異種属性愛はダメですか

58,540文字約117分82 View

2026年7月27日カカサス,成人向,長編,ケモノパロ,原作軸,完結済み,小説獣人化,異種姦,エロ,オリジナル設定有,性癖強め

ネコの生き方

 サスケにとってその日起きた出来事は何もかもが記憶から消えない重大なことばかりだった。
 一族の中では確かに、血の近い者が結婚したり、婚外子を作ることも普通に容認されていた。一族みんなで子を育てる、そんな一族だったから。
 産まれてきた子の骨格が少し曲がってるだとか、この子は少し頭が弱い子みたいだ、とかいう話は確かに見聞きしたことがあって。それでもほとんどの者は優秀で気位が高かったから、サスケは気にしたこともなかった。
 今思えば、その子達もサスケと同じ、遺伝子に異常を持つ子どもだったのだ。
 その点に関心を寄せていたのはサスケの兄であるイタチただ一人だけだった。
 純血と引き換えに憐れな子を産み出してしまう今の一族は間違っていると。他のネコのように異なる遺伝子を取り入れて、健康で長生きできる「ふつうのこ」を産み育てる方がみんなが幸せになれるはずだと、イタチが父さんに訴えているのをサスケは一度だけ見たことがあった。
 父さんはそれを否定した。
 婚姻という習慣がないネコである我々が、愛情を持って子を産み育てている今の一族の在り方は間違っていないと。野蛮な他のネコの血が混じることでその絆が消えてしまう事はあってはならない事だと。
 結果として、一族の慣習に何らかの組織が介入したことで、あれだけ結束力のあった一族のほとんどの者が今やどこで暮らしているのかもわからない状態になった。
 その組織による介入がどんなものだったのかをサスケは詳しくは知らない。ただ、兄が姿を消す直前にサスケに語った言葉、「皆……繁殖の道具とされてしまった」という一言で、幼かったサスケも仲間がどんな扱いを受けているのかを悟った。
 子ども達だけが里に保護されて、でも他の子は皆どこかしらに遺伝子の異常があった。唯一サスケだけが正当な血筋の子孫として扱われて今までやってきた。
 けれどそのサスケもまた、遺伝子に異常を持っていた。それを知って、サスケはどこに行ったのかもわからない兄を思いながら、兄さんは正しかったんだ、という思いを強めた。

 カカシにサカリを止めてもらってから、あの衝動は嘘のようになくなってまた普通に暮らせるようになった。
 それをどんなふうに受け止めたらいいのか、サスケにはまだわからなかった。
 ある日の任務後、一緒に保護された子どもたちがいる施設に足を運んで全員元気にしているかな、と受付にいるフェレットに声をかけようとすると、彼女は表情を曇らせながらサスケに告げた。
「サスケ君の事も聞いたわ。今なら伝わると思ってこの言葉を使うけれど……脳に障害があった子が二週間前に亡くなったの。保護されたような子たちは皆きっと長生きは出来ない運命だから……サスケ君、あなたも身体に異常を感じたらすぐにお医者さまにかかりなさい。」
 そしていつものように遊戯室に通されて、駆け寄ってくる子どもたちに向けて手を広げながらサスケの胸中は複雑だった。
 俺にも異常があった。兄さんにも、もしかしたら。時々咳き込んでいた兄さん。ある日その手に真っ赤なものが見えて、覗こうとしたら兄さんはその手を握りしめて隠しながら俺の頭に手をのせた。
 俺は、俺たちは長生きすることができないかもしれない。
 尻尾の骨が折れ曲がって「く」の字になっている子の頭に手をのせる。あの日の兄さんのように。
「元気、だったか。俺はようやくアカデミー卒業して、忍になったよ。」
 保護された5人の中で、俺だけが普通にアカデミーに通っていた。施設にいる彼らにとって俺は英雄みたいに見られていた。
 でも、俺もみんなと同じだったんだ。
 そう言いたい気持ちを堪えて、残った3人の希望になれるように立派な忍にならなければいけないと思い直す。それが、希少種となってしまった俺が在るべき姿だと。

