約束-リライト版-

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2026年9月21日カカサス,成人向,中編,現代パロ,完結済みリライト版,エロ描写有,モブサス描写有,平和IF

パートナー

 月曜日。
 今日から無理強いされることはないという安心感で歩みも軽かった。
 部屋の扉を開けると、やはりすでにカカシは仕事をしていて、俺は「おはようございます」と声をかけてから自分のデスクに着く。
 始業時間になるまで本を読んで過ごし、始業5分前にかけたアラームが鳴るとパソコンの電源を入れた。
 先週の続き、アプリケーションユーザーインターフェースのデザインだ。仕様書を再度読み込み、俺は作業に入る。アプリケーションの画面数は15ある。統一感を持たせつつ、小学生でも一目見てわかるようなデザイン。まずはメインメニューの制作から取り掛かった。
 
 昼休みの鐘が鳴る。
 途中経過をチャットでカカシに報告して、部屋から出ようとすると「俺も一緒に行っていい?」と声がかかる。
「ネカフェじゃないならいいですよ。」
「んじゃ、今度はちゃんとしたおすすめのお店行こっか」
 手を差し出されるが、「就業時間内です」とその手を叩き払った。
 カカシが案内した店はいわゆるおばんざいの店だった。
「モツがおいしいのよ」と言いながら店内に入り、テーブル席について飲み物を注文した後、備え付けのお皿におかずを持っていき、最後にご飯をよそう。
「サスケ」
「就業時間内です」
「ああ、悪い。うちは」
「社内戻ったらさ、仮眠室行かない?」
「行きません」
「つれないなぁ」
 言いながら、それぞれおかずを口に運ぶ。
 おすすめなだけのことはあって、どれもおいしい。
 そこに、先輩らしき人と一緒にナルトが入ってきた。
「お! サスケじゃん!」
「あー、ナルトか、なんか久しぶりだな。」
「まだ一週間しか経ってないのにそんな気がするな! あ、この人、俺の先輩の海野さん!」
 海野さんは控えめに頭を下げると、人懐っこそうな笑顔で「ここのは何でもうまいぞ」とナルトに話しかけている。
 その様子を見てフッと笑うと、カカシがサスケの顎を掴んでカカシの方に向ける。
「他の人ばっかり見ないでよ」
「……は? 恋人気取りか?」
「……違うけど、パートナーでしょ。」
 こそこそと話し合う二人を見て、ナルトが首を傾げる。
「海野先輩、あの……はたけ課長って、どんな人なんすか?」
「んー、俺も詳しくはないけど……人を寄せ付けない感じというか、馴れ合いが嫌いというか、職人気質っていうか、そんな感じの人だよ。でないと何年もたった1人だけの部署でやってけないって。」
「でもさ! その割に入ったばっかのサスケとは仲良さそうなんだよなー。」
「……気に入ったんじゃない? 気が合うとか?」
「ふーん……」
 なおも首を傾げるナルトを横目に、食べ終わった2人はレジに向かっていった。
(なーんか、距離、近くね? 気のせい? 
 
 自部署に戻ったのは12:30だった。
 俺がデスクに着くと、カカシがその隣にやってくる。
「ねえ、仮眠室……」
「行きません」
 カカシが俺の顎をくいと上げて口付けをする。
 はぁっ、は、
 カカシの口から吐息が漏れる。
「……だめ? 金曜できなかったから今日したいんだけど……」
 珍しく頬を紅潮させて興奮しながら言うカカシはいつもより色気があって……つい、いい、と言いそうになるが、仮眠室でやるのは俺が嫌だった。
「ダメです、仮眠室ではしません。」
「じゃあどこならしてもいい……?」
「……っ、社内はどこもダメです。仮眠室で1人でシコってきてください。」
「……ちぇ、分かったよ」
 カカシは素直に1人で仮眠室に向かっていった。……カカシがひとりでシコってるって、絵面がなんか面白いな。
 覗いてみたい気持ちを押し留めて、本のページをめくる。
 
 定時を告げる音楽が鳴る。
 15ある内の6画面を仕上げて、カカシにPDFファイルを送信すると、画面を閉じてパソコンの電源を落とした。
「お先に失礼します」
 今日も返事はないだろうな、と思いながら頭を下げると、「サスケ」と声がかかる。
「今日、サスケんち行っていい?」
 昼にシコったのにまだムラついているらしい。
「定時過ぎとは言え社内です。」
「ああ、ごめんうちは。……で、いい?」
 俺は頭をかくと、「……約束、守れよ」とだけ言って部屋を出た。
 
