸ばしサスケの中心に触れた。確かにその感触を感じてサスケは呆気なく射精した。
「っはぁ、はぁっ、またかよっ……!」
カカシの手はサスケのそれを扱き続ける。数回の往復で何度も白濁液を飛ばす。サスケはそのカカシの腕を掴んだ。筋肉質なその腕を掴んだ感触があった。本、物……? 違う、違う違う、偽物だ。なのになんでこの腕はこんなに温かい? カカシが口布を下ろしてサスケに迫り、唇を奪われる。熱い舌の感触。口内をなぞって絡められる舌にサスケの意識は完全に飛んでしまった。
夢中になってキスをする。その間も扱かれる中心は簡単に精を放った。その都度サスケの身体はピクンと反応する。坐禅はとっくに崩れていて腕は背後についていた。キスをしながらゆっくりと床に倒されていく。中が疼いてたまらない。早く挿れて、早く、カカシ。
床に着いた頭のすぐそばにローションと男性器の張方があった。サスケはローションに手を伸ばして腹の上に垂らし、そのローション溜まりに左指を潜らせて後ろの穴に指を沿わせる。背を丸めないと指を深く入れられない。届かない。もどかしい。カカシが唇を離して上半身を上げる。
指がそこに届いたと思ったら、大きな手がその指を抜いて代わりに入ってくる。ぬるりと入ってくる感触にまた白濁液が飛び散った。
「あっ、は、ぁあっ!」
中に入っている指が暴れる度に身体が跳ねてもっとと求めてしまう。カカシの指はいつの間にか太くて熱いカカシのそれに代わっていて、その動きに合わせて腰を動かしながら何度も白濁液を散らせては腹を汚していく。
『サスケ、好きだよ』
耳元でささやかれて身体がびりびりと震えた。吐息の混じった声でそんなことを言われたら何もかも蕩けて……。
セックスの妄想に取りつかれているサスケを見ながら時計を確認する。
声をかけて正気に戻るだろうか?
ただそんな事よりも気になったのはサスケの妄想の相手は俺なんだろうかという疑念なんだから、サスケを疑ってるわけじゃないのにこんなことを思うなんて、男の本能ってやだね、と思う。
この訓練は本来18歳……6年後に行う予定のものなのに、任務に同行させたいからって理由で今の年齢のサスケに受けさせている事に対して後ろめたさもある。ただ、うちはの最後の一人であるサスケがこの手の罠にかかってしまったときにこの子はこうなってしまう、と思うと予定よりも早くても、自分の手が届く範囲にいるときに受けさせたかった。
……こういうことを覚えさせたのは、俺なのに。
サスケは何度も果てながら、時折俺の名前を呼ぶ。そのことに安心して、サスケの妄想を見守る。変なことは教えてないのと、サスケもセックス自体にそんなに興味があるわけではなかったみたいで、ごく普通のセックスの妄想が続いているようだった。
もし俺の知らない展開の仕方をしていたら、その場で止めてサスケを問いただしていたかもしれない。どこで覚えたんだと。
そういうことが起きていない事実に安心している。自分がこんなに独占欲の強い男だなんて思ってもみなかった。
見守り続けてもうすぐ4時間。手袋を外してパンッと乾いた音を響かせた。
「サスケ、時間だ。」
その音と声に、サスケは我に返ったらしい。周りを見渡して俺の姿を確認し、そして傍らに落ちている薬のシートを手に取った。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
手のひらに落ちた薬を見つめて、意を決して口に入れ、水で流し込む。
身体の異常は続いているままなんだろう、肩で息をしながら座っているかと思ったら、ぽた、と赤いものが床に落ちた。同時に、サスケの身体が傾く。
床に倒れる前に抱きとめて、ゆっくりと寝かせた。鼻から血が出ている。
濃度が上がりすぎて意識が飛んだらしい。
これも、今までに見てきたことだ。この段階では限界まで濃度を上げてその時間を維持する。昏睡状態のサスケの髪をなでながら、また4時間のタイマーをセットした。
目が覚めると、そこはカカシの寝室だった。
頭がぼんやりとしている……けど確か耐薬訓練に行って……駄目だ、薬を飲んだ後からうまく思い出せない。
「目、覚めた?」
隣からカカシの声がして、振り返った。ふわりとやさしい笑顔に安心する。
「訓練って……どうなったんだ?」
「全員通る道だよ、薬の濃度が高くなりすぎて2回目の薬を飲んだ時点からサスケは気を失ってた。」
カカシがここまで運んでくれた?
あれ、確か12時間は出られないって。
「今、何日の何時だ」
「3錠の訓練の翌々日。つまり、4錠の訓練も終わってる。」
「……終わってる?」
「うん、3錠に引き続き、4錠の訓練を12時間。それももう終わってる。サスケはずっと気を失ってただけ。」
「なら、今日は」
「最後の5錠の訓練。ま、大丈夫。」
何が大丈夫なのかはわからないが、カカシが言うのならそうなんだろう。
でも3錠と4錠の訓練で気を失ってるんだから、5錠も同じことになるんじゃないのか。
「支度が出来たら、行こうか。」
例の部屋には2錠の時と同じものが置かれていた。薬を5錠飲んですぐにそれらを端に押しやって、服もすべて脱いで座禅を組む。
5錠も飲んでるのだから焼け石に水だろう、と思っていたら、2錠の時よりも身体の変化が緩やかになっているような気がする……?
