約束-リライト版-

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2026年9月21日カカサス,成人向,中編,現代パロ,完結済みリライト版,エロ描写有,モブサス描写有,平和IF

追いかけた理由

 事前に下調べした店を探して繁華街を歩く。まだ時間が早いせいか往来には思ったほど人はいなかった。
「っと、このビルか……」
 見逃してしまいそうなPENCILビルの階段を降りていくと、目的の店に辿り着いた。18:00オープン。もう開いている。
 そっと扉に手をかけて押すと、JAZZが響く店内でカウンターの……女性に見えるが恐らくはオカマの……店員さんがいらっしゃいと声をかける。周りを見渡すがまだ客は入っていないようだった。
 誰もいないんじゃ、このオカマっぽい人と話すしかないか。はカウンターに腰をかけた。
「はじめての子ね、かわいこちゃん、嬉しいわ。何歳?」
「22歳です」
「やだぁ、若いのね。こういうお店ははじめて?」
「はい……はじめてです。だから勝手がわからなくて、
 すみません。」
「謝ることじゃないのよ、私が教えてあげるから安心して? まずは自己紹介からね。私はナツミよ。ここを開いて5年ってとこね。身体はいじってないから男のまま。あなたは?」
「俺は……ええと、サスケっていいます。普通の会社員、なんですけど……」
 口篭るサスケを見て、ナツミさんがニッと笑う。
「……当ててあげる。最近ゲイだって自覚したんでしょ?」
「え、何で……そう思ったんですか?」
「オカマの勘よ」
 ナツミさんはタバコを取り出し、火をつけた。
「ここに来たのは……差し詰め人生相談、ってとこかしら?」
 正確には、自分がゲイなのかそうでないのかを判定してもらいたい、だ。まずそこを聞いてみなければ。
「皆さんはどうやだで自分がゲイかどうかわかったんですか?」
「ってことは、まだ確信はしてないのね。まあ人によって色々だけど……女性に魅力を感じないとか、逆に男性が気になるとか、若い子だとそんな感じが多いかしら。」
 女性に魅力を感じない……それだけで自分はゲイだと納得するのだろうか?
「試したんです、いわゆるその……エロ動画見てみたり、ソープ行ってみたり……は。でも女性相手にそういう興奮はあまり感じなくて、ゲイ系のエロ動画では身体が反応した、んですけど……。」
「あら、なら答えは明確ね。あなた、間違いなくゲイよ。」
 簡単に答えを出されて唖然としてしまう。……いや、ここまで来たんだ。知りたい事は全部聞かないと。
「……今後どうしていくのが正解なんでしょうか。」
 ナツミさんはウインクした。
「取り敢えず、一杯飲みましょ。何がいいかしら?」
「よくわからないので、あんまり強くないお酒お願いします」
「オーケー、ちょっと待っててね」
 カウンターの中で作業を始めた。店内を見る。カウンター席の他にボックス席が3ヶ所、テーブル席が2ヶ所。小さい店だ。
 目の前にカクテルグラスが差し出される。
「安心して、アルコールはほとんど入れてないから」
「ありがとうございます」
 一口含むと、杏のような味がする。
「それで、どうしたらいいかわからないんですって? サスケくんは決まったパートナーは居るの?」
「決まったというか……無理矢理、された人なら、……います。その人、上司なんです。」
「あらあら……」
「正直、俺はその人と身体の関係を持つのは、……嫌、なんです。だから極力プライベートでは関わらないように、今しています。」
「なんで嫌なの? 無理矢理されたから?」
 ……なんで、嫌……
 そういえば、何でだろう。
 深く考えたことがなかった。
 俺の意思を無視して好き勝手されたからだろうか。無理矢理されたからだろうか。
 カカシから何もされず普通に出会っていたら好感を抱いていたんだろうか? ……いや、俺はカカシを変な人だとは認識していたけど恋愛対象とかそういうものではなかった。
 ……上司としては、尊敬はしている。けど、それだけだ。
「俺の意思を無視して、強引にされたのが嫌です。……それと、キスをされると……その、気持ちよくて、ぼーっとしてる間に始まっていて、最後までされて、……嫌だともやめろとも言えなかったのが、悔しくて……。」
「そう……、その人とのセックスも嫌いなの?」
 セックスは……セックスは、少なくとも最中は、気持ちいい。嫌いかどうかで言うと……多分セックス自体は、好きな相手となら嫌いではないと思う。……じゃあ、強引にさえされなければ、俺の意思をきちんと汲んでくれるのであればカカシとのセックスを俺は受け入れられるんだろうか?