 ――カカシが家にくる。
 それはつまり、そういうことをしたいという意味だ。約束を守れと言いつつ承諾してしまったのは何故だろうか。カカシが約束を守ると信頼できるようになったからだろうか。それとも別の心理的な作用があったのだろうか。
 断ることだってできた。そして断ればカカシはその約束を守る。だからこそ家に入れても良いとも思った。
 今日もキスをするんだろうか。金曜日みたいに「その気にさせる」のだろうか。……その先も許すのだろうか。いや、それはカカシ次第だ。ちゃんと俺の意思を尊重していれば……尊重していれば受け入れる?
 約束を守って見せたカカシを見て、それまで抱いていた不信感や嫌悪感のようなものは何故か綺麗になくなっていた。そして俺の意思をちゃんと尊重するのであれば、セックス自体もそんなに嫌ではないと今は思っている。
 という事は、俺は結局自分の意思を無視されたことが引っ掛かっていただけで、カカシとセックスをするだけであれば嫌ではなかった、ということになる。
 何だか納得がいかない部分もあるけど、家に来ても良いと言ったからにはカカシはそのつもりでくるだろうし、昼休みや定時後のあの感じからすると……カカシの雰囲気に呑まれてしまいそうだった。欲情されている、と感じることがこんなにも胸に来るなんて。
 でもそんなに俺に固執するカカシは俺のことをどう思っているんだろうか。キスの相性が良いと言っていた。最初に泊まりに来た感じからするとそういうことには慣れていそうなのに、他のパートナーがいるのだとしたら俺に固執する理由はわからない。散々色々試した挙句パートナーが見つかっていなかったのなら相性がいい上に部下でもある俺は都合のいい相手なんだろう。
 ……都合がいい、という言葉に自分で考えておきながら少しもやっとする。
 そもそもパートナーの言葉の定義が曖昧だ。結婚する人たちもパートナーを自称するし単にセフレ関係でもパートナーという言葉が使われる。カカシが言い出したパートナーはどっち寄りの定義なんだろうか。
 ただ、パートナー、という響きは、お互いを尊重し合っている感じがしてなんだか落ち着く。
 でも、やる気にならなければ断る。家にまで呼んでおいて残酷かもしれないけど、それが俺たちが交わした約束なんだから。
 
 家に帰ると、本の山を部屋の端に寄せて、食事をとった。
 空の弁当箱を捨てていると、玄関のチャイムが鳴る。
 ドアスコープを覗いた。背の高いスーツ姿の男。
 扉を開けるとそこにはカカシがいて、「お邪魔します」と中に入ってくる。
 俺は扉を閉めると、鍵をかけて、室内にいるカカシの元に向かった。
「晩飯、まだなんだろ」
「うん、コンビニ寄ってきたからまず食べさせてね。」
「好きにしろ、今日は箸あるのか」
「んー……ないねぇ。借りていい?」
「……ほら、これ。俺の時もハズレだったから。案の定だな。ところで、この後どうするんだ。帰るのか、泊まっていくのか。」
「泊めてくれるならその方が嬉しいね、いただきます。」
 ……こんなやりとりが、これからは日常になっていくのか。それも悪くないと思っている自分がいる。
 あんなに酷いことをされたと思っていたのに人生どう転ぶかわからないものだ。
「ところで、パートナーってどういう意味で使ってる言葉なんだ。」
「意味……って言われてもそのままの意味なんだけど……。」
「そのまま……?」
「うん伴侶とか相方とか、俺たち恋人って呼び方はあんまりしないからね。」
 弁当を食べながらカカシが言った言葉が頭をぐるぐると回る。
「……え、?」
「ご馳走様でした。なに、あれだけのことしてただのセックスの相手だと思ってたわけ?」
「したのは、あんただろ!」
「いちいち初々しくてかわいいんだから……そうそう、これ、魔除けにつけといて。」
 小さな箱を渡された、と思ったら、その中身はピアスだった。
「……ピアスなんて、開けたことないぞ」
「だろうと思ってピアッサーも用意してあるからさ、こっちおいで。」
 いや、……いや聞いてないし耳に穴開けるなんて嫌だぞ俺は。
「怖がらなくていいよ、すぐ終わるから。」
「……何でそれが魔除けになるんだよ」
「右耳のピアスは特定の人がいるっていう意味なの、だから魔除け。ほらおいで。」
 特定の人って普通恋人のことを指すだろ、カカシと恋人? いや、違うだろ。そこまで行ってないだろ。
「そういう意味ならまだこれをつけるのは早い、今日はなしだ。」
 カカシが口元を抑えて笑う。何かおかしいことを言ったか、俺。
「〝まだ〟ね、了解。これからそうなるって解釈になるけど良かった?」
 それを聞いて、自分が口走った言葉に顔が熱くなった。

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