異種属性愛はダメですか
希少種
木の葉隠れの里。
そこはいろんな種族が忍として暮らす隠れ里。
アカデミーを卒業したばかりのルーキーは、忍としての資質がきちんと備わっているかどうかを試す試験が行われる。
その中で花丸をつけたことがないカカシが唯一花丸の評価を下したのは、ネコの中でも血統書付きの、かつ希少種となってしまった少年、サスケだった。
群れで生活する習性がないはずのネコのサスケが、異種族であるキツネのナルトに率先して弁当を分け与えた姿は、イヌのカカシのこころを鷲掴みにした。
ネコは言葉でコミュニケーションを取る動物だ。でもサスケは希少種という優越性からか、それとも忍としての優秀さからなのか、合格を出していざ任務に行くことになっても、仲間と演習をしていても、口数は少なかった。
お弁当も煮干しをもぐもぐと食べているだけで弁当というよりは携行食のように見える。まあ、いずれは長期任務もやるだろうからそのときのための訓練……かもしれない。
しかし成長期でもあるわけで、家ではどんな食生活なのかが気になって、ある日の夕方サスケの家を訪問してみた。
鍵の開いていた扉を開けると、鍋の前でお玉を持っているサスケと目が合う。
「や、サスケ。急にごめんね。生活指導のために家庭訪問をしなくちゃいけなくてさ。」
少し驚いた様子だったが、その説明で納得したらしい。
「適当に上がってくれ。仕込みが終わったら話を聞く。」
そう言って、鍋にお玉を入れてゆっくりかきまぜる。
カカシは適当に床に座ってその様子を観察した。
臭いからして赤身の魚……醤油、味醂……煮物かな。猫舌なのに煮物食べるなんて、ちょっと意外。
鍋に蓋をしたサスケがカカシのもとに歩み寄る。仕込みとやらは終わったらしい。
「それで、生活指導というのはなんだ?」
「いつもお昼、煮干しでしょ。家ではちゃんとした食事とってるのかな、とか。あとは睡眠時間はしっかり取れてるのかな、とか。」
サスケは机の上にあるお徳用煮干しパックの袋に目をやった後、カカシを見上げる。
「煮干しは案外栄養価が高い。家ではきちんと野菜も食べてる。なんなら冷蔵庫の中、見てもいいぜ。」
サスケは変な嘘をつくような子じゃない。冷蔵庫を確認するまでもなかった。
「いや、サスケの言葉を信用してるから、見る必要はないよ。ところで今作ってたのは、煮物?」
「明日の朝飯用だ。作ってすぐは……わかるだろ、食べられないから。次に食べる分を作ってから、昨日作っておいた料理を食べてる。……ところで。」
サスケがカカシの顔に向けていた視線を落とす。
「あんたなんで喜んでるんだ?」
パタ、パタ、と大きく横に揺れる尻尾。それはイヌが喜んでいる……ないし、とてもいい気分の証だ。
忍ではあるが獣でもあるから往々にしてこのように思考を読まれてしまうことがままある。生理現象で勝手に動くのだから仕方がない。
ネコもまた尻尾で喜怒哀楽を表現するタイプだから、サスケは嘘をつくような子じゃない、というのはそういう身体的な機微も含めての話だ。
「あー、いや、ルーキーの担当になったことがないから、ちょっと舞い上がってる部分はあると思う。はじめての家庭訪問だし、サスケの私生活を知ることができるのも嬉しいし。」
嘘をつけない、というのはときに不便で、ときに便利なものだ。パタパタと揺れる尻尾を見ながら、サスケはふぅん……と尻尾を見つめる。
「俺のことはいいから、サスケのこと聞かせてよ。なんか困ってることとか、ない?」
カカシは優秀なサスケのことだから問題ない、で終わりそうだなと思ったら、予想外の答えが返ってきた。
「最近なんだか妙で…… 食欲が落ちた、と思ったらそわそわして大きな声を上げたくなったり、気持ちも身体も落ち着かない。一体なんだろう、と。」
それは内容としてはよくある相談だった。ただし、メスネコからの、だ。オスのサスケがそんな現象に見舞われるなんて何かがおかしい。
「念のため確認だけど、サスケはオス……だよな。」
サスケは明らかに不機嫌な顔で尻尾を横に振る。
「俺は真面目な相談をしているんだぞ。」
茶化された、と感じさせてしまったようだ。とはいえ、その症状、オスのサスケがなるなんて妙だ。別の病気が潜んでいるかもしれない。
「いやね、メスだったらサスケくらいの年になるとサカリの時期がきて、サスケと同じような状態になるんだけど……。サスケがオスなのにそうなる、ってのは原因がわからないから、ちょっと一度一緒に医者に診てもらおう。その方が安心だ。」
「サカリに似てる……のか。……気になるな。わかった。」
身体のことはその道のプロに聞くのが一番だ。さっそく医者に電話したら、サスケの家の家系図とアカデミー時代の発育調査も一緒に持ってくるように指示された。発育調査はともかく、家系図はなんの関係があるんだろう。希少種だから?
