運命なんて

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創設期,成人向,中編,現代パロ,完結済みモブ,エロ,シリアス,自慰

セックスフレンド

 俺の股間を鷲掴みにした手はそのままベルトを外してチャックを下ろしていく。機嫌が良さそうな顔でその作業をする柱間を見下ろしながら、どう抵抗したらこの場から逃げられるか脳が急回転する。
 力では敵わない、叫ぶにしても周辺に人はいなかった、であればスマホの緊急通報、……男同士でも来てくれるのだろうか。ましてや昨日セックスをしている間柄で。誰かに電話……誰に。こいつの上司……だが名刺を出して確認する隙はあるのか。そもそもゼネコンだ、大手の。握りつぶそうとする可能性もある。
 考えているうちにそれを取り出して柱間はまた口に入れる。這う舌はやはり的確に良いところばかりを刺激して少しずつそれが芯を持ち始める。
 逃げるのも助けを呼ぶのも現実的じゃない、なら最小限に食い止める。つまり本番まではやらせない。
「……、は……」
 柱間の頭が動く度に気持ちよさが頭を占めていく。込み上げる射精感に柱間の頭を掴んで離そうとしたがやはりこの男、簡単には動かせない。
 くそ、また口で。……相手が柱間でなければ素直に没頭できるのにこいつの頭がおかしいせいで……!
「……っく、出る……っ」
 ぢゅっと強く吸われながら亀頭を刺激された瞬間、びく、と下腹部が緊張してびゅる、びゅる、とまた柱間の口の中に吐き出した。
 呼吸を整えながら、柱間のズボンに手をかけて勃起したそれを口に含む。この口は絶対に離さない、こいつが出すまで絶対に。出してしまえば萎えて挿入なんかできなくなるはずだ。
「ああ……マダラ、嬉しいぞ。お前からしてくれるなんて……。」
 勝手に言ってろ。
 口に入りきらない根元から側面裏側を丁寧に舐めて唾液をつけ先端を口で刺激しながら手で根元まで扱いていく。手と口両方同時にやってすぐに出さない奴なんてそうそういないだろ。ましてやこいつは俺が好きなんだから。
 ただこのチンコだけ見れば魅惑的だった。大きいし硬くて熱い、造形すら美しい。相手が柱間でなければこのチンコを挿れられると想像するだけで気持ちが高鳴る。柱間でさえなければ。
 案の定途中で止めさせようと柱間が俺の頭を掴んだが俺は絶対にフェラチオでイカせると頑としてその力に抵抗し続けた。
「っマダラ、もういい……、だめだ、で、……っ!」
 喉の奥に押し込まれたその先端から生暖かいドロリとした物が勢いよく飛び込んでくる。……俺の勝ちだ、ざまぁみろ。
 全部出たのを確認して、手洗い場で吐き出して水で口をゆすいだ。
 前が空いている自分のそれをズボンにしまってベルトを締めようとした手首を柱間が掴む。
「……終わりのつもりか……?」
 柱間のそこは確かにくたっとしている。だがこの柱間の顔は何だ。全然萎えていないどころか興奮で頬を染めている。
「お互い出すもん出しただろう、終わりだ。」
「……そういうことか。」
 掴まれた手首をそのまま引かれて前から抱きしめられる。いつの間にどこから出したのか背後でローションの蓋が開く音がする。それをどこかに放って前のボタンは再び外されてスラックスがストンと床に落ちた。ずり下げられた下着、割れ目をそいながらぬらぬらとした指がそこをぐにぐにと押す。期待してはいけないのに身体が期待している。昨日散々指でなぶられた感覚が蘇り、挿れるなら早く挿れてくれとすら思ってしまう。相手は柱間なのに。
 ぬぷ、と少しの抵抗で入ってきた指はやっぱりそこを刺激し始める。昨日散々やられたからなのか今日は最初から気持ちいいばかりで漏れそうになる声を懸命に堪える。その息遣いを柱間の耳のすぐ横でしていることにも無自覚だった。
「はぁっ……、っ、……く、」
 指の動きが激しくなっていく。胸を押してもびくともしない。引き寄せられた腰に熱くて硬い物が当たっていた。……くそ、柱間でなければ欲しいと言えるのに……!
 俺のそれに硬くて熱い物が擦り付けられる。これが今から入るんだとでも言いたげに。俺はそんなの認めない、そう思いたいのに中の刺激で身体はそれを待ち望んでいる矛盾で頭がおかしくなりそうになる。
 指を抜かれて後ろを向かされて背後から抱きしめられ、それが尻の割れ目に擦り付けられる。柱間でなければ、という思いはもはや頭の外れまで飛んでいき早く挿れてくれとばかりに尻を突き出した。腰を掴まれて孔にその愛しい硬い塊が押しつけられる。入る瞬間の抵抗だけでそれはぐにゅる、と中に入ってきた。
「っぁ、あ……!」
「しー……、あまり声を出すな。」
 耳にかかる吐息と低い囁きに身体が震える。動き始めた腰は相変わらず良いところを抉りながら奥へぐっと押し込まれる。なぞられながら奥に届くのも抜けていく感覚も全てが気持ちよくて出そうになる声を必死で堪えた。
「んっ、く、はぁっ、っぁ、っ!」
「夜は声をたくさん出してくれ……良いな?」
 よくわからないまま頷いていた。奥を突かれる度に目がチカチカするようなじんとする快感が脳を塗りつぶしていく。
「名残惜しいが今はここまでだ、出すぞ……!」
 早くなった抽送に合わせて自分も腰を動かしていた。もっと奥にそれが当たるように、もっと深く入るように。その際奥でそれは止まって、温かい物がじわっと広がる。その瞬間、ビクビクと身体が震えた。
「っは、……はぁっ、……は……」
 中で感じる愛おしい熱さにうっとりしながら、後ろから抱きしめられてまたそれがぐっと奥に入る。
「……っ!」
 身体が熱い……心が満ち足りている……ずっと欲しかった物…………いや、待て、……こいつは柱間だ。
 頭がスッと冷静さを取り戻していく。
 腕時計を見た。45分。ここまでどのくらい歩いた。
「……おい離せ、仕事に」
「なんぞ、最中は可愛いのに終わった途端それか……?」
「現実的な話をしているんだ、しかもてめえ……中に……!」
「……マダラが悪いんぞ、お前はオレを正気でなくさせるのに長けている。」
「人のせいにするな……!」
 抱きしめる腕を振り解いて、トイレットペーパーを尻に挟んで下着とズボンを上げる。MAPアプリで現場までの徒歩時間を確認してからベルトを締めて鍵を開けて多目的トイレの外に出た。――間に合う。
 足早に戻っていく俺の後ろ姿に柱間が何か呟いたが、無視して仕事場に急いだ。
 
