約束-リライト版-
なんでそんな部屋がある
「さて、と……」
カカシがパソコン画面を見ながら何やら打ち込み始める。
サスケもパソコンを立ち上げてアプリケーションを確認する。……あの本の山で見かけたソフトはあらかた入っていた。
ということは、あれを全部勉強しなければここで戦力になるのは難しい、ってわけか。
「サスケ……じゃなくてうちは、チャットツール開いて。IDはお前の社員証番号で初期パスワードは生年月日だから、パスワードだけ変えとけよ。」
画面の右下にあるチャットツールをクリックして入室すると、早速パスワード変更画面に遷移する。
「ちなみにそれ作ったの俺な。こういう仕事もある。」
サスケは新しいパスワードを入力して改めて入室すると、部署ごとにトークルームが分かれていた。開発保守及び監督部をクリックすると、カカシからのチャットが流れてきている。添付されたPDFを開くと、仕様書と書かれた4枚の書類だった。
「それを社外向けのA4チラシに編集しといてくれる? 出来上がったらPDFにエクスポートしてチャットで俺に送って。OKならそのまま営業に回すから。」
……どうやら、カカシは会社では真面目に仕事をしているらしい。小さい部署に二人きりという状況に戦々恐々としていたが、仕事中は安心しても良さそうだ。
「チラシなら、WordとかPowerPointの方がいいんじゃないですか?」
「……あんなダサいチラシしか作れないソフトの名前出さないでくれる? 社外向けだからきちんと作ってよね。」
「……わかりました。」
サスケは仕様書の読み込みから始めた。
定時を知らせる音楽が鳴る。まだチラシは完成していなかった。
「すみません、途中までしか作れていません。」
「あーいいよいいよ、新人にスピードは期待してないから。今日はもう帰んなさい。」
カカシはパソコン画面から目を離さずに左手をひらひら揺らす。
サスケは作りかけのデータを保存してソフトを閉じると、パソコンの電源を落とした。
「お先に失礼します。」
返事はなかったが、頭を下げて扉を開けて外に出る。
集中してパソコン画面に向かっていたせいか、背中がゴリゴリする。社屋から出ると伸びをして、ふう、と息を吐くと、足早に本屋に向かった。
画像加工の技術は習得したが、文書をチラシにするとなるとデザイン力が必要不可欠だ。
キャッチコピーの本やデザインの本を物色し、6冊買って、コンビニで弁当を調達してから家路に着くと、さっそく一冊手に取り読み込み始める。まずはフォントや配置、配色なんかの基本的なところからだ。
片手間に弁当を口に運びながら読み進めていくと、あっという間に12時を回っていた。
(やば、寝なきゃ)
まだ読み終わっていない本2冊をローテーブルの上に置いて、服を着替えるとすぐに布団に入る。
(残りの2冊は明日会社に持って行こう)
灯を消すと、サスケはすぐに眠りについた。
翌日、分厚い本を2冊バッグに入れて出社する。
自部署の扉を開くと、早めに家を出てきたのにそこにはすでにカカシがいて、パソコンに向かっている。
「おはようございます」
頭を下げて席につき、パソコンを立ち上げようとするが「あーちょっと待って」と声がかかった。
「パソコンは始業時間5分前に起動して。パソコンの使用履歴で勤怠管理してるから今起動すると早残業扱いになる。」
「課長は……?」
「俺はいいの、管理職だから。」
なぜ管理職だといいのかはよくわからなかったが、始業時間まではあと1時間ある。ちょうどいい、と思いバッグから本を一冊取り出した。
机の上に置いて広げると、カカシが近づいてくる。
「……何の勉強?」
「DTPデザインです。必要だと思いましたので。」
「ふぅん。……ま、いんじゃない?」