よくわからないまま受診の日を迎えて、サスケと一緒に木の葉病院の診察室に入った。
まずは身体測定やら体力測定やら、服を脱ぐらしくサスケはカーテンで仕切られた向こう側に行き、カカシは終わるのを待った。
しばらく経って、ひと通り検査が終わって持ってきた資料に目を通す先生の様子を見守るカカシとサスケ。
「……血統書付きということは、その純血を守ってきたという意味で、さらに希少種……となると二親等以内での繁殖も行われてきた可能性が高いと踏み家系図を確認しましたが……。」
ということは、サスケの父親と母親の血が近かった可能性が?
カカシの中でひとつの仮説が浮かぶ。しかし、そんなことあり得るのだろうか。先生の話に聞き入る。
「直接の父母は……一応は問題ない。ただ祖父母の代が……母方の祖母は兄弟にあたる人物と、父方の祖父は親子にあたる人物と子を成していて、そこが根本の原因でしょう……。」
サスケはそれのどこがおかしいのかピンときていない顔だ。希少種の中で育てば、兄弟や親子で子を作るのも当たり前だったのかもしれない。
「それで、俺の身体に何の異変があったんですか。」
医者は家系図から顔を上げてメガネをくいと上げた。
「ざっくりと言うと奇形です。雑種……いわゆる一般種と呼ばれる獣は様々なパターンの遺伝子を持っていることから、種族を超えた婚姻により生き残りやすい強い個体を後世に残していく。純血種の場合は逆で、限られたパターンの遺伝子しか持っていない事により、病気になりやすく寿命も短くなる傾向にある。サスケくんの場合はさらに進んで、持っている遺伝子のパターンが少なすぎるが故に奇形が発現してしまった。」
カカシが先生に尋ねる。
「それはどんな奇形、なんですか?」
理屈は仮説通りだった。そのあとが重要だ。
「サスケくんには……卵巣があります。そして今出ている症状は、メスのサカリにあたるものです。」
サスケは医師の言葉が信じられないのか、それともショックだったのか、呆然としていた。
「症状を抑える薬の処方はできます。ただ……ネコのサカリは卵巣から卵子が出なければまた少ししてサカリが来てしまうので、忍として生きていくには対策が必要かと。」
薬で緩和……繁殖期に入ったら誰もが取る手段だ。でも医師の言うとおり抜本的な解決策にはならない抜本的な解決策にはならない。
カカシは身を乗り出して尋ねた。
「避妊……というか、その、卵巣を取り出す手術とかは出来ないんでしょうか?」
「画像検査を見た限り、通常のメスの卵巣とはやはり違う、本来子宮なんかとセットになっていて膣で外部と繋がっていますが、サスケくんの卵巣は大腸……S状結腸と繋がっていて……手術で取り除くにしても長期間の検査入院がまず必要になるのと、検査入院したとしても確実に綺麗に取り除けるのかは現時点では判断が難しいんです。」
カカシは椅子に座り直す。サスケは少し俯いた。
ルーキーの大切な時期に長期入院、しかもそれで解決するかどうかがわからないという厳しい現実に身体から力が抜ける。
中認試験までは少なくとも入院を待ちたい、しかしそれまでの期間は薬で凌ぎ続けるしかない。
「共生相談室で、一旦今後について相談してみてくださいます。入院を希望される場合はまた来ていただければと。」
病院の中にある共生相談室の予約をとって、家に帰るサスケに付き添った。
他のネコを見ると叫びたい衝動に駆られるらしく、胸元の服を掴んで我慢している様子だ。ネコのサカリは大きな声でオスを呼び寄せるのが特徴で、それをしてしまうとサカリになったオスに襲われかねない。
薬で緩和できるとはいえ、緩和することしかできない。家に着いて、サスケは部屋に上がると手を床に伸ばしてお尻を上げぐっと伸びをしてから座り直した。
部屋の中にはメスの発情期のフェロモンでいっぱいで、イヌのカカシでも影響を受けるほどだ。
「サスケ……これからどうする。」