確かに薬の効果は感じる。循環器と呼吸器は同じように反応し始めている。でも5錠なのに、2錠の時の方がよほどきつかった気がする。
3錠と4錠の訓練の成果が出ている、ということなのか?
静かに息を吐きながら丹田のチャクラに集中し続けた。時間が経ってもやっぱり2錠の時のような激しい変化も幻覚も妄想も現れない。
……薬への耐性が出来ている?
そのまま大きな変化を感じることがないまま、時間になった。
カカシが歩み寄ってきて頭をくしゃっとなでる。
「ごーかっく! ちゃんと耐性はつくれたみたいね。服も着ていいよ。」
少し嬉しい気持ちで脱ぎ去った服を着て、改めてカカシの前に立つ。
「じゃあ、任務の内容の説明。違法な出会い喫茶があると報告が上がっている。そこを訪れた若い女性が連続失踪している。確認できている被害者は女性だけ。俺と一緒に潜入して、失踪ルートを特定し、被害者を救出する任務。前情報として、女性にだけ特別な飲み物を飲ませているらしい。情報収集で先に潜入したくのいちの話では、中身は催淫剤が濃厚。それを飲んでトイレに立った女性が戻ってこなかった、と。心配で様子を見に行った体でトイレに行ったけど、その女性はいなかった。つまり怪しいのは特別な飲み物、プラストイレに何らかの仕掛けがある可能性、ってとこ。」
「俺が女に変化すればいいのか? そもそも出会い喫茶ってのはどういう場所だ。」
「見て字のごとくなんだけど……男女が出会うことを目的に集まる場所。喫茶店という体で、偶然そういうことが起きる、という理屈だからそういう形態の店自体は取り締まれないんだよね。」
男女が出会うことを目的……任務の内容は女性の行方を追う……つまりカカシはその女性と「出会う」と偽装することになる。……そんなところに行ったって、任務なら別に俺はどうとも思わないのに。カカシは変に心配性だ。
「内容はおおむね。それで、作戦は?」
「サスケの察しの通り、女性に変化してその特別な飲み物とやらを飲んで欲しい。その後俺が店に入ってサスケをナンパする。催淫剤であればその時にどの程度の強さなのか俺にサインを送って。で……」
作戦の内容まで聞いて、別のくのいちではなく俺と行きたい理由ははっきりと分かった。
上忍にもなるとこんな任務もあるんだなと思うと同時に、自分も上忍になったらこういう任務をあてがわれるのだろうかと思う。その時は俺も他の誰かじゃなくカカシと行きたいと申告するだろう。火影様は俺たちのこともわかってるから理解してくれるはずだ。
ただ、こんな内容の任務をカカシは俺と行きたいと言ってわざわざ耐薬訓練まで受けさせたのは、他の誰かに何か思われなかったんだろうか。それともカカシと火影さまだけのやりとりで決まったのだろうか。
何にしてもこういうことが続けばカカシと俺の関係を疑う奴が出てきてもおかしくない。
その時はそんな任務自体を断って欲しいところなんだけど……忍であるいじょう任務や命令に逆らうことは出来ない。カカシが適任だと思われてしまえばカカシのところにそういう任務が来てしまう。
カカシは……何を考えているんだろう。
自分の家に帰って、出会い喫茶に行く女性のイメージを作る。男性と出会う目的で訪れるのなら、恐らく身体のラインを強調するような服だろう。太ももを見せるためのミニスカート、年齢は……喫茶だから12歳でもいいだろうけど、カカシが声をかける前提でいけば18~20歳くらいの成人したばかりの年の頃だろうか。
5錠の訓練をクリアしているとはいえ、そういうものが入っていると分かっている飲み物を飲むのは抵抗があるが、ただこの任務のためにせっかく薬の耐性をつけたし、薬の作用機序もわかってるから「効いているふり」はいくらでもできる。あとは、カカシを信じて成り行きを見つつ、動くべきタイミングで動く。それだけだ。
鏡の前で変化の術を使う。露骨すぎてもだめだ。19歳、の女性が持っているような服、スカート、少し地味にしよう。それで、勇気を出して初めて入ってみた出会い喫茶、少し緊張しながら出されたものを口にする。……これでいけるだろう。変化したその姿をくるりと回って確認する。……問題ない。
カカシの家に立ち寄って、店に入る時間を確認する。
本日、20時に俺がまず入る。10分後、カカシが入って俺の隣に座る。あとは流れに任せつつ、事前に立てた作戦通りに進めていけばいい。
仮に俺をどこかに拉致しようとされたとしても、5錠の耐性が出来ている俺は十分抵抗は出来るし、カカシも守ってくれる。