 整理のつかない頭はとりあえず脳の隅に追いやって仕事の続きに取り掛かる。下段の骨組みは目処がついているが展示室にあたる部分、ここはいかにして景色を見せつつ強度も保ちつつ工事でも安全に組んでいけるか、案を出し合ってはパースを作り、改善点が見つかってはまた構造計算を繰り返していた。
 あっという間に定時になって、家庭がある人は先に立ち去っていく。この部分だけきりをつけたい、と俺はひとり残ってパソコンの画面を睨んでいた。その肩にまた誰かの手が乗る。知った事かと無視してパソコンに向かい合っていると、その手は邪魔をするわけでもなくどうやら一緒にパソコン画面を見ているらしかった。
 非常識なのか常識があるのかよくわからん奴だな……そういえば夕食がどうとか。……仕事が終わるのを待ってんのか。……なら徹夜でもしてやるか、やる事なら山ほどある。
 2時間ほど経っただろうか、ようやくパースのドラフトが出来て印刷する。パソコンは便利だが紙に印刷してみて初めて気付くことも多い。だから基本的には図面もパースも全て一旦印刷してチェックを入れる。周りの景色もまだ何も入れていないタワーの展示台の構造。今はアクリルも随分頑丈で且つ透明になったから良い時代だ。A3に印刷したそれを端から端までしっかり見て大きな問題点はなさそうだとシュレッダー行きの箱に放る。肩に置いていた手はその放った紙をつまんで拾い上げてしげしげと見ていた。
 次に移ろうとしたところでその紙を眼前に出される。
「構造体としては円を意識しておるようだがここだけ角があるのが気にかかる。これは意図してこうしたのか?」
 指で示された箇所を見ると確かにここだけ角があって浮いているように見えるが、別の建築士が担当した部分で意図はわからない。
「確かに丸いに越した事はないな。」
 他人が造った部分だが素材と厚みと構造を引き直してみる。円形でも作れそうだ。周辺の構造と合わせて図面を作り直す。図面ができたらパースを。
「うむ、こちらの方が良いな。」
「形はこっちの方が美しい。……だが俺の一存で決められる話でもない。明日提案する。」
「お、やっと仕事が終わるか?」
 浮ついたその声色に、仕方なく徹夜はやめることにした。
「言っておくが、飯食うだけだぞ。」