 サスケは少しだけ絵本を読み聞かせてから施設を後にした。この異常を抱えた身体はいつ次の異変を引き起こすかわからない。遺伝子に異常がある、というのはそういう事だ。
 すぐにでも精密検査を受けて全身くまなく他に異常がないか確認したかった。けど、そんな検査はお金もかかる。下忍の給料だと貯めても数ヶ月かかるし、検査のために何日休まなければいけないかもわからない。
 ……カカシに相談を、と考えたところで昨日の出来事が脳裏に蘇った。
 背を反らして高く上げた腰を掴まれ中に入れられた感覚、どんどん奥に、奥にと入って来ながら出入りを繰り返したそれに俺は、快感、を、感じて、あまつさえ射精までして、いちばん奥に入った瞬間は意識が飛びそうになって、熱いものが流れ込んでくる感覚、深く繋がりながら正面から抱きしめられ続けた数十分間。
 交尾を見たことがなかったわけじゃない。幼い日に、大人のメスが道端で大きな声で鳴きながら電柱に首を擦り付けていたと思ったら、どこからかオスがやって来てそのメスに後ろから覆い被さった。少しして、悲鳴のような声を上げたメス、その首に噛みついて逃がそうとしないオス。メスが抵抗してどこかへ逃げていったその後ろ姿は、スカートがたくし上げられ下着が下がったままで、オスの方に目をやるとズボンのチャックを上げていた。
 子どもながらにショッキングな光景だった。母さんにそのことを話したら、ネコはそうやって子作りをするのだと言われて、俺はあんなふうにメスをひどい目に遭わせるような交尾は絶対にしないと誓った。
 その俺が、メス側になってしまったのだと病院で聞かされた時は頭が真っ白になった。
 交尾をすればサカリは終わる、だけどあのメスのような目に遭うなんてごめんだ。
 それでもネコとしての本能は原始的な形で子を残そうと反応してしまう。すがる思いでカカシに擦り付いたのは覚えてる。でもカカシがした交尾は、ネコのそれとは全然違った。

 カカシなら、安心して身を委ねられる。
 カカシとなら、交尾しても構わない。
 カカシだったら、安心できる。

 サスケはカカシに対して全幅の信頼を寄せるようになった。何かにつけ話しかけて、触れて、そうできることを喜んだ。

 交尾をした日から、サスケがカカシを見る目が変わった。というより、反応全てが変わった。
 俺と話す時だけ尻尾がゆらゆらと揺れて、口を開く回数も、その距離も縮まった。
 サスケのその活動的な変化は喜ばしい反面、先日の交尾の影響でサスケに変な考えを持たせてしまってはいないか心配をしていたが、口を開く回数が増えたとはいえ深くまで足を踏み込むようなことはなく、適度な距離は保たれていることに安心して第七班の引率を続けた。
 サスケのためにも、早くこの3人を中忍にしてやらなければ。

 そんなある日、カカシはネコ特有のメスのサカリの鳴き声が聞こえるな、と思いながら帰路についていた。しかしその声は家に近づくにつれ大きくなっていく。そしてそれに呼応するようにオスの鳴き声も混じり始めた。
 ネコのオスはメスのサカリの声によってサカリが始まる。多分そのままもつれ込んで交尾に発展するんだろう。と思っていたら、聞き覚えのある声がオスを制しているのも聞こえ始めた。
 ……サスケ?
 声のする方へ足を向ける。
 サスケはメスを抱きしめながら、オスに向かって叫んでいた。
「そんな交尾して、本当に嬉しいのかよ!夫婦でないならこの人に関わるな!」
 メスの方に目を向けたら、サスケに縋り付きながら大粒の涙をこぼしている。オスは戸惑いながら、どうするべきか悩んでいる様子だった。
 思わずその間に入っていく。
「はいはい、そこまでにしよっか。」
 手をパン、パンと叩いて、オスの方には少しだけ殺気を込めた視線を向けた。
 後退り、どこかへ走っていくオスの背中を見届けて、メスの方にまた視線を向ける。
「ありが……わたし……っ、何度、も……っ」
 なんだか雲行きが良くないな。
 彼女の肩にベストをかけて、なるべく穏やかに話しかける。
「うち、近くなんで少しお茶でも飲みましょう。」

 話を聞いてみたら、彼女はサスケと同じ一族の女性だった。あの高潔な一族のひとりが、なぜサカリなのに夜の住宅街に?
 そんなカカシの疑問は彼女の口によって解消される。
 穏やかに一族の中で暮らしていたけれどある日、沢山の忍にほとんどの大人が連れて行かれた。
 その先は冷たい建物で、種族を超えたあらゆる動物と交尾をさせられ、メスは子を産み、オスは子種を蒔き、まるでどの種と交配したら優秀な個体が産まれるのか実験をさせられているかのようだった。まだ交尾を知らなかった彼女も当然、その中の一人となった。
 そしてその実験に区切りがついたのか、次はサカリが来たメスは、夜の街中に放り出されるようになり、さっきのように見知らぬ何者かに襲われては孕み産むのを繰り返しているのだと。
 火影の指示なのか、それとも別でそういう実験や研究をしている組織があるのか、詳しいことは何もわからない。ただただ、産むための道具のように扱われ、そして産んだ我が子は目が開く頃になると連れ去られる。
 何故こんな目に遭わなければいけないのかわからない。ただ、ただ、悲しく、つらく、そして悔しい。
 