カカシは本の表紙を見ると、自席に戻っていった。
本を読んでいると時間はあっという間に過ぎる。
始業5分前になったのでパソコンの電源を入れると、チャットツールを開いてから作業画面を出す。
フォントの種類を確認すると、どうやら市販のフォントも既にあらかたインストールされているようだった。
昨日作りかけていたチラシを一旦白紙に戻して、勉強したことを元に再度デザインを作っていく。しかし午前中だけでは終わらず、作りかけのデータを保存して昼食に出ることにした。
「どっか食いに行くの?」
扉に手をかけようとしたところでカカシの声がかかる。
「はい、弁当は持ってきていないので。」
「んじゃ一緒に行くか。」
「……またネカフェですか? 遠慮します。」
「今度はちゃんとした店行くって」
「それでも遠慮します。」
「……つれないなぁ。これからずっと2人きりなんだからもうちょっと交流しようよ。」
『ずっと2人きり』という言葉に少しぞくっとする。
「遠慮します。失礼します。」
サスケは扉を開けて外に出た。
社屋から出てぐるりと見渡すが、飲食店らしい店はラーメン屋くらいしかない。でも今日はラーメンの気分ではない。
となると、ここから徒歩10分の場所にある駅の近くに行ったほうがよさそうだ。前ナルトが言っていた吉野家も駅の方面だ。駅の方に足を向けるとさっそく定食屋が見えてくる。3人ほど並んでいるが、店内を見たところカウンター席は空いているようだったので入り口にある台帳に名前を書くと、予想通りすぐに呼ばれカウンター席に案内された。
メニューを開くとカツ丼がイチオシらしい。他にも色々あったが選ぶのが面倒だったのでサスケはカツ丼を注文して、鞄から本を取り出して読み始める。
と、そこに隣の席に誰かが座った。
サスケは本を読む手が邪魔にならないよう気持ち肘を縮めると、「天蕎麦1つちょうだい」と聞き慣れた声が聞こえてくる。
目だけで隣を見ると、そこにいたのはやはりカカシだった。
「偶然だねぇ、サスケ」
「……下の名前で呼ばないでください」
「ああ、ごめんね。……休み時間くらい本読むのやめたら?」
「少しでも時間が惜しいんです。」
「へぇ……、そう。」
肩肘をつきながらサスケを眺めるカカシがいるせいで本に集中できずイライラしていると、カウンターの向こうからカツ丼が目の前に置かれる。
本をしまって割り箸を取りカツ丼を食べ始める、が、やっぱり隣からの視線がどうしても気になる。
「……何見てるんですか。食いにくいんですけど。」
「まぁそう気にするなって。俺とお前の仲でしょ?」
「何の仲ですか。ただの上司と部下です。」
カカシはサスケに耳打ちする。
「セックスした仲、でしょ?」
ゾクッ
「無理矢理やっておいて何が……!!」
「お、天そばきた」
カカシは割り箸を取って何事もなかったかのように食べ始めた。
サスケもカツ丼をかき込むと、早々に勘定をして社内に戻っていく。
昼休憩は残り30分。
また鞄から本を取り出して読み込みに入るが、すぐにカカシも部屋に戻ってきた。
自分の席に戻るんだろうと思ったら、サスケの隣に来てデスクの上にある本をひょいと取り上げる。
「ッ何を……」
「休憩中は休憩しときなって。根詰め過ぎるのもよくないよ?」
「本を返してください」
「休憩終わるまで没収」
「……休憩中は何しようと個人の自由ですよね?」
「自由だよ? 返して欲しかったら……そうだなぁ、今から舐めてよ。」
「……は? 何を」
「昨日俺がしたみたいに舐めて、って意味だけど……そっか、そうだね。そういうのあんまり詳しくないか。」
昨日の事が脳裏に浮かんで頭に血が上るのを感じる。そんなの絶対にやらないしその先も絶対にやらない!