 頭の隅に追いやっていた記憶が蘇り、文句を言うべきなのかどう接したら良いのかわからないままごぼうチップスを口に入れる。
 食事処はもうチェーン店しかやっておらず、やむなく居酒屋に入っていた。
 セフレも友のうち、のようなことを言っていた。本当に恋愛感情がなくとも全く構わないというのならそれもありなのか?と考える。しかし柱間の言うことを100%信用はできない。勝手に財布除くような奴だし、いざとなれば手段を選ばないようなことも言っていた。
 穏便に済ませるにはそこそこの関係をそこそこの距離で保つのが一番安全だ。
「運命とか一目惚れとかは落ち着いたのかよ。本当にお前友人になれるのか?」
「離れるくらいならその方が良いに決まっておろう。」
「お前の気持ちはどうするんだよ。」
「いいんだ、それはもう。マダラは気にしなくていい。」
 ぽりぽりとごぼうチップスを食べながらじぃっと柱間の様子を観察しているが、本当に好きだの愛だのを表に出すのは辞めたらしい。あの日のような目はしていない。
 しかし本当にただのセフレでいいのか、こいつ。またやりながら好きだとか愛してるとか言うんじゃないのか。
 自分の意識が柱間の存在を容認する方に傾いている自覚はあった。昨日もそうだが今日の昼も柱間とのセックスは気持ちいい。そしてそのセックスで空虚が満たされる。それは事実だ。ただ俺には柱間への思い入れは全くないだけで、柱間がそれでも構わないと言うのならその関係でもいいような気がしていた。
 ただしこいつの執着が異常である事は忘れずにいなければならない。いつか何かをしでかす。その時に被害を最小限にするためのルールを決めていた。ひとつ、家には絶対に上げない。ひとつ、柱間の家にも行かない。ひとつ、柱間が少しでも好意を見せたら拒絶する。
 それでも構わないと言われたらそれまでだ。付き合ってやるしかない。それが妥協点だった。
 しかし友人すらいたことがなかったのにセフレとは、どういう付き合いなんだ? 友人でセックスもする、ただそれだけか? ……なんだか恋人とそう変わらないような気がするが、柱間が「いい」と言う限りは柱間がどう思っていようが俺は感知しなくても良いらしかった。
「だが言っておくが、今夜はやらねえぞ。夜も遅い。」
「その分昼に楽しんだろう、今日はゆっくり寝てくれ。マダラがあんなに仕事をしているとは思わなくてな。」
 “今日は"という言い方が引っかかったが、もう今日は本当に飯だけで終わりらしくほっとする。
「……もうひとつついでに言うが、もうトイレではやめろ。」
「……そうか、ホテルの方が良いか! オレも同感だ、明日はホテルにするか!」
「……明日ってなんだ。やらんぞ。」
「ん? やりたくないのか?」
 やりたいかやりたくないかで言えば……やりたいが、そんな毎日盛ってるほど暇じゃない。
「やらねえよ、お前は毎日やらんと気が済まんのか?」
「勿論だ!」
 ……まあ、曲がりなりにも俺のことを好きならばそうだろうが。
「だが断る。明日は金曜だしのんびりさせてくれ。」
 柱間は分かりやすく気を落として暗い顔になった。
「マダラはオレが嫌いなのか……?」
「逆に聞くがお前俺に好かれるようなこと何かしたか?」
「それはもうセックスでマダラをじゅう〜ぶんによがらせて満足させた!」
「……聞いた俺が悪かった。」
 セックスは確かに俺たちを繋いでいるが、それを好かれるようなことと考える柱間は、やはりどこかズレている。深入りしないのがお互いのためだろう。例えセフレであろうと。
「お前に常識が足りんのはわかったから節度くらいは覚えてくれ……。」
「わかった、せつどだな? あとでネットで検索しておこう。」
 頭を抱えたくなるのをどうにか堪えて店員に向けて右手を上げた。
「生中ひとつ。」
「あー俺も……焼酎ロック。」

 柱間が変なことさえ言い出さなければ、少なくとも多分セックスは上手いし、気持ちいいし、セフレという関係だったら続けても良いかもしれない、と思っていた。何よりセックスでずっと空虚だったこころが満たされる。
 他の男を探すにも多分柱間が邪魔をしてくるだろうし、他の男なんて見つからない気がする。散々ハッテンバに通い続けて誰とも経験することがなかったのが良い証拠だ。俺は男から見てそういう魅力がないという事だ。
 運命はさておき柱間は空虚を満たしてくれる。セックスも気持ちいい。それなら利用するだけ利用した方が建設的なはずだ。おかしなことをし始めたら関係をやめてしまえばいい。