 それを一緒に見守りながら聞いていたサスケは、耳を伏せて尻尾を激しく振りながら暗い顔をしていた。
 里がこれを主導しているのだとしたら、あまりに非人道的だ。あの三代目火影様がそんなことを考えるなんて信じられない。であれば、別の組織……?
「俺が変化して、あなたの代わりにその施設に潜入する。誰が黒幕なのか調べる。だから……」
「だめだ、サスケには危険すぎる。……少し考える時間をくれない?必ず何とかするから。」

 しかし、この人が孕まずに戻ってしまうと怪しまれるだろう。そもそも、この人に監視がついている可能性が高い。信頼できる仲間に託して、きちんと愛のある交尾で子を宿してから彼女を尾行してそこに潜入したほうがいい。
 ……ただ、一体何人が囚われているのだろう。
 里が関与している可能性が捨てきれない以上、密かに仲間を集めてかからなければいけない。もし、里が関与していたとしたらその時は……抜け忍になる覚悟を持っておかなければならない。そんな事を秘密裏に行っている里に忠誠は誓えない。他にも隠れ里はある。
「最後に一回だけ、子を宿して帰って貰ってもいいですか?野蛮なことはしません。信頼できる仲間に相手になって貰います。そして子を宿したら、そこに戻ってください。俺たちが尾行してそいつらに鉄槌を下します。」

 サスケはイタチが言った意味の意味を少しは理解したつもりでいた。でもそんなひどいことが起きているなんて、想像もしていなかった。一緒に暮らしていたあの大人たちは皆こんな風に扱われているのだとしたら……そいつらは全員俺の明確な敵だ。
 俺の血に誓ってそいつらを全員殺す。そして全員助け出す。絶対に、許さない。
 その思いをこころに秘めながら潜入の提案をしたサスケをカカシは止めた。
 カカシが止めた、という事はもっといい方法があるんだろう。
 サスケは自分に処方された薬を彼女に渡して飲ませた。サカリのつらさを知っている分、なんとかして力になりたかった。
 父さんが兄さんに言った言葉の意味も、今なら理解できる。こんな交尾がネコにとって当たり前なのだとしたら、一族で暮らしてきたあの頃は平和で、穏やかで、幸せだった。つがいを作らないネコという種でありながら、婚姻により共同体を形成してその中だけで繁殖を続けていたのは、一部の遺伝子異常の子が産まれていようが、その子たちも皆に愛されながら育ってきたのだから決して不幸ではなかったはずだ。

 彼女は郊外にあるサスケの家に匿うことになった。カカシは然るべき準備ができたら迎えに来る、と。
 サスケの家では、サカリの症状を抑える薬を飲ませ続けた。郊外とはいえ、あの大きな鳴き声はかなり響く。聞きつけてオスネコが寄ってくるかもしれない。
 2日経った夜、カカシが迎えに来た。サスケは彼女に寄り添うように手を繋いでカカシについて行った。その先にいたのは、見知らぬ……ウサギの一種、だろうか。少し話をして、二人がホテルに入って行ったのを見届けて、その出入り口が見える木陰で二人座って待った。
「これから、どうするんだ?」
「ま、任せておいて。信頼できる仲間を集めてる。」
「……やっぱり俺は参加できないのか。」
「ごめんけど、下忍にはちょっとランクが高すぎるからね。」
「でも本来なら、同じ血を持つ俺がやるべき……」
「その気持ちも一緒に持っていく。大丈夫だ。」
 にこ、と笑いかけるいつものその笑顔に、サスケはカカシならきっと上手くやってくれると信じて、その肩に額を擦り付けた。
 
 たっぷり3時間くらいは待っただろうか。二人が出てきたのを見て立ち上がる。彼女は泣いているようだった。また戻るのが怖いからだろうか、と思いきや、全く逆だった。
「……知りませんでした……。交尾が、こんなにも温かさで溢れているものだったなんて……。ありがとう、ございます。ありが……」
 大切なものを扱うようにお腹を撫でる彼女は、まるで母さんのような穏やかな顔をしていた。
 ただ、それもそこまでで。
 周囲にはいつの間にか、5つの黒い影が4人を囲んでいた。そのひとつひとつが瞬時に動く。サスケには何が起きたのか全然見えなかった。でも、瞬きをした次の瞬間には、その黒い影は忍者ベストを身につけた5人の忍によって拘束されていた。
 それを確認したカカシが動く。
「さて……ちょいと尋問させて貰いますよ、と。」
 その左目を隠していた額当てをずらして左眼を開ける。
 その赤い眼は、俺たちの一族しか持っていないはずの写輪眼だった。