「……いいですもう一冊あるので。」
鞄からもう一冊の本を取り出すが、それもひょいと掠め取られる。
「っ何がしたいんですか、課長」
「だから返して欲しかったら舐めてって言ってるじゃない。」
「頭おかしいんですか? コンプラ委員会にセクハラで訴えますよ。」
「別にいいよ。」
カカシは涼しい顔のまま答える。
「そのコンプラ委員会、俺だから。」
「は……? 委員会って……複数人じゃ……」
「ざぁんねん、うちの会社は俺だけでーす。」
意地の悪そうな笑顔でサスケの肩にポンと手を置く。
「……というわけ。ここじゃ何だし、仮眠室行こっか?」
サスケは肩に置かれた手を払って、キーボードに手を置いた。
「本はもういいです。」
「ふぅん……そう。……じゃあ」
カカシはパソコンに向かうサスケの頭を掴んで自分の方に顔を向ける。
「舐めたくなるようにしてあげようか」
そう言って、サスケの唇に貪りついた。
「っ!?」
昨日のような優しい甘いキス。サスケの舌にカカシのそれを優しく絡める。
「っんん!」
ついばむように繰り返されるキスの雨。時間が経つごとにいつの間にかサスケもカカシの舌に応じていた。
「んっ、は、」
唇が解放されたときには、サスケの顔は真っ赤に染まっている。
思わず、部屋の中に防犯カメラがないか探した。ない。
ということは、この部屋では何をされても証拠が残らない。
ならスマホで録音を、と取り出したスマホもまたひょいと取られてしまった。
「おい、返せ」
「だって何か小細工しようとしてたでしょ?」
「あんたには関係ない」
「俺は関係ありそうだなぁと思ったんだけど。だってこれ、ボイスレコーダーの画面じゃん?」
暴れたり大声を出せば総務の人が気づいてくれるかもしれない。スマホを返してくれる気はなさそうだから抵抗するなら……いや、今の状態だと何事も起こっていない。新人の俺よりもベテランなのかは知らないがある程度会社の中で地位があるカカシの方が有利だ。
「ほらネコちゃん、勃ってるよ。」
触らなくてもわかる。サスケのそこは傘を張っていた。
「俺は猫じゃねぇっ……!」
「普通は男とキスしても勃たないって。わかる? 俺、男。サスケも、男。」
そう言われると、反論できない。男で、しかも無理矢理やられた相手にキスされて反応するなんておかしい。
「本当はサスケはやらしいことされるのが大好きなんじゃないの? だって昨日もアンアン喘いでたじゃない。」
「そんなわけないだろ、自分に都合のいい事しか覚えてないのか。俺は何度もやめろと言ったのにあんたが、」
「じゃあもう一回試してみる?」
カカシがサスケの肩に手を置く。すすっと撫でながらその手を下ろして手首を掴む。
「っなにを」
「セックスに決まってんじゃん」
掴んだ手首をぐい、と引っ張ると、サスケは椅子から立ち上がらされる。その足の間にカカシの左足が入り、太ももでサスケの股間をぐっと押した。
「っ……!!」
「ほら、おいで。また気持ちよくしてあげるから。」
にこ、と笑うカカシに手を引かれて、2人で仮眠室に入っていく。
窓のない部屋。カカシが電灯のスイッチを押すと、蛍光灯がジジ、と音を出しながら光る。扉が閉められると、そこはもう無音の世界だった。防音加工がされているらしい。これは、大声を出しても外には届かない……?
ならせめて抵抗を、しなければ。
そう思うのに、身体はカカシにされるがまま、長椅子に座らされる。
「昨日勉強したね? セックスの前に何するか。」
……フェラチオ、のことか、舐めるって。受け入れたと見せかけて、思い切り噛みついてやればきっと逃げられる。
「ちゃんとできたら、俺も昨日みたいにちゃんと気持ちよくしてあげる」
耳元で囁かれると、強張っていた身体の力が抜けていく。
気持ちよくなんかなかった、無理矢理されたのに、そんなわけがない。男に襲われて感じるなんて、そんなバカなことあるわけがない。
……噛みついて、逃げる。……でもその後は、どうする?
昼休憩が終わったら、嫌でも自分のデスクに座らなければならない。噛んで逃げたらその後、余計にひどい目に遭うんじゃないのか? 何せ上司だ。そして俺は入ったばかりの新人。
それなら今はいっそ受け入れた方が……いや、いやいや何考えてる、この部屋から出たら誰かに助けを求められるかもしれない。
……とはいえ訴える先のコンプラがカカシ……だと絶対に握りつぶされて終わる。
カカシはいつの間にかスラックスのファスナーを下ろして勃ち上がっているそれをサスケの口元に押し付けている。
どうにもならないならその中でも最善の策を探る、まずはこの部屋から出る……のは、カカシが目の前に立ちはだかってる。昨日俺の抵抗が全部無駄になったことを考えるとこいつが今このタイミングでまんまと俺を外に出すとは考えづらい。
……被害を最小限にする方向が現実的だ、もう腹を括るしかない。
サスケは口を大きく開いてそれを口に含んだ。
……無駄に大きい、くそ。長いだけでなく太い。口の中に納まりきらない、
それでも懸命に舌を動かしてカカシが早く満足するよう努力する。頭を前後に動かして、時々口を窄めて吸い付き、裏筋を舐め上げたり亀頭を刺激する。
「ちゃんと学習しててえらいね、上手だよ。」
褒められてもちっとも嬉しくない。これは自分の身を守るための最善の行動だ。早くいけ、早くいけと願いながらカカシのものをしゃぶるが、いくまでもなく途中でそれは口から離れていった。