「……嫌いじゃないのね?」
「その可能性もゼロではない……程度で、判断できるほどの材料はない、という感じで。」
 ナツミさんがフーッと紫煙を吐く。
「でもキスが気持ちいいのよね。身体の相性って大事よ」
「でも俺の意思を無視して、……そういうのは受け入れられないです。」
 ナツミさんはタバコを唇に寄せる。カクテルを一口飲んだ。
「ならきちんとあなたを尊重してくれる別のパートナーを探したらどうかしら?」
「別の、パートナー?」
「そう、要するにハッテン場に行って、この人となら、っていう人を探すの。新しいパートナーができたら、きっとその上司ももう手を出してこないわ。」
「それって……色んな人とやれって事ですか?」
「そういう事。何事も経験よ?」
 ……あんなことを、その場で出会ったよくわからない人と、する……? ……嫌だ、そんなの……嫌だ。
「抵抗があるみたいね? だったら現状維持か、部署異動で接点を減らす……もしくはいっそ退職して引越しをして逃げちゃうのもアリじゃない? 無理矢理されるよりはその方がいいでしょ?」
 入ったばかりで部署異動は現実的じゃない。
 せっかく入った会社。同期とも仲良くやってて、仕事も難しいけどやりがいがあって、……その環境を捨てるという選択肢。
 今ならすぐに就活を始めればまだ第二新卒の枠はある。
 上司がカカシでさえなければ、そんな事を考える必要もないのに、俺が逃げなきゃいけないなんて、納得できない。
「……まぁ、悩むわよね。オカマが言えるのはそのくらいよ。その上司としっかり話し合いをしたことはあるの?」
「ない、です。仕事上の会話ぐらいしか今は……。」
「話し合いって大事よ。一度だけ考えてみたらどう?」
 あいつが果たして話し合いをしてくれるだろうか。無理矢理するなとか、キスをするなとか。こっちの要求だけ通す訳にはいかない、代償として何が求められるのかもわからない。
「……そうですね。」
 でも確かに、話し合いはしたことがない。カカシのペースで勢いに任せて、だから俺の言いたい事はカカシに伝わっていない可能性が高い。
 仕事はあれだけできるんだから、頭はおかしいけど話し合いモードに持っていけばきちんと話を聞いてくれる……可能性はある。
 店の扉が開く。
 ナツミさんが「いらっしゃい、今日は早いのね?」と入ってきた客に声をかける。
 差し出されたカクテルをぐいと飲み切ると、「今日はもう帰ります、ありがとうございました」とナツミさんに告げた。
 勘定をしながら、また店の扉が開く。その人と入れ違いに外に出ようとしたら、腕で制止された。顔を上げるとそこにはカカシの顔があった。
「……え?」
「ナツミさん悪いね、この子に用事があるから借りていくよ。」
 何でカカシがここに?
 借りていくなんて、相変わらず人を何だと思ってるんだ……!
「おいカカシ」
「店から出るのが先」
 腕を引っ張られて細い路地に連れて行かれる。この場所、雰囲気、……嫌な感じがする。
「俺はあんたとやるつもりはない、また強引にするつもりなら」
「こんなところではしないよ、ベッドの方が好きだし。で、あの店に何しに行ったの? 情報収集?」
「あんたに言う義理はないしプライベートであんたに関わるつもりもない、帰る」
 大通りに向かおうとして腕を掴まれる。
「俺とするつもりないってまさかハッテンバにでも行くつもりなの?」
「そんなとこ行かねえよ、離せ!」
「じゃあ何をしにあの店に行ったの、ゲイが集まる店って知らなかった訳じゃないんでしょ。」
 ……カカシはするならベッドでしたいみたいなことを言った。という事は今なら話し合いに持ち込めるのか?
「ゲイが集まると知ったから行ったんだ、あんたとやるのはもう懲り懲りだ。」
「別のパートナーを探しに来たって事?」
「俺はあんたのパートナーじゃない……!」
「はっきり言ってよ、俺以外の誰かを探しに来たの?」
「……違う、けどもうあんたとそういう事はしない。」
「なんで? 最初はともかく2回目は同意だったでしょ。」
「キスさえされなければそんなことにはならなかった!」
 いつもの表情のまま、カカシが口を開く。
「……やっぱサスケ俺とのキスでそこまで、……そうなってた?」
「どういう意味だよ」
「あー、いや、つまり、キスの相性がいいって事。」
 相性? 待てよ、こいつはやり慣れてるからキスも上手いんじゃないのか。
「……たとえ相性が良かったとしてもあんたが俺にした事は消えないし俺はあんたを拒否する。」
「2回目のセックスも本当は嫌だったってこと?」
「そうでなければこんな事は言わない……!」
「待ってよ、ちょっと場所変えない?」
「次はどこに連れていく気だ」
「そんな警戒しないでって。俺の家じゃ落ち着かないだろうからサスケの家行こう。」
 腕じゃなく手を繋がれて大通りに出る。まっすぐ新宿駅に向かって歩き、そのまま改札を通った。
「俺の家で何をするつもりだ」
「今日は何もしない、約束する。」
