運命なんて

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創設期,成人向,中編,現代パロ,完結済みモブ,エロ,シリアス,自慰

求め合う

 次の日の定時、柱間がひょっこり顔を出した。
「うちはさん、ちょっと良いですか?」
 胸元に輝く社章を見て、他のメンバーは黙った。何しろこの仕事のクライエントのクライエントのクライエント、まあつまり逆らえない立場の会社の人間が俺を名指しで呼び出したのだから何かあったのではと考えるのが普通だろう。
 黙って立ち上がり柱間の方へ行くとこそっと耳打ちされる。
「今日も夜遅いのか?」
 一応周りの目もある。
「今日は定時上がりです。金曜ですし家に直行しますよ。」
 それを聞いて柱間はまたしょんぼりと分かりやすく落ち込む。
「昨日言った通りです。用件はそれだけですか?」
「……それだけだ。しかし定時後寝るまで何をして過ごすのだ。」
「プライベートと仕事は切り離してますので。」
「つまらんのう……。」
「そういう事は今後LINEにして下さい。これ、QRコード。」
 柱間は慌ててスマホを取り出して俺のスマホの画面に自分のスマホをかざした。
「もういいですね?」
「ああっ! では、また!」
 今度は露骨に喜びながら立ち去った。
 ……犬か何かなのか?
 仕事場に戻ると一斉に詰められた。何かやらかしたのか、何かあったのか、何の用事か。
 あー……めんどくせえ。
「大した事じゃなかったので。今日はもう失礼します。」
 振動し続けるスマホが気になりながら軽く頭を下げて帰路に着く……前にスマホを見た。LINEの通知がこれでもかと届いていてホラーを感じる。未読マークがついたトークルームを開くとこんな調子だ。
「俺だ」
「あ、柱間だ!」
「なあマダラ」
「友人なんだから」
「ほれ、その」
「遊ばんか、今夜!」
「約束は守るぞ」
「遊ぶといっても」
「ほら」
「ダーツとか」
「そういうやつだ!」
「マダラは」
「何ぞ」
「趣味とか」
「そういうのは」
「ないのか?」
「教えてくれ!」
 国語から教える必要があるのかこいつは。毎日こんな調子では鬱陶しいにも程がある。LINEを交換したのは失敗だったか? ……いや直接来られても困る。
 趣味……これといってないな。筋トレぐらいか。あとは読書? ともかく誰かと一緒に楽しむようなものではない。友人自体いなかったわけでいきなり遊ぼうと言われても。
『趣味は筋トレと読書、遊びには興味ない。あとひとつの文章にしてから送信ボタンを押せ。』
 全く……。スマホを鞄に放り込んで電車に乗った。いつも乗り換えていた新宿行きの電車をちらと見てそのまま吊り革を握る。鞄からスマホが振動する音がひっきりなしに鳴っている。……やっぱり教えるんじゃなかった。
 