サスケは俯きながら答える。
「本能が……オスを求めてるのが……よくわかる。叫びたい気持ちはもうはち切れそうで、この前カカシが来た時よりもずっと……。」
俺たちは忍だけど本能に従う事を推奨されている。その方がより野生に近い感覚を研ぎ澄ますことができるから。
だから発情期の緩和の薬も任務に出る日中の分しか処方されない。家に帰るとこうして、本能のままでいるしかない。
サスケがカカシの方まで寄ってきてその身体、主に首を俺に擦り付ける。これもネコの発情期の特徴。甘えたり身体を擦り付けてくる。その首から感じる匂いに、鼻がいいからだからだろうか、カカシは本能が揺さぶられるのを感じていた。
「こんな事するのはおかしいと思うのに自分が止められない……俺ずっとこのままでいなきゃいけないのか、カカシ俺どうしたら……。」
首と首を擦り付けてサスケはカカシに抱きついた。はじめてのサカリへの困惑はカカシにも覚えがある。自分を押さえ込むのに必死だった。幸いにもオス用の発情を発散させる商品は多く出回っていた。けれど上層部が異種間での交配を推進しているせいもあって、メス用にはそういったものはほとんどない。
「……サスケ、卵巣から卵子が出れば……サカリは終わるはずだ。イヌが相手でも構わないのなら……。」
「……何だっていい……これが終わるのなら……。」
カカシの言葉が何を意味しているのか、きっとサスケは正確に理解していない。今から交尾をするのだということも、ネコとイヌの交尾の違いも。
「ひぁ、あっ!あっ、ん、ぅっ!」
腰を打ちつけるたびに黒い尻尾がピンと立つ。ネコの交尾はごく短時間で終わる。それに対し、イヌは子宮口に先端が入るまで何度もグラインドして、中に入ったら姿勢を変えて何十分もの間そのまま子宮に精液を放ち定着させる。
サスケの場合は恐らくS状結腸に先端を入れられれば卵巣を刺激できるはず――だけどそのS字結腸までなかなか届かず、結果としては何度も何度も抜き差しを繰り返しながら少しずつ奥を探る動きになる。
幸いだったのはサスケが発情期で、それを苦には感じていなさそうなことだった。
「は、あっ!だ、だめきもち、いっ!あぁっ!それいじょ、っん!や、あっ!だめいく、い、っあ、ああっ!!」
カカシはギュウウっと締め付けられる感覚に思わず出そうになってしまうのを堪えながら、ビク、びく、と震えるのが治るのを待つ。少し待って落ち着いてから抽送を再開して、ぐぽ、とようやくそれらしい手応えを感じた。
「……サスケ、今からお前の中俺でいっぱいにするから……サスケも卵子出して。」
「そ、んなっ、わから……っ!」
カカシのそれは蓋をするように根元が膨らんでいて、中でしっかりと固定する。びゅくびゅくと中に出すたびにサスケは震えた。
後ろからだった姿勢を変えて、中はしっかりと固定したまま前からサスケを抱きしめる。
はぁ、はぁ、と息をしながら、奥に入っているのが気持ちいいのか時折声を漏らした。
30分以上そのまま黙って抱きしめ合って、そろそろかな、というところでぐっと抜く方に力を込める。ぐぱっと引っかかりから先端が抜けて、ゆっくり抜くと同時にそこから白い液体が溢れ出た。
サスケは呆然としたまま動かず、カカシはゆっくりと起き上がって汚れを拭き取っていく。
「……ちゃんと……出来ていれば、来年までサカリは来ないはずだから。大丈夫だと思う。」
フェロモンが残る室内、異種族の同性の教え子と交尾をしてしまった。それも本能のままに本気で種付けをしようと。
いや、これはサスケのためにも必要なことだったと、カカシは自分に言い聞かせるしかなかった。ちゃんと卵子が出ていれば一年の猶予は出来る。その間にある中認試験でサスケを中忍にしたら、またサカリが来る前に卵巣を切除するための入院をさせて、安心して生活ができるようにしてやればいい。
けれど現実はそんなに単純には物事は進まなかった。