 電車に揺られて最寄駅で降りる。手を繋いだままいつものコンビニを通り過ぎて家に着いた。ポケットの中でボイスレコーダーのスイッチを入れる。
「……本当に何もしないんだろうな。」
「無理矢理しても嫌われるだけってわかってるしキスも嫌なんでしょ、そういう形でお別れは嫌なの。」
 玄関の鍵を開けて、中に入った。念のため、鍵は開けたままにして。
 ローテーブルを挟んで窓側にカカシ、入り口側に俺が座る。
『話し合いって大事よ』
 ナツミさんの言葉が脳裏に蘇る。でもこの場で話し合うとしたらもう俺に関わるな、にしかならない。より正確には、プライベートにおいて。
「わざわざうちに場所を移したのは何でだ。」
 いつものヘラヘラした顔じゃない、真面目な顔のカカシ。仕事以外でもそういう顔できるのか……。
「まず確認させて。最近昼休みに戻ってこないのも、俺が原因?」
「それ以外に何があるんだ……!」
「ふたつめの確認、俺とキスをしたらサスケはどうなるの」
「見てたならわかるだろ、身体の力が抜けて……それ以外何も考えられなくなる。だからもうしないと」
「最後の確認、セックスというか、俺とするのがそんなに嫌? 気持ちよくなかった?」
「気持ちいいとか関係なく無理矢理してんじゃねえか! そんなの論外だ。」
「……なに、無理矢理じゃなきゃいいの?」
 ピク、と動きが止まる。視線が揺れる。
「……無理矢理じゃなきゃ、いいんだ?」
「……んなこと、言ってねえ。そもそもセックス自体やりたくねえんだよ!」
「ネコなのに? 相性良いタチの俺がいるのに? 気持ちいいのに? セックスの何が嫌なの?」
「気持ちよくなんか、なりたくもないしならなくていい。あんたみたいにエロいことばっか考えてる奴とは違うんだよ!」
「じゃあ意思を尊重したら嫌じゃない?」
「……っ、」
 そこまでまだ整理できてない、セックス自体が嫌かどうかなんてちゃんと同意した上でやってみないとわからない。だからと言って試しにやってみます、と言えるほど軽い行為でもない。
「ちゃんとサスケの意思を確認して、もしくはサスケからして欲しいと言われなければ手を出さない。だから他の男でなく俺をパートナーにしてよ。」
 カカシがこの約束でおとなしくするのならそれはメリットじゃないだろうか。やりたいって言われても断ればいいだけだ。しかし何でカカシはこうも俺との関係を繋ぎ止めようとするのだろうか。
「……本当に、無理矢理しないと約束するか。」
「したいときはちゃんとサスケもその気にさせてからするよ。約束する。」
「それどういう意味だよ」
「今、試してみる?」
 カカシが視線を上げてサスケを見る。
 ベッドに右腕をついて、膝立ちになり、サスケの唇に自分のそれを合わせる。
 チュ、チュ、とついばむようなキス、そして、舌を差し込み、サスケの舌に絡めとっては離れ、また口づけでは舌を絡める。
 気がつくと、サスケの上半身はベッドに沈んでいた。その間も、繰り返される甘いキス。
 名残惜しそうに離れていく唇、サスケの顔は真っ赤に染まっていて、股間もしっかり勃ち上がっている。
 はぁっと熱い吐息を漏らすと、スラックスの上からカカシがサスケの股間をさすった。
 サスケの身体がピクンと跳ねる。
「……したい? ……やっぱり嫌?」
 したい、と答えたときに、どれだけ気持ちいいことが待っているかこの身体は知っている。
 でもそれじゃあ、カカシの思う壺だ。
「……い、やだ……、さわんなっ……」
 サスケがカカシの手を股間から退ける。
 カカシはサスケの耳元で
「触んなきゃいい……?」
 と囁き、耳たぶを口に含んだ。
 ちゅぷ、くちゅ、と音を立てながら啄み、耳の穴に舌を差し込む。
「……っん……」
 チュ、チュ、と音を立てながら耳から下にキスが降りていき、サスケの首をれろぉっと舐めると、びく、とサスケの身体が震えた。
「……したい? ………嫌?」
 低いトーンで言われると身体の芯が震える。
 カカシはまたクチュ、と首筋を舐めた。
「っぁ、した……い……っ」
 蚊の鳴くような小さな声はしっかりカカシの耳に届いていた。カカシは満足気に身体を起こす。
「じゃ、ここまでね」
「………?」
 ぼやっとした頭のまま、カカシの言っていることがうまく理解できない。
「約束、したでしょ?」
「……あ、」
 改札でした、今日は何もしないという約束。
 ……じゃあ、このほてった身体はどうすればいい?
「試してみたところで、もう一回約束。したいときはちゃんとサスケもその気にさせてからする。無理矢理はしない。ね。これでいい?」
 キスだけで押し切られた訳じゃない。本当にその気にさせられた。そしてそれは嫌じゃなかった。思わずこくりと頷く。
 カカシはにこっと笑顔を作ると、お互いの股間を見て、「これ、どうしよっか」と笑った。

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