 家の最寄駅に着いてスマホを見た。LINEの通知の嵐。要約するとオレのことをもっと知りたいから一緒に映画でも見ないか、というだけの事を36回に分けて送信されていた。こいつアホなのか。
 しかし映画を見るとなると互いのどちらかの家だろう、却下だ。
『今日はゆっくり休む日だと決めている。明日なら考えておく。』
 送信ボタンをタップしてまた鞄に放り込んだ。
 今日は待ち伏せされていないだろうな、とオートロックで開いた扉が閉まるまで見守って家に入る。柱間に振り回されてばかりだったから落ち着いて読書でもしたかった。ソファに背中を預けて後で読もうと山になっている本の一番上を手に取るとまたスマホが振動している。
 通話……?
 画面を見ると柱間からの通話だった。
 スピーカーにしてソファの横に置く。
『マダラか? 今何してる? もう帰ったか?』
「帰って本を読んでいる。邪魔するな。」
『つれないぞ! 遊ばないかと言ったのに』
「お前はどこで何をしているんだ。」
『返事が来んから家に帰った……オレはマダラと映画見たかったぞ……』
「明日付き合ってやるから一本選んでおけ」
『一本だけか? 明日は一日中映画見ようぞ!』
「一本だけだ。どこで見るつもりだ。』
『カラオケのな、シアタールームにしようと思ってな!』
「どんな映画を?」
『仮面ライダーぞ!』
「……冗談はいい、どんな映画だ。」
『案外奥深いんぞ、仮面ライダーは』
「知るか、んなもん見ねえよ」
『むう……仮面ライダーはダメか……』
「逆にいい年した大人がなぜ仮面ライダーなんだ。」
『いい年してから見るからこそ響くものがあってだな』
「せめて洋画とかにしろ」
『むぅ、字幕派か? 吹替派か?』
「字幕だな」
『よし、スパイダーマンだな!』
「お前……頭ん中ガキなのか?」
『む、スパイダーマンは面白いぞ!』
「もっとないのか、普通の、映画は。」
『パワーパフガールズと言わんかっただけマシだと思ってくれ』
「話にならん、映画はなしだ。」
『なら明日はセックスしてくれるか?』
 急に胸がドキッとした。……なんだ?
「ホテルなら」
『俺は今からでもマダラの家に行きたいぐらいだぞ』
「迷惑だから来るな」
『お前の声を聞きながらずっと触っている』
 何を、と言おうとしてやめた。……まさか、シコってんのか。
「お前の性欲は底知らずだな」
 この声を聞きながらずっと?
 だから通話にしたのか?
『ただの性欲ではない、マダラだからだ』
 心なしかスピーカーから聞こえる音に吐息が混じっている気がする。
「ただのセフレなんだろう。一線越えるつもりならもう」
『マダラは今までの誰よりも相性が良い……』
「どんだけ経験してんだよ」
『わからん……が、マダラの代わりをずっと探しておった。』
「その話は聞かん。」
『悪い、もっと声を聴かせてくれんか……?』
 股間がむずむずする。触ると少し芯があった。
「スマホは今どこに置いてある。」
『ベッドの横の机だ』
「それ、口元に持って来い」
『いや、それは……どういう意味だ?』
「良いから早くしろ」
 カタン、とスピーカーから音がする。はぁっ、はぁっ、と落ち着かない息が聞こえ始めた。
『……持ってきたぞ、それで何を?』
「今どうやって触ってるんだ」
『普通に……オナニーと変わらん。竿を扱いてカリまで手を……』
 おもむろに自分のそれを出した。落ち着かない息遣いに興奮したのかさっきよりも勃っている。それを手で握って同じように上下に扱く。
『マダラ? 声を聴かせてくれ』
「どのくらいの間そうしていた?」
『通話を始める少し前からだ……っ』
「ならもうガチガチに勃ってるんだろうな。」
『おあずけを食らったからの……惨めだと思っただろう』
「俺が今何をしているか教えてやろうか。」
『ん……? 読書じゃないのか』
「お前と同じ事をしている。言え、今どう思った。」
 手の中のそれはどんどん固くなっていく。
『おなじ、マダラが? どう思った、って、そんなの』
 置いていたスマホを口元に近づける。
「……言えよ、早く」
『マダラに……挿れたい』
 吐息混じりのその言葉にゾクゾクする。先走りが出始めてそれをくるくると亀頭に擦り付けた。
「……ああ、お前に挿れられたい。尻がむずむずする。前はもうカウパーが出てぬるぬるしている。」
『オレもっ、マダラのその言葉だけで……っ』
「もうイキそうか? ……イク時の声聞かせろよ。」
『待ってくれ、本当に……っ、マダラ』
 手の動きを早めていく。少しずつ上り詰めていく感覚。
「は……俺もイキそうだ……聞いてるか柱間」
『そん、はぁっ、い、いくっ、いく、いっ……!』
「……っは、……はぁっ、柱間……っ?」
『っはぁ、お前こんな、ことして……襲いに行くぞ?』
「イッたのか? 聞かせろよ。俺もお前の声でイッた」
『……ああ、イッた……マダラが欲しい……なあ今から』
「やんねーよ、明日まで我慢してろ。」
『マダラだって欲しいだろう、オレのが』
「ああ、欲しいが明日に取っておく。」
『……酷いことをするものだ』
「先にシコってたのはお前だろ」
『マダラ』
「……何だよ」
『明日は映画はなしだ、良いな?』
 下腹部が、ずくずくと疼く。
「スパイダーマンよりそっちの方がいいな。」
『確かに聞いたぞ……あと口元にスマホ持っていくのはやめてくれ、またムラついてくる。』
「ああ、そいつは悪かったな。」
 手に持っていたスマホをソファに置いた。股間は白濁液で汚れている。馬鹿なことをしたもんだ。
『……明日また連絡する』
「おう、おやすみ」
 通話が切れて、汚れた服を見て、苦笑する。オナニーボイスそのものは聞いたことがある。が、今まさにしている声を聞くというのは想像以上に煽られる。今日は読書と決めていたのに、柱間のそれを想像するだけでオレもまた変な気分になりそうだった。というか、なった。
 テレフォンエッチ、というのは聞いたことがあったが、声だけでセックスをした気分になるというのが不思議だった。でも今なら理解できる。大人の玩具が手元にあればしていたかもしれない。
 俺はそんなにも性に飢えていただろうか、それとも 柱間によって抑圧されていた欲望が開花したのだろうか。
 ……起きているとまた変なことを考えてしまいそうだ。今日はもう休もう。

 朝、振動するスマホの音で目が覚めた。
 画面を見なくてもわかる、柱間だろう。
 朝の7時から一体何なんだ。
 47件のメッセージを要約するとこうだ。
『すぐにでもホテルに行きたい、待ち合わせ場所は新宿駅で構わないか? 何時に着くかわかったら教えてくれ。昨日の分しっかり返すから覚悟しておけ。待っている。』
 ……盛ってるな……。俺も人のことは言えないが。しかしこの文面、セフレというよりも……まあ、会ってみればわかるだろう。
 昨日の夜の通話で、柱間は俺の代わりを探してやりまくっていたような事を言っていた。妙に慣れていて上手いのはその成果か。
 あいつの中で修学旅行での出会いはずっと地続きだった。ずっと探していた。だから運命という言葉が出た。それだけの執着を持ちながら、柱間はセフレという関係で本当に満足できるのだろうか。
 
 Tシャツにジーンズ、ラフな格好で後ろのポケットに財布を突っ込む。出かける支度をして駅に向かいながら、新宿駅に着く時間を柱間に伝える。
 9時ごろには着くだろうか。しかしセックスは久しぶりな気がする。気がするだけで、何日も空いているわけじゃない。でも柱間が欲しい。はじめての相手だからなのか、誰でも良いではなく柱間が欲しい。自分がここまで性欲旺盛になるとは思ってもみなかった。
 改札口の前にいた柱間は、俺を見つけるといつもの笑顔ではなく、妙に真面目な顔で手を掴んだ。
「そんなに引っ張らなくても着いて行く」
「オレは一刻も早く繋がりたいんぞ。」
 いつか通った道は朝と夜とではまるで印象が違う。その道を手を引かれながら早足で歩く。辿り着いたホテルで部屋を取りエレベーターに乗ると、柱間がキスをしようと近づけた顔を手で制す。
「あ……、悪い、口はだめだったな……。」
 そわそわと落ち着かない柱間はエレベーターの扉が開くとまた早足で部屋に向かう。
「シャワーはもう浴びてきた、マダラは?」
「俺もシャワーは済ませてある。」
 ガチャ、と開いた室内は大きいベッドとテレビ、最初とそう変わらない。違うのは入った瞬間に柱間が俺の首に舌を這わせながらジーンズを脱がしにかかっている事。オレも柱間のズボンのボタンを外して下着の上からそれをさすった。もうガチガチに勃っているそれに唾を飲み込み、同じように下半身に触れた柱間はすっと膝を曲げてそれを口に含んだ。
「ちょ、待っ、……っ!」
 最初は優しかったが今は違う。これは俺のものだと言わんばかりに舌をそわせて深く咥え込む。
 思わず扉にもたれかかって柱間の口の中を感じながら俺は呆気なくイッた。
 はぁ、はぁ、と息を乱しながら柱間のそれを咥えながらズボンを脱がす。愛しい形、愛しい硬さ、愛しい熱さ、舐めながら手で扱き先から出ているしょっぱいものを舌で舐め広げて深く咥えて頭を動かす。肩を押されて服を完全に脱ぎ去ってベッドにもつれ込んだ。
 お互いに荒い呼吸、思わず唇を許しそうになるのを堪えて後ろに入ってくる指に身体を震わせて熱い息を吐いた。しつこい愛撫ではなく挿れるための慣らしだと指の動きでわかる。
 求められている。
 それを全身で感じて身も心も震えた。こんなにも激しい感情をぶつけられたことなど一度もない。その顔はただひとつオレを抱きたいとだけしか言っていない。
 指が抜けて熱いそれが当てられた時俺は今から始まる柱間とのセックスへの期待で胸がいっぱいだった。
 ゆっくりと入ってきたかと思ったら奥まで一気に貫かれて声にならない声が出る。優しさなどどこにもない、ただ繋がりたい、挿れたい、俺の中に、そしてぐちゃぐちゃにかき乱したい、そんな顔で見つめられ続けて俺の頭も馬鹿になった。
「こうしたかった……やっと繋がれた……」
「……今日は、お前のしたいようにしろよ」
 柱間の顔が変わった。